万引き事件の示談について

万引き事件の示談について

2019年12月11日

1 はじめに

万引き事件はその発生件数も多く日常でしばしば遭遇する事件のため、また被害額も少額のことが多いため軽く捉えられがちですが、刑法の窃盗罪にあたる犯罪です。

確かに犯罪の中では軽微な部類に属しますが、繰り返せばいずれ刑務所に入ることになりますし、逮捕されれば職や家族を失う可能性もあります。

今回は、そのような万引き事件における被害店との示談交渉についてご説明いたします。

2 万引き事件における示談とは

示談とは、加害者が示談金をお支払いするなどして被害者側から犯行について許していただく、つまり刑事処罰は求めないという意思表明をしていただくことをいいます。

ですから、商品代金の被害弁償をしたにとどまる場合は、示談をしたとはいえません。あくまで賠償金を支払っただけであり、被害者から許しは得ていません。

3 自分で謝りに行った方が良いのか?

刑事事件においては、加害者本人が適切に示談交渉をすることは難しいことから、弁護士が代わりに示談交渉をすることが通常です。

もっとも、万引き事件の場合、以下の場合には、加害者本人又はその家族が被害店に謝罪や商品代金の弁償に行くことも検討して良いでしょう。

⑴ 初犯で、被害額も1万円以下の場合

この場合、示談が成立していなくとも、微罪処分や起訴猶予となる可能性が高いので、弁護士に依頼する必要性は高くはないでしょう。

⑵ 被害店が大きい会社で、示談を一切受け付けない対応の場合

この場合、仮に弁護士に依頼したとしても示談は困難ですから、示談交渉を弁護士に依頼するのと、加害者本人やその家族が示談交渉をするのとで示談の成否に変わりません。

4 万引き事件の損害賠償の内容

多くの場合、商品は廃棄処分になりますので、万引きをして被害店と示談する場合、その商品代金を支払って損害の賠償をします。

もっとも、保安員を雇っているような大きな会社の場合はともかく、個人経営の書店やコンビニなどの小規模な小売店の場合には、警察への対応を店長が行い、そのためにシフトの変更が必要になって余分な人件費がかかったりと、本来は無用のコストがかかることになります。

そのため、示談の際には、商品代金に加えて迷惑料も加えてお支払いすることが多くあります。もっとも、ある程度の規模のある会社が経営する店舗の場合には、会計処理も煩雑になりますので、商品代金の他に金銭を受け取ることはありません。

なお、万引き事件の被害は被害弁償や、迷惑料の支払いで補填されますので精神的苦痛の賠償である慰謝料というものは損害賠償の内容として考えません。

5 万引きの示談金の相場

前述のとおり、万引き事件の示談金は商品代金の被害弁償が基本です。そのため、被害品がおにぎりやジュースであれば示談金は数百円ですが、被害品がカバンや衣類の場合には数万円になることもあります。
また、迷惑料については多くの場合2,3万円であり、高くても10万円を超えることは通常ありません。

6 万引きの示談交渉でも謝罪文はつくるべきか?

万引き事件も他の犯罪と同じく、被害者への謝罪はするべきでしょう。もっとも、万引きをした加害者側にはお店に来てもらいたくないというのが被害者側の通常の意向ですから、謝罪文という形で謝罪をすることになります。

このような謝罪文を作成したことがないのでどんなことを書けばいいのかわからないという方がほとんどです。そのため、インターネットで書き方を調べる方が多いのですが、そうすると表現も内容も表面的なものになり、逆にそれを読んだ被害者の怒りを増長させてしまうこともあります。

ですから、まずは自分の考えたことを自分なりの言葉で書いてみて、それを弁護士に添削してもらうのが良いです。

1点注意すべきとしては、お金を払うので許して欲しいと言っていると捉えられてしまうような表現は入れないよう気を付けましょう。

7 万引き事件の示談書

万引き事件で、被害店と示談の話がまとまったときは、示談書を作成しましょう。

示談書に入れるべき主な事項は、①支払う示談金の金額と②示談書に記載されていること以外に、加害者と被害者の間に債権債務関係はないことです。
②は要するに、この示談金以外に被害者から請求できる金銭はないということの確認です。

これ以外に被害者側の要望で、入店禁止の誓約を入れたり、窃盗症の治療をすることの誓約を入れたりすることもあります。

弁護士が作成した方が良いですが、インターネット上に転がっているひな形をもとに作成することでも十分です。

8 示談成立後の処分

被害者と示談が成立した後は、どのような処分になるのでしょうか。

⑴ 被害届の取下げ

まず、被害者が被害届の取下げに応じてくれる場合があります。被害届が取下げられたのであれば、それで事件は終了と思われる方が多いのですが、必ずしもそうではありません。

被害届は被害者が万引き事件の存在を警察に申告するものです。そして、警察は犯罪があることを認識したときは捜査する権限があります。ですから、被害届を出して警察が犯罪を認識した以上は、被害者が被害届を取り下げると言っても、その時点で捜査が終了するということにはならないのです。

もっとも、例えば事件当日に示談が成立した場合など、未だ捜査がほとんど始まっていない段階で被害者が被害届を取り下げると表明した場合には、警察の判断で捜査を開始せず、事件終結となるケースもあります。

⑵ 微罪処分

万引きの被害金額が小さく、かつ初犯である場合など事件内容が軽微な場合には、警察段階で捜査は終了し、他の軽微事件とまとめて検察庁に事件を送る微罪処分になることが多いでしょう。微罪処分の場合は、刑事罰は受けませんので、前科はつきません。

⑶ 検察庁へ事件送致された場合

検察庁へ事件送致された場合には、後日、担当検察官から呼び出しを受けて簡単に取り調べを受けた後、起訴猶予(不起訴処分)か起訴処分となります。

起訴処分には、正式な裁判が開かれる公判請求やそれが開かれない略式起訴があります。前科の有無や被害金額、犯行態様などの諸事情を考慮していずれの処分にするか判断されます。

⑷ 少年事件の場合

少年(未成年)の場合には、捜査機関の捜査が終わると事件は家庭裁判所へ送致されます。初犯で軽微な万引き事件であれば審判が開かれずに終わることも多いでしょうが、非行歴が他にもあった場合などは審判が開かれ、保護観察処分を受ける可能性もあります。

9 最後に

以上、万引き事件の示談についてご説明しました。
刑事事件の手続きはどんどん進んでいきますので、示談は早期にしておくことが必要です。示談交渉については、刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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