妻が一方的に別居したら?離婚の行方と取るべき行動を詳しく解説
最終更新日: 2025年02月14日
- 妻と口論になり突然別居してしまった。妻の行動は法定離婚事由にあたるのだろうか?
- 妻が無断で別居した。夫婦の同居義務に違反し妻は有責配偶者となるのだろうか。
- 妻が一方的に別居するほど夫婦仲が冷めきっている。離婚を進めるよい方法はないだろうか?
妻が夫に無断で別居した場合、夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務に違反し、悪意の遺棄に該当する可能性もあります。
妻の行動が法定離婚事由にあたる場合、夫側は離婚訴訟(裁判離婚)を提起できます。
ただし、妻が一方的に別居したのは、やむを得ない行動だったと解されるケースもあるでしょう。
そこで今回は、離婚問題の解決に経験豊富な専門弁護士が、妻が一方的に別居した場合どうなるのか、妻が一方的に別居しても有責配偶者とならないケース等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 妻が一方的に別居した場合、悪意の遺棄を行ったとして有責配偶者となる場合がある
- 妻がやむを得ない理由で一方的に別居した場合は、有責配偶者とはならない
- 妻と別居中に離婚を進める場合は、弁護士とよく相談した方がよい
妻が一方的に別居したらどうなる?
妻が夫に断りもなく突然別居した場合、妻は有責配偶者となる可能性が高く、妻が離婚を希望する場合に不利となるおそれがあります。
なぜなら、妻が有責配偶者となれば、妻から裁判離婚を行う方法は認められなくなるからです。
有責配偶者の可能性
妻が「夫と離れて冷静に離婚の話し合いをしたい」と考え、別居するケースもあるでしょう。
しかし、夫の同意を得ずに妻が一方的に別居することは、民法に規定されている「法定離婚事由」に該当する可能性があります。
法定離婚事由に該当するのは次の場合です(民法第770条)。
- 配偶者に不貞行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
妻の一方的な別居が「悪意の遺棄」と認められた場合、妻は有責配偶者となります。
有責配偶者となった場合、基本的に妻からの離婚訴訟(裁判離婚)の提起は認められません。
有責配偶者となった妻が離婚を希望する場合は、夫と話し合いで解決する「協議離婚」か家庭裁判所の調停で和解する「調停離婚」のみに解決方法が限定されてしまいます。
悪意の遺棄とは
悪意の遺棄とは、夫婦で協力しなければならない義務を放棄する行為です。次の義務違反が該当します。
- 同居義務違反:夫婦の一方が無断で別居した
- 協力義務違反:家事や育児を全くしない
- 扶助義務違反:生活費の分担拒否
夫婦の一方が家出を繰り返している、不倫相手と同棲していて家に帰って来ないというケースも同様です。
妻の別居が悪意の遺棄と認められても、その行為を罰する法律はありません。ただし、離婚手続きを進めるときに、妻は不利な立場になるリスクがあります。
妻が一方的に別居しても有責配偶者とならないケース
妻が一方的に別居しても、常に悪意の遺棄が認められ有責配偶者となるわけではありません。
一方的な別居にやむを得ない理由があれば、有責配偶者にならない可能性があります。
DV・モラハラ
夫からDVやモラハラを受けていた場合は、一方的な別居もやむを得ない行動といえます。
特に妻がDVを受けていた場合、夫に別居の同意を求めると、さらに夫が激高し、妻は重大な生命・身体の危機に直面するかもしれません。
DVによる別居の場合は、むしろ夫に知らせない方が正しい対応といえます。
一方、モラハラは言葉の暴力であり、生命・身体に重大な影響を及ぼす行為とまではいえないかもしれません。しかし、夫のモラハラで心理的に追い詰められれば、早急に別居して精神的な回復を図る必要があるでしょう。
夫のモラハラを理由とした一方的な別居も、やむを得ない行動と判断されます。
両親の介護
急きょ親の介護が必要となったため一方的に別居せざるを得なかった場合も、正当な理由と認められ、有責配偶者にはならないでしょう。
妻が介護しなければ、要介護となった親の生活に重大な支障が出てしまう場合もあります。
ただし、夫に理由を告げないまま別居してしまうと、事情がわからない夫は混乱してしまうかもしれません。
たとえ夫との関係が冷めきっていたとしても、できるだけ事前または事後に、親の介護のため別居する旨を伝えた方がよいです。
妻が一方的に別居する場合の注意点
妻が一方的に別居した場合、夫は想定外の金銭的な負担を強いられる可能性があります。
夫婦関係を修復する意思がない場合は、妻の別居後、早急に離婚の話し合いを進めた方がよいでしょう。
婚姻費用の発生
別居後、妻から婚姻費用を請求される可能性があるので注意しましょう。
民法上、夫婦は婚姻から生じた費用を分担する義務があります(民法第760条)。
妻も自分と同じくらいの収入があれば、生活費の負担を拒否できる場合もありますが、妻の収入が低い場合は、基本的に夫が妻の生活費を負担しなければなりません。
正式に離婚が成立するまでは、夫が別居した妻の生活費を負担していく必要があります。
ただし、妻が不倫相手と同棲するため無断で別居した等、身勝手で容認できない理由で別居した場合は、夫が負担する必要はありません。
慰謝料
別居後、妻から慰謝料を請求されるおそれがあります。
夫に原因があって(DVやモラハラ、不倫等)、心身ともに追い詰められた妻が別居を決断した場合などです。
不快な夫から離れ、冷静さを取り戻した妻が、離婚や夫への責任追及を真剣に検討している可能性もあるでしょう。
その場合、妻は夫に慰謝料請求や離婚を申し出る事態もあり得ます。
妻から慰謝料を請求されたり、離婚の話し合いを求められたりしても、焦りは禁物です。弁護士と相談しアドバイスを受ける等して、慎重に今後の対応を進めていきましょう。
妻が一方的に別居した場合に離婚は可能か
妻の一方的な別居が悪意の遺棄にあたり、有責配偶者となっても夫が同意すれば離婚は可能です。
また、妻が有責配偶者であっても一定の条件を満たす場合、妻からの離婚訴訟の提起が認められるケースもあります。
有責配偶者からの場合は基本的に不可
有責配偶者からの離婚訴訟(裁判離婚)の提起は、基本的に認められません。
ただし、妻が有責配偶者となっても協議離婚の申し出、調停離婚の申し立ては可能です。
協議離婚または調停離婚で離婚の合意ができたときは、市区町村役場に離婚届を提出しましょう。
なお、協議離婚・調停離婚が成立しなくとも、別居を継続し、一定の条件を満たした場合、例外的に妻からの離婚訴訟(裁判離婚)が認められる場合もあります。
例外ケース
別居が長期間継続されており、次のような条件を全て満たした場合、有責配偶者である妻からの離婚訴訟(裁判離婚)の提起が認められる可能性もあります。
- 別居期間が長期にわたる:約6~30年別居すると、裁判官は「結婚生活が完全に破たんしている」と判断する場合がある
- 夫婦の間に未成熟の子がいない:単に未成年というだけではなく、成人後も自活できない学生であるか、障害を持っているか等も考慮される
- 配偶者が離婚で過酷な状況とならない:夫婦の一方が、離婚によって精神的・社会的・経済的にダメージを受けるどうかも考慮される
裁判所は、ケースバイケースで夫婦・家族の状況を十分に考慮し、有責配偶者からの離婚訴訟(裁判離婚)を認めるか否かについて、判断するでしょう。
妻が一方的に別居した場合にすべきこと
妻の別居が継続すれば、夫は婚姻費用を払い続ける事態になるかもしれません。夫婦関係の修復の見込みがない場合は、協議離婚や調停離婚・裁判離婚の準備をしましょう。
交渉
妻に協議離婚を申し出ましょう。逆に妻からの申し出を受ける可能性もあります。
夫婦で自由に離婚条件を決められますが、離婚するかどうかの他に、親権・養育費・面会交流・財産分与・慰謝料等と、話し合う内容は多岐にわたります。
夫婦がお互いに熱くならず、冷静に話し合いを進めましょう。
条件提示
協議離婚は離婚の条件で夫婦が対立しなければ、スムーズに手続きを進められます。
夫の方で妻の同意が得られそうな条件を準備し、提示しましょう。たとえば、妻が離婚して子の生活・養育費の困窮を不安視しているときは、次のような条件を提示してみましょう。
【別居の原因】
性格の不一致、口論となり、妻が子を連れ一方的に出ていった
【夫からの条件提示】
- 子の親権者:妻
- 養育費:妻の希望する給付額・給付期間に同意する
- 面会交流:妻の希望する指定日・交流内容に同意する
- 財産分与:原則通り2分の1で分ける
- 慰謝料:夫が離婚原因をつくったわけではないので支払わない
妻も子の養育費を充実させた提案に納得し、早期の離婚を実現できる可能性があります。
調停・裁判
協議離婚で話し合いがまとまらなくても、家庭裁判所に場所を移し、離婚問題の解決ができます。
ただし、夫からの場合もいきなり裁判離婚は提起できません。まず調停離婚を申立てなければなりません(調停前置主義)。
離婚に関する調停・裁判の特徴は、次の通りです。
- 調停離婚:裁判官と調停委員が夫婦の仲立ちをし、双方の自主的な和解を目指す。夫婦のどちらかが和解に同意しなければ調停は不成立
- 裁判離婚:調停不成立の場合に訴訟提起が可能。夫婦が原告・被告に分かれ主張・立証を行う。最終的には判決で離婚を認めるかどうかが言い渡される。
弁護士への相談
一方的に別居した妻と離婚を話し合う前に、弁護士と相談しておいた方がよいです。
弁護士は別居に至った経緯をヒアリングし、別居した妻と穏便に交渉を進めるコツや、譲歩する場合の注意点、協議離婚が不成立となった場合の対応等をアドバイスします。
相談している間に「妻との交渉は弁護士に任せた方がよい」と思ったときは、そのまま弁護士と委任契約を締結してもよいでしょう。
弁護士は依頼者の代理人として、別居した妻との交渉を行っていきます。
妻が一方的に別居してお困りのときは春田法律事務所までご相談を
今回は離婚問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、一方的に別居した妻と離婚するコツ等を詳しく解説しました。
春田法律事務所は離婚問題の解決に実績豊富な法律事務所です。まずは弁護士と相談し、今後の対応を冷静に検討しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。