窃盗事件は民事?刑事?弁護士が徹底解説

最終更新日: 2024年01月23日

窃盗事件は民事?刑事?弁護士が徹底解説

  • 窃盗事件を起こすと民事の責任・刑事の責任のどちらなのか
  • 窃盗事件を起こしたときに弁護士ができる民事的なアプローチは何か
  • 弁護士の民事的なアプローチの1つ示談交渉の事例が知りたい

窃盗事件を起こしてしまった場合、どのような責任を負うことになるのかなど不安は絶えないでしょう。自分や家族だけでの解決が難しいと感じる場合には弁護士に依頼することでスムーズに解決まで進むだけでなく、刑罰を受けずに済む可能性が高まります。

そこで今回は、窃盗事件と刑事・民事の関係性、弁護士ができる民事的なアプローチ「示談交渉」とは何か、そして弁護士が行った示談交渉で処分が軽くなった事例を解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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窃盗事件と民事・刑事の責任を弁護士が解説

窃盗事件と民事・刑事の責任を以下の観点から弁護士が解説します。

  • 窃盗をすると民事・刑事どちらの責任も問われます
  • 民事事件・刑事事件の違いは
  • 民事・刑事の時効とは

1つずつ見ていきましょう。

窃盗をすると民事・刑事どちらの責任も問われます

1つ目は、窃盗をすると民事・刑事どちらの責任も問われるということを解説します。

民事・刑事における責任や罰則に関してはそれぞれ下記のように民法と刑法に定められています。

民法第709条

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

刑法第235条

「他人の財物を窃取した者は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

この2つの条文が示す通り、窃盗行為はどちらの法律にも当てはまります。そのため、窃盗を行った場合は民法第709条によって相手方(被害者)に与えた損害を賠償する責任を負い、さらに刑法第235条によって、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

これらの責任は法的に連動するものではありません。たとえば刑事責任として『罰金』が被害者に支払われるということはなく、窃盗の犯行後すぐに謝罪し損害賠償を支払うことで民事的に解決したとしても、刑事責任がなくなるわけではありません。

民事においての『相手方に与えた損害』とは、奪った財物の金銭的価値はもちろんのこと、裁判になった場合の費用や、その弁護士費用まで含まれるというのが、現在の判例の考え方です。仮に窃盗の被害を受けなければ、裁判の必要もなく弁護士に依頼する必要もなかったから、という理屈です。

加害者としては、刑事責任としての懲役や罰金刑だけでなく、民事責任として金銭的負担をも負うことになります。

民事事件・刑事事件の違いは?

2つ目は、民事事件・刑事事件の違いを解説します。

民事事件とは、個人対個人、法人対法人、個人対法人など、私人間の紛争を解決するための手続きを裁判所に求めることをいいます。

窃盗事件に当てはめると、加害者が奪ったものに対して被害者が返還請求することや、損害賠償請求を求めることなどが、民事事件の紛争の例として挙げられます。対して刑事事件とは、人が起こした犯罪について検察官(国)が、裁判所に処罰を求めるものです。

民事責任を果たすべき相手は、損害を与えた相手方のみであるのに対し、刑事責任(罰金や懲役)を負う相手方は、被害者ではなく国です。

このように、刑事と民事では、事件の内容や目的が全く違うため、責任を負う相手や責任の内容も大きく異なります。

よって、窃盗事件を起こして裁判になる場合には、民事訴訟法・刑事訴訟法それぞれの規定に従って、民事裁判・刑事裁判を別々に行うことになります。

民事・刑事の時効とは

3つ目は、民事・刑事の時効を解説します。

時効とは、一定の時間の経過により責任が問われなくなることをいいます。
民事と刑事では、時効にも大きな違いがあります。

窃盗事件の場合、損害賠償の時効は、民法724条により

  • 被害者(又はその法定代理人)が損害および加害者を知ってから3年
  • または不法行為のときから20年

ですので、被害者はこの期間内に加害者に対して損害賠償請求を行う必要があります。

なお、裁判を行って請求権が確定判決により認められると、その時効期間は10年となります。(民法169条第1項)

一方、刑事事件としての時効完成は、事件発生から7年です。これは公訴時効と呼ばれ、検察官が起訴するためのタイムリミットです。起訴されないままこの期間が経過すると、起訴されないことが確定するため、前科はつかないこととなります。

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窃盗で弁護士ができる民事アプローチ

窃盗事件を起こしてしまった場合、民事的解決を弁護士に依頼することが可能です。

いわゆる『示談』の代理交渉を行います。示談とは、被害者との間で解決金などの清算条項を定め、合意して解決する手続きですので、示談が成立して清算義務を履行すれば、民事責任を果たしたと言えます。

さらに、刑事事件として起訴される前に示談を成立させることができれば、不起訴となる可能性が高まります。あくまで、起訴するか不起訴とするかの判断は検察官が行いますが、民事として解決済みであれば、刑事訴訟法第248条に定められている通り、訴追を必要としないと判断される可能性は高まります。不起訴となれば、前科がつくこともありません。

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窃盗の民事的解決「示談交渉」の実例を弁護士が紹介

ここからは、示談交渉によって民事責任を果たし、刑事責任も軽くなった実例を3つ紹介します。

事例1

ある日、依頼者の携帯電話に警察から電話があり、半年前のショッピングモールでの件について話を聞きたいと言われました。依頼者は何のことか全くわからず、不安になったことから弁護士事務所に依頼をしました。

後日、依頼者は弁護士と一緒に警察署に出向きました。防犯カメラの記録を見せられ、ヘルメットを万引きしたことを思い出したので、依頼者は正直に万引きをしたことを認めました。

弁護士からは捜査協力をするので逮捕はしないよう警察に求め、在宅捜査としてもらうことになりました。 弁護士から被害店に賠償の申し出をしましたが、すでに会計処理は終わっているので賠償は必要ないという回答でした。

書類送検の後、担当検察官と協議した結果、贖罪寄付をすれば起訴猶予、不起訴にしてもらえることとなりました。そこで、依頼者には10万円の贖罪寄付をしてもらい、その結果を弁護士から検察官に伝えました。その後、予定通り不起訴処分となり、本件は解決しました。

事例2

依頼者は結婚相談所で出会った男性とデートを重ねていましたが、レストランで男性がトイレに立った際や、ドライブ中に男性がコンビニに寄った際などに男性の財布から現金を盗むことを繰り返していました。

現金が減っていることを不審に思った男性が車のドライブレコーダーを確認すると、依頼者が財布から現金を盗んでいる様子が映っていました。男性から問い詰められたものの犯行を否認したことから、男性は警察に被害届を出しました。 依頼者は男性との示談を希望し、弁護士事務所に依頼をしました。

弁護士から男性に連絡をとったところ、刑罰を受けてもらいたいわけではないが、犯行を正直に認めて謝罪してもらいたいこと、そしてなぜ犯行に及んだのか説明して欲しいという要望がありました。 結婚を見据えてデートをしていたのに、なぜ窃盗をしたのか疑問をもつことは自然なことでした。

依頼者としては特にお金に困っているわけではなく、魔が差したとしか説明しようがないということでした。男性とデートはしたものの、結婚は考えられないと思っていたそうです。 依頼者には謝罪文を作成してもらい、弁護士から男性に事情を説明したところ、盗んだ金額だけ賠償することで示談に応じてもらうことができました。 その結果、依頼者は起訴されることなく事件は解決となりました。

事例3

依頼者は銀行のATMに現金の入った封筒が置き忘れていることに気が付きました。自宅に持ち帰りましたが、警察に捕まることを恐れ、他のゴミと一緒に捨ててしまいました。 2か月ほどしたある日、警察から電話があり出頭しました。

封筒を持ち帰ったことや、捨ててしまったことを話しましたが、警察はお金を捨てたことについて信じてはくれませんでした。 そこで、今後の対応について弁護士事務所に依頼をしました。

封筒を持ち去ってしまったことは間違いなく、他方、お金を捨てたことを信じてもらえないのも無理はないと依頼者は理解していました。 そこで、弁護士を通じて、被害者に賠償をして示談を成立させることで起訴猶予を目指すこととしました。

被害者いわく封筒には12万円が入っていたそうで、12万円に迷惑料3万円を加えた15万円を支払うことで示談が成立しました。 依頼者はお金は捨ててしまったと引き続き主張しましたが、示談が成立していることを考慮して、検察官は不起訴処分(起訴猶予)とし、本件は起訴されることなく解決となりました。

まとめ

今回は、窃盗事件と刑事・民事の関係性、弁護士ができる民事的なアプローチ「示談交渉」とは何か、そして弁護士が行った示談交渉で処分が軽くなった事例を解説しました。

万が一窃盗を犯してしまった場合は、真摯に謝罪し、早期に民事的解決を目指すことで、刑事責任としても不問となる可能性が高まります。そして、民事的解決を目指す場合は、示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することがおすすめです。

加害者やその家族が直接被害者と示談交渉を進めようとしても、さらなる争いに発展することも珍しくありません。被害者は素人である加害者からの連絡ではなく、専門家としての意見を期待していることから弁護士との話し合いで安心する場合が考えられます。仮に話し合いの場に辿り着いたとしても、被害者から高額な解決金を請求されてしまうこともあります。

示談交渉に慣れた弁護士に依頼すれば、起訴に至らないようにスピード感を持った弁護活動が可能となり、警察・被害者・依頼者との密なコミュニケーションによって、スムーズな意思疎通ができるようになります。 窃盗を犯してしまったら、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

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