お墓を建てる際のトラブルを避けるには?!専門の弁護士が徹底解説

最終更新日: 2021年07月15日

はじめに

お墓を建てる場合、大きくは、墓地を選びその墓地が指定する石材店で建てる方法と、石材店を選びその石材店が指定を受けている墓地に建てる方法があります。

ほとんどのお寺の墓地は、墓地の適切な維持、管理のために指定石材店制度をとっており、建墓にあたって依頼できる石材店が指定されています。もっとも、どうしても依頼したい石材店があるときは、住職に相談をして、認めてもらえることもあります。

指定石材店は過去の実績をお寺が把握して指定している石材店ですし、お寺との継続的信頼関係がありますので、トラブルは生じにくいメリットがありますが、一方で、石の材質やデザインに限りがあったり、代金が他社よりも高いという場合があります。

今回は、石材店を自身で選ぶ場合の注意点や、墓所新設のための契約上の注意点についてご説明します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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トラブルを未然に防ぐ為の石材店を選び際の注意点

全国には大小の石材店が数万件もあります。石材店を選ぶ際には、インターネットを利用して、ポータルサイトを閲覧し、いくつかの石材店に問い合わせる方法が多いようです。

問い合わせた石材店を訪問し、担当者と話す際は以下のようなポイントに留意すると良いでしょう。

  1. 石の性質、特徴について丁寧に詳しく説明してくれるか
  2. 契約だけをして、工事は下請業者に丸投げする体制になっていないか
  3. 見積書だけでなく、工事請負契約書を作成しているか
  4. 見積書は、一式で幾らという大雑把なものではなく、墓所の部位ごとの材料費、人工代を明示した見積りとなっているか
  5. 一括前払いや、工事代金の5割を超える着手金を求めていないか
  6. 20年、30年など長すぎる保証期間や過剰な保証内容を提示していないか
  7. 石の産地証明や保証書を発行してくれるか
  8. 理由なく、大幅なディスカウントを提示していないか

お墓は数十年と存続するものですから、その間に石材店が倒産したり、廃業する可能性があります。そうしますと保証期間内にもかかわらず、お墓の補修等を受けられなくなってしまいます。

このような事態に備え、一般社団法人「全国優良石材店の会」のように、依頼した石材店が倒産、廃業しても加盟する他の石材店で保証してくれるサービスを提供している団体もあります。

お墓を建てる際のトラブルと対策

お墓を建てる際に依頼者との間で発生することの多いトラブルは以下のようなものです。

  1. 見積りよりも高い代金の請求
  2. 依頼者の想定していたデザイン、仕様との相違
  3. 墓石のヒビ、シミ

1については、工事が思ったよりも大変だったというだけで追加代金の請求をすることはできませんし、そのようなケースは少ないでしょう。

そうではなく、工事開始後に依頼者から工事内容変更の指示があったり、依頼者と石材店又は職人との協議の結果、工事内容が変更された場合に、依頼者としてはその程度の変更は当初の見積りの範囲内と考えている場合に1のようなトラブルが発生します。

このようなトラブルを避けるためには、見積り内容を詳細にしておく、工事内容の変更があったときには、変更内容と追加代金について依頼者と協議し、必ず書面にすることが重要です。

2については、図面やカタログから依頼者が抱いていたイメージと完成品との微妙な違いによるトラブルです。そのような相違は工事内容の不備とは評価できず、またいかに契約内容を明確にしても限界があります。契約時に完成品とは多少イメージが異なる可能性があることを丁寧に説明しておくで、このようなトラブルを減らすことはできるでしょう。

3については、完成直後にヒビ、シミがあったのであれば、石材店に通常、責任があると考えられますので、その修補、石の取り換えをすることになります。他方、1年や2年を経過した後に見つかったヒビ、シミの場合は、通常は工事や材料の不備ではありませんので、契約で定められた保証の対象となるかどうかの問題となります。

お墓を建てる際のトラブルを防ぐ為に見積書のあるべき形

見積書は、石の材質、加工内容、墓所に施す工事内容を特定し、それに対する費用を依頼者に提示するものです。そのため、単に「建墓工事代金 一式○○万円」とだけ記載された見積書では工事内容が全く不明です。

このような見積書ですと、石材店が想定している工事内容と依頼者が想定している工事内容に食い違いが発生しやすく、トラブルを誘発します。

したがって、見積書には、品番を特定した石の個数及び代金、その加工内容とその代金、墓所に施す工事内容や墓石設置の人工代など、一つ一つの項目を詳細、明確に記載したものを作成するべきです。

お墓のトラブルを防ぐ為の工事請負契約書

工事請負契約書を作成せずに、図面と見積書の交付で注文を受けている石材店も多くあります。見積書には基本的に代金額とその内訳、支払時期が記載されている程度です。

それでは工事内容の特定という点で不十分であり、前記のようなトラブル①②のようなトラブルが起こりやすくなります。

シンプルなもので良いので、少なくとも以下の条項を入れた工事請負契約書は必ず作成するべきです。

  1. 仕事内容    単に「○○家の墓所建立」とするのでは、全く工事内容がわかりません。見 積書と図面(平面図、立体図、断面図)を契約書に添付することで仕事内容が明確になります。
  2. 代金額と支払時期   着手金の金額、残金の支払時期を明記します。
  3. 引渡時期(納期と引渡方法)

お墓の契約不適合責任(瑕疵担保責任)

完成したお墓が契約内容に適合していない場合、注文者は石材店に対し、その契約不適合責任を追及することができます。

具体的には、完成したお墓が、種類、品質又は数量に関して契約内容に適合しないときは、注文者は石材店に対し、修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しを求めることができます(民法第559条、562条1項)。

また、このような追完を求めたのに、石材店がそれに応じない場合には、注文者は、その不適合の程度に応じて、工事代金の減額を請求することができます(民法第563条1項)。

ただし、契約不適合が注文者の与えた指図による場合や、注文者に帰責性がある場合にはこのような責任追及はできません(民法第562条2項、563条3項、636条本文)。

このような責任追及をするためには、契約不適合を知ってから1年以内に石材店に対してその旨を通知する必要があります(民法第637条1項)。

契約不適合があった場合には、これらの責任追及の他に、それによって生じた損害の賠償請求や(民法第564条、559条、415条)、契約解除もすることができます(民法第564条、559条、541条、542条)。

工事請負契約書のサンプルをご覧になりたい方は、下記よりダウンロードしてください。

 

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