不倫で相手に罰を与えたい?!与える方法は?弁護士が解説します。
最終更新日: 2023年06月30日
不倫したら罰はあたるの?
不倫の罰にはどのようなものがあるの?
独身と偽っていた相手を罰するにはどうすれば良いの?
不倫で裏切られた方は相手を罰したいと思うのは当然ですが、初めてのことですとどうやって罰したら良いのかわからないのではないでしょうか。
今回は数百件の不倫問題を解決してきた専門弁護士が不倫の罰し方について解説します。
不倫は犯罪ではないので罰則はない!
海外には現在も不倫を重罪として刑事罰を科している国があります。日本も同様に戦前は姦通罪(かんつうざい)として、妻が不倫をした場合は刑事罰を科す法律がありました。
しかし、姦通罪は戦後直ぐに廃止されたため、現在の日本では不倫は犯罪ではなく罰金刑や懲役刑などの罰則はありません。
不倫と犯罪について詳しくは下記の記事もご覧ください。
不倫相手に罰を与える法律
不倫は犯罪ではなく罰則はありませんが、法律上、罰がないわけではありません。
民法には、他人の権利や利益を侵害した場合に損害賠償をしなければならないという条文があります(708条)。これを不法行為といいます。
不倫(民法上は不貞といいます。)はこの不法行為に該当しますので、不倫をした人は不倫をされた配偶者に対して損害賠償をしなければならないのです。この損害賠償の内容のメインとなるのが精神的苦痛に対する慰謝料です。
このように現在の日本の法律では、不倫をした人に刑事罰を科すことはできませんが、損害賠償という罰を与えることとなっているのです。
慰謝料の相場については、以下の記事をご覧ください。
不倫相手の会社に報告して罰を与える!?
同僚と不倫をしたときには、不倫をされた配偶者としては会社に不倫を報告することで、不倫相手を退職に追い込みたいと考えることでしょう。
確かに不倫の事実を会社に伝えれば、懲戒解雇は難しいでしょうが、事実上、自主退職せざるを得ない立場に不倫相手は追い込まれるかもしれません。
しかし、会社に不倫を報告する場合には、以下ご説明します二つのリスクを覚悟しなければなりません。
逆に罰せられるリスク
一つは、逮捕され刑事罰を受けるリスクです。
例えば、会社のお問合せフォームに不倫の事実を書いて送信する、職場を訪れて大声で不倫を暴露するなど多数の人に向けて不倫をばらした場合、名誉棄損罪という犯罪に該当します。逮捕され、有罪判決を受けて前科者になるリスクがあるのです。
直接多数の人にばらすのではなく、一部の人にばらした場合であってもそこから多数の人に伝わる可能性がありますので、やはり名誉棄損罪に問われるリスクがあります。
多額の損害賠償のリスク
もう一つは、多額の損害賠償請求を受けるリスクです。
会社に不倫をばらした結果、不倫相手が退職した場合、給料相当の損害が発生したとして不倫相手に1年分などの給料相当額を賠償しなければならなくなる可能性があるのです。
その金額は不倫相手から支払われる慰謝料よりもはるかに高額で、数百万円にのぼる可能性があります。
示談書に違反したときの罰則や罰金
ここまで不倫相手の罰し方についてご説明しました。不倫相手に慰謝料を請求する場合も請求しない場合も、二度と配偶者に接触して来ないように示談書を交わすことが通常です。
示談書では手段を問わず金輪際、配偶者に接触して来ないことを約束させます。もっとも、単にこの約束をさせるだけですと、違反があった場合、性交渉などの不倫がない限り、不倫相手から取ることができるのはせいぜい慰謝料10万円、20万円ほどです。
そこで、違反したときの罰則として罰金(違約金)を定めます。その金額は50万円から100万円が妥当です。500万円などの高額を定めますと公序良俗違反として無効になってしまう可能性がありますので要注意です。
また、よくあるのが接触1回につき幾らという定め方です。このような定め方ですと、例えば、LINEのメッセージを1通送ると接触1回にカウントされるのか明確ではありません。
そのように解釈すると罰金が非常に高額になってしまいますので、裁判でも一連のメッセージのやり取りを接触1回と解釈されるでしょう。
このように解釈の余地のある定め方をしますと無用な裁判を招きますので罰金の定め方は明確にする必要があります。
不倫した配偶者への罰の与え方
次に、夫婦間における不倫をした配偶者の罰し方についてです。代表的な方法について見ていきましょう。
- 離婚する
- 別居して婚姻費用をもらい続ける
- 夫婦間契約を交わす
離婚する
まずは、離婚です。
離婚する際には当然、慰謝料の支払いを受けますし、結婚後に築いた財産を折半する財産分与を受けることができます。このような経済的なダメージを配偶者に与えることができます。
また、子どもの親権を得ることができれば、不倫をした配偶者は子どもと生活することもできなくなります。
このように離婚によって、もちろん自身にも影響はありますが、不倫をした配偶者の生活、人生を一変させる罰を与えることができます。
別居して婚姻費用をもらい続ける
不倫をした配偶者が離婚を望んでいる場合には離婚は罰とはなりません。このような場合には、離婚を拒否して婚姻費用をもらい続けることが強力な罰となります。
ただし、これが使えるのは不倫をした配偶者の収入の方が大きい場合です。
婚姻費用とは生活費のことですが、別居をすると、収入の高い方の配偶者は低い方の配偶者に対して毎月、婚姻費用を支払う必要があります。その金額はお互いの年収から計算されます。
この婚姻費用は、原則として別居開始から離婚するか一方が亡くなるまで支払いが続きます。
例えば、14歳未満の子が1人、不倫をした配偶者の年収が600万円、不倫をされた配偶者の年収がゼロであれば約13万円の婚姻費用を支払う必要があります。
このような支出が何年も続くことは不倫をした配偶者にとって非常に重い罰となるでしょう。
夫婦間契約を交わす
3つ目は、離婚や別居はせずに夫婦関係の修復を目指していく場合に与える罰です。
夫婦関係を続けていく条件として、不倫をした配偶者との間で契約を交わします。これを夫婦間契約といいます。
その内容は、以下のような内容が一般的です。これによって不倫をした配偶者にプレッシャーをかけ、再び不倫をすることを抑止します。
- 再び不倫をしたら離婚すること
- 離婚時の慰謝料は○○万円とすること
- 財産分与の割合は5割ではなく、不倫をされた配偶者が8割とすること
- 養育費は通常の金額の〇倍とすること
独身と偽った不倫男への罰の与え方
ここまでは不倫をされた配偶者による罰の与え方についてご説明しました。最後に、独身と騙された不倫相手の女性による罰の与え方についてご説明します。
近時はマッチングアプリや出会い系サイトを利用する方がとても多くなり、それに伴い、既婚者の男性が独身と身分を偽って女性と交際し、それがばれてトラブルになるケースが増えています。
この場合の独身と偽った男性への罰の与え方は2つあります。
金銭を支払わせる罰し方
一つは、慰謝料などの金銭を支払わせることです。
独身だから交際していた、既婚者であれば交際していなかったという事情がある場合には男性の行為は不法行為に該当し、損害賠償義務を負います。このような不法行為を貞操権侵害といいます。
特に婚約をしたなど結婚に向けて動いていたというような事情がある場合には慰謝料は200万円以上になることもあります。
不倫を暴露する罰し方
もう一つは、男性の妻に不倫を暴露することです。妻だけに不倫の事実を伝えますので名誉棄損にはなりません。
妻から慰謝料請求を受けるのではないかと懸念するかもしれませんが、結果的には不倫だったものの、既婚者とは知りませんでしたので、慰謝料を支払う法的責任は発生しません。
これによって男性は妻から離婚されるかもしれませんし、離婚しない場合もその後の生活は針のむしろとなるでしょう。
まとめ
以上、不倫の罰し方についてご説明しました。
不倫をされたので不倫相手や配偶者を罰したい、独身と騙されたので不倫男を罰したい、いずれの場合も事前に罰し方を検討しなければ、予想外の結果を招きかねません。
不倫の罰を与えたい方は、行動を起こす前に不倫問題専門の弁護士にご相談ください。