工事請負契約書のチェックポイント

最終更新日: 2023年11月17日

請負契約におけるトラブルを回避するために欠かすことができないのは、工事請負契約書です。ここでは、建築業の企業法務に携わる専門家の視点から、皆さんが普段使われている工事請負契約書のチェックポイントについて、ご説明します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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工事内容の特定

作成した契約書が誰の、何に対するものなのかがわからなければ、トラブルが生じた際、何の効力も発揮しません。そのため、工事内容を特定できる程度の内容を契約書に明記しておく必要があります。具体的には、工事名、工事場所は少なくとも盛り込んでおく必要があるでしょう。

また、詳細な工事内容についても、契約書を作成する段階において可能な限り明確にしておくことで、追加工事の問題が出たときに紛争を解決しやすくなります。たとえば、契約締結時に合意した見積書や、仕様書を別紙添付することなどの措置をしておくのが望ましいといえます。

支払条件

工事代金を契約時に全額支払うのは稀で、工事の工程が進むに従い、段階的に工事代金を分割して支払っていくことが通常です。

しかし、支払条件をあいまいにしてしまうと、支払期限の認識に齟齬が生じるなど、トラブルの原因となります。そこで、可能であれば、設定した工期から逆算して支払いの日時及び支払金額を明確に定めておくことが望ましいといえます。もっとも、「上棟時」「完成時」と定めることも実務上多いと思われますので、工期を読めず日時を特定できない場合は、そのような定め方でもよいでしょう。

工期の定め

無理のない工期を定めておくのが望ましいでしょう。また、工期の遅延は、契約の引渡日と実際の引渡日との差というわかりやすい問題であることから、責任追及もしやすく、施工者にとって弱点となりやすいといえます。そのため、請負契約書には賠償額の予定金額を盛り込んでおくことは非常に重要です。

瑕疵担保責任

瑕疵担保責任とは、完成した建物に欠陥があった場合の施工者の責任のことを言います。従前、標準的な工事請負契約書においても、瑕疵担保責任に関する定めを置くことが通常でした。

しかし、民法改正により、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わるため、現在使用している契約書の文言を改正後の表現に修正する必要があります。

また、「契約不適合責任」への改正に伴い、欠陥があった場合の法的効果も微妙に変わってくることから、「瑕疵担保責任」の文言を「契約不適合責任」に変えるだけで済むような簡単な問題ではありません。現行の請負契約書を修正されていない施工者にとっては、一度、専門家に契約書のリーガルチェックを受けられることをお勧めします。

契約書の貼付する印紙について

工事請負契約書を作成すると発生するのが印紙税です。取引先などで信頼関係を構築している場合に注文書・請書のやりとりで済ませ、逐一、契約書を作成しないのは、印紙税を節約する目的もあるかもしれませんが、やはりそのような運用ではトラブルを引き起こしやすくなるため、契約書の作成を怠るべきではありません。

工事請負契約書を作成した際の印紙代負担の問題ですが、誰が負担しなければならないとの決まりはありません。契約書は双方のためのものですので、折半するとの運用もありうると思いますし、あらかじめ見積書に印紙代を記載し、施主に負担いただくこともあるでしょう。

他方、リフォーム工事請負契約書は、簡易な工事だから印紙は不要と考えておられる人もいますが、これは誤りです。印紙は、契約の目的となっている金額によって必要となってくるため、金額が大きければ、当然、印紙を用意しなければならない場合もあります。

なお、建物建築工事の請負契約に関しては、印紙の減税措置がなされています。契約目的の金額によって印紙税額も変わってきますので、国税庁のホームベージで確認することもできます。

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