精神病の配偶者と離婚できる?専門弁護士が解説!
最終更新日: 2024年02月29日
- 配偶者の精神病が回復しない
- 精神病を患っている配偶者とは離婚できるのか?
- 離婚できる判断基準などを知りたい
仕事やプライベートなどのストレスが原因で精神病を患うケースがあります。場合によっては配偶者が精神病を患っていると看病する側も心理的に追い込まれてしまい、離婚を考える方もいるでしょう。
そこで本記事では、離婚問題に詳しい弁護士が、精神病の配偶者と離婚するときの手順や判断基準について、詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 精神病に近い症例としてアルコール依存症やノイローゼ、薬物中毒などがあるが、回復不可能な強度の精神病としては認められにくい
- 精神病を理由にした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 精神病が離婚原因と判断される基準は「医学的な見解」「夫婦関係に与える影響」「これまでの経緯」「離婚後の生活」の4つ
精神病の配偶者とは離婚できる?
配偶者が精神病を患っていた場合、夫婦間で離婚の合意が取れるかどうかによって手続きの方法が異なります。ここでは、精神病の配偶者と離婚するときの手段について、下記の2つのケースに分けて解説します。
- 夫婦で離婚の合意が取れる場合
- 夫婦で離婚の合意が取れない場合
夫婦で離婚の合意が取れる場合
配偶者に精神病があるかどうかにかかわらず、夫婦ともに離婚の合意を取れれば、離婚は可能です。このように夫婦間で協議を行って成立する離婚を協議離婚といいます。協議離婚では明確な理由がなくても、離婚届を提出して受理されれば、離婚が成立します。
たとえば、精神病の夫を献身的に看病していた妻が自身の体調を崩したことを理由に離婚を申し出たとしても、夫が合意すれば離婚が成立します。夫婦間で話し合える状態であれば、協議離婚が選択肢の1つとなるでしょう。
夫婦で離婚の合意が取れない場合
夫婦で協議をしても離婚の合意が取れない場合や、相手が話し合いに応じない場合は、調停により離婚の成立を目指します。さらに調停で審判が確定しない場合は、離婚訴訟へと進みます。
離婚訴訟で離婚が成立するには、法定離婚事由が必要です。民法770条には、法定離婚事由として以下の5つが定められています。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
出典:民法 | e-GOV法令検索 精神病の配偶者の症状が回復する見込みがなく、献身的に看病したにもかかわらず夫婦関係の継続が困難であると判断された場合は、離婚できる可能性があります。
ただし、裁判では精神病を患っている配偶者が、離婚したあとも療養生活が送れるかどうかという点が重視されるため、強度の精神病を離婚原因とすることは実際には簡単ではありません。
精神病にかかっていることにより夫婦として同居・協力扶助が難しい状態だと立証できれば、5の「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められる可能性はあります。
精神病で離婚が認められる基準は
配偶者の精神病が離婚原因だと主張するためには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、精神病が離婚原因と判断される基準について、下記の4つを解説します。
- 医学的な見解
- 夫婦関係に与える影響
- これまでの経緯
- 離婚後の生活
医学的な見解
配偶者に精神病が疑われる場合は、医学的な見解として医師が精神病の内容や程度の判断を行い、見解を示す必要があります。
民法の精神病としては、統合失調症・適応障害・うつ病などが挙げられます。これらの病気にかかり、医学的な判断で回復の見込みがないという程度に達しているかどうかが重要です。
なお、精神病に近い症例としてアルコール依存症やノイローゼ、薬物中毒などがありますが、回復不可能な強度の精神病としては認められにくいため注意が必要です。
夫婦関係に与える影響
精神病が離婚原因と判断されるかどうかは、夫婦関係に影響を与えるかという点も判断基準となり得ます。配偶者の精神病が夫婦関係を破綻させるほどの状態でなければ、離婚は認められにくいでしょう。
たとえば、夫婦としての最低限のつながりも失われてしまうほどに精神病の程度がひどく、対処方法も見つからないといえる状況であれば、離婚が認められる可能性があると考えて差し支えありません。
これまでの経緯
精神病を理由として離婚が認められるためには、これまでの経緯が重要です。精神病を患っている本人が病院で診療を受けており、配偶者の症状がどのように継続し、治療していたか、家族は献身的に協力していたかにより状況が異なるためです。
たとえば、精神病の配偶者の看病をして療養生活を支えてきたけれど、回復しない状態が長期化し、もう限界だと判断される状況に該当する場合は裁判で離婚が認められる可能性があります。
離婚後の生活
精神病を患ったまま離婚して、配偶者の生活が成り立たない恐れがあるなど事情によって、裁判所は離婚を認めないことも考えられます。
そのため、離婚後も一定額の生活費などの費用を払うことや、精神疾患の治療を目的とした施設に入居させるなどの準備をしておくことをおすすめします。離婚後、配偶者の生活が困窮せず、治療を受けられる状態を整えるためにサポートしましょう。
精神病を理由とした離婚が認められなかったとき
離婚訴訟で回復の見込みがない精神病と認められない場合でも、別の法定離婚事由があれば離婚できる可能性があります。
たとえば、不貞行為・DV・モラハラなどが挙げられます。万が一、精神疾患を患ってから配偶者がモラハラを行うようになった、暴力を振るうようになったなどがあれば、証拠を集めておくことも重要です。
精神病が離婚原因として認められない場合でも、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」という法定離婚事由(民法770条1項5号)に当てはまることが考えられるためです。
精神病の配偶者が離婚を自己判断できないとき
精神疾患の症状が重く、配偶者が離婚を自己判断できないときもあるでしょう。意思能力がない配偶者を相手に、調停離婚や訴訟は提起できません。その場合は、親族などを成年後見人としてつける必要があります。
たとえば、うつ病や統合失調症の症状が重篤であった場合、本人が判断能力できる状態ではない可能性があります。判断能力がない状態では離婚の交渉などを進められないため、成年後見人を選任するために家庭裁判所へ申立てを行います。
成年後見人は、判断能力を失った方の財産管理などを行う人物です。親族が候補者になるケースが多いでしょう。一方、離婚をする配偶者本人が後見人を務めることはできません。裁判所に適切な人物を選定してもらい、離婚の協議を進めましょう。
まとめ
本記事では、離婚問題に詳しい弁護士が、精神病の配偶者と離婚するときの手順や判断基準について、詳しく解説しました。
精神疾患のある配偶者を支え、治療のサポートをしてきても報われないと感じ、夫婦関係が破綻してしまうことは珍しくありません。夫婦で離婚に合意していれば、協議で離婚の手続きを進められますが、そうでない場合は早めに行動していくことが大切です。
自分だけでは離婚の手続きを進めるのが難しいと感じたときには、離婚問題の解決実績を持つ弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。