離婚でシングルマザーになると抱える悩みと支援制度・手当・控除を解説
最終更新日: 2023年11月29日
- 夫との離婚が成立しそうだけれど、離婚後の生活に不安がある
- シングルマザーになった場合、生活を支援するための公的な助成制度はあるだろうか?
- 離婚を話し合うときに相手に請求すべき離婚給付を知りたい
夫婦が離婚を前向きに話し合っていても、子ども連れでシングルマザーとなる人は、離婚後の経済面に不安を抱くこともあるでしょう。
このため、公的な機関ではシングルマザー等を対象に、様々な支援策を用意しています。前もって、シングルマザーが利用できる手当・助成制度や控除制度を確認しておきましょう。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、シングルマザーを助けてくれる支援制度、離婚の協議のとき取り決めておくべき離婚給付等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 離婚後、シングルマザーは収入が少なくなり生活に困窮する可能性がある
- シングルマザーは自立支援給付金制度等を利用して自立のための支援を受けられる
- 離婚後の安定した生活のために、相手に財産分与や養育費等の請求を行う
離婚してシングルマザーになると抱える悩み
離婚後、母親が親権者となり未成年の子どもと生活する場合、厚生労働省の調査によれば母親の就労収入は平均で年間236万円になるとされています。
シングルマザーの同居親族(親や兄弟等)の収入を含めた世帯の平均年間収入は373万円となっています。
一方、父子世帯では平均年間収入606万円であり、また国民生活基礎調査によれば日本の全世帯の平均年間所得は564万円となっており、これらと比較すると母子世帯は非常に低い年収です。
ただし、母親と子どもだけで生活する場合でも、児童扶養手当等の社会保障給付金を受給すれば就労収入に36万円上乗せされ、母親の平均年間収入は272万円となります。
シングルマザーになるときは、公的な支援制度の利用を検討しましょう。
出典:2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況 | 厚生労働省
出典:16 ひとり親世帯の令和2年の年間収入 令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 | 厚生労働省
離婚したシングルマザーを助けてくれる制度
シングルマザーも、早く安定した収入を得て自立できれば、将来の生活資金の不安が軽減できます。
厚生労働省は地方自治体と協力して、シングルマザー等の支援策として「自立支援教育訓練給付金」制度を設けています。
シングルマザー等が対象教育訓練を受講して修了した場合に、その経費の60%が支給されます。支給額の上限・下限は次の通りです。
- 雇用保険の一般教育訓練給付または特定一般教育訓練給付の対象となる講座を受講した場合:最大20万円(下限1万2,001円)
- 雇用保険の専門実践教育訓練給付の対象となる講座を受講した場合:修学年数×40万円、最大160万円(下限1万2,001円)
なお、本制度を利用するためには、以下の条件に全て合致する必要があります。
- 母子家庭の母または父子家庭の父である
- 現に児童(20歳未満)を扶養している
- 児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある
- 当該教育訓練が適職に就くため必要
給付金の支給については、受講前に都道府県等から講座の指定を受ける必要があります。必ず事前に居住地の市(町村在住の方は都道府県)窓口へ相談しましょう。
離婚後のシングルマザーが利用できる主な手当
シングルマザー等のために、自立支援教育訓練給付金以外にも様々な支援策が用意されています。
こちらでは、シングルマザーが利用できる手当・助成制度について解説します。
児童扶養手当
シングルマザー等になったときに手当が支給される制度です。
次の児童がいる世帯が対象です。
- 18歳に達した日以降の最初の3月31日までの間にある児童
- 20歳未満で一定の障害の状態にある人
所得に応じて支給月額が決定されます。児童1人の場合は全部支給が44,140円、一部支給が44,130円〜10,410円となっています。
申請するときは、居住地の市区町村役場に、申請書と、発行から1か月以内の戸籍謄本(申請者と児童を記載)、本人確認書類(マイナンバーカード等)、預金通帳、印鑑等を準備し、手続きを行います。
児童育成手当
児童育成手当は児童の福祉の増進を図るため、各地方自治体が設けている制度です。
18歳に到達した年度末までの児童を養育しており、所得制限に該当し、父母が婚姻解消した場合等に利用できる手当です。
児童1人につき月額1万3,500円が支給されます。
申請するときは、居住地の市区町村役場に申請書と、発行から1か月以内の戸籍謄本(申請者と児童を記載)、本人確認書類(マイナンバーカード等)、預金通帳等を準備し、手続きを行います。
児童手当
中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している人に支給される手当です。
児童1人あたり月額、3歳未満一律1万5,000円、3歳〜小学校修了前1万円〜、中学生月額一律1万円が支給されます。
請求するときは、居住地の市区町村役場に認定請求書と 、請求者の健康保険被保険者証、本人確認書類(マイナンバーカード等)、預金通帳等を準備し、手続きを行います。
住宅手当
市区町村では、シングルマザー等の家庭を対象とした住宅手当も用意しています。手当の支給月額は市区町村ごとに異なり、3,500円〜1万5,000円程度です。
支給は、20歳未満の児童がいる、民間賃貸住宅を賃借している、所得制限限度額未満である等が条件です。
申請するときは、居住地の市区町村役場に申請書と、借家賃貸借契約書の写し、本人確認書類、預金通帳等を準備し、手続きを行います。
医療費助成制度
市区町村には、シングルマザー等の家庭に対し、医療費の全部または一部を助成し、経済的負担の軽減を図る制度があります。
次の児童がいる世帯が対象です。
- 18歳に達した年度末までの児童
- 20歳未満で一定の障害の状態にある人
医療費を助成してもらえる「ひとり親家庭等医療証」の交付を受けるためには、交付申請書と、発行から1か月以内の戸籍謄本(申請者と児童を記載)、本人確認書類(マイナンバーカード等)、申請者と児童の健康保険証等を持参し、手続きを行います。
離婚後のシングルマザーが受けられる主な控除
シングルマザー等になった場合は、税金や保険料負担を軽減できるいろいろな控除制度が利用できます。
ひとり親控除
納税者がシングルマザー等であるときは、35万円の所得控除を受けられます。
本控除制度を利用する場合は、次の条件に該当する必要があります。
- 原則としてその年の12月31日の現況で婚姻していない
- 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
- 生計を一にする子がいる(子の総所得金額等が48万円以下であり、他の人の扶養親族等になっていない)
- 合計所得金額が500万円以下
ひとり親控除を利用する場合、シングルマザーが給与所得者なら勤務先の年末調整で、自営業・フリーランスなら確定申告で、手続きを行いましょう。
出典:ひとり親控除 | 国税庁
国民年金免除
シングルマザーだからといってすぐに国民年金が免除されるわけではありません。
しかし、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度を利用できる可能性があります。
本制度が適用されると、毎月の納付額は次の通り減額されます(2023年度の場合)。
- 全額免除:0円
- 4分の3免除:4,130円
- 半額免除:8,260円
- 4分の1免除:1万2,390円
- 納付猶予制度:1万6,520円(減額なし)、納付猶予のみ
申請する場合は、国民年金免除・納付猶予申請書と、基礎年金番号通知書のコピー、前年(または前々年)所得を証明する書類等を準備し、近くの年金事務所等に提出しましょう。
出典:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度 | 日本年金機構
保育料
シングルマザーとそれ以外の世帯も、保育料が無料となる可能性があります。
幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3〜5歳児クラスは無料で、0〜2歳児クラスは住民税非課税世帯は無料となります。
ただし、幼稚園の預かり保育や企業主導型保育事業、認可外保育施設等では無償となる範囲が異なります。
事前に保育料がどうなるか、市区町村や対象施設等に確認してみましょう。
離婚時にシングルマザーが相手に請求すべきこと
いろいろな手当・助成制度や控除制度の利用は大切ですが、離婚するときに請求する離婚給付や養育費についても取り決めておきましょう。
こちらでは養育費、財産分与、慰謝料の3つを説明します。
養育費
養育費は、未成年の子どもが自立するまで、親権がない親が支払う費用です。
支払期間は夫婦で自由に取り決めることができます。養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決めましょう。
事例をあげて養育費が毎月どれくらいになるか算定します。
- 養育費を支払う側:夫(会社員、年収850万円)
- 受け取る側(子どもの親権者):妻(パート店員、年収120万円)
- 子ども(1人):11歳
→算定表を参考にすると約9万3,000円
事例では毎月約9万3,000円の支払いが目安となります。
財産分与
財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して得た現金や自家用車、住居、家財道具等を分配する方法です。
夫婦間でどのように分けるのかを協議します。一般的には財産は夫婦で1/2ずつ分けます。
しかし、専業主婦がシングルマザーとなり就職活動を行う間、生活に困窮する可能性があるときは、多めに現金を分配するよう相手へ請求してもよいです。
慰謝料
夫が離婚の原因をつくったときは、妻からの慰謝料の請求が可能です。
ただし、夫が慰謝料請求を拒否する場合や、金額の面で揉めて、離婚協議の話がまとまらなければ、調停離婚や裁判離婚に進む場合もあります。
裁判離婚で慰謝料を決めるためには、相手が離婚の原因をつくった確実な証拠が必要です。
たとえば、夫のDVのときは医師の診断書や受診歴等、浮気であれば浮気相手との不貞行為(肉体関係)の証拠を提出しなければ、妥当な慰謝料を期待できない可能性があります。
離婚に詳しい弁護士と相談して不安を払拭
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、シングルマザーが利用できる支援制度等について詳しく解説しました。
様々な支援制度の活用に加え、相手に養育費や財産分与、慰謝料を請求できれば、安定した生活の維持に役立ちます。
離婚後の生活に不安を感じるときは、まず弁護士と相談し、有益なアドバイスを受けましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。