リフォームのトラブルの原因と対処法を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年02月21日
・リフォームでトラブルが起きた場合、どのように対処したらよいのだろうか
・リフォームをするという経験が初めてで、この程度のトラブルであったら我慢するべきか
・妥協するべきか、どのように対処したらよいのか分からない
リフォームでは大小のトラブルが起きる可能性は高く、現にトラブルに巻き込まれたという方もおられるでしょう。
今回はリフォームや建築工事の専門弁護士がリフォームトラブルについて解説します。
リフォームのトラブルを弁護士が解説
まずはリフォームトラブルの実態や、現状についてです。
リフォームトラブルの実態とは
リフォームを行うと、大小様々なトラブルが起こります。住宅に関する訴訟は、年間1,000件を超え、リフォームトラブルに関する国民生活センターへの問い合わせは年間10,000件を超えていると言われています。
リフォームは、必ずしも建設業の許可は必要でないため、相手にきちんとした施工能力があるとは限りません。近年、悪質なリフォーム詐欺被害が急増していることからも、施工業者の選定や契約書の確認を誤ると、トラブルが起こる確率が高くなります。
他方で、きちんとした業者を選定していたとしても、リフォームにはミスがつきものですから、施工に不具合が出てくることもあるのです。
トラブルの具体的な原因
具体的な原因は、施主側が工事内容や見積書を細部まで確認できておらず、施工業者任せになってしまっている事にあります。
また、具体的なイメージを伝えきれず、施工業者との間に認識の差異が生まれることも、原因として考えられます。見積り、契約内容などを書面に残していないことで、証拠もなく訴えることもできないという事例も多くあります。
トラブルに巻き込まれる人は意外に多い?
各都道府県の弁護士会において、弁護士と建築士との対面相談を利用できる制度では、住宅相談の内、リフォームに関する相談が全体の約半分を占めています。 また、そこまでに至らずとも紛争処理支援センターにはリフォームに関する電話相談窓口がありますが、年間約10,000件の相談があるようです。
解決する事の難しさ
何か問題があったとき、言った言ってないといった水掛け論になってしまうことは想像ができます。
また、施工業者側の故意でなくとも、口約束ではうっかり忘れていたということもあるでしょう。 契約書で明確に工事内容が記載されていなければ、トラブルを解決しにくくなってしまいます。契約書は、どんな工事をするか詳細に分かるものを、作成してもらう必要があります。
リフォームのトラブルを防ぐ方法を弁護士が解説
リフォームのトラブルを防ぐ方法は以下、6点があります。
施工業者選び
よい施工業者を選ぶ方法は、いくつかありますが、以下のポイントを押さえ、業者選びをするとよいかもしれません。
- 過去の実績・施工例を見せてくれる
- 質問や疑問に対するレスポンスが速いかどうか
- トラブルが起きた時の対応範囲を把握しておく
- アフターメンテナンスの範囲を知っておく
- 営業の方や担当者との相性
- 希望に沿った具体的な提案を良くしてくれるか
- 有資格者が在籍しているか
- 複数の施工業者で見積もり等の比較をする
打ち合わせを綿密に行う
施主側の要望やイメージを具体的に写真等で提示し、施工業者と認識をすり合わせていくことも大切です。疑問に思う事等、うやむやにせず、綿密な打ち合わせをおこないましょう。
工事の変更等書面に残す
工事の変更事項も、口頭でのやりとりのみでなく書面に残すことが大切です。 工事中に現場で「このようにしたい」と話し合っているうちに、工事が進んで、工事終了後に追加工事代金を請求され、トラブルになるケースもあります。 書面に残し、証拠を残すことでトラブルを回避できることも非常に多いです。
全額を一気に支払わない
工事が行われる前に工事費用の全額を支払ったものの、依頼した業者が倒産して工事もできず、支払った代金も返ってこなかったというトラブルもあります。 前払いの危険性を回避するには、施工前に工事費用の全額を一気に支払わないことです。工事着手前に工事代金全額の支払いを求めてくるような業者は、検討から外す方が無難です。
工事の範囲を明確にする
「してもらえるものだと思っていた」「きちんと伝えていたはずだ」などの思い込みは、トラブルの元になります。
施工業者に工事してもらう範囲については、詳細に内容を詰めて、書面に残しておくことが重要です。 例えば、ドア交換と見積もりに記載されている場合、ドアのみなのか、付属品(ストッパー等)も込みであるのか。小さなことですが、そこを事細かに明確にしておかないと、後々トラブルになります。
見積もりのみでなく詳細を確認し、質問する
見積書は、その業者の表現の癖などによって、書き方はまちまちです。書面に書いてある内容が明確でないと、施主と施工業者とで認識にずれが生じることもあります。
見積書の記載内容の意味が分からなかったり、あいまいな点は、後のトラブルになっても解消されない問題として残るはずです。 分からない事、不明瞭な事はその都度質問し、双方の考えをすり合わせておくということが大切です。
リフォームのトラブルを解決する方法を弁護士が解説
リフォームトラブルを解決するための方法として以下4つが考えられます。
交渉による解決
建築業界は専門用語も多く、法律に関する知識も必要な為、専門家でないとトラブル解決へ向けて直接交渉する事は困難です。弁護士に介入してもらうことで、裁判所による解決前に和解できる可能性もあります。
建築士を介入させる解決
建築紛争では、しばしば何をもって正しい施工方法とするのか、判断できない事項が生じます。そのような場合、建築について専門的な知識をもつ建築士に介入してもらうことで、早期解決に繋がることもあります。
紛争解決センターを利用する解決
弁護士会が設置、運営する裁判外紛争機関です。弁護士が、公正中立な立場で和解のあっせんや、仲裁をします。専門的な知識を必要とする事件については、建築士と協力して解決することもあります。
裁判所による解決
交渉による解決に至らない場合は、民事調停、または訴訟を提起します。 民事調停は、裁判所を介した話し合いの手続きですが、建築士、弁護士、裁判官が間に入り、話し合いを円滑に指揮してくれます。 訴訟は、一方が話し合いに応じない場合であっても、原告の訴えの認容あるいは棄却の判決という形で何らかの結論が必ず出ます。 いずれの手続きも、メリット・デメリットがあるので、どの手続きを利用するのかは、相手方との交渉の様子を見て判断するべきでしょう。
施工業者側から見たリフォームのトラブルにおける交渉の流れ
次にご紹介するのは、施工業者側から見た交渉の流れについてです。
話し合いによる解決
話し合いによる解決を行います。面談の機会を設け、施主側と交渉をします。 施主の不満が何なのか、ヒアリングを行い、補修などによって対応可能なものであれば、できる限り対応することが、紛争回避につながります。 もちろん、補修対応する条件に、残金を支払っていただくなどの覚書を交わしておくことも必要です。
状況に応じた交渉
協議を尽くしたが双方の言い分が一向にまとまらない、施主側が話し合いに応じない場合は、当該事案に応じて、戦略的に対応することが求められます。未払いとなっている代金の金額、工事の進捗状況に応じて、効果的な対応は異なってきます。 既に工事代金を支払ってもらえている状況であれば、施主の請求を、いかにコストをかけずに退けるかが重要です。
他方、工事代金の未払いが大きい場合には、難しい交渉が予想されます。工事が完成している状況であれば、すぐに訴訟提起した方が、話が早い場合もあります。 工事があまり進んでいないのであれば、出来高清算の交渉となり、どこまで支払っていただけるかを見極める必要があります。
民事訴訟
最終的な解決手続は、民事訴訟です。施主側との話し合いがまとまらない場合、施工業者側から訴訟提起することもありますし、施主側から訴訟提起されることもあります。
施主側から見たリフォームトラブルの交渉の流れ
施主者側から見た交渉の流れについてです。
費用をかけずに解決する方法の検討
まずは費用をかけずに解決する方法を検討することから始めましょう。 施工業者に不誠実な対応をされてしまうと、そのような業者にはこれ以上工事に入ってほしくないと考え、すぐに施工業者と争う方針になってしまう方が多いです。
しかし、施工業者と争ってしまうと、次の業者に工事を引き継いでもらう費用や、弁護士・建築士を入れるための費用が必要となってしまい、かえって紛争解決に多くの費用を費やさなければならなくなります。
よほど問題のある業者であれば別ですが、争いが深刻になる前であれば、交渉の仕方によっては、無償で様々な補修や、返金対応に応じてくれることもあります。 このようにして、まずは費用をかけることなく解決する手段を探るべきです。
弁護士を含めた解決の模索
次に、簡単には無償対応や、返金に応じてくれない様子である場合の対応について説明します。
施主側の対応も、施工業者のところで述べたものと同様に、当該事案に応じて、戦略的に対応することが求められます。具体的には、未払いとなっている代金の金額、工事の進捗状況に応じて、効果的な対応は異なってきます。 工事代金の大部分を支払っていない状態であれば、施工業者としてもできる限り多くの代金を回収しようと交渉に臨んできます。
施主側としては、全く工事代金を支払わないとの対応をしてしまうと訴訟になってしまうので、ある程度、金銭を支払う意思を見せつつ、減額交渉をすることが有効です。訴訟を回避できるギリギリの落としどころを探りながら交渉するべきでしょう。
他方で、既に工事代金を全額支払っており、施工業者に対して損害賠償請求をする事案は、交渉の難易度が極めて高くなります。 言い逃れのできないような明らかな欠陥でない限り、施工業者は、簡単には損害賠償金を支払ってくることはありません。 勝訴の見込みについては、きちんと専門家弁護士と相談し、進めなければ、大変なコストがかかってしまいます。
裁判所の手続きによる解決
弁護士を入れた交渉によっても解決が困難となった場合、裁判所の手続きによることになります。 施主が利用できる裁判所の手続きとしては、民事調停と訴訟があります。このうち、訴訟では厳密な証拠の提出が求められるので、証拠を提出できないために負ける可能性があります。
通常、リフォームでは、施主が有利な証拠を押さえていることが少ないため、証拠の乏しい事案の場合、民事調停による解決が現実的です。
リフォームのトラブルでよく弁護士に相談がある事例
以下、よくあるトラブルについてです。
- リフォームが進まないことにより生じるトラブル
- リフォーム代金の認識の違いにより生じるトラブル
- リフォーム代金の支払いをめぐるトラブル
- リフォームに欠陥があることで生じるトラブル
リフォームが進まないことにより生じるトラブル
リフォームが進まず、予定日を過ぎても工事が終わらないトラブルもあります。本当に期限内に工事は終わるのか、不安になることがあると思います。
施工業者に連絡し、連絡がつかなかった場合やいつまでも対応されない場合は、期限を決めて回答を求めます。期限内に回答を得ない場合は、契約を解除する等を書面に明記の上、施工業者に送付し、書面による回答を求めます。 工事遅延ついてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事で解説していますので、 合わせてチェックしてください。
リフォーム代金の認識の違いにより生じるトラブル
工事費用の追加請求に関するトラブルもあります。契約書に工事内容が記載されていても、工事の途中で施工業者から使用資材の変更などを提案されることもあります。
施主自身が、現場にいる職人にお願いすることもあるかもしれません。 そのような場合、口約束になってしまいがちです。施工業者は、追加費用が発生するのは当然という認識ですが、施主は無料の範囲で行ってくれるという認識の方が多い為、トラブルの要因になります。
工事を追加したときは、見積書を作成してもらい、保管しておくことで、トラブルを防ぐことができます。見積書に承諾欄等がある場合は、どのような目的で署名等が必要なのかの説明を求めることも必要です。
リフォーム代金の支払いをめぐるトラブル
施主側の理不尽なクレームによる工事代金未払いや、支払いをしていただけないトラブルもあります。工事代金未払いのまま工事を続けることで、施工業者側の資金繰りがうまくいかなくなる可能性もあります。 トラブルが早期に解決しない場合、外部の機関や弁護士に相談をしましょう。
リフォームに欠陥があることで生じるトラブル
リフォームが起因であるという為には、原因とリフォーム契約の内容を特定し、立証しなければなりません。リフォームの施工業者の場合、工事保証書の施主への提供は義務ではありません。 工事後のメンテナンスについての対応策を業者に確認し、書類にして保管しておくことも対策の一つです。
まとめ
本記事では、リフォームの際のトラブルに関してご紹介してきました。トラブルを未然に防ぐ為にも、参考にして頂けたらと思います。 リフォームトラブルと一口に言っても内容は千差万別ですが、基本的なポイントを押さえておくことが重要です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。