宗教にハマった夫や妻と離婚を考えたときに見るべき完全ガイド【弁護士監修】
最終更新日: 2023年07月03日
- 宗教活動に熱心すぎる夫や妻と離婚できるのか?
- これまでに宗教が原因の離婚が認められた事例を知りたい
- 宗教が理由の離婚を考えたらやるべきことはなに?
夫や妻が宗教にハマってしまい、熱心すぎる活動ゆえに生活が成り立たなくなってしまうことは、少なくありません。
教団に多額の寄付をしたり、職場で布教活動を行い迷惑をかけたり、学校を休ませてまで子どもを宗教活動に同伴させたりしているうちに、夫婦関係がぎくしゃくすることもあるでしょう。
このような場合、離婚をして宗教にハマった夫や妻と縁を切ることを考えることも必要といえます。
そこで今回は、宗教による離婚の専門弁護士が、宗教にハマった夫や妻との離婚は可能なのか・宗教が理由の離婚が認められた判例・離婚慰謝料について解説します。また、宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきことについても詳しく紹介します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 宗教活動を理由とした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 宗教が原因で離婚が認められた判例では「祭祀の拒否」「夫と妻の宗教観の不一致」「子どもへの強要」の3つのパターンがある
- モラハラでの離婚を考えているなら、「宗教にハマっている証拠を集める」「寄付の履歴を確認する」「弁護士に相談する」の3つが大切
宗教にハマった夫や妻との離婚は可能なのか?
夫や妻が「宗教にハマってしまった」という理由で離婚をすることは可能です。
夫婦間で「合意」があるかないか・法律によって認められているかどうか、が重要です。ここでは、夫と妻の合意がある場合・裁判になった場合に分けて解説します。
夫と妻の合意があれば可能
離婚をするにあたりまず押さえたいことは、夫と妻が「合意」していれば、2人の間でしかわからないような理由であっても、離婚は可能です。
そのため「夫や妻が宗教にハマってしまったことが耐え難い」「相手が入信している宗教が気に入らない」という理由であっても、お互いが納得していれば離婚が可能といえます。
宗教にハマってしまうと、多額の寄付をしてしまったり、熱心に布教活動を展開したりして、家族にまで迷惑が及ぶこともあるため、生活が破綻していくことも考えられます。
一方でハマっている本人は「よいことをしている」と思って活動していることが少なくありません。そのため、相手から離婚を切り出されたときに、すぐに素直に応じることが困難な場合もあります。
裁判になっても可能
宗教にハマった夫や妻との離婚は、お互いが合意できず裁判になったとしても、勝てる見込みがあります。裁判上の離婚は、民法770条1項で以下の通り定められています。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
上記の理由があった場合、「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる」とされています。
夫や妻が宗教にハマってしまった場合、該当すると考えられるのは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」です。他にも明らかに生活費を渡してもらえない、などがあった場合は「配偶者から悪意で遺棄されたとき。」に該当するといえます。
たとえ相手から合意が取れなくて困っても、「裁判」で離婚を進めることも可能なため、諦めないことが重要です。
宗教が理由の離婚が認められた判例を解説
夫や妻が宗教にハマって生活が成り立たなくなったことでの離婚が認められた判例はいくつもあります。ここでは、3つのパターンに分けて判例を解説します。
- 夫と妻の宗教観の不一致
- 祭祀の拒否
- 子どもへの強要
1つずつ見ていきましょう。
夫と妻の宗教観の不一致
宗教が理由の離婚が認められた判例の1つ目は、夫と妻の宗教観の不一致が原因のケースです。
宗教Aの会員である男性が、信仰を隠して熱心な宗教Bの教徒と婚姻しました。しかし、お互いの信仰が異なることをきっかけとした問題から対立し、夫と妻それぞれから離婚の請求および慰謝料請求がなされたのです。
裁判所は双方の離婚請求を認めつつ、婚姻関係の破綻になる主たる責任は夫と妻どちらにもあるとしながらも、結果として妻の夫に対する慰謝料請求を認容しました。
祭祀の拒否
宗教が理由の離婚が認められた判例の2つ目は、祭祀の拒否をしたケースです。
婚姻後に妻が宗教Cに入信しました。その後妻は、仏事をはじめとする先祖への祭祀を行わなくなり、夫婦間に深刻な対立が生じました。
それでも妻は、熱心に宗教活動を行い、控える意思はありません。そして夫婦は別居しましたが、その期間が長期に及んだため、夫は妻に対して、「婚姻関係が破綻している」ことを理由に 離婚を求めたのです。
裁判所は、妻が夫との関係を修復するために宗教活動を自粛しようとしないことから、同居を再開しても日常生活・子どもの養育に支障が生じることが必至であること、これを夫が容認できず離婚の意思が固いことを確認し、婚姻関係がすでに破綻していると認めました。
子どもへの強要
宗教が理由の離婚が認められた判例の3つ目は、子どもへの強要をしたケースです。
婚姻後に妻が宗教Dに入信しました。妻は、集会の参加・布教活動などを熱心に行いましたが、仏式の葬儀や法事の他、節句などの行事への参加を拒むようになったのです。
子どもにも宗教Dの教義を教えて行事に参加させるようになりました。そのため、妻の行動に対して強い不満を持った夫は、信仰をやめるよう説得しましたが、妻は聞き入れることなく、次第に夫婦関係が破綻していきました。
日本国憲法では、信教の自由が認められていますが、夫婦としての協力扶助義務もあることから、宗教活動にも限度があると考えられるのは当然です。そのため裁判所は、妻の行為を婚姻関係における扶助協力義務の限度を超える宗教的行為とみなし、婚姻関係の破綻を認めたのです。
宗教が理由の離婚は破綻が理由の慰謝料の請求もできる
民法709条において、「不法行為による損害賠償請求」が認められています。また民法710条においては、「財産以外の損害の賠償」が認められる条文があります。いわゆる、夫や妻が宗教にハマったことで夫婦生活が破綻し、それによって被った「精神的苦痛」がこれに該当するといえます。
また、夫や妻が結婚する前から宗教に加入し、熱心な布教活動をしていた場合も含みます。この事実が結婚後に発覚したうえ、さらにそれが問題となった場合は離婚するにあたり、慰謝料の請求も可能といえます。
宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきこと
宗教で生活が成り立たなくなった場合、離婚を決断することも必要です。ここでは、宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきことを以下の3点から解説します。
- 宗教にハマっている証拠を集める
- 寄付の履歴を確認する
- 弁護士に相談する
1つずつ見ていきましょう。
宗教にハマっている証拠を集める
宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきことの1つ目は、宗教にハマっている証拠を集めることです。
布教活動に熱心なあまり、信者となった夫や妻は日常生活をおろそかにし始めます。たとえば、子どもに学校を休ませたり、仕事を休んだりして周囲に迷惑をかけるのです。
通常では考えられないようなおかしな言動があれば、音声を録音したり、動画にしたりして証拠として取っておくことも重要です。
また、日常生活の様子なども日記やメモとして残しておくとよいでしょう。
寄付の履歴を確認する
宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきことの2つ目は、寄付の履歴を確認することです。
宗教にハマった夫や妻が、どのくらい寄付を行ったかを確認しておく必要があります。たとえば、振込などで寄付をしていれば通帳や金融機関に残っている履歴から確認することが可能です。
紙の通帳の場合は廃棄されてしまう恐れがありますが、金融機関からは10年分の履歴を取り出すことができる場合もあります。
そのため、万が一通帳が残っていなくても、寄付の確認を諦めないようにしましょう。
弁護士に相談する
宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきことの3つ目は、弁護士に相談することです。
離婚するには、まず夫婦間の合意が必須ですが、それができない場合は離婚調停、離婚訴訟を考えることになります。調停離婚はあくまでも調停委員による「合意への調整」で進めるため、宗教にハマっている相手が納得していないと、合意することが難しいといえます。
また、離婚訴訟においては、日本国憲法に定められている「信教の自由」が前提となることから、一般の離婚訴訟よりも難易度が上がるといえるでしょう。
宗教が絡んだ離婚裁判では、夫や妻が宗教にハマったことで、どれだけ家庭生活に影響を及ぼしたかで判断されるといえます。そのため、個人で立証するのは難しく、経験のある専門家に任せることでスムーズに進む場合が少なくありません。
弁護士に相談することで、破綻による慰謝料請求についても同時に進めやすくなるため、離婚を考えた時点でまず、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は、宗教による離婚の専門弁護士が、宗教にハマった夫や妻との離婚は可能なのか・宗教が理由の離婚が認められた判例・離婚慰謝料についてを解説しました。また、宗教を理由とした離婚を考えたときにするべきことについても詳しく紹介してきました。
宗教を理由として、離婚することはできます。離婚は双方が合意すれば夫婦の間でしかわらかないような理由であっても可能です。
しかし、合意できなければ、裁判になることも少なくありません。裁判では、「夫や妻の宗教活動によって家庭が破綻した」ことを主張することとなり、証拠も求められます。
宗教に関連する裁判は個人で行うのは難しいため、離婚裁判の経験が豊富な専門家に依頼することがおすすめです。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。