介護職員の退職について介護事業者及び従業員の両方の立場から専門弁護士が解説

最終更新日: 2022年05月13日

介護職員の退職について介護事業者及び従業員の両方の立場から専門弁護士が解説

介護業界は、賃金面での労働環境の悪さや人手不足によるハードワークにより、離職率が高い傾向にあります。中でも人手不足の影響は、様々な部分に影響を及ぼしているのが現状です。人手不足ゆえに過度な引留めを受けて、退職したくてもできない職員もいます。

反対に、人手不足であっても問題のある職員を退職させたい介護事業者もいます。ただ、なるべく介護事業者側にも職員にも負担が少ない形で、職員を退職させることはできないか頭を悩ませるものです。

そこで今回は、介護業界に詳しい専門弁護士が、介護職員の退職に関する基礎知識と、介護職員の退職について解説します。

この記事を監修したのは

南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

介護に関わるトラブルでお困りの方へ

・無料相談受付中
・全国対応(東京・大阪・名古屋・福岡・金沢)

24時間・土日祝日も受付0120-655-995

介護職員の退職問題に詳しい弁護士が基礎知識を解説

ここでは、介護職員の退職に関する基礎知識を2つ解説します。

介護職員の退職に関する基礎知識
  1. 介護職員の退職に関する統計データ
  2. 介護業界で職員が退職したいと考える理由

介護職員の退職に関する統計データ

基礎知識の1つ目は、介護職員の退職に関する統計データです。厚生労働省によると、平成30年の医療・福祉業界における退職率は、15.5%でした。これは、他業種と比較して高い水準にあるデータです。

また、厚生労働省の統計では、66.6%の介護職員が人手不足を感じています。このため、多くの介護事業者は簡単に人材を放出したくないと考えていると推測できます。

介護業界で職員が退職したいと考える理由

基礎知識の2つ目は、介護業界で職員が退職したいと考える理由です。主な理由を以下に4つまとめました。

人手不足で体力的に辛い
  • 介護業界は慢性的人手不足の傾向にあるため、職員一人ひとりにかかる負担大
  • 夜勤や長時間労働により、体力面に不安がある職員も
人間関係が悪い
  • 利用者やその家族だけでなく、職場の人間関係に苦労している職員も少なくない
  • 人間関係の悪さが悩みやストレスの原因に
労働環境や待遇が悪い
  • 心身ともに負担が大きい割に給与が安いことが多く、報われないと感じる職員が多い
  • 役職や資格取得による手当も数千円程度の昇給で、割に合わないと感じる職員が多い
介護職が合わない
  • 細やかなコミュニケーションが、利用者やその家族、職員で取れない
  • 合わない方が介護職を続けても、ストレスがたまり自分にも周りにも悪影響

人と関わることが主な仕事であるために、そもそも心身にかかる負担が大きく、人間関係も絡むため、退職率が高くなっていると考えることができそうです。

このような環境ではあるものの、職員の働き方に問題があり、介護事業者がその職員の雇用を続けられないと考える場合もあります。

まずは、介護事業者が職員を退職させたいと考える場合についてご紹介をしていきます。

介護事業者が職員を退職させたいときは弁護士に相談

ここでは、介護事業者が職員を退職させたいときに知っておきたいポイントについて、3つに分けて解説します。

介護事業者が職員を退職させたいときに知っておきたいポイント
  1. 職員を退職させることは容易ではない
  2. 解雇よりも退職勧告が現実的
  3. 解雇の種類

それでは、1つずつ解説します。

職員を退職させることは容易ではない

1つ目は、職員を退職させることは容易ではないことです。
日本では、社会通念上正当な理由がなければ職員を退職させることは難しいとされています(労働契約法16条)。

職員の能力不足や犯罪行為を事由として解雇したい場合でも、職員が犯罪を犯して起訴されるなどしなければ、職員を解雇することはかなりハードルが高いことに留意しなければなりません。

職員を解雇するには正当な事由とそれを裏付ける証拠が必要です。ただ、それらを十分にそろえることは簡単ではありません。

解雇よりも退職勧告が現実的

2つ目は、解雇よりも退職勧告が現実的だということです。

解雇は事業者と職員双方に大きな負担になります。そのため、介護事業者が職員を退職させたいのであれば、まずは退職勧告を行って自主退職を促すことが得策です。自主退職であれば、職員都合の退職になるため、事業者と職員との間で紛争になるリスクも軽減できます。

ただし、無理に退職勧告を行ったと思われれば、退職を巡る紛争になるリスクも大いにあるため、注意してください。

解雇の種類

3つ目は、解雇の種類です。
退職勧告で退職しなければ解雇も検討する必要があります。解雇には以下のように、大きく分けて3つの種類があります。

普通解雇
  • 職員の勤務態度や能力不足を理由に行う解雇
  • すぐに職員を解雇させられるわけではなく、段階的に告知して改善が見られないため解雇するプロセスを作る必要あり
懲戒解雇
  • 社内の秩序を著しく乱した労働者に対する懲罰としての解雇
  • 就業規則に懲戒解雇の規定が存在することが不可欠
整理解雇
  • 事業者が経営を立て直すために実行する解雇(通称リストラ)
  • 整理解雇には正当性が必要で、正当性がなければ不当解雇に該当

職員の解雇は、前述の通りハードルが高いものです。他に手段がなくやむをえないときに限って検討することを原則としましょう。

介護職員が退職に難航しているときには弁護士の助けも有用

ここまでは、介護事業者側の視点から、職員を退職させたいケースについて解説しました。
一方で、介護職員が退職をしたくても辞めさせてもらえず、退職に難航しているという場合もあります。そのときには、どのような方法がとれるのでしょうか。
ここでは退職したい介護職員の立場に立って、以下3つを解説します。

  • 退職したいのにできない理由
  • 退職代行サービスという選択肢
  • 弁護士への相談

それでは、1つずつ解説します。

退職したいのにできない理由

まずは、退職したいのにできない理由を解説します。

その理由は大きく分けて4つあります。それぞれ表にまとめました。

退職に負い目
  • 退職したい旨を同僚に話したところ遠回しに文句を言われ、人間関係を悪化させたくないと考え退職を我慢
  • 先に退職することが卑怯と感じてしまう
周りへの迷惑
  • 以前に退職者が出た結果、現場の仕事が回らなくなったことを思い出して退職を躊躇
  • 自分が退職したときの影響を考えてしまう
過剰な引留め
  • 上司に退職の相談をしたところ、散々文句を言われた挙句過剰な引留め
  • 退職を相談した翌日に役職を与えられて退職しづらくなるケースも
過度の責任感
  • 真面目で一生懸命、強い責任感を持っている方ほど辞めにくい傾向
  • 自分自身が壊れては本末転倒
  • 退職する強い意志も大切

そもそも職場で人手が足りない場合、自分が辞めることによりさらに人手が足りなくなることを懸念する人が多く見受けられます。

退職代行サービスという選択肢

次に、退職代行サービスという選択肢について解説します。
1か月前には職員は退職予告することが多いですが、民法上は2週間の予告期間があれば問題ありません。ただ、何らかの事情で退職手続きをスムーズにできない職員もいます。そのときは退職代行サービスを利用して、退職手続きを代行する人もいます。
具体的に、退職代行サービスを利用すべき方の例を以下に紹介します。

退職代行サービスを利用すべき方の例
  1. 現在の職場からすぐに離れたい
  2. 試用期間中で言いづらい
  3. 退職する意思を伝えづらい
  4. 人事異動に納得していない
  5. 次の仕事が決まっている
  6. 人間関係のこじれで出社したくない
  7. 職場の人間に会いたくない
  8. 理不尽な退職妨害を受けている
  9. 会社とやりとりしたくない
  10. 後任を探してもらえない
  11. 退職届を出したが高圧的な態度を取られた

退職代行サービスは退職が難航している方にとっては有益なサービスですが、場合によっては弁護士への依頼の方が適していることもあります。

一般的な退職代行では、本人の代わりに退職の意思を伝えることはできます。しかし、職場との具体的な交渉は非弁行為にあたり、禁止されています。中には、非弁の退職代行にもかかわらず強引な退職代行を行った結果、職場側から非弁行為の指摘を受けて損害賠償請求されるトラブル事例もあるようです。

弁護士への相談

弁護士であれば、職場との具体的な交渉まで可能です。たとえば、以下の内容を交渉できます。

  • 給与
  • 有給消化分の給与未払い
  • 残業代
  • 退職金

したがって、退職前に職場との交渉が必要な場合は、一般的な退職代行サービスではなく、弁護士による対応がおすすめです。

まとめ

今回は、介護職員の退職に関する基礎知識と、介護職員の退職について解説しました。

介護職員と事業者いずれの立場においても、退職するときには何らかのトラブルが発生する可能性は決して低くありません。

もし介護職員の退職に関してトラブルが発生したときには、事業者・介護職員いずれの立場であっても、当法律事務所にご相談ください。介護業界に詳しい専門弁護士が、迅速にトラブルのお手伝いをいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

介護トラブルの取り扱いについてはこちら

介護に関わるトラブルでお困りの方へ

・無料相談受付中
・全国対応(東京・大阪・名古屋・福岡・金沢)

24時間・土日祝日も受付0120-655-995

この記事を監修したのは

南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

介護トラブルの記事一覧へ戻る