風評被害で損害賠償を請求したい!手順や事例を解説

最終更新日: 2024年11月30日

風評被害で損害賠償を請求したい!手順や事例を解説

  • 根拠のない噂や誤った情報で、企業の信用が失墜し困っている
  • 風評被害で売上が減少したので損害賠償請求をしたい
  • 風評被害のトラブルは弁護士に相談すべきだろうか?

マスメディアだけではなく、SNSなどのインターネットメディアでの発信も増えているなかで、風評被害のトラブルにあう方も増えています。風評被害に対して損害賠償請求を起こしたいと考えている方もいるでしょう。

そこで今回は、風評被害の基礎知識から損害賠償請求の具体的な手順、実際の判例まで詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • マスコミ報道、インターネット投稿、統計データの誤用が原因で、企業のブランドイメージ低下や売上減少など深刻な問題が発生する可能性がある
  • 違法性の証明、経済的損失の証拠、被告の特定が必要で、証拠保存や削除請求、発信者情報の開示請求を経て損害賠償を請求できる
  • メディアの誤報やネット中傷で損害賠償が認められた判例があり、適切な法的手続きで権利を守ることが可能

発信者情報開示・削除に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

風評被害による損害賠償請求は可能!弁護士が基礎知識を解説

風評被害による経済的な損失は、法的な救済を求められます。なぜなら、風評被害も名誉毀損やプライバシー侵害と同様に、権利侵害にあたるためです。

ここでは、風評被害の基礎知識と損害賠償請求の要件について解説します。

風評被害とは

風評被害には、主に3つの種類があります。

  • マスコミ報道による風評被害
  • インターネット投稿による風評被害
  • 統計データの誤用による風評被害

これらはそれぞれ異なる特徴があり、被害の規模や影響もさまざまです。企業や個人が受ける風評被害は、いずれの形態も深刻な経済的損失につながる可能性があります。

マスコミ報道

マスコミ報道は、影響力の大きさから深刻な風評被害を引き起こすおそれがあります。テレビや新聞などの報道は信頼性が高いとされ、多くの人々に一斉に情報が届くからです。

たとえば、事実確認が不十分な段階での報道や、センセーショナルな見出しが誤解を招くことがありうるでしょう。報道機関には正確な情報発信と公平な報道が求められます。

インターネット投稿

インターネット上の投稿は、匿名性と拡散性の高さから風評被害の主要な原因となる可能性が高いと言えます。SNSやブログでは、誰もが簡単に情報を発信でき、それが瞬時に広まるためです。

たとえば、根拠のない悪評が投稿されると、即座に拡散され企業の信用が損なわれるケースが増えかねません。被害にあったときの迅速な対応と証拠保全が重要です。

統計データ

統計データの誤った解釈や偏向的な使用も、風評被害の要因となる恐れがあります。

数値は客観性があると思われやすく、解釈や提示方法によって印象が大きく変わるためです。

たとえば、特定の商品の成分に関するデータが、文脈を無視してひとり歩きすることがあります。データの正確な理解と適切な解釈が必要です。

風評被害で生じる問題

風評被害は企業に深刻な影響をもたらしかねません。具体的には、以下の4つの問題が発生する恐れがあります。

  • ブランドイメージの低下
  • 顧客離れ
  • 株価の下落
  • 従業員の士気低下

これらの問題は連鎖的に起こり、企業の存続すら危ぶまれる事態に発展することがあるでしょう。

ブランドイメージ低下

風評被害によるブランドイメージの低下は、企業価値を大きく毀損させます。長年かけて築き上げた信頼が、根拠のない噂や誤った情報によって一瞬で崩れてしまうからです。ブランドの信頼回復には多大な時間と労力が必要なため、場合によっては企業の存続にも影響を与えます。ブランド価値を守るための迅速な対応が不可欠です。

顧客離れ

風評被害は、既存顧客の離反と新規顧客の獲得困難を引き起こします。消費者が安全性や信頼性に不安を感じ、競合他社の製品やサービスに流れてしまうためです。一度失った顧客の信頼を取り戻すことは容易でなく、売上の回復に時間がかかるでしょう。顧客との信頼関係を維持する取り組みが重要です。

株価下落

風評被害は投資家の信頼を損ない、急激な株価下落を招きます。企業の将来性や成長性に対する不安が、投資家の売り行動を誘発するためです。株価下落は資金調達の困難さにつながり、事業展開にも支障をきたすことがあるでしょう。投資家に対する適切な情報開示と説明が必要です。

従業員の士気低下

風評被害は従業員のモチベーションを著しく低下させます。自社や自分の仕事に対する社会からの批判は、精神的な負担となり、仕事への意欲を失わせるためです。従業員の士気低下は生産性の低下や離職率の上昇につながり、企業の競争力を弱めます。従業員のケアと適切なコミュニケーションが重要です。

損害賠償請求とは

損害賠償請求は、他者の行為によって受けた損害の金銭的補償を請求する法的手段です。損害賠償には、主に2つの種類があります。

  • 債務不履行の損害賠償
  • 不法行為の損害賠償

風評被害の場合は不法行為による損害賠償を請求できます。企業の売上減少などの財産的損害だけでなく、信用失墜による精神的苦痛の慰謝料も請求可能です。

損害賠償請求手続きは、まず被害の証拠を収集し、相手方へ通知して交渉し、交渉で解決しない場合は調停や訴訟に進みます。損害賠償請求は専門的な法律知識が必要なため、早期の弁護士相談が重要です。

風評被害による損害賠償請求が認められる条件

損害賠償請求が認められるためには、3つの条件に該当する必要があります。

  • 投稿や報道の違法性
  • 経済的損失の証拠
  • 被告の特定

これらの条件が揃って初めて、損害賠償請求が可能となります。

違法性

風評被害で損害賠償請求が可能なのは、行為に違法性がある場合です。たとえば、名誉毀損や信用毀損、偽計業務妨害などの法律違反がある場合が該当します。ただし、真実性や公益性がある場合は違法性が否定されることがあり、慎重な判断が必要です。

出典:刑法|e-GOV法令検索

経済的損失の証拠

風評被害による経済的損失は、具体的な証拠で示す必要があります。売上の急激な減少のデータや、取引停止の通知など、明確な損失の証拠が重要です。また、風評被害と損失の因果関係を示すことも求められ、データによる裏付けが不可欠です。

被告の特定

損害賠償請求は、加害者の氏名や住所を特定することが必須条件です。インターネット上の投稿は、発信者情報開示請求により投稿者を特定できます。特定が困難な場合は、弁護士に相談し、法的な手続きを進めましょう。

風評被害で損害賠償を請求する手順

風評被害による損害賠償請求は、以下の5つのステップで進めていきます。

  1. 証拠保存
  2. 削除請求
  3. サイト管理者への開示請求
  4. アクセスプロバイダへの発信者情報開示請求
  5. 損害賠償請求

証拠保存

風評被害の証拠保存は、損害賠償請求の成否を左右する重要な第一歩です。スクリーンショットやURLの保存、ウェブアーカイブの活用など、できるだけ多くの証拠を残しましょう。売上データの推移など、経済的損失を示す資料も必要です。被害発覚時点で迅速に証拠を収集し、適切に保存しておきましょう。

削除請求

問題のある投稿や記事の削除請求は、被害の拡大を防ぐために不可欠な対応です。サイト管理者やプラットフォームに対して、違法性の根拠と保存した証拠を示し、削除を求めましょう。削除請求が認められない場合は、法的手続きに移行することもあるため、弁護士への相談を検討するタイミングです。

サイト管理者への開示請求

投稿者を特定するため、まずサイト管理者に情報開示を求めましょう。開示請求では、IPアドレスや投稿日時などの基本情報を取得できます。ただし、プライバシー保護の観点から開示が拒否されることもあり、その場合は裁判所の命令が必要になります。そのため、法的手続きを視野に入れた準備が必要です。

アクセスプロバイダへの発信者情報開示請求

IPアドレスから投稿者の身元を特定するため、プロバイダに情報開示を請求しましょう。この段階では投稿者の氏名や住所といった個人情報の開示を求めます。多くの場合、裁判所の命令が必要なため、法的な専門知識が求められます。弁護士のサポートを受けながら進めることがおすすめです。

損害賠償請求

投稿者が特定できた段階で、具体的な損害賠償請求の手続きに入ります。まず内容証明郵便で請求内容を通知し、交渉を開始しましょう。示談が成立しない場合は訴訟を検討しましょう。実損害や精神的苦痛の賠償請求が可能です。弁護士と相談し適切な請求額を設定しましょう。

風評被害で損害賠償請求が行われた事例

風評被害による損害賠償請求についてはさまざまな判例がありますが、4つの代表的な事例を紹介します。これらの事例から、風評被害の深刻さと損害賠償請求の重要性が理解できるでしょう。

事例1工場排水による漁業への風評被害が認められた事例

工場の排水管の誤接続により、ダイオキシンが流出したという報道がされ、しらす漁業者の売上が激減しました。

裁判所は工場側の過失責任を認定し、風評被害による損害賠償を命じました。この判決は、工場の設備管理の不備が風評被害を引き起こした場合、損害賠償責任が生じることを明確に示したものです。

事例2:テレビ局の誤報による農家への風評被害が認められた事例

埼玉県所沢市の野菜にダイオキシンが含まれているという誤った報道により、農家の売上が大幅に減少しました。

最高裁は報道の社会的影響力を考慮し、テレビ局の賠償責任を認め、結果、和解金1,000万円での和解が成立しました。メディアの報道責任の重さを示す判例です。

事例3:較広告による風評被害が認められた事例

キシリトールガムの再石灰化効果について、統計データを用いた比較広告が問題となりました。

知財高裁は、データの解釈に誤りがあり、競合他社の信用を毀損したと判断。損害賠償を命じる判決を下しました。この判決は、広告表現における統計データの使用に慎重な判断が必要なことを示しました。

事例4インターネット掲示板での誹謗中傷による風評被害が認められた事例

運送会社の元従業員が、匿名で会社や経営者を誹謗中傷する書き込みを繰り返しました。

東京地裁は、インターネットの伝播力を考慮し、被告に対して会社に100万円、経営者らに各30万円ずつ支払うよう命じました。この判決は、ネット上の書き込みも法的責任を問われることを明確にしました。

風評被害で損害賠償を請求したい場合は弁護士に相談

風評被害による損害賠償請求は、専門的な法律知識が必要な手続きです。

春田法律事務所では、風評被害の対応に豊富な経験を持つ弁護士が、証拠収集から損害賠償請求まで、一貫してサポートします。

風評被害でお困りのときは、まずは春田法律事務所に無料相談をご利用ください。経験豊富な弁護士が、最適な解決方法をご提案します。

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