妻の不倫での慰謝料相場や離婚について専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月22日

妻の不倫での慰謝料相場や離婚について専門弁護士が解説

妻に不倫を辞めさせたい!
不倫相手だけに慰謝料を請求したい!
妻と離婚すべきなのかわからない!

妻の不倫が発覚したときには、このように思う方も多いことでしょう。初めてのことで、一体どのように対処すれば良いのかわからなくても無理もありません。

今回は妻の不倫が発覚したときの対処法について、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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妻と不倫相手を別れさせるには慰謝料請求を

相手とは別れる、別れたと妻が約束したにもかかわらず、不倫が継続、再開していたというケースは非常によくあります。

このようなケースの多くは、妻と約束しただけで、不倫相手には連絡をしていなかったり、不倫相手に連絡はしたものの、不倫関係を解消する約束をさせるにとどまっていたという場合です。

相手の夫から直接何も言われなかった場合や、謝罪をしてもう会わないと約束をしただけでは、特に痛みはないことから、不倫がばれても大したことないと不倫相手に思われてしまうのかもしれません。

したがって、たとえお金は欲しくないという場合であっても、不倫関係を解消させるためには、不倫相手に対して慰謝料請求をして、金銭的な制裁、痛みを与えることが重要です。

妻の不倫相手だけに慰謝料請求できる?

妻が不倫をした場合、妻には慰謝料請求をするつもりはなく、不倫相手にだけ慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

不倫の慰謝料請求の仕組み

不倫は、不倫をした当事者二人が加害者で、不倫をされた配偶者が被害者です。そして、法律上、不倫をした加害者二人は、被害者に対して、連帯責任として、慰謝料を支払う義務を負います(民法第719条1項)。

そのため、不倫をされた夫は、不倫相手に慰謝料の全額を請求することもできますし、妻に慰謝料の全額を請求することもできますし、妻に一部を請求し、残りを不倫相手に請求するということも可能です。

したがって、不倫相手にだけ慰謝料請求をすることはもちろん可能です。

いくら請求できるのか?

それでは、不倫相手に慰謝料請求するにあたり、いくら請求できるのでしょうか。不倫の慰謝料相場について確認しておきましょう。

不倫の慰謝料は、不倫の結果、夫婦が離婚するときは200万円、離婚しないときは100万円が相場です。

そして、婚姻期間の長さ、不倫期間の長さ、不倫相手の反省態度、従前の夫婦関係の良し悪しなど様々な事情を考慮して、上記の慰謝料金額が増減します。

例えば、離婚はしないものの、不倫期間が5年もあった場合には慰謝料は150万円ほどになる可能性がありますし、妻が不倫相手の子どもを出産した場合には離婚しなくても慰謝料は300万円ほどになる可能性があります。

妻の不倫相手に慰謝料請求するための証拠

不倫相手に慰謝料請求をするためには、原則として、妻と不倫相手が性交渉をしたことの証拠が必要です。「原則として」といいますのは、キスなど性交渉がなくとも慰謝料請求が認められることがあるからです。

妻のスマートフォンやパソコンから妻と不倫相手との性交渉の動画、写真が発見されることがあります。これらの証拠は性交渉を直接的に証明可能な証拠です。

また、このような直接的な証拠でなくとも、妻と不倫相手がホテルや不倫相手の自宅に泊まったことがわかる写真や動画、LINEのやり取りからも性交渉を認定することが可能です。

これらの証拠が全く得られないときは、探偵に依頼することを検討しましょう。

探偵は調査時間が長いほど調査費用が高額になりますので、できる限り、この日は二人が会うだろうと予測される日を特定して依頼しましょう。

名前や住所がわからないとき

慰謝料請求をする場合、不倫相手の氏名と住所又は職場の情報が必要です。

LINEなどのメッセージを送って慰謝料請求をすることも可能ですが、無視をされたり、アカウントを削除されてしまった場合にはそれまでとなってしまいます。そのため、氏名と住所が必要となります。

氏名と住所がわからない場合には調査が必要です。探偵に依頼して調査してもらうことも可能ですが、不倫相手の携帯電話番号又は車のナンバーがわかるときは、弁護士に調査依頼をした方が費用は安く済みます。

弁護士は、弁護士会照会という制度を利用して、携帯電話会社に契約者の氏名及び住所を照会したり、運輸局に車の所有者・使用者の氏名及び住所を照会することができるのです。

妻の不倫相手に慰謝料を請求できないケース

以上のように不倫の証拠があり、不倫相手の氏名及び住所がわかっているのであれば、慰謝料請求できるのが原則です。

ところが、このように証拠と情報が揃っていても慰謝料請求が認められないことがあります。そのようなケースについて以下、見て行きましょう。

既婚者と知らなかった場合

不倫相手が妻のことを独身だと信じていた場合には、婚姻関係を侵害することについて故意がありませんので、不倫相手に慰謝料を請求することができません。

マッチングアプリなどで知り合った、飲み屋で知り合ったというケースでは、しばしばこのようなことがあります。

ただし、例えば、不倫相手が妻のことを既婚者ではないかと疑っているようなメッセージのやり取りなどがある場合、家族がおらず独身と信じたことに過失があるとして、慰謝料請求が認められる理由になる可能性があります。

つまり、既婚者とは知らなかったと言えば常に慰謝料請求が否定されるわけではありません。

夫婦関係が破綻していた場合

不倫とは、婚姻共同生活の平穏を侵害する行為です。

不倫関係が始まる前の時点で、既に夫婦関係が破綻していた場合には、このような婚姻共同生活の平穏は存在しません。そのため、不倫相手に慰謝料を請求できません。

もっとも、ここでいう「破綻」とは、破綻の程度が相当重いものであり、例えば、別居期間が5年に及んでいたような場合には夫婦関係の破綻が認められるでしょうが、ただ夫婦喧嘩が絶えなかったという程度では破綻は認められません。

消滅時効が完成している場合

3つ目は、消滅時効が完成している場合です。

不倫の慰謝料請求権は、妻の不倫と不倫相手を知ってから3年間、不倫のときから20年間で消滅時効が完成します(民法第724条)。消滅時効が完成しますと、それ以降、不倫相手は慰謝料を支払う必要がなくなります。

当初は慰謝料請求をするつもりはなかったけれども、数年後にやはり慰謝料請求をしようと思い立ったという場合には、消滅時効が完成してしまっている可能性があります。

妻が不倫で妊娠したときの夫の対応

妻が不倫相手の子を妊娠、出産することがあります。このような場合は、夫はどのような対応を取ればよいのでしょうか。

妻が中絶や流産をした場合

妻が不倫相手の子を妊娠したものの、中絶、流産によって出産しなかった場合、不倫自体だけでなく、大切な妻の心身が傷つけられたことによって、夫の精神的苦痛は一層大きなものとなります。

もちろんこの場合も、夫は不倫相手に対して慰謝料請求をすることができますし、精神的苦痛はより大きいため、慰謝料の相場は通常よりも高くなります。100万円が相場のケースでは、150万円ほどになる可能性があります。

妻が出産した場合

次に、妻が不倫相手の子を出産した場合の対応です。

夫の子と推定されてしまう

妻が出産した子は、自分自身と血のつながった子ではなく不倫相手の子であるのに、法律上、夫の子と推定されます。

結婚から200日が経過した以降又は離婚から300日以内に出産した子は、妻が婚姻中に懐胎した子と推定されます(民法第772条2項)。そして、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます(同条1項)。

このように妻が出産した子は夫の子と推定され、出生届を出すと戸籍にも夫の子と記載されてしまうのです。

嫡出を否認する

このように法律上夫の子と推定されてしまうのですが、出産を知ってから1年以内であれば、夫は家庭裁判所に嫡出否認の訴えを起こすことができます(民法第774条、777条)。

この嫡出否認の訴えにおいてDNA鑑定をして、夫の子ではないことが確定すると、法律上の親子関係も否定され、戸籍の訂正が可能となります。

とはいえ、戸籍の訂正といっても、線が引かれるだけであり記載が綺麗に無くなるわけではありません。

このように記載が残ってしまうことを避けるには、戸籍法上違法な状態となってしまいますが、出産後、嫡出否認が確定するまでは出生届を出さないでおく他ありません。

妻が不倫したら離婚する?離婚しない?

妻の不倫が発覚したときには、妻と離婚するのか、夫婦関係を続けるのか悩むことでしょう。

妻と離婚するのか、離婚はしないのかを考える際に留意していただきたいことがありますので、以下ご説明します。

不倫による離婚は夫に有利とは限らない

妻の不倫が原因で離婚するのだから、当然、離婚は夫に有利に進むと考えたいところです。しかし、実は、必ずしもそうとは限らないのです。以下見て行きましょう。

不倫慰謝料だけでなく離婚慰謝料も

離婚する際には、不倫をした妻に対して慰謝料を請求することが可能です。

不倫慰謝料については不倫相手と妻が連帯責任で支払うものですが、離婚の際には不倫慰謝料とは別に離婚慰謝料というものがあります。

これは離婚すること自体から夫が受ける精神的苦痛に対する慰謝料です。離婚慰謝料については不倫相手との連帯責任ではなく、妻だけが支払う義務を負います。

不倫慰謝料が200万円であれば、離婚慰謝料は概ね100万円から150万円ほどです。

妻に多額の財産分与をすることも

離婚の際は夫婦の共有財産を半分ずつに分配する財産分与を行います。

実は、この半分ずつにするという財産分与には妻が不倫した事実は影響しないのです。つまり、不倫がなかった場合と同じだけ財産を分配しなければなりません。

そうすると、夫が働き、妻は専業主婦の場合、夫は働いて築いてきた財産の半分を妻にあげることになります。夫が資産家であれば数千万円、数億円単位の財産を妻に分与することになるかもしれません。

先ほどのとおり、慰謝料はせいぜい300万円である一方、夫は財産分与としてそれを遥かに上回る金額を妻に分与する場合があり、かえって夫が経済的なダメージを受けることになってしまう可能性があります。

離婚すると不倫した妻が親権を取ることも

また、親権についても不倫の事実は基本的に影響しません。不倫をした妻が親権をとることは可能なのです。

不倫をしたとしても妻による子の養育に何ら問題がなかった場合には、妻に親権が認められる可能性が高いです。そうなると、妻が不倫をしたから離婚することになったのに、夫は子と生活できなくなってしまうのです。

不倫した妻を許すなら夫婦間契約を!

一方、不倫をした妻とは離婚をせずに夫婦関係を続けていくという場合、一つのケジメとして、また今後の不倫の防止のためにも夫婦間契約を作成することをお勧めします。

夫婦間契約とは夫婦の間で交わす契約一般をいいますので、妻が不倫をした場合にだけ作成されるものではありません。不倫した妻との夫婦間契約には、夫婦間の約束事や再び不倫をしたときのペナルティなどを定めます。

例えば、以下のような内容です。

  • 夫が要求したら直ちに携帯電話を見せること
  • 妻は携帯電話のGPS情報を夫に共有すること
  • 再び不倫をしたら離婚すること
  • 離婚時の慰謝料は500万円とすること
  • 親権者は夫とすること
  • 妻は財産分与を放棄すること

夫婦間契約は夫婦だけで作成すると法的効力を否定される可能性が高まりますので、作成するときは必ず弁護士に依頼をしましょう。

まとめ

以上、妻が不倫をしたときの夫の対処法について解説しました。

妻の不倫相手に慰謝料を請求したい、妻と離婚したい、妻と夫婦間契約を結びたい、いずれの悩み・不安に対する最善の解決のためには、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。

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