離婚時の親権争いで母親が不利となるケースと親権者を決める原則・対策を解説
最終更新日: 2023年10月15日
- 親権争いをしたとき、母親の方が親権者に選ばれやすいのだろうか?
- 親権争いで母親が不利になるケースはあるのか?
- 母親が確実に親権者に選ばれるためのポイントを知りたい
未成年の子どもの親権を配偶者と争う場合、母親の方が親権者に選ばれるケースが確かに多いです。
ただし、母親を親権者にすることにより、子どもの精神的・身体的な成長が妨げられてしまうおそれがあるときは、母親が親権を得られないこともあります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚するときに母親が親権者となる割合、母親が不利となるケース等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 親権を配偶者と争う場合、母親の方が親権者となれる可能性が高い
- 母親でも育児放棄や虐待等を行っている場合は、親権者になれない
- 母親が確実に親権者となるためには、前もって対策を講じておいた方がよい
離婚の親権における母親の割合
令和4年の司法統計年報(最高裁判所事務総局)によると、母親が親権者になる割合は、離婚調停・審判で「子の親権者の定め」をすべき全件数(16,739件)の約94%(15,706件)に上っています(家事編第23表)。
子どもとの関係で特に問題がなければ、裁判所の調停や審判で親権を得られるのは、ほぼ母親であるとみてよいでしょう。
離婚時の親権争いで母親が不利となるケース
母親が親権者となる可能性が非常に高いとはいえ、親権争いで不利になるケースもあります。
こちらでは、不利になるケースを4つ取り上げましょう。
育児放棄
一般に「ネグレクト」と呼ばれている問題です。
単に母親が子どもを放任するだけであれば育児放棄とはいえません。次のようなケースは、育児放棄に該当する可能性が高いです。
- 食事の用意をしない
- 子どもをお風呂に入れない
- 子どもを不衛生な状態で放置する
- 子どもがケガや病気をしても病院に連れていかない 等
このような事実が判明した場合、母親は親権を得難いでしょう。
虐待
子どもを虐待している場合は、母親は親権を得られません。
虐待に該当するのは次のような行動です。
- 身体的虐待:子どもを殴ったり蹴ったりする、髪の毛を強く引っ張る、強くゆさぶる等
- 精神的虐待:子どもに暴言を吐く、頻繁に怒鳴りつける、無視する等
虐待を「しつけ」と言い訳する親もいます。しかし、子どものケガの具合や周囲の人達の証言等から、虐待の事実が発覚する可能性は高いです。
精神疾患
母親が精神疾患で治療中であるときは、親権争いで不利になるケースがあります。
たとえば母親がうつ病を発症し動けない、幻覚・幻聴の症状が頻繁にあるなどのため、育児に耐え得る状態ではないと判断された場合です。
ただし、精神疾患を患っていても最低限の育児が可能と判断されれば、母親が親権者となる可能性もあるでしょう。
子どもの意思
子どもが母親より父親と良好な関係を築いており、子どもが父親と共に暮らしたいと希望しているときは、子どもの意思が尊重されます。ただし、小学生など幼い場合にはこの意思はあまり考慮されません。
母親が、子どもの学校の送迎や食事の準備などの世話や子どもとのレジャーなど、子どもに関することをすべて父親に任せきりにしているのであれば、子どもの信頼は父親に移ってしまいます。
たとえ仕事が忙しい母親でも、子どもと交流し信頼関係を維持する努力が必要です。
離婚時に母親を親権者と決める原則
親権者を両親のどちらにすべきか、明確な基準が法律で決まっているわけではありません。
しかし、裁判所による調停や裁判では、次のような原則を踏まえ、子どもの利益と福祉を考える場合、両親のどちらが適しているのか判断します。
現状維持の原則
現状維持の原則は、離婚により急激な変化があると子どもの精神的負担となるため、現在子育てに深く携わる親が親権者となるべき、という考え方です。
日本では母親が育児を担うケースが多く、この原則によって母親が有利になる可能性は高いです。
ただし、母親が単独で別居してしまい、父親と子どもが一緒にいる場合は、調停や裁判で父親が有利となる可能性もあるので注意しましょう。
母性優先の原則
母性優先の原則は、概ね10歳以下の幼い子どもがいれば、母親と一緒に暮らすのが望ましいとする考え方です。15歳以上になれば、子どもの意思が尊重されます。
母親が親権を持つのに有利な原則といえます。
ただし、最近では母親が家庭を守り、父親が外で働くという役割は次第に変化しています。「専業主夫」として、父親が幼い子どもの世話を行い、家事を取り仕切る家庭もあります。
家庭裁判所では家庭の様々な事情を考慮しており、母性優先の原則だけで母親が親権者に適しているとは判断されません。
兄弟不分離の原則
兄弟不分離の原則は、兄弟姉妹が幼い場合は一緒に暮らす方が子どもの心身の発育によいとする考え方です。この原則に従えば、兄弟姉妹に同一の親権者が指定されるため、母親が親権を得れば、兄弟姉妹全員の親権者になることができます。
ただし、次のようなケースでは兄弟分離ができる可能性もあります。
- 兄弟分離を父母が合意した
- 父母が長年別居しており、それに伴い兄弟も別々に生活している
- 子ども達の意思で別々の親元で暮らしたいと希望している
離婚時に親権を決めるときに母親がすべきこと
母親はかなりの高確率で親権を得られますが、絶対とは言い切れません。
こちらでは、子どもの親権を得るための心がけや対応策について解説します。
感情的にならない
配偶者と親権をどうするのか冷静に話し合いましょう。
たとえ話し合いが行き詰まっても、「浮気したあなたに、あの子の親権を主張する資格はない!」などと激怒し感情的になれば、離婚手続きがなかなか進まなくなります。
双方の話し合いで決めるのは理想的ですが、お互いの主張が平行線のままなら、家庭裁判所の調停に進み解決を図りましょう。
話し合いが決裂しても、その後に親権を決める方法はあるので、うまくいかなかった場合の解決方法を前もって把握しておくことが大切です。
そうすれば、「協議がまとまらなくても、調停や裁判で解決すればよい」と心が軽くなり、冷静な対応ができます。
別居するときは子どもも連れて行く
親権について調停や裁判で争う場合、裁判官は子どもへの情の深さや子どもとどれだけ接してきたかなどを考慮します。
考慮されるのは、主に次のような事情です。
- 子どもの世話をしてきた実績
- 日常生活で子どもと共に過ごす時間の長さ
- 休日には、積極的に子どもと触れ合ってきたのか
- 仕事をしていても育児に積極的だったか 等
母親が子どもと別居してしまうと、子どもの世話や共に過ごす時間、積極的に子どもと触れ合う機会が得られなくなり、親権争いで不利になる可能性があります。
そのため、別居する場合は子どもを連れて、新居や実家で生活をした方がよいです。
ただし、父親の承諾なく勝手に子どもと共に別居すれば、父親が「子どもを連れ去った!」と主張し、トラブルに発展するおそれも想定されます。
そこで、次のように子どもを連れていく理由を告げ、父親からの承諾を得ておきましょう。
- 父親が外で仕事をしているので、子どもはほとんど1人で生活をしなければいけない
- 父親が仕事の合間に、幼い子どもの保育園の送迎や食事の準備をするのは不可能 等
弁護士への相談
配偶者と親権を話し合う前や、話し合いで行き詰まったときは弁護士に相談してみましょう。
離婚問題に詳しい弁護士に親権に関する悩みや不明点を相談すれば、弁護士は法律の知識や豊富な経験をもとに、夫婦の事情に応じた的確なアドバイスをします。
また、弁護士に依頼すれば配偶者との交渉を任せられるので安心です。
たとえ話し合いがまとまらず、調停や裁判に進んだとしても、家庭裁判所への手続きや依頼者側に立った主張も行うので、有利に離婚手続きが進められます。
離婚問題に詳しい弁護士は、法律事務所のホームページをチェックして選びましょう。
ホームページ内で次のような内容が確認できれば、離婚交渉や調停・裁判に詳しい経験豊かな弁護士といえます。
- 相談実績・成功実績が掲示されている
- 離婚に関する手続きの流れや費用がわかりやすく掲示されている
- 親権をはじめとした離婚問題の話題が豊富に掲載されている
初回の相談を無料にしている法律事務所もあります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、母親の方が親権者となる可能性の高い点や、母親が親権を得るための心がけ、対策等について詳しく解説しました。
親権は自分や配偶者の意見だけでなく、子どもがどう考えているのかも考慮し、決めましょう。
親権について悩むときは、弁護士と相談し、アドバイスを受けてみましょう。