接近禁止命令とは?申し立て方法や条件、注意点など詳しく解説
2024年09月19日
「接近禁止命令」という言葉を聞いたことがありますか?
配偶者からの暴力やストーカー行為など、身の危険を感じている方にとって、この制度は強力な味方になるかもしれません。
この記事では、接近禁止命令について、申し立て方法や条件、注意点などを詳しく解説していきます。
接近禁止命令とは?
接近禁止命令とは、裁判所が、暴力を振るったり、つきまとったりする相手(加害者)に対して、被害者身辺への付きまといや被害者の住宅・勤務先・常在している周辺を徘徊することを禁止する命令です。
これにより、被害者は加害者から身を守り、安心して生活を送ることができるようになります。
接近禁止令の目的と効果
接近禁止命令の目的は、被害者を加害者からの更なる被害から保護し、安全を確保することです。
命令に違反した場合、加害者は刑事罰の対象となるため、接近禁止命令には、加害者に対する抑止効果も期待できます。
離婚時の接近禁止命令の役割
離婚時に、相手方からの嫌がらせや暴力などが懸念される場合、接近禁止命令は有効な手段となります。
離婚協議中や離婚後も、被害者の安全を確保し、安心して生活を送れるようにするための措置として活用できます。
接近禁止命令の申し立てが可能な対象者
申し立てが可能な対象者は、一般的に配偶者や元配偶者、事実婚、同棲関係にある相手方とされています。
これは、配偶者や元配偶者との間には、特有の親密な関係があり、その関係の中で暴力や脅迫が発生しやすいという社会的な背景を考慮しているためです。
接近禁止命令を申し立てできるケース
具体的に申し立てができるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
・配偶者からの身体的暴力:殴る、蹴る、髪を引っ張るなど、直接的な身体への攻撃
・配偶者からの精神的な暴力:暴言、侮辱、脅迫、無視など、精神的な苦痛を与える行為
・配偶者からの経済的な暴力:お金を渡さない、経済的な行動を制限するなど、経済的な自立を妨げる行為
・元配偶者からのストーカー行為:つきまとい、待ち伏せ、SNSでの誹謗中傷など、執拗な行為
・同居人からの暴力や脅迫:同居している家族や親族などからの暴力や脅迫
上記の他にも、以下のようなケースも考えられます。
・妊娠中の女性に対する暴行や脅迫
・子どもに対する虐待
・性的暴行
接近禁止令の申立て方法
申立書の作成と提出
接近禁止命令の申し立てを行うには、地方裁判所へ「接近禁止命令申立書」を提出する必要があります。申立書には、被害者と加害者の氏名や住所、関係性、具体的な被害状況、接近禁止を求める内容などを記載します。
必要な証拠と証言
接近禁止命令の申し立てには、DVやストーキングなどの被害を裏付ける証拠が必要となります。証拠としては、診断書、写真、ビデオ、メールの履歴、被害者の証言などが挙げられます。
電話等禁止命令の申立て
接近禁止命令には、電話やメール、SNSなどによる連絡を禁止する「電話等禁止命令」も含まれます。加害者からの執拗な連絡に悩まされている場合、電話等禁止命令の申立ても検討しましょう。
弁護士への相談とサポート
接近禁止命令の申し立て手続きは複雑で、専門的な知識も必要となるため、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、申し立て手続きのサポートだけでなく、証拠収集や被害状況の整理、加害者との交渉など、様々な面からサポートしてくれます。
申立ての条件と禁止事項
被害者と加害者の関係性
接近禁止命令は、配偶者や恋人、元恋人など、親密な関係にあった者間で発生したDVやストーキング行為が対象となります。
友人や職場関係者など、親密な関係とは言えない場合、接近禁止命令の申し立ては認められないケースがあります。
身体的暴力や精神的暴力の証明
先にも述べましたが、接近禁止命令の申し立てには、身体的暴力や精神的暴力など、DVやストーキング行為があったことを証明する必要があります。
保護命令の範囲と期間
接近禁止命令の保護対象は、被害者本人だけでなく、被害者と同居する家族も含まれます。命令の有効期間は、原則として1年ですが、状況に応じて延長が認められる場合もあります。
禁止命令の具体的な内容
接近禁止命令では、加害者に対し、被害者への接近や接触を禁止する具体的な内容が定められます。
禁止行為の範囲は、被害状況や加害者の行動パターンなどを考慮して決定されます。
接近禁止命令を延長するには?
接近禁止命令の有効期限が切れる前に、引き続き保護が必要と判断される場合は、延長の手続きが必要になります。
延長が必要となるケース
以下のような場合、延長となる可能性があります。
・加害者の態度が改まっていないく、依然として脅迫や嫌がらせなどの行為が続いている場合
・新たな暴力行為が発生したり、期間中に再び暴力行為を受けてたりしている場合
・精神的に不安定で、再び被害に遭う恐れがある場合
延長の手続き
延長の手続きは、新たな事件として取り扱うため、一度発令された命令の延長手続きというわけではありません。そのため、再度、裁判所に申し立てを行う必要があります。
接近禁止命令発令後の注意点
接近禁止命令が発令された後も、安心しきらず、以下の点に注意することが重要です。
命令違反の対処法
接近禁止命令が発令された後、加害者が命令に違反した場合、速やかに警察に通報する必要があります。警察は、状況に応じて、加害者に対する逮捕などの措置を取ります。
加害者の行動の監視
接近禁止命令が発令されても、加害者が再び危害を加えてくる可能性はゼロではありません。被害者自身も、加害者の行動に注意し、身の安全を確保する必要があります。
防止策と自己防衛
住居の防犯対策を強化しましょう。鍵の交換、防犯カメラの設置などが考えられます。
また出かける際は、誰かと一緒に行ったり、人通りが少ないところへはなるべく近づかないなど、注意を払いましょう。 防犯ブザーを持ち歩く、自己防衛術を学ぶなどの対策も有効です。
接近禁止命令を取り消す方法
接近禁止命令は、被害者を保護するための重要な制度ですが、状況が変化した場合には、命令の取り消しを検討することも考えられます。
接近禁止命令を取り消すためには、裁判所に申し立てを行う必要があります。
申し立てができるのは誰?
・申立人(命令を出した人):状況が改善されたと判断した場合、自ら申し立てを行うことができます。
・相手方(命令を出された人): 一定の条件を満たす場合に、申し立てを行うことができます。
相手方(命令を出された人)が申し立てを行う場合、以下の2つの条件を満たす必要があります。
・申立人(命令を出した人)の同意があること
・保護命令の効力が生じた日から3ヶ月が経過していること
取り消しを検討する際の注意点
状況が十分に改善されていない状態で取り消してしまうと、再び被害に遭う可能性がありますので、安易な判断は避け、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に手続きを進めましょう。
また再発防止策や、何かあった場合、自分の安全を確保するための対策を講じるなど、取り消し後も、自分の安全を最優先に考えましょう。
まとめ
接近禁止命令は、配偶者や元配偶者からの暴力や脅迫から身を守るための重要な制度です。
もし、あなた自身が被害に遭っていると感じたら、一人で悩まずに、弁護士や警察、婦人相談所などに相談することをおすすめします。