財産分与における特有財産とはなにか?共有財産との違いがわかるための徹底解説!
最終更新日: 2023年07月03日
- 特有財産とはなにか?
- 特有財産と共有財産の違いは?
- 特有財産にはどのようなものがあるのか?
特有財産とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた資産をいいます。離婚時に共有財産を分割・精算しますが、夫婦のいずれか一方のものである特有財産は、財産分与の対象外です。そのため、共有財産と特有財産の線引きは、重要です。
そこで今回は、特有財産の基礎知識・判例・特有財産がある場合の財産分与の進め方について解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 特有財産とは、離婚時に行う財産分与の対象から除外される財産
- 特有財産の一方で、離婚時に行う財産分与の対象となる財産が共有財産
- 特有財産には、「婚姻前に形成した財産」「相続した財産」「贈与された財産」などが該当
特有財産とはなにか?
特有財産とは、離婚時に行う財産分与の対象から除外される財産です。ここでは、以下の3つの観点から特有財産について解説します。
- 特有財産とは
- 共有財産との違いは?
- 特有財産の法的根拠
1つずつ見ていきましょう。
特有財産とは
特有財産は、夫婦いずれか一方のもので、離婚時に行う財産分与の対象から除外される財産です。
特有財産の基本は、次の3項目です。
- 婚姻前に形成した財産:預貯金・自動車など
- 相続した財産:両親から受け継いだ不動産など
- 贈与された財産:親族から生前贈与を受けた預貯金など
財産は、その名義に関わらず、取得・管理が単独で行われたものは特有財産で、他方の配偶者の関与や協力があるものは共有財産となります。
たとえば、婚姻時に夫の独身時代の借金を妻の特有財産である預貯金で返済した場合、離婚時の財産分与で返還を求めることができます。
同様に、住宅購入時に独身時代の預貯金を頭金に入れた場合も、住宅評価額から特有財産相当分を分離する必要があります。
共有財産との違いは?
特有財産の一方で、離婚時に行う財産分与の対象となる財産が共有財産です。
共有財産は、夫婦いずれの名義であるかは関係なく、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産や共同生活を送るための家財道具が該当します。
たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 婚姻後に受け取った毎月の給料や自営業から得た収益・収入
- 積み立てた預貯金や有価証券
- マイホーム・自動車
- 退職金
別居の場合、夫婦が独立して生活していると考えられるため、別居後の財産については特有財産となる可能性が高いと考えられます。
お小遣い・へそくりは、婚姻期間の共同生活で貯蓄したものなので、基本的には夫婦共同財産となります。
特有財産の法的根拠
特有財産がどのように法律に規定されているか、見ていきましょう。
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、 その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。 2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
民法第762条1項は、婚姻前に取得した財産や、婚姻期間中であっても夫婦の一方が個人で取得した財産は、原則として財産分与の対象にならないことを定めています。
さらに、2項では、特有財産かどうか明らかでない場合には、共有財産と推定すると規定しています。
自己の特定財産を主張をする場合、主張する者の特有財産であることの証明が必要です。契約書などを示し、取得日や夫婦の他方の関与がないことを証明しなければなりません。
特有財産を財産分与の対象外とした判決
特有財産について、財産分与の対象とすべきでない財産と裁判所が判断した判決があります。
夫婦の一方が相続によって得た財産は、夫婦の協力によって取得されたものでないから、夫婦が婚姻中に取得した他の財産と同一視して、分与の対象物件に含ませることは、特段の事由がない限り、許されないというべきである。
出典:高松高裁昭和63年10月28日 裁判例結果詳細 | 裁判所
これは、義父から夫が相続した特有財産は、妻には財産分与されないと判断した判例で、裁判所の判断の指針となっています。
婚姻期間中であっても、夫婦の協力がなく、夫婦の一方が相続した財産は特有財産となることが示されました。
特有財産のポイントは「夫婦の協力関係の有無」
特有財産に該当するか否かを判断するポイントは、資産形成において、夫婦の協力関係の有無を判断することとなります。
独身時代から持っていた貯金や株式、婚姻期間中であっても相続・贈与により得た不動産や株式は、いずれも夫婦の協力が関与せず、特定財産となります。
親から不動産を相続した場合は特有財産ですが、夫婦の協力や配偶者の貢献によって、その維持や資産価値の増加があれば、その貢献度合いに応じて財産分与の対象になる可能性があります。
また、退職金については、婚姻前から働いていた場合には、共有財産と特有財産に分ける必要があります。勤続年数のうち、婚姻年数に相当する分は、退職金も共有財産の計算に含めます。
特有財産がある場合に財産分与を行うときのポイント
財産分与を行うとき、特有財産があると扱いが複雑に感じる場合もあるでしょう。ここでは、特有財産がある場合に財産分与を行うときのポイントを2つの観点から解説します。
- 弁護士に相談する
- 財産調査の依頼
1つずつ見ていきましょう。
弁護士に相談する
ポイントの1つ目は、弁護士に相談することです。
婚姻期間中に、特有財産を原資にして別の財産を取得したり、共有財産と混在したりしている場合など、特有財産の整理が必要なことがあります。
たとえば、独身時代の預貯金口座を婚姻期間中に生活管理口座にした場合、特有財産部分を主張するには、入出金履歴を調査・証明しなければなりません。
また、マイホーム取得に遺産や贈与で得た財産を充てた場合、遺産分割協議書や贈与契約書から特有財産であることを証明する必要があります。
離婚時の財産分与において、特有財産の証明・反論には、正確な知識が必要です。そのため、専門知識を有する弁護士に相談することがおすすめです。
財産調査の依頼
ポイントの2つ目は、財産調査の依頼です。
隠し財産があると、財産分与の金額が少なくなってしまいます。調査方法の一つが弁護士会照会です。
弁護士は、弁護士法第23条2項により、弁護士会を通して、官公庁や企業などに照会ができます。この制度を使うと、金融機関口座や不動産を特定し、財産分与を請求できます。
調査は、支店や市町村単位の手掛かりをもとに行うので、相手の給与・有価証券等の口座、日常的な引き落とし先の口座情報などの手掛かりを掴んでおくことをおすすめします。
まとめ
今回は、特有財産の基礎知識・判例・特有財産がある場合の財産分与の進め方について解説しました。
財産分与は、請求者側が財産分与の対象財産を特定する必要があります。隠された財産があれば存在を示し、相手方に特有財産であっても請求者の協力や貢献によって価値が増大すれば、その貢献度に応じた財産分与の割合を主張できます。
個人情報保護の観点から、夫婦であっても調査には限界があるため、弁護士の力を借りて財産の有無や種類を明らかにしましょう。財産分与で問題を起こさず、正当な金額を受け取るためには、早めに弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。