痴漢で懲戒処分・クビになる基準は?会社員と公務員の違いと解雇回避の方法を弁護士が解説
最終更新日: 2026年01月15日

「痴漢をしてしまったことが会社にバレたら、懲戒解雇(クビ)になるのだろうか…」 「公務員の場合、退職金も出ずに懲戒免職になってしまうのか…」
痴漢事件の当事者となった際、刑事罰(罰金や懲役)と同じくらい、あるいはそれ以上に恐ろしいのが「勤務先からの懲戒処分」ではないでしょうか。
結論から申し上げますと、「痴漢=即解雇」とは限りません。 しかし、会社員(民間)か公務員かによって処分の基準は大きく異なり、また初動の対応次第で処分を軽くできる可能性も残されています。
この記事では、痴漢事件における懲戒処分の相場や、会社員・公務員それぞれの判断基準、そして解雇・免職を回避するためにすべきことを弁護士が解説します。
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どのような場合に職場に知られてしまうのか
職場から懲戒処分を受ける場合には、職場に痴漢事件が露見していることが前提となりますが、痴漢事件を起こした場合、職場には知られてしまうのでしょうか。
職場に露見するパターンは、
- 逮捕・勾留された場合
- 加害者本人又は家族が職場に正直に話した場合
- 報道された場合
- 警察から職場に連絡が行った場合
です。
逮捕・勾留された場合
逮捕された被疑者は、原則として48時間以内に身柄拘束されたまま検察庁に送致されます。
そして、そこから24時間以内に検察官が裁判官に10日間の被疑者の勾留を請求することとなります。そして、裁判官が被疑者の勾留を決定すると10日間もの間、身柄拘束され、さらに10日間、身柄拘束が延長されることがあります。
このように長期間の身柄拘束がなされると、職場に対して欠勤理由について言い訳ができませんので、正直に痴漢事件について話さざるを得なくなります。
加害者本人又は家族が職場に正直に話した場合
痴漢事件を起こすと警察署に連れていかれ、終日、あるいは数日間、外部との連絡がとれなくなります。
そのため、無断欠勤となり職場に迷惑をかけることを避けるために、逮捕される直前に加害者本人から職場へ痴漢行為で逮捕されたことを連絡したり、加害者から連絡を受けた家族が職場に痴漢行為で逮捕されたことを連絡するケースがあります。
報道された場合
痴漢行為は毎日たくさん発生していますので、報道価値という点で一般の会社員の痴漢事件が報道されることは多くはありません。
他方、公務員の場合は報道されることがよくあります。そして、報道されると職場に知られる可能性が高くなります。
警察から職場に連絡が行った場合
痴漢事件で警察に逮捕されると、担当刑事から職場に電話連絡が行くことがあります。もっとも、会社員の場合は、このように警察から会社に連絡が行くことは稀です。
他方、公務員の場合には警察から職場に連絡が行くことも比較的よくあります。
また、捜査のために職場に連絡が行くこともあります。例えば、同僚との飲み会の後に、泥酔した状態で痴漢行為をしたため、被疑者に痴漢行為の記憶がないというケースの場合、本当に飲んでいたのか、どれくらいの量を飲んでいたのかという事実を捜査するため、同席していた同僚から事情を聴取するべく警察から会社に連絡が行くことがあります。
【民間企業】痴漢事件を起こしたら懲戒処分を受けるか
懲戒処分は、会社員に重大な不利益を与える処分ですから、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます(労働契約法15条)。特に懲戒解雇は、労働者としての地位を失う重大な不利益を与える処分のため、慎重な判断が要求されます。
以下、痴漢事件で逮捕された段階と刑事処分を受けた段階のそれぞれについてご説明します。
逮捕されただけでも懲戒処分を受けるか
痴漢事件で逮捕された場合、逮捕された事実だけでも懲戒処分を受けるのでしょうか。
被疑者は逮捕されたとしても起訴されて、裁判所から有罪判決を受けるまでは、無罪推定の原則により、真に痴漢行為を行ったかどうかは未確定なものとして扱われます。
そのため、会社としても、当該会社員が痴漢行為をしたことを前提に懲戒処分をすることはできません。
ただし、当該会社員が痴漢行為を認めている場合には懲戒処分をすることは許されます。
もっとも、懲戒処分にも戒告から懲戒解雇まで重さに幅があり、有罪判決を受けていない段階での懲戒解雇は違法となる可能性があります。
逮捕されたとしても、その後、被害者と示談が成立したなどの事情によって不起訴処分となる可能性もあります。不起訴処分となった場合、業種や職種にもよりますが、懲戒解雇という一番重い懲戒処分を受ける可能性は低いでしょう。
有罪判決を受けた場合の懲戒処分
次に、痴漢事件で有罪判決を受けた場合、会社から懲戒解雇処分を受けるのでしょうか。
会社員は、職務と関係のない私生活上の非違行為については、当然に会社から処分を受けるものではないということが原則です。もっとも、裁判例では、会社の社会的評価や企業秩序に重大な影響を与えるような会社員の私生活上の非違行為については、懲戒処分の対象となるとされています。
従業員が痴漢行為という犯罪によって有罪判決を受けた事実は、会社の社会的評価を低下させうるものですから、懲戒処分をすることは許されると考えられます。もっとも、懲戒処分をするかどうかは会社に裁量がありますので、情状によっては懲戒処分を受けない可能性もあるでしょう。
示談成立でも解雇される可能性
刑事事件として不起訴になった場合でも、会社側は独自に事実調査を行い、懲戒処分を決定できます。これは就業規則に基づく内部規律の問題であり、刑事責任とは別に判断されます。
示談成立や不起訴は刑事責任を免れる結果ですが、企業は社会的評価や社内秩序を守る立場にあり、「社外での不祥事」として処分する場合があります。
ただし、弁護士が早期に介入し、勾留回避や迅速な示談成立、情報管理を行うこと
で、会社に知られず事件を終結できる場合があります。この場合、懲戒処分自体を回避でき、経歴や職場環境への影響を最小限に抑えることが可能です。
解雇された場合の退職金・失業手当
懲戒解雇の場合、就業規則に基づき退職金は全額または一部不支給となるのが一般的です。諭旨解雇や自己都合退職では退職金が支給される場合もありますが、減額されることもあります。
失業手当については、懲戒解雇でも受給自体は可能です。ただし、「自己都合退職扱い」として扱われることがあり、約1か月の給付制限期間が設けられ、再就職までの生活資金に影響します。弁護士が交渉し、解雇理由を「会社都合」に近い形にできれば、給付制限期間なしで受給できる可能性もあります。
【公務員】痴漢事件を起こしたら懲戒処分を受けるか
公務員は、憲法に「全体の奉仕者」として規定されています。
公務員に対する懲戒処分は、公務員としてふさわしくない非違行為があった場合に、公務員関係の秩序を維持するため科される制裁ですから、懲戒処分を行う処分庁には広範な裁量が認められるというのが一般的な考え方です。
以下、痴漢事件で逮捕された段階と刑事処分を受けた段階のそれぞれについてご説明します。
逮捕されただけでも懲戒処分を受けるか
会社員の場合と同様に、無罪推定の原則により、裁判所から有罪判決を受けるまでは、真に痴漢行為を行ったかどうかは未確定なものとして扱われます。
そのため、役所としても、当該職員が痴漢行為をしたことを前提に懲戒処分をすることはできません。ただし、当該職員が痴漢行為を認めている場合には懲戒処分をすることは許されます。
有罪判決を受けた場合の懲戒処分
公務員の場合、人事院が「懲戒処分の指針について」という懲戒処分基準を定めており、地方公務員についても同様の基準が定められています。
この「懲戒処分の指針について」では、「公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。」と規定しています。
したがって、痴漢行為をした公務員は、原則として、停職又は減給の懲戒処分を受けることとなります。
懲戒免職されることはあるのか
刑事処分が確定した場合には、国家公務員法・地方公務員法に規定されている欠格事由との関係が問題となります。
国家公務員法、地方公務員法は、禁固以上の刑に処せられた者について、公務員の欠格事由として規定しています。
痴漢行為には各都道府県の迷惑防止条例違反となるものと、刑法の強制わいせつ罪となるものがあります。
迷惑防止条例違反の場合、都道府県によって多少異なりますが、罰金刑と懲役刑を定めています。初犯の場合には罰金刑となることがほとんどですから、欠格事由には該当しませんが、2回目、3回目の場合には懲役刑の有罪判決を受け、欠格事由に該当する可能性があります。
他方、刑法の強制わいせつ罪にあたる痴漢行為の場合、罰金刑の定めは無く、初犯であっても起訴処分となって有罪判決を受けると懲役刑となりますので、欠格事由に該当することとなります。
そして欠格事由に該当した公務員は懲戒免職処分を受けることとなります。
痴漢事件を起こした場合に懲戒処分を免れるためには
前記のとおり、職場に痴漢事件が露見したり、有罪判決を受けると懲戒処分を受ける可能性が高くなります。
そのため、懲戒処分を受けないためには、まずは痴漢事件が職場に露見することを回避する必要があります。そのためには、逮捕・勾留されることを回避することが最も重要です。この逮捕・勾留を回避することは報道のリスクを低下させることにもつながります。
次に、有罪判決を受けることを回避するためには、被害者と示談することが最も重要です。痴漢事件の初犯であれば、被害者との間で示談が成立していれば迷惑防止条例違反の場合も、刑法の強制わいせつ罪の場合も不起訴処分となるのが通常です。
このように逮捕・勾留を回避する、被害者と示談交渉をするためには刑事事件の経験豊富な弁護士に相談、依頼することが必須となります。
よくある状況と対応例
例:弁護士介入で不起訴&会社に知られず解決
通勤電車で痴漢の疑いをかけられた会社員は、事情聴取の段階で弁護士に連絡。弁護士が警察に身柄引受書や本人の誓約書等を提出して身柄拘束されることを回避しつつ、早期に示談を成立させました。
その結果、不起訴処分となり、会社には欠勤理由を私用とだけ伝えて処理。事件は社内に一切知られず、通常通り勤務を継続できました。
例:早期示談で社内調査前に終結
駅構内での痴漢容疑で逮捕されたケース。依頼を受けた弁護士が即日接見し、被害者との示談交渉を開始。3日以内に示談書を取り交わし、警察にも速やかに提出しました。迅速な対応により、社内調査が始まる前に不起訴で終了。処分や解雇のリスクを回避できました。
※こちらはあくまで参考であり、実際の案件とは異なります。
よくある質問(FAQ)
Q:痴漢で逮捕されても不起訴なら解雇されませんか?
A. 不起訴でも就業規則違反として解雇される可能性があります。企業の判断基準は刑事結果とは別です。また、逮捕されると出勤に影響が出るので、会社に知られるリスクが高まります。
Q:懲戒解雇されたら失業手当はもらえませんか?
A. 受給は可能ですが、重責解雇に該当すると判断された場合、待機期間に加えて、給付制限があります。
Q:会社に知られないまま示談できますか?
A. 身体拘束がなければ会社にバレる可能性は低いです。身体拘束されてしまうと、どうしても会社に知られてしまう(知らせるほかない)事態になってしまいます。
Q:解雇を回避できる条件は?
A. 早期示談、勾留回避、職務変更や減給での合意などが有効です。
Q:家族に知られずに対応できますか?
A. 弁護士を通じたやり取りにより、家族や勤務先への情報漏洩を最小限にできます。
最後に
以上、痴漢事件を起こした場合の懲戒処分についてご説明しました。
会社員であっても、公務員であっても仕事はとても重要です。もちろん、犯してしまった過ちについてはきちんと償う必要がありますが、家族のためにも仕事を守りたいという気持ちも理解できるところです。
痴漢事件を起こしてしまい、会社に露見することを避けたい、懲戒処分を避けたいという方は、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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