夫の浮気相手に制裁はできる?慰謝料や相手が妊娠していたときの対応も解説
最終更新日: 2023年07月03日
- 夫の浮気相手に制裁を与えたい
- 夫の浮気相手が妊娠してしまい、どうすればいいのかわからない
- 浮気した夫とはどのような対応がありうるのか知りたい
夫の浮気が発覚したときに、このように思う女性は多いでしょう。夫の浮気は浮気相手との関係でも夫婦間でも法的な問題が出てきますので、最善の判断をするためには法的知識をもっておくことが重要です。
そこで今回は、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が夫の浮気が発覚したときの対応について解説します。
浮気した夫と相手を別れさせるには?誓約書だけ?
夫の浮気が発覚して、浮気相手と別れたと言っていたにもかかわらず、関係が続いていた、あるいは再開していたということは非常によくあります。
夫と話しただけで浮気相手には連絡をとらなかったという場合や、浮気相手とも話はしたけれども誓約書を書かせるだけで終わったという場合に、このように浮気が続いてしまうケースが多いようです。
やはり妻から直接何も言われなかったり、関係を解消すると誓約書にサインするだけでは、その時は反省をするかもしれませんが、浮気がばれても大事にはならないと思ってしまうのでしょう。
したがって、夫と浮気相手との関係を断ち切りたいのであれば冷静に対処し、何らかの制裁、罰を浮気相手に与えることが重要です。
夫の浮気相手への制裁方法
それでは、夫の浮気相手に対する制裁、罰の与え方にはどのような方法があるのでしょうか。
以下代表的なものについて見て行きましょう。
- 職場に報告する
- 相手の夫に知らせる
- 浮気の慰謝料請求をする
職場に報告する
まずは職場不倫の場合です。夫が職場の同僚と不倫をするケースはよくあります。職場不倫が発覚した場合、妻としては、当然、浮気相手に職場を辞めてもらいたいと思うことでしょう。
そのために妻が、浮気を職場に報告しようと考えることがあります。しかし、職場に浮気を報告すると名誉毀損罪として逮捕されて刑事罰を受ける可能性があります。
また、職場に報告した結果、浮気相手が職場を辞めることになった場合、多額の損害賠償を浮気相手から請求される可能性もあります。
上司など職場の一部の人にだけ報告する場合であっても、そこから多数の人に伝わる可能性がありますので、やはり名誉毀損に問われる可能性があります。
このようなリスクがありますので、浮気相手に対する制裁方法として職場に報告する方法は控えることお勧めします。
相手の夫に知らせる
夫の浮気相手も既婚者、つまりダブル不倫の場合があります。
この場合、妻は、浮気相手の夫にも浮気の事実を知ってもらうことで、浮気相手に罰を与えたいと考えるかもしれません。確かに、それによって相手夫婦が離婚すれば、罰を与えたことになるでしょう。
しかし、実は意外にも、浮気の事実を知らせたところ、知らせてきた妻を共通の敵とみなして相手夫婦が結束し、夫婦関係が修復されてしまうことがあるのです。
そうしますと制裁は失敗に終わり、しかも浮気相手の夫からこちらの夫に対して慰謝料を請求されることになり、その結果、浮気相手に対する慰謝料請求を取り下げることになるかもしれません。
このように相手の夫に浮気を知らせたとしても意図した制裁にはならない可能性がありますので、慎重に検討する必要があります。
浮気の慰謝料請求をする
3つ目は、正攻法である浮気の慰謝料請求です。法律上認められた制裁方法ですから、方法を間違えなければ、他の2つのようなリスクはありません。
浮気の慰謝料請求については、この後、詳しくご説明します。
夫の浮気相手だけに慰謝料請求できる?
夫が浮気をした場合、妻は、夫には慰謝料を求めず、浮気相手にだけ慰謝料請求することはできるのでしょうか。
- どちらに幾ら請求するかは妻の自由
- 請求できる慰謝料の相場は?
- 慰謝料請求するための証拠
- 浮気相手の名前や住所がわからない場合
どちらに幾ら請求するかは妻の自由
法律上、浮気をした当事者二名は、浮気の被害者である妻に対して連帯責任として慰謝料支払義務を負います(民法第719条1項)。
このように連帯責任とされていることから、浮気をされた妻は、夫に対して慰謝料全額を請求することも、浮気相手に対して慰謝料全額を請求することもできますし、夫に一部を、残りを浮気相手に請求することも可能です。
よって、浮気をした夫には慰謝料請求はせず、浮気相手にだけ慰謝料請求することは可能です。
請求できる慰謝料の相場は?
次に、浮気相手に請求する慰謝料の相場についてご説明します。
浮気が原因で夫婦が離婚しない場合は100万円、離婚する場合は200万円が浮気の慰謝料相場です。
そして、婚姻期間や浮気期間の長短、浮気関係の解消の有無、以前からの夫婦関係の良し悪し、浮気による妊娠や出産など諸々の事情を考慮して、上記の金額は増減します。
例えば、浮気が1回だけだったのであれば、慰謝料は50万円以下になる可能性がありますし、浮気相手が夫の子を出産したときは離婚しなくても慰謝料が300万円ほどになる可能性もあります。
慰謝料請求するための証拠
浮気相手に対して慰謝料請求をするためには、夫と浮気相手との性行為について証拠が必要となります。
夫の携帯電話から性行為の動画などが見つかることがあります。このような直接的な証拠がなくても、ホテルや浮気相手の家に泊まったことのわかるLINEのやり取りからも性行為を立証できる場合があります。
また、夫や浮気相手が浮気を認めているのであれば、他に証拠がなくとも慰謝料請求が可能な場合もあります。
しかし、このような自白もその他の確たる証拠もない場合には、探偵に依頼する他ありません。調査費用は100万円を超えるほど高額になることがありますから、事前準備をしたうえで、できる限り調査費用を抑えるようにしましょう。
浮気相手の名前や住所がわからない場合
浮気の慰謝料請求をするにあたっては、浮気相手の氏名と、住所又は勤務先の情報が必要となります。苗字や名前のどちらかしかわからない、住所も勤務先もわからないという場合には慰謝料請求ができません。
LINEやSNSのアカウントしか分からないという場合、慰謝料請求のメッセージを送ってもそれを無視されたり、支払いを拒否されてしまうことがあります。
その場合には内容証明を送ったり、提訴して裁判所から訴状を送ってもらうことになりますが、その際に浮気相手の氏名と住所又は勤務先の情報が必要となるのです。
浮気相手の携帯電話番号や車のナンバーがわかるときは、弁護士に依頼をすれば、携帯電話会社や運輸局に照会をして、浮気相手の氏名及び住所を調査することが可能です。
このような調査ができないときは、探偵に浮気相手の調査を依頼します。
夫の浮気相手に慰謝料請求できないことがある!?
浮気の証拠も、浮気相手の氏名及び住所の情報も揃っていれば、浮気相手に対して慰謝料請求ができるはずです。
ところが、この場合も慰謝料請求ができない例外があります。以下見て行きましょう。
- 既婚者と知らなかったとき
- 夫婦関係が破綻していたとき
- 時効になっている場合
既婚者と知らなかったとき
夫が既婚者とは知らなかった、独身だと思っていたという場合には、妻は、浮気相手に慰謝料請求ができません。この場合、婚姻関係を侵害する故意が浮気相手にはないからです。
夫と浮気相手がインターネットを介して知り合い、夫が独身と偽っていた場合などにこのようなケースがしばしばあります。
もっとも、夫のことを既婚者ではないかと疑っていた、あるいは疑うべきであったのに、独身と信じていたような場合には婚姻関係を侵害したことに過失がありますので、慰謝料請求は可能です。
夫婦関係が破綻していたとき
浮気は、法律上は不貞行為といいますが、不貞行為とは、結婚している事実・婚姻共同生活の平穏を侵害する行為です。
そして、浮気が始まった時点で既に夫婦関係が破綻していたとすると、浮気をしても婚姻共同生活の平穏が侵害されたことになりません。よって、この場合には浮気の慰謝料請求ができません。
もっとも、ここでいう夫婦関係の破綻はそうそう認められるものではありません。夫婦喧嘩が多かったとか、別居して半年になるというほどでは夫婦関係の破綻は認められません。
例えば、既に離婚届を作成して数日後に提出する予定であったとか、別居して5年になるという場合であれば、夫婦関係の破綻が認められる可能性が高くなります。このように夫婦関係の破綻のハードルは高いのです。
時効になっている場合
慰謝料請求が認められない3つ目は、浮気の慰謝料請求権について消滅時効が完成している場合です。
浮気の慰謝料請求権は、妻が、夫の浮気と浮気相手を知ってから3年、浮気の時点から20年で消滅時効となります(民法第724条)。消滅時効が完成すると、妻から慰謝料を請求されても浮気相手は時効を理由に慰謝料を支払う責任がなくなります。
浮気発覚当初は夫婦関係の修復に注力し、浮気相手への対応はしていなかったところ、気が付いたら消滅時効が完成していたということがありますので要注意です。
夫の浮気相手が妊娠したときの対応
浮気相手が妊娠したことをきっかけに、夫が妻に浮気を告白してくることがあります。この場合、浮気相手が中絶を選択するのであれば、妻から浮気相手に慰謝料請求をするだけです。
一方、浮気相手が出産を選択するときには問題が複雑化します。以下、その場合の対応についてご説明します。
夫の子なのか確認する
妻が妊娠した子は夫の子と推定されますが、浮気相手の子が夫の子であるとは限りません。
そのため、DNA検査を実施して、夫の子であるのか確定させます。
もし浮気相手がDNA検査を拒否するのであれば、夫の子とは認めない対応を取ります。そして、浮気相手が夫に対して認知の訴えをしてきた場合には、その訴えの中でDNA検査を実施してもらうこととなります。
認知と養育費請求を放棄させられる?
浮気相手は夫に対して認知と養育費を請求してくる可能性があります。
DNA検査の結果、夫の子であることが確定しますと、夫と浮気相手の子との間に法律上の親子関係が生じますので、夫は認知と養育費の支払いを法律上強制されることになります。
もし、夫がDNA検査を拒否した場合はどうなるのでしょうか。
認知の訴えにおいてはDNA鑑定が実施されるのが通常ですが、このDNA鑑定は強制することができません。夫が拒否すればDNA鑑定は実施できないのです。
DNA鑑定を実施できない場合、浮気相手は、子を懐胎した時期に夫と性交渉があったことや、そこ頃に性交渉のあった相手は夫しかいないこと、夫と子の血液型が矛盾しないことなどを示して、夫の子であることを立証できれば、裁判所が強制認知の判断を出します。
一方、夫の子であることを立証できなければ、強制認知はなされず、夫と浮気相手の子との間に法律上の親子関係は生じず、夫が養育費を支払う義務を負うこともありません。
浮気した夫との夫婦関係はどうする?修復する?
浮気をした夫とは、離婚をするべきか、夫婦関係を続ける、修復すべきか、浮気をされた妻としては悩むことでしょう。
最後に、浮気をした夫との関係でどのような対応がありうるのかご説明します。
- 浮気した夫と離婚する
- 別居して夫婦関係を再構築するか検討
- 夫婦間契約で浮気した夫とやり直す
浮気した夫と離婚する
まずは、浮気した夫との離婚です。
離婚をする際には、夫から慰謝料を支払ってもらうことができます。この慰謝料は夫が浮気相手と連帯責任を負う浮気の慰謝料だけでなく、離婚すること自体から妻が受ける精神的苦痛に対する慰謝料として離婚慰謝料もあります。
浮気の慰謝料が200万円であれば、離婚慰謝料は概ね100万円から150万円ほどです。
その他に、離婚する際には、財産分与や親権、養育費についても決めます。これらについては、浮気をした事実はほとんど影響しませんが、できる限り妻にとって有利な条件を引き出すよう交渉に戦略が必要です。
別居して夫婦関係を再構築するか検討
直ぐに離婚について判断できない一方、浮気をした夫と同居することには耐えられないということもあるでしょう。その場合には夫に自宅を出てもらうか、妻が自宅を出ることで別居を始めます。
妻よりも夫の方が年収が高いのであれば、妻は夫に対して生活費(婚姻費用)の請求ができます。この金額は妻と夫それぞれの年収、子の年齢及び人数によって算出されます。
例えば、夫の年収が600万円、妻の年収がゼロ、14歳未満の子が1人で、妻が子と一緒に暮らす場合、夫は妻に対して毎月約13万円の婚姻費用を支払うことになります。
この婚姻費用の支払いは同居を再開する、離婚する又は一方が亡くなるまで続きます。
夫婦間契約で浮気した夫とやり直す
3つ目は、浮気をした夫と離婚はせずにやり直す、夫婦関係を再構築する場合の対応です。この場合、一つのケジメとして、また今後の浮気防止のために夫婦間契約を作成することをお勧めします。
夫婦間契約は浮気をしたときにだけ作成されるものではありませんが、浮気の場面で作成するときは、今後の浮気防止と再び浮気をしたときの離婚条件を定めます。
例えば、以下のような内容を盛り込みます。夫婦間契約は夫婦だけで作成しますと法的効力が否定されることがありますので、作成する際は弁護士に相談、依頼しましょう。
- 妻から求められたら携帯電話を開示すること
- 携帯電話のGPSを常に妻に共有すること
- 浮気をしたら直ちに離婚すること
- 離婚時の慰謝料は500万円とすること
- 夫は財産分与を放棄すること
まとめ
以上、夫が浮気をしたときの対処法について解説しました。
- 夫の浮気相手に対して慰謝料請求をしたい
- 夫と離婚をしたい
- 夫と夫婦間契約を結びたい
このようなご要望があるときは、浮気問題を専門とする弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。