円滑化法によるマンション建て替えの流れ
最終更新日: 2023年11月27日
古くなったマンションを建て替える場合の法的根拠として、建替え円滑化法という法律があります。
国土交通省「マンション建替えの実施状況」によれば、平成31年4月1日時点において、平成16年2月末から平成31年4月1日までのマンション建替え件数が報告されていますが、建替え円滑化法による建替えが83件、円滑化法によらない建替えが74件と、円滑化法による建替えの実施件数は未だ少ない状況にあります。
今後、10年後にも建替えが必要となるマンションの件数が増加すると試算されているところ、建替えを検討するマンション区分所有権の方々もさらに増えていくでしょう。
そこで、今回は、マンション建替え円滑化法に則り、建替え完了までに至る流れ・法律の仕組みについてご説明します。
建替え円滑化法による建替え手続の流れ
建替え円滑化法が想定する大まかな手続きの流れは以下のとおりです。
なお、建替え円滑化法は、個人施行者による建替えと、建替組合を施行者とする建替えの二つの方法が規定されていますが、ここでは後者の建替組合を施行者とする建替えを念頭においてご説明します。
建替組合の設立
建替組合
建替組合とは、マンションの建替えを円滑に進めるにあたって、建替え円滑化法が、マンションの建替えを希望する区分所有者の集団に与えた法人格のことです。
建替え円滑化法に基づいて事業を行うためには、都道府県知事に対し、建替組合の設立認可の申請を行う必要があります。具体的には、区分所有法62条の建替え決議により建替えを行う旨の合意をした者は、5人以上が設立発起人となって、定款および事業計画を定め、建替え合意者の4分の3以上の同意により、都道府県知事に建替組合設立の認可申請をすることができます。
建替組合を設立することで、同組合が施行者となって、建替え円滑化法が定める権能を行使し、マンションの建替えを進めることができるようになりますので、建替えに至るまでの流れが非常にスムーズになります。
参加組合員の選定
建替え合意者以外で、建替組合が施行するマンション建替え事業に参加することを希望し、かつ、それに必要な資力及び信用を有する者を建替組合の組合員とすることができます。
従前から建替えが必要なマンションの工事を進めるにしても、当該マンションの区分所有者だけで行うのは不可能で、実際には、資金が潤沢にあり、過去の建替え実績の件数も多く、建替えのノウハウを持っているデベロッパーを関与させる必要がありました。
そこで、建替え円滑化法においても、かかる実情を反映し、デベロッパーにも「参加組合員」という法的地位を与え、建替えに関与できる仕組みとしました。
なお、参加組合員を選定するときは、当該参加組合員に関する情報および当該参加組合員が取得する予定の専有部分などを定款に定めておく必要があります。
審査委員
建替組合が権利変換計画を定めるにあたり、協議がまとまらなくなる場合に備えて、審査委員を3人以上選任しておく必要があります。
審査委員とは、専門的中立的立場で関与する第三者機関であり、一般的には弁護士や、不動産鑑定士が選任されています。
権利変換計画
建替え不参加者に対する売渡し請求
権利変換計画を策定する前提として、旧マンションの権利の全てを建替組合が保有しておく必要があるため、建替え事業に参加しない区分所有者の区分所有権及び敷地利用権を予め買い取っておかなければなりません。
そこで、建替え不参加者から法的に区分所有権を買い取らせるために、建替え円滑化法が建替組合に付与した権能を、「売渡し請求権」と呼んでいます。
もちろん、「売渡し」と言う以上、無償で建替え不参加者から区分所有権を取得できるはずもありませんので、当該区分所有権を「時価」で買い取る必要があります。「時価」とは、「建替え後の新マンションの価額と、建替えに要した経費との差額」と考えられています。
建替えに至る流れをスムーズに進めるには、建替え不参加者に対する時価相当分の支払いが必要となるため、当該資金を用意しておく必要があります。
また、売渡し請求は、建替組合と建替え不参加者が争いとなりやすい場面でもあるため、紛争や訴訟となった場合の対応策も検討しておかなければなりません。
権利変換計画の策定
売渡し請求が完了した後は、権利変換計画を策定しなければなりません。具体的には、既存の区分所有権及び敷地利用権、賃借権、担保権が、建替え後のマンションにどのように移行するのかを定めることとなります。
権利変換計画は、建替え組合総会における組合員の議決権及び持分割合の各5分の4以上の多数で決することとしています。また、建替組合は、権利変換計画に賛成しなかった組合員に対して、当該組合員の権利を時価で売り渡すよう請求することができます。
工事実施
権利変換計画が決定した後は、施工者が旧マンションを取り壊し、新マンションの建替え工事に着手することになります。施工者となる建設会社との請負契約の締結は、建替組合がこれを行います。
とはいえ、工事に着手するにしても、旧マンションの住人が建物に存在していては、工事に着手することもできないので、反対する区分所有者や借家人が任意に立ち退かない場合には、明渡請求も必要となります。実際に、明渡しの段階でトラブルが生じ、スムーズに工事着工ができない事例もあるようです。
なお、建替え円滑化法上は、明渡しを拒絶する区分所有者等に対する請求権を定めていないので、通常の民事訴訟により、当該明渡し対象となる専有部分に対する確定判決を得て、民事執行法により明渡しを請求する手続きをとることになります。
入居開始
新マンションが竣工し、登記も完了することで、新マンションへの入居が開始されます。当然、新たな管理組合を設立する必要があります。
最後に
国土交通省の統計によれば、築40年を超えるマンションが81.4万件もあり、10年後には約2.4倍の197.8万件、20年後には約4.5倍の366.8万件になると試算されており、今後、ますます建替え件数が増加すると見込まれます。
ここでは、マンション建替え手続の全体像を簡単にご説明しましたが、実際にマンションの建替えを始めると、様々な理由から建替えに賛成しない人がおり、手続が思うように進まないという事態も珍しくないと思います。時に、一人の区分所有者(または借家人)に対する売渡し請求や、明渡しだけでも1年以上の時間を要してしまうこともあります。
マンションの建替えを円滑に進めるには、住民及び関係者が、きちんと建替え円滑化法の流れ・法律の仕組みを理解し、早くから建替えに向けて準備を始めることが重要です。もし、あなたが今住まわれているマンションの建替えが必要であると考えているのなら、来るべき建替えの日に備え、マンション建替えに関する法律に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。