下請法を専門弁護士が徹底解説!対象業務・リスク・押さえるべきポイントを詳しく紹介
最終更新日: 2024年01月31日
- わが社は規模が大きくなり、下請け企業等に製造や修理の委託を検討している。そのときの注意点について知りたい。
- 取引の発注のときに特に注意しなければならない法律はあるのだろうか?
- 取引の受発注でトラブルが起きた場合、弁護士へ相談すれば弁護士はどのような対応が可能なのだろう?
自社が下請け企業や個人事業主に製造や修理、コンテンツ制作等を委託したい場合「下請法」に注意が必要です。
下請法は受注者(下請事業者)を守るための法律です。受注者が不利益を被らないよう、公正取引委員会は常に目を光らせています。
発注者である自分の会社(親事業者)が同法に違反した場合は、公正取引委員会から指導や勧告を受け、さらに刑事罰を受ける可能性もあります。
そこで今回は、企業の受発注のトラブルに対応してきた専門弁護士が、下請法の対象となる業務、リスク・押さえるべきポイント等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 下請法では適用対象となる取引の種類、発注者の義務、禁止行為、罰則が規定されている
- 発注者は受注者とトラブルにならないよう、発注書の記載、支払期日設定、取引記録の保存等を徹底する
- 取引の受発注でトラブルが起きたときは、弁護士と相談し対応を協議する
下請法を弁護士が解説
発注者(親事業者)は頼りになる受注者(下請事業者)を見つけたら、どのような業務でも委託してよいわけではありません。
また、受注者に不利益を押し付けるような取引も規制されます。
ここでは、「下請法」の特徴と同法が適用される条件について説明します。
下請法とは
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」です。
「下請代金の支払遅延等を防止することによつて、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与する」目的で制定された法律です(下請法第1条)。
下請法では受注者を保護するために、適用対象となる取引の種類や発注者の義務、禁止行為、罰則が法定されています。
受注者が法律を守らなければ、行政からの指導勧告の他、50万円以下の罰金に処される可能性もあります(下請法第10条、第11条、第12条)。
適用条件
下請法の適用対象となるのは、製造委託等が次の2つのケースのいずれかに合致した場合です。
ケース/種類 | 製造委託・修理委託 | 情報成果物作成委託・役務提供委託 |
ケース1 | ・発注者(親事業者) →資本金3億円以上 ・受注者(下請事業者) →資本金3億円以下 (個人含む) | ・発注者(親事業者) →資本金5,000万円以上 ・受注者(下請事業者) →資本金5,000万円以下 (個人含む) |
ケース2 | ・発注者(親事業者) →資本金1,000万円~3億円 ・受注者(下請事業者) →資本金1,000万円以下 (個人含む) | ・発注者(親事業者) →資本金1,000万円~5,000万円 ・受注者(下請事業者) →資本金1,000万円以下 (個人含む) |
下請法の対象となる業務を弁護士が紹介
下請法の対象となる取引は、大きく分け4つに分類されています。それぞれの業務内容について説明しましょう。
役務提供委託
運送やメンテナンス、情報処理、倉庫保管、顧客向けサービス等を委託する取引です。建設業者の建設工事は適用外です。
たとえば、役務提供サービスを行う事業者が、そのサービスの一部または全部を、他の事業者へ発注するケースが該当します。
製造委託
物品の製造販売を行っている企業、製造を委託されている企業が、品質や規格、ブランド、デザイン等を定め、他の企業や個人事業主に製造加工等を任せる取引です。
たとえば、次のようなケースが該当します。
- 大手食品メーカーが食品加工業者に自社ブランドの食品の製造を依頼
- 大手精密機器メーカーが町の部品メーカーに部品製造を依頼
- 自社で使用する工具を社内で製造している工作機械メーカーが町の工作機械メーカーに製造を依頼
修理委託
使用中の物品を企業内で修理している場合に他の企業へ修理対応を任せたり、物品の修理を受注した企業が他の企業へ修理対応を任せたりする取引です。
たとえば、次のようなケースが該当します。
・自社の工場設備を社内で修理している工作機械メーカーが、町の修理業者に対し修理対応を依頼
・自動車販売業者が町の修理業者に修理依頼
情報成果物作成委託
映像コンテンツやプログラム等の提供作成を自ら実施あるいは受注する企業が、他の企業や個人事業主に作成を任せる取引です。
たとえば、次のようなケースが該当します。
- 大手ソフトウェアメーカーが新進気鋭のソフトウェアメーカーにアプリケーションソフトの開発を依頼
- 大手ソフトウェアメーカーが新進気鋭のソフトウェアメーカーに自社用経理ソフトの作成を依頼
- 大手広告会社がCM制作会社にCM制作を依頼
下請法のリスクを弁護士が解説
発注者(親事業者)は取引を行うときに以下の行為をしてはいけません。
- 受注者の責任ではないのに、発注した物品等の受領拒否や発注を取り消し返品
- 下請代金の減額や下請代金の支払い遅延
- 買い叩き:通常よりも非常に低い下請代金を設定
- 報復措置:受注者の違反行為の通知に対し、取引をやめる等の方法で仕返しする行為
- 物の購入や役務の利用を強制
- 有償支給した原材料等の対価を早期決済する行為
- 割引困難な手形の交付
- 不当な給付内容の変更・やり直し:発注内容を変更しても作業費用を負担しない等
- 不当な経済上の利益の提供を要請:受注者に金銭やサービス等を不当に提供させる行為
上記の違反行為をした場合、または違反の恐れがある場合、公正取引委員会は指導・勧告を行います。
基本的に、勧告を受けると企業名が公表されます。書面の交付義務・保存義務を守らないときは、50万円以下の罰金に処されます。
下請法対応で親事業者が押さえるべき5つのポイント
発注者(親事業者)は、受注者(下請事業者)に不利益を与えない、そして自らは公正取引委員会から指導・勧告・ペナルティを受けないために押さえておくべきポイントがあります。
発注書への記載
まずは発注確定前に見積もり依頼をしましょう。そのとき、商品・数量・納品日・支払条件等の希望もしっかり伝えます。
相手の提示した見積もり内容に問題がなければ、発注書を作成し、交付します。
発注書には全ての発注内容を具体的に明記し、
発注者・受注者の氏名、下請代金の支払期日、下請代金の金額等を記載して必ず交付しなければいけません。
受注者と継続して取引する可能性が高い場合は単価・納期・支払締日・支払条件・支払方法等を定めた購買契約も締結した方がよいでしょう。
そのような本契約があれば取引の都度、条件を指定・確認する必要がなくなります。
支払期日設定
発注者は受注者と事前に合意の上で、支払期日を設定しなければなりません。
なぜなら、支払い期日が発注者の都合で遅延したり変更されたりすると、受注者の経営が不安定になるためです。
支払いに関しては、取引ごとに支払ケースと、一定期間の取引をまとめて支払うケースがあります。
請求期間の締日・支払期日・支払方法は、受注者の同意を得たうえで取り決めましょう。
取引記録の保存
発注者は取引記録を2年間保存しなければなりません。
この措置は発注者の違反行為を防ぐ等の目的で設定されたもので、発注者は下請代金の金額をはじめ、取引記録を書類として作成し、しっかりと保存する義務があります。
保存する義務があるのは、具体的に次の事項を明記した書類です。
- 発注内容、納期に関する事項
- 実際の納品日、検査結果、やり直しの理由等
- 実際に支払った下請代金の金額・支払日、発注書に明記された下請代金の金額に変更があった場合は増減額・理由等
- 実際の支払方法、遅延利息の金額等
遅延した場合
もしも発注者が支払期日までに代金を払えなかった場合は、受注者に対して遅延利息を支払う必要があります。
遅延利息は、受注者が給付を受領した日より60日を経過した日から実際に代金が支払われる日までの期間について、未払金額に年率14.6%を乗じた金額です。
弁護士への相談
発注者が下請法に違反すると、受注者側との信頼関係が崩壊するとともに、企業名が公表され、社会的な信用にも大きな影響が出ます。
このような事態が起こらないように、下請法の判断に迷ったときや、同法に違反してしまうか心配なときは、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
しかし、弁護士であれば誰でもよいわけではありません。
公正取引委員会への対応、他社との委託取引のトラブル対応に実績のある弁護士を選びましょう。
下請法に精通した弁護士を選ぶときのコツは、次の通りです。
- 法律事務所のホームページに下請法に関する相談実績や相談事例、コラム等が豊富に掲載されている
- 委託取引の法的問題に関する著作本を執筆している 等
上記の内容が確認できれば、下請法に精通している人物とみて間違いないでしょう。
下請法問題を弁護士に相談するメリット
委託取引のトラブルに関して弁護士に相談し代理人を依頼すれば、弁護士は的確なアドバイスとサポートをして問題解決に尽力します。
法的な判断
発注者はどのような行為が下請法で禁止されるのか、なかなか判断がつかない場合もあるでしょう。
そのような場合には弁護士が発注者と受注者の契約内容や、取引の種類等を把握し、下請法のどのような規制内容に反するのかを助言します。
弁護士と顧問契約を締結していれば発注書のチェックも任せられるので、後々、受注者側とトラブルになるリスクを軽減できます。
受注者側も弁護士のサポートを受けていれば、発注者の行為が下請法違反に当たるかどうかを確認してもらえます。
確認後は発注者との話し合いを弁護士に任せたり、法的措置を任せたりして、問題の解決が図れます。
差止請求
発注者が下請法違反に当たる取引行為をしていた場合、弁護士が受注者側の代理人として、相手方に不当行為の差止請求を行えます。
受注者は発注者よりも弱い立場にある場合が多いので、受注者が直接差止請求をするのには抵抗があるかもしれません。
しかし、弁護士が代わりに対応すれば、法律に則った理性的な話し合いが可能です。
一方、受注者から指摘を受けた発注者は、こちらも弁護士のサポートを受けているならば、的確な反論を主張できます。
損害賠償請求
発注者が下請法違反に当たる取引行為をしているとすれば、受注者に損害が発生しているケースも想定されます。
損害が発生していた場合、受注者は損害賠償請求を弁護士に任せられます。
まず発注者と受注者の話し合いで解決を図るのが一般的です。和解を図る場合も、弁護士が窓口となり相手方と交渉を行い、損害賠償金の額や支払方法等を取り決めます。
一方、発注者は損害賠償金額が高すぎると感じたときは、弁護士を代理人に立て減額交渉を行えます。
弁護士は発注者側・受注者側のいずれであっても、迅速かつ円滑な解決に尽力します。
円滑な取引
発注者が弁護士と顧問契約を締結していれば、予防法務を強化でき、支障なく円滑な委託取引が可能です。
下請法違反とならないためには、同法に関する社内研修をはじめ、社内体制整備、規程・マニュアル作成が必要です。
顧問弁護士はその場合、役員や担当者への周知徹底を図るサポートができます。
下請法なら当事務所の弁護士にご相談を
今回は下請法に関する問題解決に尽力してきた専門弁護士が、企業の受発注のトラブルや、予防法務で弁護士が果たす役割等を詳しく解説しました。
委託取引で問題が発生すれば発注者と受注者との信頼関係に大きな亀裂が入ってしまいます。できるだけ早く弁護士と相談し、弁護士の手厚いサポートを受けて問題解決を図りましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。