【労災申請方法の流れ】図解でわかる!会社が非協力的な時の対処法
2026年04月09日

労働災害(労災)は、業務中や通勤中に発生した怪我や疾病、死亡などを指します。万が一、労災に遭ってしまった場合、適切な補償を受けるためには、労災保険の申請を行う必要があります。
しかし、その手続きは複雑に感じられ、特に会社が非協力的な場合には、どのように進めれば良いか悩む方も少なくありません。
この記事では、労災申請の基本的な流れから、会社が非協力的な場合の対処法、よくある質問、そして弁護士に相談するメリットまでを詳しく解説します。
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【図解】労災申請の基本的な流れを6ステップで解説

労災申請は、事故発生から給付決定まで複数のステップを踏んで行われます。ここでは、一般的な労災申請の基本的な流れを6つのステップで解説します。
労働災害の発生を会社に報告する
労働災害が発生したら、まず会社にその旨を速やかに報告することが重要です。
業務中の事故や通勤災害など、具体的な状況を詳細に伝えることで、その後の手続きがスムーズに進む可能性があります。
会社は、労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出する義務があるため、必ず労災の事実を伝えましょう。
労災指定病院を受診する
怪我や病気の治療を受けるため、医療機関を受診します。
労災指定病院または労災保険指定医療機関で治療を受ける場合、窓口での治療費負担はありません。
受診時には、労災での治療であることを伝え、業務災害の場合は「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式5号)」、通勤災害の場合は「療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)」を提出します。
労災指定病院以外で治療を受けた場合は、一旦治療費を自己負担する必要がありますが、後日、労働基準監督署に申請することで費用を還付してもらえます。
この場合、業務災害では「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式7号)」、通勤災害では「療養給付たる療養の費用請求書(様式16号の5)」を作成して労働基準監督署に提出します。
治療費の立て替えが不要になる「労災指定病院」の探し方や、窓口での具体的な手順についてはこちらで解説しています。
労災申請に必要な書類を準備する
労災保険給付を申請するためには、所定の申請書を準備する必要があります。
申請書は、災害の内容(業務災害か通勤災害か)や請求する給付の種類によって様式が異なります。 厚生労働省のウェブサイトからダウンロード可能です。
主な必要書類は以下の通りです。
- 各種給付請求書:療養補償給付請求書(様式第5号)、休業補償給付支給請求書(様式第8号)、障害補償給付支給請求書など、請求する給付に応じた書類。
- 治療費等の領収書:労災指定病院以外で治療を受け、費用を請求する場合に必要です。
- 賃金台帳・出勤簿の写し:休業補償給付を請求する場合に必要です。
- 後遺障害診断書等:障害補償給付を請求する場合に必要です。
- 死亡診断書・戸籍謄本等:遺族補償給付を請求する場合に必要です。
労働基準監督署へ書類を提出する
準備した必要書類は、被災労働者が所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。 提出方法は、直接窓口に持参するか、郵送でも可能です。
労災病院や労災指定病院で治療を受けた場合の治療(療養補償給付)については、病院へ申請書類を提出します。
申請は原則として被災した従業員本人またはその遺族が行いますが、会社が代理で提出することも可能です。
労働基準監督署による調査
申請書類が提出されると、労働基準監督署による調査が行われます。
この調査は、提出された申請内容に基づいて行われ、労災認定の可否を判断するために必要です。
具体的には、労働時間管理の適切性、労働環境、安全衛生管理の状況などがチェックされます。 必要に応じて、従業員本人や会社への聞き取り調査が実施されることもあります。
労基署の監督官には事業場への立ち入りや帳簿の提出要求、労働者・使用者への聴取などの権限があり、正当な理由がない限り調査を拒否できません。
労災保険の給付決定・支払い開始
労働基準監督署による調査と審査の結果、労災認定されると、労災保険の給付が決定され、支払いが開始されます。
給付決定までの期間は、給付の種類や申請内容によって異なりますが、治療費や休業補償は約1ヶ月、障害補償は約3ヶ月、遺族補償は約4ヶ月が目安とされています。
労災保険で受けられる主な補償(給付)の種類
労災保険では、労働者の被った損害を補填するため、様々な種類の給付が用意されています。 主な補償(給付)の種類は以下の通りです。
療養(補償)給付:治療費や薬代など
療養(補償)給付は、業務災害または通勤災害による傷病の治療にかかる費用を補償するものです。
労災指定病院で治療を受ける場合は、無料で必要な治療を受けられます(現物給付)。 労災指定病院以外で治療を受けた場合は、一旦自己負担した治療費を後から請求できます。
休業(補償)給付:仕事を休んだ際の生活補償
休業(補償)給付は、業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働ができない場合に、賃金を受けられない期間の生活を補償するものです。
休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。 さらに、特別支給金として給付基礎日額の20%相当額が上乗せされる場合もあります。
障害(補償)給付:後遺障害が残った場合
障害(補償)給付は、業務災害または通勤災害による傷病が治癒(症状固定)した後に、身体に一定の障害が残った場合に支給されます。
障害の程度に応じて、障害等級(1級から14級)が認定され、年金または一時金が支給されます。 例えば、障害等級第1級から第7級の場合は障害(補償)年金が、第8級から第14級の場合は障害(補償)一時金が支給されます。
遺族(補償)給付:労働者が死亡した場合
遺族(補償)給付は、業務災害または通勤災害により労働者が死亡した場合に、その遺族に対して支給されるものです。
遺族の数などに応じて、遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金が支給されます。
その他(傷病年金、介護給付など)
上記の他に、以下のような給付もあります。
傷病(補償)年金
療養開始後1年6ヶ月を経過しても傷病が治癒せず、障害等級に該当する場合に支給される年金です。
介護(補償)給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受けており、介護が必要な状態にある場合に支給されます。
葬祭料(葬祭給付)
労働者が死亡した場合に、葬祭を行った者に対して支給されます。
二次健康診断等給付
特定業務に従事する労働者が、脳血管疾患や心臓疾患に関する健康診断の結果、異常の所見があると診断された場合に、二次健康診断や特定保健指導が無料で受けられるものです。
労災保険では、通常の補償金以外に「特別支給金」が支給される場合もあります。 特別支給金は、労働者の社会復帰をサポートするために支給されるお金です。
休業補償や障害補償など、労災で実際に支給される金額の計算方法や相場の詳細はこちらで解説しています。
会社が労災申請に非協力的な場合の対処法
会社が労災申請に非協力的な場合でも、労働者自身で労災申請を進めることは可能です。
なぜ会社は労災申請を嫌がるのか?
会社が労災申請を嫌がる理由はいくつか考えられます。
保険料の上昇
労災事故が発生すると、会社が支払う労災保険料が割り増しされる「メリット制」という制度があり、これを懸念する場合があります。
労働基準監督署の調査
労災申請をきっかけに労働基準監督署の調査が入り、安全管理の不備や他の法令違反が発覚することを恐れることがあります。
会社の評判低下
「労災事故が起きた会社」というイメージダウンや、公共事業の入札等で不利になることを心配する場合があります。
損害賠償請求への警戒
労災保険ではカバーされない慰謝料などについて、後から民事上の損害賠償請求をされるのではないかと警戒することがあります。
手続きの煩雑さ
労災申請の手続きが面倒だと感じる会社もあります。
しかし、これらはすべて会社の都合であり、労働者が正当な補償を受ける権利を妨げる法的な理由にはなりません。
自分で労災申請する方法
会社が労災申請の手続きに協力してくれない場合でも、労働者本人が直接、労働基準監督署に申請書類を提出することは可能です。
これは労働者保険法で認められた正当な権利です。まずは、厚生労働省のウェブサイトなどから必要な申請書類(請求書)を入手し、ご自身で記入してください。
次に、病院で医師の証明をもらい、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。この際、窓口で会社が非協力的である旨を具体的に伝えましょう。手続きで不明な点があれば、労働基準監督署の相談窓口で質問すれば丁寧に教えてもらえます。
事業主の証明がもらえない場合の対処法
労災申請書の事業主証明欄は、会社が労災と認める「許可」ではなく、会社が災害の事実を了知していることを証明するものです。
会社が証明を拒否したり、連絡が取れない場合でも、労働者自身で申請を進めることは可能です。
労働基準監督署に相談
管轄の労働基準監督署に相談し、会社が非協力的な状況を伝えます。 労基署は必要に応じて会社に対して指導や調査を行うこともあります。
上申書を添付
事業主証明が得られない理由を記載した上申書を申請書に添付して提出します。
弁護士に相談
弁護士に相談することで、複雑な手続きや会社との交渉を代行してもらうことができます。
労災隠しは犯罪!罰則の対象になる
労災隠しとは、労働安全衛生法により労働基準監督署長への報告が義務付けられる種類の労働災害が起きたにもかかわらず、労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出しない、または虚偽の内容を報告することをいいます。
労災隠しは犯罪であり、50万円以下の罰金が科せられます。 この罰則は、行為者(個人)と法人(会社)の両方に適用される可能性があります。
労働者に健康保険を使わせるなど、労災を隠蔽しようとする行為も労災隠しの一例です。 労災隠しが発覚すると、会社は罰則を受けるだけでなく、社会的な信用を失うことにも繋がります。
労災申請に関するよくある質問と注意点
労災申請には、時効や健康保険との兼ね合いなど、いくつかの注意点があります。
Q:労災申請に期限(時効)はある?
労災保険の申請には時効(期限)があり、給付の種類によって異なります。 時効期間を過ぎてしまうと、給付を請求する権利が消滅し、申請できなくなります。
2年が期限の給付
- 療養(補償)給付(治療費):費用を支出した日の翌日から2年間。
- 休業(補償)給付:賃金を受けなかった日の翌日から2年間。
- 葬祭料:労働者が死亡した日の翌日から2年間。
- 介護(補償)給付:介護を受けた月の翌月の1日から2年間。
5年が期限の給付
- 障害(補償)給付:傷病が治癒(症状固定)した日の翌日から5年間。
- 遺族(補償)給付:労働者が死亡した日の翌日から5年間。
時効は「事故の日」ではなく、費用を支出した日や症状固定日の「翌日」からカウントされる点に注意が必要です。
Q:間違えて健康保険を使ってしまったらどうする?
労災にも関わらず、誤って健康保険を使って治療を受けてしまった場合は、速やかに労災保険へ切り替える必要があります。
病院への確認
治療を受けた病院に、健康保険から労災保険への切り替えが可能か確認します。
労災保険への切り替え
病院で切り替えができる場合は、療養給付の請求書を提出します。
自己負担分の還付
病院で切り替えができない場合は、一旦治療費を全額自己負担で支払い、労災保険への切り替えが済んだ後に還付されます。
Q:パートやアルバイトでも労災は使える?
パートやアルバイトといった雇用形態であっても、事業主と雇用契約を結んで労働している人であれば、正社員と同様に労災保険の適用対象となります。 「アルバイトだから労災は適用されない」という会社の主張は誤りです。
パート・アルバイトの方や、会社が労災を認めてくれない(協力してくれない)場合の対処法はこちらで解説しています。
Q:退職後でも労災申請はできる?
退職後であっても、労災申請は可能です。
労災保険から給付を受ける権利は、労働者が労災事故に遭った時点で発生するため、退職してもその権利は失われません。 たとえ労災保険を利用している最中に退職した場合でも、適用が終わることはありません。
ただし、退職後に労災申請を行う場合、会社が非協力的になる可能性があり、事業主証明を得ることが困難になることがあります。 その場合は、労働者自身で労働基準監督署に申請書を提出し、事業主の証明が得られない旨を伝えることで申請が可能です。
労災申請を弁護士に相談するメリット
労災申請は、その手続きの複雑さや会社との交渉が必要となる場合があるため、弁護士に相談することで様々なメリットが得られます。
複雑な申請手続きをすべて任せられる
弁護士は労災認定や損害賠償請求の手続きに精通しており、必要な書類の準備から提出まで、複雑な申請手続きをすべて代行してもらえます。
これにより、被災者は治療や生活の再建に専念でき、精神的な負担が大幅に軽減されます。
会社との面倒な交渉を代行してくれる
会社が労災申請に非協力的であったり、責任を認めないケースでは、労働者自身が会社と交渉することは大きなストレスとなります。
弁護士に依頼することで、会社との交渉を代行してもらい、対等な立場で権利を守ってもらえます。
会社によっては、労災保険が給付されれば損害賠償の必要はないと主張することもありますが、弁護士は法的な根拠に基づき適切な交渉を行います。
適切な後遺障害等級認定のサポートが受けられる
労災によって後遺障害が残った場合、適切な障害等級認定を受けることが、その後の補償に大きく影響します。
弁護士は、後遺障害診断書の内容確認や、必要に応じて意見書の作成など、適正な後遺障害等級認定のための専門的なサポートを提供します。
これにより、本来受けられるべき補償を確実に受けられる可能性が高まります。
会社への損害賠償請求も検討できる
労災保険からの給付は、治療費や休業補償など、あくまで最低限の補償です。
慰謝料や逸失利益など、労災保険ではカバーされない損害もあります。 会社の安全配慮義務違反などが認められる場合、弁護士は労災保険給付とは別に、会社に対して損害賠償請求を行うことを検討できます。
弁護士が関与することで、損害賠償額の見通しをつけ、適切な時期に解決できる可能性が高まります。
まとめ
労災に遭ってしまった場合、適切な補償を受けるためには、労災申請の流れを理解し、適切に対応することが重要です。
会社が非協力的な場合でも、労働者自身で申請を進めることが可能であり、労働基準監督署や弁護士といった専門機関のサポートも活用できます。
労災保険には時効があるため、早めに手続きを開始することが肝心です。万が一の際には、この記事を参考に、ご自身の権利を守るための行動をしてください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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