介護職員の退職について介護事業者及び従業員の両方の立場から専門弁護士が解説
最終更新日: 2022年05月13日
介護業界は、賃金面での労働環境の悪さや人手不足によるハードワークにより、離職率が高い傾向にあります。中でも人手不足の影響は、様々な部分に影響を及ぼしているのが現状です。人手不足ゆえに過度な引留めを受けて、退職したくてもできない職員もいます。
反対に、人手不足であっても問題のある職員を退職させたい介護事業者もいます。ただ、なるべく介護事業者側にも職員にも負担が少ない形で、職員を退職させることはできないか頭を悩ませるものです。
そこで今回は、介護業界に詳しい専門弁護士が、介護職員の退職に関する基礎知識と、介護職員の退職について解説します。
介護職員の退職問題に詳しい弁護士が基礎知識を解説
ここでは、介護職員の退職に関する基礎知識を2つ解説します。
- 介護職員の退職に関する統計データ
- 介護業界で職員が退職したいと考える理由
介護職員の退職に関する統計データ
基礎知識の1つ目は、介護職員の退職に関する統計データです。厚生労働省によると、平成30年の医療・福祉業界における退職率は、15.5%でした。これは、他業種と比較して高い水準にあるデータです。
また、厚生労働省の統計では、66.6%の介護職員が人手不足を感じています。このため、多くの介護事業者は簡単に人材を放出したくないと考えていると推測できます。
介護業界で職員が退職したいと考える理由
基礎知識の2つ目は、介護業界で職員が退職したいと考える理由です。主な理由を以下に4つまとめました。
人手不足で体力的に辛い |
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人間関係が悪い |
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労働環境や待遇が悪い |
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介護職が合わない |
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人と関わることが主な仕事であるために、そもそも心身にかかる負担が大きく、人間関係も絡むため、退職率が高くなっていると考えることができそうです。
このような環境ではあるものの、職員の働き方に問題があり、介護事業者がその職員の雇用を続けられないと考える場合もあります。
まずは、介護事業者が職員を退職させたいと考える場合についてご紹介をしていきます。
介護事業者が職員を退職させたいときは弁護士に相談
ここでは、介護事業者が職員を退職させたいときに知っておきたいポイントについて、3つに分けて解説します。
- 職員を退職させることは容易ではない
- 解雇よりも退職勧告が現実的
- 解雇の種類
それでは、1つずつ解説します。
職員を退職させることは容易ではない
1つ目は、職員を退職させることは容易ではないことです。
日本では、社会通念上正当な理由がなければ職員を退職させることは難しいとされています(労働契約法16条)。
職員の能力不足や犯罪行為を事由として解雇したい場合でも、職員が犯罪を犯して起訴されるなどしなければ、職員を解雇することはかなりハードルが高いことに留意しなければなりません。
職員を解雇するには正当な事由とそれを裏付ける証拠が必要です。ただ、それらを十分にそろえることは簡単ではありません。
解雇よりも退職勧告が現実的
2つ目は、解雇よりも退職勧告が現実的だということです。
解雇は事業者と職員双方に大きな負担になります。そのため、介護事業者が職員を退職させたいのであれば、まずは退職勧告を行って自主退職を促すことが得策です。自主退職であれば、職員都合の退職になるため、事業者と職員との間で紛争になるリスクも軽減できます。
ただし、無理に退職勧告を行ったと思われれば、退職を巡る紛争になるリスクも大いにあるため、注意してください。
解雇の種類
3つ目は、解雇の種類です。
退職勧告で退職しなければ解雇も検討する必要があります。解雇には以下のように、大きく分けて3つの種類があります。
普通解雇 |
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懲戒解雇 |
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整理解雇 |
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職員の解雇は、前述の通りハードルが高いものです。他に手段がなくやむをえないときに限って検討することを原則としましょう。
介護職員が退職に難航しているときには弁護士の助けも有用
ここまでは、介護事業者側の視点から、職員を退職させたいケースについて解説しました。
一方で、介護職員が退職をしたくても辞めさせてもらえず、退職に難航しているという場合もあります。そのときには、どのような方法がとれるのでしょうか。
ここでは退職したい介護職員の立場に立って、以下3つを解説します。
- 退職したいのにできない理由
- 退職代行サービスという選択肢
- 弁護士への相談
それでは、1つずつ解説します。
退職したいのにできない理由
まずは、退職したいのにできない理由を解説します。
その理由は大きく分けて4つあります。それぞれ表にまとめました。
退職に負い目 |
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周りへの迷惑 |
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過剰な引留め |
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過度の責任感 |
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そもそも職場で人手が足りない場合、自分が辞めることによりさらに人手が足りなくなることを懸念する人が多く見受けられます。
退職代行サービスという選択肢
次に、退職代行サービスという選択肢について解説します。
1か月前には職員は退職予告することが多いですが、民法上は2週間の予告期間があれば問題ありません。ただ、何らかの事情で退職手続きをスムーズにできない職員もいます。そのときは退職代行サービスを利用して、退職手続きを代行する人もいます。
具体的に、退職代行サービスを利用すべき方の例を以下に紹介します。
- 現在の職場からすぐに離れたい
- 試用期間中で言いづらい
- 退職する意思を伝えづらい
- 人事異動に納得していない
- 次の仕事が決まっている
- 人間関係のこじれで出社したくない
- 職場の人間に会いたくない
- 理不尽な退職妨害を受けている
- 会社とやりとりしたくない
- 後任を探してもらえない
- 退職届を出したが高圧的な態度を取られた
退職代行サービスは退職が難航している方にとっては有益なサービスですが、場合によっては弁護士への依頼の方が適していることもあります。
一般的な退職代行では、本人の代わりに退職の意思を伝えることはできます。しかし、職場との具体的な交渉は非弁行為にあたり、禁止されています。中には、非弁の退職代行にもかかわらず強引な退職代行を行った結果、職場側から非弁行為の指摘を受けて損害賠償請求されるトラブル事例もあるようです。
弁護士への相談
弁護士であれば、職場との具体的な交渉まで可能です。たとえば、以下の内容を交渉できます。
- 給与
- 有給消化分の給与未払い
- 残業代
- 退職金
したがって、退職前に職場との交渉が必要な場合は、一般的な退職代行サービスではなく、弁護士による対応がおすすめです。
まとめ
今回は、介護職員の退職に関する基礎知識と、介護職員の退職について解説しました。
介護職員と事業者いずれの立場においても、退職するときには何らかのトラブルが発生する可能性は決して低くありません。
もし介護職員の退職に関してトラブルが発生したときには、事業者・介護職員いずれの立場であっても、当法律事務所にご相談ください。介護業界に詳しい専門弁護士が、迅速にトラブルのお手伝いをいたします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。