痴漢の示談書をテンプレートで作るリスク|「清算条項」は入っていますか?
最終更新日: 2025年12月04日
痴漢トラブルを起こしてしまい、幸運にも被害者と直接話し合いができている方へ。 「ネットで無料の示談書テンプレートをダウンロードして、サインをもらえば解決だ」 「弁護士に頼むと高いから、自分たちだけで済ませよう」
そう考えて手続きを進めようとしていませんか? 警告します。その「自作の示談書」では、ご自身の身を守れない可能性が高いです。
示談書は、単なる「お金を払った領収書」ではありません。刑事処分(逮捕・起訴)を回避し、将来のトラブルを封じ込めるための強力な法的文書である必要があります。 ネット上のひな形をそのまま使うと、重要な条項が抜けていたり、無効になったりして、「お金を払ったのに、後日逮捕された」「数ヶ月後にまた請求が来た」という最悪の結末を招くリスクがあります。
この記事では、テンプレート利用の落とし穴と、痴漢示談で絶対に外せない「必須条項」について解説します。
テンプレート利用の落とし穴! 痴漢示談で必須の条項
ネット上の一般的なテンプレートには、金銭のやり取りしか書かれていないものが多くあります。しかし、痴漢事件を解決するためには、以下の2つの条項が不可欠です。
宥恕(ゆうじょ)条項:「罪を許す」意思表示
これが最も重要です。 「被害者は加害者の行為を許し、刑事処罰を求めない」という文言です。 この条項が入っていないと、たとえ100万円支払ったとしても、警察や検察は「被害弁償は済んだが、許してはいない(厳罰を望んでいる)」と判断する可能性があります。 その結果、示談金は払ったのに起訴されて前科がついた、という事態になりかねません。
2. 清算条項:「これ以上の請求を封じる」
「本件に関し、甲と乙の間には、本示談書に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを確認する」という条項です。 これがないと、示談した後になって被害者から「やっぱり精神的苦痛が続いているから、あと30万払って」「通院費を払って」と追加請求されたときに、断ることが難しくなります。 事件を「完全に終わらせる」ためのフタが、清算条項なのです。
当事者同士の署名は「脅迫された」と言われるリスクも
内容が完璧だったとしても、加害者と被害者が二人きりで(あるいは加害者の家族が同席して)署名させること自体にリスクがあります。
被害者が後になって、警察にこう証言したらどうなるでしょうか。 「怖い男の人に囲まれて、無理やりサインさせられました」
こう言われてしまうと、その示談書は「強迫による意思表示」として無効になるだけでなく、最悪の場合、「強要罪」や「証人威迫罪」などの新たな容疑をかけられる恐れがあります。 密室での個人間取引は、常にこの「言った言わない」のリスクを抱えています。
適正な示談金相場(10万〜50万)から外れた合意の無効性
痴漢の示談金相場は、一般的に10万円〜50万円程度(悪質性による)です。 しかし、恐怖心から足元を見られ、「100万円払う」「300万円払う」といった相場とかけ離れた金額で合意してしまうケースがあります。
逆に、あまりに安すぎる金額(数千円など)で示談した場合も、「被害者が混乱している間に不当に安く解決させた」として、後で無効を主張されることがあります。 「法的に妥当な金額」で合意形成することが、後々の蒸し返しを防ぐポイントです。
弁護士名義の示談書が確実な解決を保証する
示談書は、弁護士に作成・締結を依頼することを強く推奨します。
警察・検察への信頼性が違う 弁護士が作成し、警察に提出する示談書は、法的に不備がないことが担保されているため、検察官もスムーズに「不起訴処分」の判断を下しやすくなります。
被害者が安心して応じてくれる 加害者本人からの連絡は無視されることが多いですが、「弁護士」からの連絡であれば、被害者も安心して交渉のテーブルについてくれます。
完璧な条項で「後腐れ」をなくす 宥恕条項、清算条項に加え、口外禁止条項(事件を誰にも言わない)など、あなたの社会的な立場を守るための条項を漏れなく盛り込みます。
まとめ:紙切れ一枚で人生が決まる
示談書は、あなたの「前科」と「将来の平穏」を左右する、極めて重要な書類です。 わずかな費用を惜しんでテンプレートを使い、一生消えない前科がついたり、トラブルが再燃したりしては元も子もありません。
「後でトラブルにならない、完璧な終わり方」をご希望の方は、ご自身で動く前に、必ず専門家である弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。





