不倫慰謝料は証拠がなければ請求できない?具体例と収集方法を解説
最終更新日: 2023年07月03日
「不倫慰謝料の請求をしたいけれどホテルから出てくるところの写真はない・・・そのような証拠がなくては慰謝料請求できませんか?」
配偶者のスマートフォンを目にしたところ、LINEやメールのやりとりなどから不倫をしていることがわかった、配偶者の様子がおかしいから問い詰めたところ、不倫をしていると認めた、そのように不倫の事実を知ったとき、不倫相手に慰謝料を請求したいと考えることもあるでしょう。
しかし、不倫の慰謝料を請求するにはどうすればいいのか、裁判になったら証拠がなくてはいけないのではないか、そのためには興信所や探偵に依頼してホテルなどの宿泊施設の出入りを写真に収める必要があるのか、そういった点に悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、不貞慰謝料請求事件を100件以上解決している専門弁護士が、不倫慰謝料を請求していくのにはどのような証拠が必要なのか、徹底解説いたします。
例として、夫が不倫をし、妻がその不倫相手に慰謝料を請求するというケースを取り上げて説明します。
不倫の慰謝料に必要な証拠と事実
不倫慰謝料を請求するためには、まず、配偶者と不倫相手が、肉体関係を持ったという事実が必要になります。また、不倫相手が、配偶者の存在を認識したうえで肉体関係を持ったという事実も必要となります。
これらの事実が認められてはじめて、不倫相手に慰謝料を請求する法的な権利が発生することになります。
肉体関係を持った事実とその証拠
法律的には、配偶者と不倫相手が、肉体関係を持った事実がなければ、不倫慰謝料を請求していくことはできません。LINEやメールでお互いに好意を示すやり取りをしていたり、デートをしていた、キスをしていた、という事実があったとしても、それだけでは不倫相手に慰謝料を請求することはできないのです。
肉体関係を持ったことの証拠として、もっともわかりやすいのは、肉体関係を持っている場面を写した映像や、二人でホテルなどの宿泊施設にいる写真などです。肉体関係を持った当事者がそのような映像や写真をスマートフォンに保存しているということがあります。
とはいえ、このようなケースは稀であり、決定的なものとして多いのは、ホテルなどの宿泊施設に出入りしている写真や動画、LINEやメールで肉体関係を持ったことを疑わせるやりとりをしていることになどがあげられます。
配偶者の存在を認識していた事実とその証拠
先に述べたとおり、不倫相手に慰謝料を請求するには、不倫相手が、配偶者の存在を知ったうえで肉体関係を持っていることが必要です。
これを示す証拠としては、例えば、夫と不倫相手が、LINEやメールで、「奥さん大丈夫なの?」とか、「妻は気づいてない」といったメッセージを送っていることがあげられます。
よく問題になるのは、夫が、不倫相手に対して、自分は独身であるとか、既に離婚をしたなどの嘘を言っていたというケースです。
しかし、このような場合であっても、常識で考えれば、相手が、夫に妻がいることを見抜けたはずなのに、夫の言葉を軽々に信じたというような事実があれば、配偶者の存在を認識してはいなかったが、そのことに落ち度があったとして、慰謝料を請求することができます。
夫が不倫相手とは宿泊はせず、夜は必ず自宅に帰ってきていたとか、不倫相手を決して自宅には来させなかった、という場合、もしかして奥さんがいるのではないかと疑って然るべきでしょう。
不倫の慰謝料請求ではどんなとき証拠が必要?証拠がないとどうなる?
ここまで、どのようなものが不倫慰謝料請求の証拠になるのかについて述べてきましたが、決定的な証拠がどうしても手に入らない、という場合、不倫慰謝料を請求することはできないのでしょうか。
- 不倫慰謝料請求の流れ
- どの段階で証拠が必要になるか
- 証拠がなかった場合に想定される事態
不倫慰謝料請求の流れ
不倫の慰謝料を請求する場合、ご自分で不倫相手に対して連絡をして請求をする方もいますが、思うように相手から慰謝料をとることができなかった、という結果になることが多いです。なぜ交渉がうまく行かなったのか、どのような方法を取ったのか交渉経緯を確認してみると、交渉が失敗した原因がよくわかります。
弁護士から不倫相手に慰謝料請求をする場合でも、いきなり訴訟を提起することはほとんどなく、通常は、不倫相手に対して、任意に慰謝料を払うよう、交渉をしていきます。
交渉の結果、不倫相手が、不貞行為を認めて慰謝料を支払うということになれば、金額を含めて、不倫相手と合意をして、慰謝料を支払ってもらうことができます。この場合、必ずしも不倫の証拠はいりません。
ただし、本当に全く証拠がないのに、明確な戦略もなく、不倫相手に慰謝料請求をするのはリスクが高いので、請求のタイミングは弁護士に相談すべきです。
証拠がないので請求を諦めてしまう方も非常に多いのですが、決定的な証拠がなくとも、不倫の当事者のいずれかが不貞行為を認めてできるだけ高額な慰謝料を払ってくれればよいので、請求を諦める必要はありません。
どの段階で証拠が必要になるか
証拠が明確に必要になるのは、裁判の段階です。
不倫相手が、肉体関係を持ったことを認めない、配偶者がいるとは知らなかったと主張して譲らない場合などは、訴訟を提起して、不貞行為の存在、すなわち、不倫相手が、配偶者の存在を認識したうえで、肉体関係を持ったことを明らかにしていくことになります。
しかし、実は、そのような事態に陥るケースは珍しく、多くの場合、決定的な証拠など提示しなくとも、不倫相手は、交渉の過程で不貞行為を認めることが多いのです。
不倫相手に対して、弁護士から交渉をする段階においては、弁護士から請求がくれば、不倫相手も、こちらが本気であることを理解し、裁判などの大事になることを恐れて、不倫の事実を認めるというケースも多々あります。
そのため、不倫をしていることは間違いないと思うが、明確な証拠がないといったケースでも、例えば、いわゆるダブル不倫のケースや、職場内での不倫など、不倫相手において、大事になってほしくない事情がある場合、弁護士が交渉をすることで相手が不倫の事実を認めるに至るということもあるのです。
証拠がなかった場合に想定される事態
とはいえ、やはり交渉段階でも、不倫を証明するための証拠があることは重要です。
不倫の事実は間違いないと考えて交渉してみた結果、不倫相手が頑としてこれを認めない、というケースも当然あります。
これを突き崩すためにも、一定程度の証拠を揃えておきたいところです。
また、証拠の存在をちらつかせ、裁判にしていくことも検討しているとほのめかすことで、交渉を有利に進めていくこともできます。
さらに、交渉で合意に至らず、訴訟ということになれば、肉体関係があること、配偶者の存在を知っていたことを示す証拠がないことには、不倫慰謝料請求が裁判で認められることはありません。
そのため、裁判の段階では、証拠は絶対に必要となります。
裁判をしていくだけの勝算があるかを判断するためにも、可能な限りの証拠を集めたうえで、弁護士に相談することが必要です。
不倫の慰謝料請求で有用な証拠を具体例で紹介
では、どのようなものが証拠になるのか、特に肉体関係の存在を示す証拠について、もう少し詳しく見ていきましょう。
肉体関係の存在を示す証拠として、ホテルや、自宅を出入りする写真をイメージする方が多いと思います。これがなぜ証拠になるのかを考えてみましょう。
例えば、ラブホテルのように、性交渉の場として認識されている場所に、二人で出入りしており、その場所で一定時間を過ごしていたとなれば、そこで肉体関係を持ったことが強く推察されます。女性が一人暮らししている自宅に男性が宿泊したり、長時間滞在することも同様です。そのため、そのような写真が肉体関係をもったことの強い証拠となりうるのです。
要は、肉体関係の証拠とは、二人が肉体関係を持ったことを強く疑わせるものであればよいのです。このようなものがあるのは、二人が肉体関係を持っているからに違いない、このようなものがあるなら、肉体関係を持っていておかしくない、といえるものであればよいということになります。
不倫の証拠となる写真
このような観点から考えると、必ずしも上記のような写真だけではなく、二人で頻繁に会っているような様子、その際にキスをしていたり、抱き合っている姿の写真なども、大人の男女の間で長期間にわたりそのような行為をしているなら、肉体関係を持っていておかしくないという意味で、証拠となりえます。
メール、ライン
しかしながら、不倫現場の写真を撮るのは、探偵や興信所に依頼しなければ難しいところです。そのような手段をとらずに入手できる証拠として代表的なものとしては、LINEやメールで肉体関係を持ったことを疑わせるやりとりをしていることがあげられます。
二人の性行為の内容それ自体を引用しているのであれば、それだけで決定的な証拠になることもあります。また、性行為の感想をうかがわせる「気持ちよかった」、「またしたい」などといったやりとりも、前後の文脈にもよるものの、肉体関係をもった者たちの間でしかしないやりとりであるとして、証拠になります。
決定的な証拠がない事案であってもライン、メールを隅々まで確認して、不貞の手がかかりとなる証拠を探すことが重要です。
その他想定される不倫慰謝料の証拠
その他に考えられる証拠としては、夫がホテルを利用したカード明細、通勤経路でもないのに不倫相手の自宅の最寄り駅を何度も利用しているPASMO履歴なども考えられます。
それら記録の日付と、例えばLINEやメール、手帳の記載上、二人が会う約束をしていた日が一致するといったことがあれば、これは十分証拠となります。
自家用車のカーナビにホテルに行った履歴があるとか、スマートフォンのGPS追跡をしたところ、ホテルに行った記録があるなどの場合にも、同様のことが言えます。
また、これらのように決定的なものではないものの、何度も頻繁に会っている二人がLINEや手紙などで「好き」、「愛している」など、男女として交際している間柄でしか通常はしないやりとりをしているなどといったことも、証拠となりえます。
会話の録音データなども証拠なりますが、盗撮・盗聴はプライバシーの侵害になり得るため、その取得には注意が必要です。
不倫の慰謝料の証拠を収集する方法
何が証拠となるのかが分かったところで、次は、証拠の取得方法を見ていきましょう。
証拠となる写真の取得方法
先ほども述べたとおり、ホテルへの出入りなどの写真の入手は、一般の人間には難しいところです。
しかし、すぐに興信所や探偵に調査を依頼することもお勧めできません。興信所の調査は、想定していた以上に費用がかかることも多く、その結果、写真などは押さえられなかったということもありえます。
もし配偶者が不倫をするかもしれないという日時がわかっているのであれば、その配偶者をご自身あるいは知人に依頼して、追跡してみるのも手です。自動車で移動している場合、GPSを付けて配偶者の動きを追うことも有効で、不倫現場を突き止める手掛かりにもなります。
配偶者のスマートフォンを確認する
これまで述べてきた中に頻繁に出てくるように、不倫の証拠は、LINEやメールなど、スマートフォンの中に隠れていることが多いです。
現代では、カードや電子マネー決済の記録などもスマートフォンで確認できることも多いですし、不倫の証拠を得るなら、まずは配偶者のスマートフォンの確認が必要です。
夫や妻に黙ってスマートフォンを見てもよいのかという疑問を持つ方もいらっしゃるかと思います。黙って見てしまったことが、実際に、法的問題にまで発展することはさほど多いとは言えませんが、夫婦間であっても、プライバシーは尊重されるべきです。
そのため、トラブルを避けるためには、配偶者と話し合ったうえで、不倫を認めた場合は証拠を集めるためとして、不倫を認めないなら潔白を示すためとして、許可を得てスマートフォンを確認することをお勧めします。
不倫相手とのやりとりを消されてしまったら?
スマートフォンの中には不倫を示す証拠が存在していることが多いですが、夫や妻においても配偶者への不倫発覚を警戒して、会う約束をしたやりとりや、肉体関係を示すやりとりは削除していることがあります。
そのような場合であっても、LINEのやりとりなどは、復元できることもあります。ただ、復元については、専門の業者に依頼せねばこれをできないことが多いため、確実に間違いなく不倫の証拠になるやりとりがあったはずだというような場合でなければ、闇雲に復元を依頼しても空振りに終わってしまうことも考えられます。
露骨に不倫を示すやりとりは、削除されていることも多いですが、全てのやりとりをくまなく削除するというのも、逆に怪しまれるというような心理から避けているケースもあります。ちょっとしたやりとりであっても、その他の証拠と組み合わせることで不倫の証拠となりえますし、電子マネー決済や、GPSの記録などは、消去の方法が分からなかったり、不倫の証拠になるとは思わず残しているといったことも考えられます。
何が証拠となるのか、ご自身で判断するのは難しいと思います。一度、怪しいと思う記録は全てバックアップをとり、弁護士に見せて相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
不倫慰謝料を請求していくには、不倫相手が、夫や妻の存在を知りながら肉体関係をもったことが必要になりますが、必ずしも、一般的にイメージするような、ホテルの出入りなどの証拠がなくてはならないというわけではありません。
すでに夫や妻のスマートフォンの中に、証拠が存在している可能性も十分考えられます。
また、証拠が揃わなくても、弁護士から請求することで不倫相手が不倫を認めるような状況は揃っているかもしれません。
とはいえ、証拠が重要であることは間違いありませんので、ご自分で揃えられるだけの証拠を集めたうえで、専門の弁護士に、これがあれば不倫慰謝料を請求することができるのか、証拠となるのか、ということを相談してみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。