離婚条件は後から変更できないの?できるケースと実行方法・押さえるべきポイントを解説
最終更新日: 2023年10月31日
- 夫婦で離婚のための条件を取り決めたが、後から条件を変更できるのか
- 強く迫られてしぶしぶ離婚条件に合意したが、やはり納得がいかない
- 離婚は成立しているが事情の変化もあって条件を変更したい
離婚の条件を取り決めたときは、通常、離婚契約書や離婚公正証書として書面化しておきます。
一度決定した離婚条件の内容について、頻繁に変更を求めては当事者間で大きなトラブルとなる可能性があります。
そのため、原則として離婚条件の変更は認められません。ただし、やむを得ない事情があるなら、変更が認められる可能性もあります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚条件を変更できるケース、離婚条件を変更する方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 原則として一度取り決めた離婚条件の変更は認めらないものの、ケースによっては変更が可能な場合もある
- 離婚成立後のやむを得ない事情の変化で、条件変更が認められる可能性はある
- 条件変更を相手へ申し出る前に、弁護士と相談しておけば変更できる可能性が高まる
離婚条件は変更できないのか
夫婦で取り決めた離婚の条件を後で変更することは可能なのか、気になる方も多いでしょう。
離婚条件の変更の可否や後から取り決めが可能な内容について解説します。
原則できない
夫婦が合意し離婚契約書(協議書)に内容を取りまとめた場合、原則として変更はできません。
夫婦どちらかの都合でいつでも変更ができてしまえば、離婚問題の終局的な解決が難しくなってしまいます。
そのため、離婚契約書に記載する条件を夫婦で慎重に取り決める必要があるのです。
離婚時に決めなかった条件
協議離婚を行う場合、子どもの親権・監護権については離婚時に定めておく必要があります。
しかし、慰謝料や財産分与、離婚後の子どもとの面会交流の取り決めは、離婚協議のときだけでなく、離婚後に改めて話し合いをしても構いません。
夫婦の一方が支払う慰謝料や財産分与で揉めている場合は、まず合意できている内容だけを離婚契約書に書面化しましょう。
その後、改めて夫婦で調整が必要な内容を協議し、合意が得られないときは調停で解決を図ります。
離婚条件を変更できる例外ケース
離婚契約書(協議書)を作成した後でも、条件を変更できるケースがあります。主に次の3つのケースの場合、変更が認められる可能性は高いです。
相手の同意がある
離婚条件の変更について法律で禁止が定められているわけではないので、夫婦の合意で変更は可能です。
ただし、契約の誠実な履行(養育費や離婚給付の支払い等)のため、契約書にもう一度変更内容を書き直す必要があります。
契約書の作成には、その分手間がかかるので注意しましょう。
詐欺や強迫での合意
夫婦で離婚の条件を話し合ったとき、夫婦の一方に騙されたり、強引に条件の合意をさせられたりした場合は取り消せます(民法第96条)。
詐欺または強迫で合意させられた事実を調停や裁判で主張・立証すれば、離婚の条件について決め直しが可能です。
前提条件が変わった
離婚協議書の内容を変更せざるを得ないほど、大きな変化があったケースです。
たとえば、離婚時に夫婦で養育費の金額や支払い方法を決めたものの、後に親権者となった妻が失職し、子どもの生活費や教育費の支払いに影響が出た場合です。
このような事情の変更がある場合は、改めて裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考として、養育費の金額を決め直しましょう。
それぞれの離婚条件を変更する方法
慰謝料や財産分与をはじめとした離婚給付は、離婚のとき無理に決める必要はなく、離婚後に継続して話し合いを進めても構いません。
こちらでは、それぞれの条件変更の方法について解説します。
慰謝料
いったん離婚を成立させたうえで、まだ合意に至っていない慰謝料の問題を当事者間で協議できます。
慰謝料の支払いや金額について当事者間の話し合いがまとまらない場合、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所にて「慰謝料請求調停」が可能です。
ただし、調停を希望するなら離婚時から3年以内に慰謝料請求の申立てをしなければいけません。
調停のときは、調停委員が当事者双方から離婚の原因がどこにあったか等の事情を聴いたのち、必要に応じて資料の提出を求めつつ解決案の提示や必要な助言を行います。
その上で慰謝料の支払いの必要性や、金額に関して当事者の合意を図っていきます。
財産分与
財産分与の合意に至っていなければ、当事者間で引き続き話し合いが可能です。
財産分与の割合や金額について協議がまとまらないときは、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所にて「財産分与請求調停」が可能です。
ただし、調停を希望するなら離婚時から2年以内に申立てをしなければいけません。
調停のときは、調停委員が当事者双方からの言い分を聴き、財産の取得・維持の夫婦双方の貢献の度合いを判断します。
そのうえで解決案の提示や必要な助言を行い、当事者の合意を目指します。
養育費
離婚時に養育費の金額を取り決め支払いが継続されていても、子どもの進学や親権者の収入の変化で、条件の変更が必要な場合もあります。
養育費は裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に、現状に合った養育費の金額を取り決めましょう。
こちらのケースでも当事者間で話がまとまらないときは、調停による解決が可能です。
養育費を支払う側の親の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に、「養育費(請求・増額・減額等)調停」を申し立てます。
調停委員に助言や提案を受けながら、養育費変更の合意を目指していきます。
面会交流
面会交流は子どもと親権のない親が面会し交流する方法です。定期的な面会により、子どもの喪失感や不安を緩和する効果があります。
たとえば、次のようなケースがあれば、親権者と親権のない親が面会の回数・時間の変更について、柔軟に話し合う必要があるでしょう。
- 子どもや親権のない親が、もっと面会したいと申し出た
- 子どもが成長して塾や部活動も忙しくなり、面会の回数を減らしたい、面会時間を変えたい等
家庭裁判所の調停で解決を図りたいならば、「面会交流調停」(子の監護に関する処分)を行います。
調停を行うときは、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申立てをしましょう。
調停では当事者の言い分のほか、子の年齢や性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境等も踏まえながら、面会交流の変更に関する合意を目指します。
出典:面会交流調停 | 裁判所
離婚条件をスムーズに変更するためのポイント
離婚時に決めた条件を変更したいが、元配偶者とまた顔を合わせるのには抵抗がある、という方は弁護士に相談してみましょう。
弁護士は離婚時の条件変更の方法やポイント、条件変更の流れ等について詳しくアドバイスします。
相談後に弁護士へ依頼すれば元配偶者との交渉を任せられます。また、弁護士は協議が不成立だった場合は調停の申し立てや、調停での主張・証拠の提出等のサポートも可能です。
法律の専門家である弁護士が対応すれば、当事者だけで解決を目指すよりも合意を図れる可能性は高くなります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、当事者間の話し合いや家庭裁判所での調停によって、離婚の条件を後から変更できること等について解説しました。
一度離婚の条件を取り決めた以上、むやみに変更は認められません。しかし、子どもの福祉のために必要な場合であれば、当事者である親が柔軟に話し合って対応しましょう。
そのときには、弁護士に助言を求めるのも有効な方法です。
離婚の条件変更で悩んだら、なるべく早く弁護士に相談し、今後の対応を話し合ってみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。