口コミが営業妨害に?例と問われる罪・対処法を徹底解説
最終更新日: 2024年11月30日
- SNSやネット掲示板の誹謗中傷で私の店舗が営業妨害を受けている。なんとか投稿者を特定したい。
- 私は気に食わない店舗の誹謗中傷を行った。どのようなペナルティを受けるか不安だ。
- 口コミによる営業妨害を解決するには、弁護士に相談した方がよいのだろうか?
SNSやネット掲示板では、店舗への口コミが盛んに投稿されています。しかし、中には営業妨害となり得る誹謗中傷の投稿も存在します。
口コミによる営業妨害が発生したら、店舗側は投稿者を特定し、民事責任・刑事責任の追及が可能です。
そこで今回は、ネット上での口コミのトラブル解決に携わってきた専門弁護士が、口コミによる営業妨害への対処法、営業妨害で問われる罪等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 口コミは店舗を利用したお客の反応がわかる反面、誹謗中傷による営業妨害を受けるリスクも存在する
- 口コミによる営業妨害を行った者は、名誉毀損や信用毀損及び業務妨害等に問われる可能性がある
- 営業妨害の被害者も加害者も、専門弁護士に相談し対処方法を話し合おう
口コミは営業妨害になるのか
口コミは、店舗側が来てくれたお客の率直な感想を知るツールの一つです。
自らのホームページやGoogle口コミ、その他のSNSやネット掲示板を参考に、サービスを工夫している店舗も多いことでしょう。
当然ながら口コミには厳しい批判もありますが、店舗のサービス改善に役立つ感想といえます。
ただし、口コミの中には理不尽ないいがかりや、バッシングも存在します。それを真に受けた他の閲覧者が、あなたの店舗にネガティブなイメージを持つ可能性もあるでしょう。
誹謗中傷の口コミで深刻な営業妨害を受けた場合、投稿者を特定し損害賠償請求や刑事告訴が可能です。
口コミによる営業妨害の例
あなたの店舗が、第三者から誹謗中傷の口コミを投稿され続けている場合、放置や無視をしていると深刻な状況に陥るおそれがあります。
口コミの内容は更に拡散されてしまう可能性もあるので注意が必要です。
売上減少
あなたの店舗の収益が誹謗中傷の口コミにより、大幅に減少する事態が想定されます。
チェーン店であっても「味は他のお店と変わらないが、調理場に害虫が大量にいる。衛生面最低。」等と投稿されてしまうと、やはり売上に影響が出てしまう可能性もあるでしょう。
投稿の削除申請はもちろん、投稿者に対して何らかの措置をとる必要があります。
顧客離れ
誹謗中傷の口コミが多くなると、日ごろからあなたの店舗を利用していた常連客の足も遠のく可能性があります。
顧客が離れていくと経営状態は悪化し、閉店(倒産)のリスクが増大します。
あなたの店舗への正当な批判なのか、それとも誹謗中傷の口コミなのかを見極め、迅速に対応する必要があるでしょう。
従業員の精神的ダメージ
あなたの店舗の衛生環境や、味・サービスに関する誹謗中傷の口コミだけではなく、従業員への攻撃も無視できません。
SNSやネット掲示板で気に食わない従業員を名指しし、誹謗中傷の投稿が行われるケースもあります。
口コミで実名を投稿され、誹謗中傷を受ける従業員の精神的ダメージは大きいことでしょう。速やかな投稿の削除申請が必要です。
なお、従業員のネームプレートには、名字のみでかつ平仮名で表記すれば、実名が投稿されるリスクを軽減できます。
ブランドイメージの低下
あなたの店舗の商品やサービスが人気であるなら、誹謗中傷の口コミによるブランドイメージの低下が懸念されます。
「〇〇店は国内産の牛肉を売りにしていたが、今は得体の知れない病気に感染した牛肉を利用しはじめた」等と投稿されたら、口コミの閲覧者は動揺することでしょう。
全く根拠のないデマを投稿した者には、損害賠償および刑事告訴による責任追及で、ブランドイメージの低下を食い止めます。
口コミによる営業妨害で問われる罪
誹謗中傷の口コミが店舗の営業妨害になった場合、投稿者は店舗側に刑事責任を追及される可能性があります。
裁判所から有罪判決を受け、言い渡された刑罰によっては重いペナルティを受けるおそれもあるでしょう。
名誉毀損
名誉毀損罪とは、あなたの店舗にとって誹謗中傷となり得る情報を公然と摘示し、社会的評価を低下させる罪です。
口コミによる誹謗中傷が本当でも嘘でも具体的な内容の投稿であり、店舗の社会的評価が下がった場合、本罪が適用されます。
たとえば「〇〇店では感染症で死亡した牛や豚の肉を食材として利用している。とんでもない飲食店だ。」という誹謗中傷が該当します。
口コミの投稿者が名誉毀損で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、「3年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日から拘禁に統一)または50万円以下の罰金」が言い渡されます(刑法第230条第1項)。
侮辱
侮辱罪とは、具体的な内容の投稿といえないものの、公然とあなたの店舗を侮辱する罪です。
あなたの店舗に対して「さっさと閉店しろバカ野郎」「店長も店員もマジ無能」等と侮辱した場合が該当します。
ただし、店舗が飲食店の場合「マズイ」「口に合わない」という投稿は、侮辱罪にあたらない可能性があります。なぜなら、好き嫌いは利用客ごとに異なりますし、本当にメニューの改善が必要な場合もあるからです。
投稿者が侮辱行為で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、「1年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日から拘禁に統一)若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が言い渡されます(刑法第231条)。
信用毀損及び業務妨害
信用毀損及び業務妨害罪(偽計業務妨害罪)とは、嘘をついて、あなたの店舗の業務を妨害したとき適用される罪です。
なお、あなたの店舗の業務に何ら影響が生じなくとも本罪は適用されます。
虚偽情報の拡散の他、特定かつ少数の方々に伝える行為も本罪の対象です。
たとえばSNSやネット掲示板に「〇月〇日〇時、〇〇店で毒ガスを散布する。」と投稿すると、信用毀損及び業務妨害罪にあたる可能性があります。
偽計業務妨害で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、「3年以下の懲役(2025年6月1日からは拘禁)又は50万円以下の罰金」が言い渡されます(刑法第233条)。
威力業務妨害
威力業務妨害罪とは、威力を用い、あなたの店舗の業務を妨害したとき適用される罪です。
あなたの店舗の業務へ何ら影響が生じなかった場合でも本罪は適用されます。
店長や店員の意思を制圧するような行動(大声をあげての威嚇)の他、SNSやネット掲示板の誹謗中傷も本罪に該当する可能性があるでしょう。
威力業務妨害罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、「3年以下の懲役(2025年6月1日からは拘禁)又は50万円以下の罰金」が言い渡されます(刑法第234条)。
電子計算機損壊等業務妨害
電子計算機損壊等業務妨害罪とは、店舗が業務用に利用するパソコン類へ影響を与える罪です。次のようなケースが該当します。
- あなたの店舗の業務で使用するパソコン等を破損させ、業務を妨害する行為
- コンピュータに虚偽の情報・不正な指令を与える行為
- その他の方法でパソコン等に動作阻害を生じさせる行為
たとえば、あなたの店舗用のパソコンに保存されていたデータを、第三者が無断で削除し業務妨害を行った場合、本罪が適用されます。
業務妨害を行った者が、本罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、「5年以下の懲役(2025年6月1日からは拘禁)又は100万円以下の罰金」が言い渡されます(刑法第234条の2)。
口コミによる営業妨害を受けたらすべきこと
あなたの店舗が誹謗中傷の口コミによる営業妨害を受けた場合、口コミの削除の他、投稿者の特定も可能です。
ただし、店舗の業務を行いながら、法的な手続きを進めるのが困難な場合、弁護士にサポートを依頼した方がよいでしょう。
削除申請
SNSやネット掲示板の運営者に誹謗中傷の口コミの削除を要請しましょう。
ほとんどのSNS・ネット掲示板には、投稿の「削除依頼フォーム」が用意されているので、指示に従い必要事項を入力後、運営側へ送信します。
電話によりオペレーターが受付を行うところもありますが、削除依頼フォームやサイトに明記されたメールアドレスへ削除申請するのが、一般的な方法です。
ただし、口コミ投稿者の特定を行いたい場合は、「発信者情報開示請求」または「発信者情報開示命令」の手続きを先に進めていきます。
発信者開示請求
誹謗中傷した口コミ投稿者を特定する方法として、「発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条)」「発信者情報開示命令(同法第8条)」の2種類があります。
ただし、SNS・掲示板運営者のIPアドレスやプロバイダのログが消える前に(双方とも保存期間は通常3〜6か月)手続きをしないと、口コミ投稿者の特定が不可能となるので注意しましょう。
発信者情報開示請求は、裁判所の関与なしに運営者等へ任意開示を請求できる点が特徴です。SNS・掲示板の運営者→プロバイダへと順次情報開示を進めていきます。
発信者情報開示請求の手順は、次の通りです。
- 1.SNS・掲示板の運営者に任意開示請求とログ保存請求:投稿者の氏名や住所等の特定は不可能だが、IPアドレスの開示で、口コミ投稿者の利用しているプロバイダがわかる。また、ログ保存を要求し、投稿者に関する情報が消えないようにする。
- 2.運営者が開示に応じない場合、裁判所に「発信者情報開示仮処分」を申し立て、IPアドレス開示を求める。
- 3.プロバイダが判明したら、当該プロバイダに口コミ投稿者の情報開示請求。
- 4.プロバイダが開示に応じない場合、裁判所に「発信者情報開示請求訴訟」を提起する。
- 5.プロバイダから口コミ投稿者の情報開示を受け、投稿者の氏名・住所・メールアドレス等を確認する。
一方、発信者情報開示命令は最初から裁判所に申し立て、SNS・掲示板の運営者とプロバイダへの開示を、一括で請求する非訟手続です。
- 1.裁判所に発信者情報開示命令を申し立てる。
- 2.裁判所が申立を認めた場合、運営者に「IPアドレス提供命令」、運営者・プロバイダに発信者情報の消去を禁じる「消去禁止命令」も実行する。
- 3.裁判所がプロバイダに発信者情報開示を命じる。
- 4.プロバイダから口コミ投稿者の情報開示を受け、投稿者の氏名・住所・メールアドレス等を確認する。
情報開示・命令手続きのどちらを選んでも構いません。ただし、開示命令の方が1回の裁判手続で情報開示請求ができるので、迅速に口コミ投稿者を特定できます。
弁護士への相談
誹謗中傷した口コミに悩んだら、ネット上のトラブル解決に実績のある弁護士と相談しましょう。
弁護士は業務妨害の状況を確認し、次のようなアドバイスを行います。
- 誹謗中傷の口コミで業務妨害された場合の対処方法・流れ
- 削除申請の方法
- 口コミ投稿者を特定する手順
- 投稿者を特定した後の措置の説明 等
相談を受ける中で、「弁護士に対応を任せた方がよい。」と感じたら、そのまま委任契約に進んでも構いません。
弁護士を代理人にすれば、次のような手続き等を全て任せられます。
- 口コミ投稿者を特定する手続き→発信者情報開示請求または発信者情報開示命令
- 口コミの削除申請→投稿者やSNS・掲示板運営者への削除申請、削除の仮処分申立て
- 投稿者と話し合いで解決→示談交渉
- 口コミ投稿者に民事責任を追及したい→損害賠償請求訴訟の提起
- 口コミ投稿者に刑事責任を追及したい→刑事告訴
どのような法的措置をとるか慎重に協議後、あなたの希望に従い弁護士が手続きを進めていきます。
口コミによる営業妨害をしてしまったらすべきこと
あなたが誹謗中傷の口コミで店舗の営業妨害を行ったならば、店舗側からあなたの個人情報が特定されてしまう場合もあるでしょう。
プロバイダから店舗側の情報開示に応じてよいかを尋ねる「意見照会書」が届いた場合、あなたの個人情報はいずれ特定されてしまうと判断できます。
意見照会書が届いたら、なるべく早く弁護士と相談し、対応を協議しましょう。
弁護士への相談
プロバイダから意見照会書が届き対応に困ったら、まず弁護士に相談しましょう。
弁護士は意見照会書の内容を確認したうえで、次のアドバイスを提供します。
- 意見照会書の内容とあなたの主張が異なる場合の回答方法
- 意見照会書への反論内容を検討するポイント
- 意見照会書の内容を認めた場合の対応
- 店舗側との示談交渉の必要性
- あなたの個人情報が特定された後のリスク
弁護士と相談し、代理人として対応を依頼したなら、意見照会書の作成・返送、示談交渉、法的措置への対処等も全て任せられます。
相手の当否判断
店舗側が誹謗中傷の口コミをしたと主張しても、刑罰で問われる要件に該当しない場合もあるでしょう。
冷静に、店舗側の主張が妥当かどうかの判断を行います。たとえば、店舗側が名誉毀損を主張した場合は、「公共の利害に関する場合の特例(刑法第230条の2)」に該当するかを確認します。
次の3要件を全て満たせば、店舗側が主張する名誉毀損の口コミにはあたりません。
- 公共性:口コミが公共の利害に関する事実と関係する
- 公益性:口コミが専ら公益を図る目的であった
- 真実性:摘示された事実は真実であると証明された
ただし、上記の要件を法律の素人の勝手な解釈で判断はできないので、必ず弁護士の助言を受けましょう。
反論内容の検討
プロバイダからの意見照会書を確認し、情報開示に同意するか拒否するか、それとも照会書自体を無視するかはあなた次第です。
しかし、意見照会書の内容に反論したい部分があれば、説得力のある根拠をあげ反論する必要があります。
弁護士を代理人としている場合は、あなたに代わって意見照会書への反論する文章の記載、返送を任せられます。
譲歩ポイントの検討
あなたに誹謗中傷の口コミをしたという自覚があるなら、早期に店舗側との和解に動いた方がよいです。
意見照会書への情報開示に同意したうえで、店舗側に示談を申し込みましょう。
示談交渉では次のような取り決めを行います。
- あなたが店舗に謝罪し、二度と誹謗中傷の投稿はしない旨
- 口コミ投稿の削除、拡散防止に努める旨
- 示談金額、支払方法、期限の決定
- 店舗側が損害賠償請求や刑事告訴をしない旨(すでに告訴をしているなら取下げ)
- 示談成立後はお互いが誹謗中傷の問題を蒸し返さない旨
示談交渉で難しいのは示談金額の決定です。営業妨害を受けた店舗側はあなたに怒り、数百万円にも上る示談金(和解金)を要求してくる可能性があります。
示談金額は営業妨害の損失状況にもよりますが、実際のところ100〜200万円前後が相場です。
弁護士を交渉役とすれば、店舗側との減額交渉を粘り強く進めることでしょう。
ただし、示談不成立の場合、あなたは民事裁判・刑事裁判で責任を追及されるおそれがあります。
あなたが話し合いによる解決を目指すならば、相場より多めに示談金額を支払うと告げ、ある程度譲歩すれば、示談が成立する可能性も高くなります。
口コミによる営業妨害なら弁護士にご相談を
今回は口コミのトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、口コミによる営業妨害へどのように対応するのか等を詳しく解説しました。
誹謗中傷の口コミによる営業妨害を確認したら、まずは弁護士と相談し、今後の措置を慎重に検討していきましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。