ストーカー事件の裁判例を解説!問われる罪・争点・すべきことも詳しく紹介
最終更新日: 2023年09月13日
- ストーカー事件に関し、裁判所はどのような判決を言い渡しているのか気になる
- ストーカー事件の裁判で問われる罪にはどのようなものがあるのか知りたい
- ストーカー裁判で主な争点となる内容について知りたい
ストーカー行為とは、特定の人に対する好意の感情または怨念の感情を抱き、つきまといやまちぶせ、押しかけや無言電話等を繰り返す行為です。
ストーカー行為をして有罪になれば、懲役刑または罰金刑となる可能性があります。
ストーカー行為に関する裁判でどのような点が争われているのか、気になる方は多いでしょう。
そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、ストーカー事件の裁判事例、ストーカー裁判の争点となり得る内容等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- ストーカー行為をして有罪になれば、最長2年以下の懲役刑を受ける可能性がある
- ストーカー行為と認められるには、反復したつきまとい等が必要
- ストーカー行為で有罪になっても、弁護士の働きで執行猶予付き判決となる可能性がある
ストーカー事件の裁判事例
ストーカー行為で検察官から起訴された刑事裁判では、有罪・無罪どちらの判決事例も存在します。
こちらでは、無罪判決・上告棄却・有罪判決(懲役一年)の事例を取り上げます。
無罪判決の例
元交際相手の女性の車に全地球測位システム(GPS)機器を取り付けた行為が、ストーカー規制法違反に当たらず、無罪判決が言い渡された事例です(佐賀地方裁判所令和4年2月17日判決)。
あくまでGPSの取り付けは、女性の動静を観察するための準備行為であり、通常所在する場所への押し掛けでもなければ、見張りにも当たらないと判示されています。
しかし、2023年に改正「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が施行され、全地球測位システム(GPS)機器を取り付ける行為も、ストーカー行為に該当すると明記されました。
上告棄却決定の例
ストーカー規制法の合憲性が争われた事例です(最高裁判所第一小法廷平成15年12月11日判決)。ストーカー規制法が違憲であるという主張を、次の理由で上告を棄却しています。
上告した弁護人は、同法律は規制の範囲が広く、規制の手段も相当ではなく、憲法第13条および第21条1項に違反するという主張に対し、規制の程度は適正であり、さらに法定刑の程度も他の刑罰と比較し過酷ではないと判示しました。
また、裁判所は同法第2条2項の「反復して」の文言に関して、つきまとい等を行った期間や回数等に照らし、おのずから明らかとなるものなので不明確であるとはいえない、と判示しました。
懲役一年の例
被告人(加害者)が被害者を待ち伏せたり、居宅内に上がり込んだり、連続して電話をかけ続けたりして、ストーカー行為を行い、懲役1年の刑となった事例です(名古屋地方裁判所平成13年9月6日判決)。
裁判所は、被告人が元交際相手である被害者の自宅へ2度にわたり押し掛けて待ち伏せ、被害者宅の電話や携帯電話へ合計26回も執拗に電話をかける等、犯行態様は執拗かつ常習的で悪質である、と判示しました。
ストーカー事件の裁判で問われる罪
ストーカーの加害者が、公安委員会から禁止命令等を受けていたかどうかでも、懲役刑や罰金の重さが違ってきます。
出典:ストーカー行為等の規制等に関する法律 | e-Gov法令検索
一年以下の懲役又は百万円以下の罰金
ストーカー行為をした者は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます(同法第18条)。
懲役刑を受けても、罰金刑を受けても、やはり「前科」は付いてしまうので注意が必要です。
前科とは、過去に刑罰(執行猶予含む)を受けた経歴です。前科が付くと、就職活動等に不利となったり、再び犯罪を行った場合に重い罪となったりするおそれがあります。
二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金
すでに加害者が公安委員から、つきまとい等またはGPSによる位置情報無承諾取得等の禁止命令を受けていたにもかかわらず、ストーカー行為をした場合は、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に処されます(同法第19条)。
禁止命令に違反するような悪質なケースでは、同法第18条で規定された懲役刑・罰金刑の2倍ものペナルティを科せられる可能性があります。
六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金
つきまとい等またはGPSによる位置情報無承諾取得等の禁止命令に違反した場合、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処されます(同法第20条)。
同法第18条・19条より刑罰は軽微ですが、それでも「前科」は付いてしまいます。
ストーカー裁判の主な争点
ストーカー裁判では、つきまとい等が何度も行われたかでストーカー規制法違反になるか否かを判断し、禁止命令等を無視したのかどうかで刑罰の重さが決まります。
反復してつきまとい行為が見られるか
「つきまとい等を〇回すればストーカー行為に該当する」とは、法律で明記されていません。
しかし、被害者がやめるように伝えても、加害者が何十回もつきまとい等を行えば、裁判所はストーカー規制法違反と判断します。
実際に「名古屋地方裁判所平成13年9月6日判決」では、被害者の自宅へ2度にわたり押し掛け、携帯電話等へ合計26回も執拗に電話をかける行為は、執拗かつ常習的で悪質であると判示しています。
禁止命令等に違反しているか
被害者が警察にストーカー被害を申告した場合、原則として警察が加害者を呼び出し「警告」します。
警告後もストーカー行為をやめないなら、今度は公安委員会から「禁止命令」を受けます。
禁止命令とは、
- つきまとい等または位置情報無承諾取得等があった
- 当該行為をした加害者が、更に反復して当該行為をするおそれがある
という場合、被害者の申し出や公安委員会の職権で、加害者に、更に反復して当該行為をしてはならないと命じる措置です(同法第5条)。
この措置を無視し、ストーカー行為を繰り返した場合は、悪質性が高いと判断され、最長2年の懲役刑か最高200万円の罰金刑を科せられてしまいます。
出典:ストーカー行為等の規制等に関する法律 | e-Gov法令検索
ストーカー事件の裁判に備えてすべきこと
検察官に起訴され刑事裁判が開かれた場合、日本では99%の確率で有罪になるといわれています。
そのため刑事裁判に備え、なるべく逮捕前に実績豊富な弁護士へ弁護を依頼し、執行猶予判決付き判決や減刑を目指しましょう。
実績豊富な弁護士の選び方
刑事裁判に関して経験豊かな弁護士を選ぶ場合は、法律事務所のホームページをチェックしましょう。
そのホームページに、「刑事裁判に関する実績が明記されている」「ストーカー犯罪をはじめとした刑事裁判の話題が豊富に掲載されている」ならば、刑事裁判を得意とする法律事務所と言えます。
自分のニーズに合った法律事務所を見つけたら、実際に事務所を訪問し、弁護士と相談する機会をつくりましょう。
相談者の悩みを親身になって聴き、刑事裁判の流れや、今後の対応をわかりやすく説明する弁護士なら、安心して弁護を依頼できます。
なお、本人が依頼する前に逮捕されてしまったら、逮捕の一報を聴いた家族等がなるべく早く、弁護士に弁護を依頼しましょう。
弁護士に示談交渉を任せる
弁護士に示談交渉を任せ、被害者へ何とか示談に応じるよう働きかければ、話し合いに応じる可能性があります。
ただし、被害者との示談が成立してもストーカー犯罪は非親告罪なので、検察官が起訴する可能性はあります。
そうであっても、被害者とすでに示談が成立しているならば、刑事裁判が開かれたとき、裁判所がその事情を考慮し、執行猶予付き判決を言い渡す可能性があります。
執行猶予付き判決とは、たとえ有罪判決になっても刑罰の執行を待ってもらえる判決です。たとえば、懲役刑を受けても執行猶予期間中は刑務所に収容されず自宅へ戻れます。
日常生活を送りつつ、他の刑事事件を起こさずに、無事猶予期間が経過すれば、刑は執行されません。
まとめ
今回は多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、ストーカー事件の裁判事例や科される刑罰、弁護士を立てる必要性等について詳しく解説しました。
刑事事件に関して経験豊富な弁護士に依頼すれば、被害者との示談が成功する可能性は高くなり、不起訴処分も期待できます。
もし、起訴されて刑事裁判に進んだとしても、決して弁護士は諦めません。執行猶予付き判決や減刑を得るため、最大限努力します。
ストーカー規制法で逮捕されたら、速やかに弁護士へ相談し、最善の対応を検討してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。