民事と刑事の違いとは?目的・手続き・費用を弁護士がわかりやすく解説

2026年06月09日

民事と刑事の違いとは?目的・手続き・費用を弁護士がわかりやすく解説

「事件を起こしてしまったが、民事と刑事のどちらが問題になるのか」「被害者から損害賠償と警察への告訴、両方されるのか」――刑事事件に初めて直面した方は、民事と刑事の違いがわからず混乱することが多いです。

結論から言うと、民事と刑事は目的・手続き・結果のすべてが異なる別の手続きです。1つの事件が民事・刑事の両方で問題になることもあります。

本記事では、民事と刑事の違いを比較表でわかりやすく整理し、刑事事件に直面した場合の対処法を解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士

「家族が逮捕された」「示談したい」など、300件以上の刑事事件のご相談に対応してきました。(※2026年3月時点)これまでの実務経験をもとに、法律のポイントを分かりやすく解説しています。

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民事と刑事の基本的な違い(比較表)

項目

民事

刑事

目的

個人・法人間の権利義務の争いの解決(損害賠償など)

犯罪に対する国家による処罰

当事者

原告(被害者)vs 被告(加害者)

検察官 vs 被告人(国家が訴追)

手続きの開始

被害者(原告)が訴訟を提起

警察・検察が捜査。検察官が起訴

結果

損害賠償命令・差止め・謝罪広告など

有罪なら刑罰(拘禁刑・罰金・死刑など)

費用負担

原告が裁判費用を負担(弁護士費用は原則自己負担)

国が捜査・裁判費用を負担

時効

権利行使を知った時から5年(損害賠償請求権)又は権利行使できる時から10年

罪の種類により異なる(公訴時効)

和解・示談

可能(訴訟上の和解)

起訴前の示談は処分に影響。起訴後は量刑に影響

証明の基準

「優越的な証拠」(民事の優越的証拠基準)

「合理的な疑いを超える証明」(より厳格)

民事事件とは?手続きの流れ

民事事件の特徴

民事事件は、個人・法人間の権利・義務をめぐる紛争を解決するための手続きです。交通事故の損害賠償・貸したお金の返還・離婚・相続・名誉毀損の慰謝料請求などが典型例です。

民事訴訟を起こすのは被害者(原告)であり、国が介入して罰するのではなく、被害者が自分の権利を守るために裁判所に判断を求めます。したがって、被害者が「訴えない」と決めれば手続きは始まりません。

弁護士費用・裁判費用は原則として原告が負担します(ただし弁護士費用を損害賠償として認める判例もあります)。

民事事件の主な種類

種類

具体例

主な解決方法

損害賠償請求

交通事故・暴行による怪我・名誉毀損

訴訟・示談・調停

貸金返還請求

借金の返済を求める

訴訟・支払督促

離婚関連

離婚・財産分与・養育費

調停・訴訟

労働紛争

不当解雇・未払い賃金

労働審判・訴訟

契約紛争

契約不履行・契約解除

訴訟・調停

刑事事件とは?手続きの流れ

刑事事件の特徴

刑事事件は、犯罪を行った者を国が処罰するための手続きです。刑事訴追を行うのは検察官であり、被害者が「訴えない」と言っても国が起訴することができます(ただし親告罪は被害者の告訴が必要)。

逮捕・勾留・起訴・公判・判決という流れで進み、有罪判決では拘禁刑・罰金・死刑などの刑罰が科されます。前科がつくと就職・資格取得・海外渡航に影響します。

刑事事件では国(税金)が捜査・裁判費用を負担します。被疑者・被告人には弁護人を選任する権利があり、資力がない場合は国選弁護人が選任されます。

逮捕から判決までの流れ

段階

期間

内容

逮捕

最大48時間

警察による身柄確保・取り調べ

送致・勾留請求

+24時間以内

検察官が勾留請求するか判断

勾留

最大20日間

裁判官の勾留状による身柄拘束

起訴・不起訴

勾留満期まで

検察官が起訴するか判断

公判(裁判)

数か月〜1年以上

証拠調べ・被告人質問・論告・弁論

判決

公判終了後

有罪・無罪。有罪なら刑の内容を言い渡す

1つの事件が民事・刑事の両方になるケース

多くの犯罪では、刑事事件(国による処罰)と民事事件(被害者による損害賠償請求)の両方が同時に問題になります。

【例:傷害事件の場合】

  • 刑事
    傷害罪で逮捕・起訴→有罪なら拘禁刑または罰金
  • 民事
    被害者から治療費・慰謝料・休業損害の損害賠償請求

【例:名誉毀損の場合】

  • 刑事
    名誉毀損罪で告訴・起訴→有罪なら拘禁刑または罰金
  • 民事
    被害者から慰謝料請求(損害賠償訴訟)

示談を成立させると、刑事・民事双方の解決につながることが多いです。示談書に「民事上の損害賠償も解決済み」旨の清算条項を盛り込むことで、後から民事訴訟を起こされるリスクを防ぎます。弁護士に依頼することで、刑事・民事双方を見越した示談書を作成できます。

刑事事件で弁護士ができること

刑事事件に直面した場合、弁護士に依頼することで以下の対応が可能になります。

取り調べへの対応アドバイス

何を話すか・黙秘権の行使方法を具体的に指導

勾留阻止・早期釈放

準抗告・示談交渉により身柄拘束期間を短縮

示談交渉

被害者との示談を弁護士が代行し、不起訴処分・刑の軽減を目指す

公判弁護

起訴後の裁判で無罪・執行猶予・減刑を目指す弁護活動

民事との連携

示談書に民事的な清算条項を含め、後の損害賠償訴訟リスクを防ぐ

よくある状況と対応例

傷害事件で刑事・民事双方を示談で同時解決したケース

状況

30代男性。口論の末相手を殴り、傷害罪で逮捕された。被害者から刑事告訴に加え、治療費・慰謝料の損害賠償請求もされていた。

対応

弁護士が被害者と交渉し、慰謝料・治療費・休業損害を含む示談金を支払い、刑事上・民事上の一切の請求を行わない内容の清算条項付きの示談書を締結。刑事・民事の双方を一つの示談で解決した。

→ 結果:刑事事件は不起訴処分。民事訴訟も提起されず、両方の問題が解決した。

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

SNS誹謗中傷で刑事告訴・民事訴訟を同時に受けたケース

状況

20代女性。SNSで元交際相手の悪口を書き込み、名誉毀損で刑事告訴され、民事でも損害賠償30万円を請求された。

対応

弁護士が相手方弁護士と交渉し、示談金20万円・投稿の全削除・謝罪文の提出を条件に示談書を締結。示談書に「刑事告訴の取り下げ」「民事上の請求放棄」の両方を明記した。

→ 結果:告訴が取り下げられ不起訴処分。民事訴訟も提起されず、一括解決した。

※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。

よくある質問(FAQ)

Q:刑事事件で不起訴になれば民事訴訟も起こされませんか?

A:不起訴処分は刑事手続きの終了であり、民事上の損害賠償請求権は別に存在します。不起訴になっても被害者から民事訴訟を起こされる可能性はあります。刑事と民事を一括して解決するには、示談書に「民事上の請求を行わない」清算条項を盛り込むことが重要です。

Q:示談すると刑事・民事の両方が解決しますか?

A:示談書に刑事上・民事上の一切の請求を放棄する内容の清算条項を含めることで、両方の問題を一括解決できます。弁護士が適切な条項を盛り込んだ示談書を作成することが重要です。

Q:民事裁判と刑事裁判が同時に進むことはありますか?

A:はい、同時に進むことがあります。刑事事件の捜査中でも被害者が民事訴訟を提起できます。弁護士が刑事と民事の双方を見据えた対応を行うことで、矛盾のない主張ができます。

Q:被害者が示談を拒否しています。刑事事件はどうなりますか?

A:示談が成立しなくても、反省の態度・被害弁償の意思・初犯などの事情を検察官に説明することで不起訴処分を目指せます。また被害者への賠償金を供託(裁判所に弁償金を預ける)することにより、弁償の意思を示すことができます。

Q:刑事事件で有罪になると民事でも不利になりますか?

A:刑事での有罪判決は民事裁判で有力な証拠として使われることがあります。ただし民事の証明基準(優越的な証拠)は刑事より低いため、刑事で無罪でも民事では賠償を命じられることがあります(逆も然り)。

Q:国選弁護人と私選弁護人、どちらを選ぶべきですか?

A:国選弁護人は起訴後に選任されるため、逮捕直後からの活動(勾留阻止・示談交渉・証拠収集)には間に合いません。早期の不起訴処分・釈放を目指すためには、逮捕直後に私選弁護人を選任することを強く推奨します。

まとめ

民事と刑事は目的や手続きが異なる別の手続きです。刑事事件に直面した場合は、民事上のリスクも視野に入れて対応することが重要です。

  • 民事
    被害者が国に代わって損害賠償を求める手続き
  • 刑事
    国が犯罪を処罰するための手続き
  • 1つの事件が民事・刑事の両方になることもある
  • 示談書に宥恕文言や清算条項を盛り込むことで刑事・民事を一括解決できる

「逮捕された」「被害者から訴訟を起こすと言われた」という方は、春田法律事務所にご相談ください。初回相談無料・24時間相談受付中です。

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