効果的な不倫の示談書とは?作り方や注意点を専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月18日

効果的な不倫の示談書とは?作り方や注意点を専門弁護士が解説

  • 示談するときは示談書をつくった方がいいの?
  • 示談書にはどのようなことを入れるべきなの?
  • 示談書を取り交わすときの注意点はある?

示談書に触れた機会がない方が多いでしょうから、どのような内容で、どのように示談書を作成したらよいのか分からない方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

今回は不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が示談書の内容や注意点などについて解説をいたします。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫の示談書とは?

示談とは、和解と言い変えることが出来ます。

民法第695条によると「和解は当事者が互いに譲歩して、その間に存在する争いをやめることを約するによりその効力を生ずる」とされています。

つまり、和解とは紛争の当事者(解決金を請求する側とされる側)が互いに譲歩をして、争いをやめることを約束することにより、その効力が生まれるということです。

示談書の役割

示談、和解の内容をまとめた文書のことを「示談書」といいます。解決金の金額や支払方法、接触禁止等を取り決め、解決後のトラブルを防ぐために作成します。

口約束では、言った言わないというトラブルを後々引き起こすこととなりかねませんので、示談する際にはこのような書面を作成するのです。

「和解書」もタイトルは異なりますが、示談書と同じと考えて良いです。

誓約書とは違うのか

誓約は、一方が他方に対して、何か誓うということです。誓約書は、どちらか一方が署名押印をし、他方に「内容について必ず守ります」と意思表示をするものです。

また、弁護士などの専門家が作ったものでない場合、タイトルは誓約書でも、当事者双方が署名捺印して約束している、実態は示談書や和解書になっているものも散見されます。

不倫で示談書をつくるメリット

不倫の示談書は、作成を請求する側・される側双方にとってメリットがあります。ここでは、示談書の作成を請求する側・される側それぞれの立場から見たメリットを解説します。

請求をする側

まず、示談書の作成を求める側にとってのメリットをお話します。

  • 不倫の再発防止になる
  • 訴訟の際の証拠となる

不倫の再発防止になる

示談書の作成は、不倫の再発防止に有効です。

不倫をされた側は、結婚生活を今後も続ける場合、今回と同じ過ちを配偶者が繰り返すのではないかという不安にかられることもあるでしょう。2度と同じ過ちをおかして欲しくないと願うのは、結婚生活を続けていく上で当然のことと言えます。

違約金や接触禁止を示談書に記載することで、不倫の再発を防止するメリットがあります。

訴訟の際の証拠となる

示談書は、訴訟の際の強力な証拠となります。

不倫を否定している場合には、不倫を認めて示談書を作成したことは不倫を証明する強力な証拠です。また。不倫を認めて示談書を作成したのに示談金を支払って来ない場合には、示談金を支払わせるための強力な証拠となります。

裁判所は示談書に記載のとおりの合意があったと推定しますので、そうではないということは相手が証拠で証明しなければなりません。

例えば、示談書に無理やりサインさせられたという事実は相手が証明できなければ、そのような強迫はなかったという認定になります。

ただし、法外な金額の示談金が記載されている場合には、相手の証明を要することなく、示談書が無効となることがありますので要注意です。

請求をされる側

次に、示談書作成を求められる側にとってのメリットを説明します。

示談の成立後、問題が蒸し返されにくい

示談書がない場合、慰謝料を支払ったのに更に慰謝料を請求される可能性があります。

示談書には、「この示談書に記載のほか、甲と乙との間には何らの債権債務関係もないことを確認する。」という条項があります。示談成立後はお互いにこれ以上何も請求できないことの確認です。

なお、まだ示談書の署名捺印をしていないのに慰謝料を支払ってしまう方がいますが、厳禁です。署名捺印をするまでは未だ示談は成立していませんので、必ず、示談書締結後に支払いをしましょう。

不倫の示談書に盛り込むべき項目

それでは実際に示談書を作成する際に、記載するべき8項目について具体的にご説明します。不倫相手との間で和解をする際に作成する示談書に定めるべき和解条項は以下のとおりです。

記載すべき8項目
  1. 不貞行為を認め、謝罪の意を表明する条項
  2. 解決金の支払義務を認める条項
  3. 解決金の支払い期限、支払い方法に関する条項
  4. 他言禁止
  5. 接触禁止
  6. 求償権の放棄
  7. 違約金
  8. 清算条項

以下、各条項について順にご説明します。

各条項内には甲、乙、丙という文言がでてきます。以下の表をご確認ください。

不貞行為を認め、謝罪の意を表明する条項

乙は、甲に対し、乙が丙と不貞関係にあったことを認め、これについて深く謝罪する。

謝罪の意を表明する条項は何か法的効力があるわけではありませんが、このような条項を入れることを希望する方もおられます。

他方、不貞相手によってはこのような条項を入れることに強く抵抗を示す方もいますので、そのようなケースでは示談成立を優先させるのか、このような条項を入れることを優先させるのか、慎重に検討する必要があります。

なお、「謝罪する」とありますが、謝罪文を作成したり、会って謝罪するということではなく、あくまで示談書上の文言として謝罪をするという意味です。

解決金の支払義務を認める条項

乙は、甲に対し、本件の解決金として、金100万円の支払義務があることを認める。

不貞相手に解決金の支払い義務(債務)を負わせるための重要な条項です。

金銭の名目は「解決金」、「和解金」、「示談金」としても良いですし、金銭の性質が不貞慰謝料であることが明確になるように「不貞の慰謝料」としても構いません。

金銭の名目について揉めることは稀ですが、不貞行為は認めないけれど早期解決のために金銭を支払うケースでは、「解決金」という責任を認めたか認めていないかという点で中性的な名目とすることが通常です。

解決金の支払い期限、支払い方法に関する条項

乙は、甲に対し、令和3年9月31日までに、前項の金100万円を下記預金口座へ振り込む方法によって支払う。但し、振込手数料は、乙の負担とする。
乙は、本日、甲に対し、前項の金100万円を支払い、甲はこれを受領した

振込方法によるのか、現金支払の方法によるのかを記載します。現金支払の場合、本示談書自体が金銭の授受があったことの証拠となりますが、支払いがあったことの証拠を確実にするために、別途、領収書を作成しても良いでしょう。

請求される側の解決金の支払能力が乏しく、支払いが何年にもわたる長期分割になる場合は、当事者双方の同意は必要ですが、公正証書を作成すると良いでしょう。

一定の要件を満たして作成することで、解決金の支払いが滞って約束が果たされなくなった場合、財産を差し押さえる強制執行の手続きを行なうことができます。

このような強制力を付すことで、解決金を支払う側も支払いを滞らないようにしなければという思いが生まれ、支払いの確実性が上がります。

他言禁止

甲及び乙は、本示談書締結時以降、乙と丙が不貞関係にあったこと、本合意書の存在及び内容、その他本件に関する甲、乙又は丙を特定しうる事実を、口頭、電話、メール、LINE、SNSその他のいかなる方法を用いても、正当な理由なく第三者に口外・伝達しないことを約する。

不貞関係について親族、友人や職場の人などに広められないようにするための条項です。「みだりに」や「正当な理由なく」と文中に入れる事が多いです。

違反行為があった場合の違約金を設けることもよくありますが、違約金を請求するためには、相手が口外・伝達したことを立証する必要があります。

また、示談の時までに既に第三者に口外・伝達している場合があります。そうすると、たとえ相手が示談した時以降は口外・伝達しなくても、既に不貞関係を知っている第三者から広まる可能性もあります。

既に知っている第三者の行動については相手が100%コントロールすることはできませんので、第三者が更に口外・伝達することがないよう努めるといった努力義務を課す以上の義務を課すことはできないでしょう。

接触禁止

乙は、本示談書調印時以降、面会、電話、メール、LINE、SNSその他のいかなる方法を用いても丙に対して接触を図ってはならず、丙から接触があったときは、一切応答してはならない。但し、職場の業務上必要やむを得ない場合にはこの限りではない。

不倫相手が配偶者と再び不貞行為に及ぶことを防ぐために、接触禁止を課す条項です。これについても違反行為があった場合の違約金を設定することがよくありますし、実際に違反行為があって違約金を請求するケースもよくあります。

あまりに高額な違約金を設定すると法的効力が否定される可能性がありますので、数十万から100万円ほどにとどめるのが安全です。

ただし、一般的に相手夫婦が離婚した後は、不倫相手と接触しても原則は問題ないとされています。接触禁止条項は、相手方夫婦が婚姻関係を続けている場合にのみの接触禁止を定めたものと解釈されます。

求償権の放棄

乙は、本件に関する、丙に対する求償権を放棄する。乙が丙に対して求償請求をしたときは、乙は甲に対し、丙から受領した金銭の全額を支払うものとする。

不倫相手から配偶者への求償請求を防ぐために、求償権を放棄してもらう条項です。しかし、求償権は、不倫相手が配偶者に対して取得する権利です。

そのため、不倫相手が配偶者に対して求償権を放棄すると意思表示すれば、権利を放棄したことになりますが、不倫をされた配偶者に対して求償権を放棄すると宣言しても法的に権利を放棄したことにはなりません。

ですから、法的に有効に求償権を放棄させるためには示談書の当事者に不倫をした配偶者も入れて3人で署名捺印をするか、上記のように約束を破って求償した場合には受け取った金銭の全額を支払う義務を課す条項を設けることで事実上、求償することを制限することになります。

違約金

前条に違反した場合は、丙は甲に違約金として100万円を支払う

違約金に関する定めは民法420条の賠償額の予定として、強い効力が認められています。ただし、極端な例ですが、年収が数十万円の人に、違反した場合は数億円を支払うという記載をした場合は、公序良俗に反するなどの理由で無効となります。

また、「接触1回につき違約金50万円」という表現にしてしまうと、LINE等でのメッセージ1回送信につき違約金発生なのか不明確で、効力否定される可能性があります。単に接触したら幾らという表現がよいでしょう。

なお、単なる接触と不貞行為は異なりますので、「接触なら50万円、不貞行為は200万円」と費用を分けて記載をすることもあります。

清算条項

甲と乙は、本合意書記載のほか、本件に関し、甲乙間に何らの債権債務関係が存しないことを相互に確認する。

示談書に記載されたこと以外に示談書の当事者間には債権債務関係はないことを確認する条項です。

債権債務関係がないことの確認とは、この示談書を作成した後は、その時点までの不貞行為を理由に更に慰謝料請求をすることはできないことや、口外禁止、接触禁止などの示談書に定められた以外の義務は負わないことの確認をいいます。

不倫の示談書が無効になるケース

以上のとおり、示談をする際には必ず示談書を作成すべきなのですが、示談書を作成する際には注意点がありますので、以下ご説明します。

請求をする側

慰謝料を請求する側の示談書作成の際の注意点です。

  • 公的良俗に反する内容は記載しない
  • テンプレートを使うときの注意点
  • 無理やりサインさせるなどした場合は、無効となる場合があるので要注意

公的良俗に反する内容は記載しない

先ほどもご説明しましたように、公的良俗に反する内容は記載をしても無効となります。

人権を無視するような制約の要求をしたり、高額過ぎる解決金の支払いを定めることは無効となる可能性があります。注意が必要です。

テンプレートを使うときの注意点

インターネット上には、示談書に関するテンプレートがさまざまあります。

法的な観点から不十分なもの多くあり、ご自身のケースには合わないものもあります。必ず弁護士のチェックを受けることがよいといえます。示談をしたのに思いがけない結果になってしまう可能性もあります。

無理やりサインさせるなどした場合は、無効となる場合があるので要注意

無理やりサインをするように脅しをしたり、考える猶予を与えずに力ずくで示談書にサインを書かせようとした場合、無効になる可能性もあります。最悪の場合、刑事事件として訴えられることもあります。

請求をされる側

慰謝料を請求される側の示談書作成の際の注意点です。

安易に示談書にサインをすることは、決してしないようにしましょう。サインをするということは、その内容に合意をしたということとなり、公的良俗に反する内容でなければ、法的に認められる可能性もあります。

慰謝料が高額な場合には弁護士に相談したい等という理由を伝え、その場でサインすることは決して避けましょう。

不倫の示談書にサインをさせる際のポイント

示談書を作成する必要があることはご理解いただけたかと思いますが、話し合いの末、いざ不倫相手に示談書へのサインを求めたところ、それを拒否されることがあります。

このようなことにならないよう、以下2点に注意しましょう。

・証拠があることを伝える
・慰謝料金額を法外な金額に設定しない

請求される側は、請求側が決定的な証拠がないのに示談を求めていると高を括っている可能性があります。もちろん証拠がないのに証拠があると嘘をつくことは、後々にご自身の首を絞める事となる為、おすすめはしません。連絡の際に、証拠に基づき示談書を締結しようとしているということを伝えることは有効です。

また、金額設定を高くしすぎてしまうと相手が怯んでしまい、示談がまとまらないこともあります。ご自身の気持ちと折り合いをつける必要も出てきますが、以下を参考に解決金の金額を設定するのも1つでしょう。

不倫の示談書を締結するまでの流れ

最後に、慰謝料請求から示談書を締結、解決までの流れを確認しておきましょう。

  1. 内容証明の送付
  2. 示談交渉
  3. 示談書の提示・締結
  4. 解決金の支払い

内容証明送付

慰謝料を請求することが、示談書を締結する為の第一段階となります。相手との協議を開始する為には、内容証明送付以外にLINEやメールなどのやりとりの方法もあります。この際に、やりとりの証拠や配達証明書を残しておくということも重要です。

示談交渉

裁判を利用せず、示談交渉を成立させるには、示談に向けた条件面におけるお互いの譲歩が求められます。安易な譲歩は不要ですが、お互いが譲らない状況が続けば、精神的に長期間苦痛を味わう事となります。

示談書の提示・締結

示談書案を作成し、その内容で問題がなければ締結します。示談書の締結方法は、直接会って交わすこともありますが、郵送の方法でも締結可能です。

  • 示談書を用意した側が示談書2通を用意し、署名と押印をします。
  • 示談書2通を相手へ郵送します。
  • 相手方は、受領後に2部ともに署名と押印し、1部を相手に返送し、互いで原本を保管する事となります。

解決金の支払い

示談書締結後、解決金を指定の口座に支払います。その際には、支振込明細書も証拠として保存しておきましょう。

まとめ

以上、不倫問題における示談書の内容や注意点についてご説明しました。

シンプルで典型的な示談書については、敢えて行政書士や弁護士に依頼せずとも、ご自身で作成することで足りるでしょう。

もっとも、弁護士が代理人として不倫相手と示談書を交わせば、不倫相手としても示談書に違反すれば法的請求がされると思うでしょう。示談書を厳守させたいという場合には弁護士に作成を依頼しましょう。

また、典型的なものではなくオーダーメイドな示談書を作成したいという場合や、そもそも示談条件について相手と交渉がまとまらないという場合には、不倫問題の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

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