宗教法人の代表役員が死亡したらすべきことを専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月28日
宗教法人法の規定によれば、宗教法人の代表役員は、対外的には宗教法人の代表権が、対内的には事務総理権が与えられている、宗教法人の管理運営をつかさどる極めて重要な機関です。 したがって、代表役員を欠いては、宗教法人の管理運営に支障が生ずることが想定されます。
そこで、今回は代表役員が死亡した場合、どのような手続きが必要となるのかについて宗教法人を専門とする弁護士が解説します。
宗教法人の代表役員が死亡したときの内部手続
代表役員が死亡したときには、後任の代表役員を選任する必要があります。代表役員の選任方法は、宗教法人の規則に定めることができます。もし規則に別段の定めを置いていない場合には、責任役員の互選によって代表役員を定めます(宗教法人法18条2項)。
たとえば、宮司、住職の地位にある者が代表役員になるという、いわゆる充て職の規則がある場合、包括宗教団体の承認書や、単位宗教団体内の規程による任命書などが作成されます。
宗教法人によって代表役員の選任方法は様々ですから、被包括宗教法人の場合は、包括宗教団体の担当者に相談することをお勧めします。
宗教法人の代表役員が死亡したときの登記手続
宗教法人の内部で新しい代表役員が選任されたら、次は登記の変更が必要です。以下ご説明します。
宗教法人変更登記申請
代表役員を選任した場合、2週間以内にその主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならないとされています(宗教法人法53条)。
代表役員の死亡を証する書面(死亡届等)、代表役員の選任を証する書面(選定書等)や代表役員就任の承諾書を添付した宗教法人変更登記申請書を法務局に提出し、登記の変更を申請します。添付書類は当該宗教法人の規則により異なるため、管轄の法務局に相談してから手続きを行うことをお勧めします。
代表役員の変更届
代表役員の変更登記をしたときは、遅滞なく登記事項証明書を添えて、その旨を所轄庁に届け出る必要があります(同法9条)。
宗教法人の代表役員が死亡したのに後継者が不在?
代表役員が死亡したものの、後継者が不在で直ちには後任の代表役員を選任することができない場合があります。 このような場合にとるべき措置や後継者不在が長引いた場合にどうなるのかについてご説明します。
後継者が不在の場合の暫定措置
宗教法人が活動として行うあらゆる対外的法律的行為は代表役員を通じて行われます。そのため、代表役員の死亡後、後任の代表役員が選任されない場合、宗教法人として対外的な法律行為を行うことが不可能となり、法人の管理運営に支障が生ずるおそれがあります。
そこで、宗教法人法は、代表役員が死亡後、すみやかにその後任者を選ぶことができない場合、代務者を置かねばならないと規定しています(20条1項1号)。
代務者の選任は、宗教法人の規則にしたがって行われ、代表役員代務者が就任した場合は、2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、代表役員代務者の氏名及び住所を登記します(同法52条2項6号、53条)。
代務者はあくまで、後任の代表役員が選任されるまでの臨時のポストですから、その資格や任免に関する規則は、迅速かつ緩やかに運用できるよう定めておくことがポイントです。
後継者の不在が続くとどうなるか
後継者である代表役員の選任がなかなか決まらない場合があります。特に近年はこの問題が深刻で、住職不在のお寺が増加しています。 代表役員の死亡後1年以上にわたって代表役員及びその代務者を欠く場合には、裁判所への宗教法人の解散命令請求事由に該当し、解散命令請求の対象となる可能性があります(宗教法人法81条1項4号)。
もっとも、同規定の趣旨は、宗教法人の設立後、不活動になっている宗教法人を解散させることにあり、実質的に活動中の宗教法人まで解散に追いやることはその趣旨には沿いませんので、解散を強いられることはないと考えてよいでしょう。
このように後継者不在の場合に何等かの罰則を受けたり、強制的に解散させられることはないものの、一番困るのは信者ですから、包括宗教団体や役所と対応を協議することとなります。
まとめ
以上、宗教法人の代表役員が死亡した場合、どのような手続きが必要となるのかについて解説しました。 宗教法人に強い弁護士をお探しの場合は、ぜひ、当事務所にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。