不倫の慰謝料を払えない場合の対処法や実例を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月12日
- 不倫したのに慰謝料を払えないとどうなってしまうの?
- 不倫の慰謝料を払わなくて良いケースはないの?
- 不倫の慰謝料を払えない場合はどうすればいいの?
不倫の慰謝料は数十万円から高い場合には300万円ほどになることもあります。一般的にはこのような大金を容易に支払える方は多くはないでしょうし、自身の過ちということもあって払えない場合はどうなってしまうのかと不安を抱くことでしょう。
今回は、不倫の慰謝料を払えない場合について、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が解説します。
不倫の慰謝料を払えないとどうなる?
不倫の慰謝料を払えないと、どうなってしまうのでしょうか。捕まったり、足りなければ借金をしなければいけなかったりするのか、不安に思われる方もいるでしょう。以下より、詳しく解説します。
逮捕される?
不倫という過ちを犯していながら、慰謝料も払えないとなると余りにも悪いことをしているから逮捕されるのではないかと不安に思う方もおられるかもしれません・
しかし、逮捕されるのは何か犯罪をしてしまった場合です。不倫は民事の責任はありますが犯罪ではありませんので、逮捕されることはありません。ご安心ください。
親に請求される?
慰謝料を払えないというと、親にその費用を請求すると言われることがあります。自分が払えないときは親が支払わないといけないのでしょうか。
特に不倫相手が18歳から20代前半であれば親の責任を問いたくなる気持ちはわからなくはありません。もっとも、法的には子の不倫問題について親に責任はなく、慰謝料を請求することはできません。
たとえ不倫相手が若くても、法的にはあくまで不倫問題は子だけの問題なのです。
借金させられる?
不倫の慰謝料の金額は低い場合でも数十万円という単位になります。このような大金を一括で支払うことができないという方は多いところです。
しかし、慰謝料を請求する側としては、分割ですと全額支払ってくれるか不安ですし、不倫相手との関わりが続くことは心理的に嫌なものです。
そのため、一括で支払う手持ちがないなら親族や消費者金融から借りて来いと言われることがあります。もっとも、借金を強制する法律はありませんので、借りることが嫌であれば拒否することができます。
裁判を起こされる
不倫の慰謝料を支払うことができない場合、相手が裁判を起こしてくる可能性は高いです。
裁判においても和解の話し合いの機会があります。間に裁判官が入って双方を調整しますので、最終的には分割支払いの内容にて和解が成立する可能性は高いです。
よって、裁判を起こされることに必要以上に不安を覚える必要はありません。
給料や財産を差押えられる
一方、裁判においても和解が成立しなかったときは、裁判所が慰謝料の支払いを命じる判決を出します。
判決が出た場合には一括で支払う必要があり、それができないときは判決に基づいて給料や財産を差し押さえられることになります。
不倫の慰謝料を払えない?払わなくていいケースも?
不倫の慰謝料を払えない場合には、裁判を起こされ、給料などを差し押さえられることもあります。しかし、そもそも不倫の慰謝料を必ずしも支払わなくても良い場合もあります。どんなケースが当てはまるのか、以下より詳しく見ていきましょう。
不倫をしていない場合
慰謝料を請求されたものの、そもそも不倫がない場合には、原則、慰謝料を支払う必要はありません。
食事をしただけ、LINEなどのメッセージのやり取りをしただけであれば、法律上の責任を問われる不倫ではありません。
他方、キスはした、ホテルには行ったけれども性交渉はしていない、自宅には行ったけれども性交渉はしていないという場合には、本当に性交渉がなかったとしても性交渉があったと認定されることがあります。
裁判官は神様ではありませんので必ず真実通りの判断ができるわけではありません。あくまで証拠から認められる事実を真実とみなして判断しているのです。
そのため、不倫をしていないのに、裁判において不倫が認定され、慰謝料の支払いを命じられてしまうことがあります。
既婚者と知らなかった場合
性交渉などの関係をもった相手が既婚者とは知らなかった場合、法律上、慰謝料を支払う義務はありません。出会い系アプリで知り合った場合などにこのように既婚者とは知らなかったというケースは多くみられます。
ただし、既婚者と疑うべきだったのに特に疑いもせずに独身と信じていた場合には、過失があり、慰謝料の支払い義務を負います。
例えば、LINEのアイコンが子どもと写った写真だったのに、特に問い詰めることもせず独身と信じていたような場合には過失があると認定されるでしょう。
夫婦関係が破綻している場合
法律上、慰謝料の支払い責任が発生する不倫とは、婚姻共同生活の平穏を侵害する行為です。
そのため、既に夫婦関係が破綻していた場合には、婚姻共同生活が平穏とはいえませんので、慰謝料を支払う義務は発生しません。
ただし、ここでいう「破綻」とは、一般的な感覚の破綻よりもかなり重いものです。例えば、既に2、3年の間別居している場合には破綻と認定される可能性が十分ありますが、単に封喧嘩が絶えなかったという程では「破綻」とは認定されませんので注意が必要です。
不倫の慰謝料を払えない場合の対処法
高額な不倫の慰謝料を支払うお金がない場合、不倫の慰謝料請求に対してどのように対処すれば良いのでしょうか。以下、その対処法についてご説明します。
不倫相手に協力を求める
まずは、不倫相手にお金の工面について協力を求める方法があります。
不倫の慰謝料は不倫をした二人が連帯責任として支払うものですから、不倫相手に協力を求めることは法律上、何ら制限されていません。
もちろん、不倫をされた配偶者からは、配偶者に接触しないように求められているかもしれませんが、未だ接触しないことを合意したわけではありませんので、不倫をされた配偶者との関係でも法的な問題はありません。
減額交渉
次に、減額交渉です。
最初の請求金額はほとんどの場合、相場よりも相当高い金額に設定されています。請求する側としても相場よりも高いことはわかって請求をしていますので、そこから減額されることは想定内です。
ですから、高額な請求金額であっても交渉次第で、最終的な支払金額を相場の範囲内まで減額させられる可能性は十分にあります。
分割交渉
支払う慰謝料金額が相場の範囲内に収まった場合も、その金額を一括で支払えるとは限りません。この場合は、慰謝料の支払いについて分割支払いの交渉をします。
一括で支払うお金がない以上仕方がありませんので、慰謝料を請求する側としても分割支払いには応じざるを得ません。無理に一括支払いで合意をさせてしまい、結局支払うことができなければ、裁判になり、判決を得てもその支払いが得られないことになってしまいます。
自己破産
慰謝料を請求された方の中には、借金の返済を抱えている方もおられます。この場合、借金の返済に不倫の慰謝料の分割支払いが加わると到底生活ができなくなってしまう場合があります。
このような場合、自己破産をすることが選択肢に入ってきます。
自己破産をした場合、不倫の慰謝料についても原則として免責され、支払義務はなくなります。自己破産は法律上認められた救済措置ですから、生活が破綻するような場合には自己破産についても検討されるべきでしょう。
逃げる?
最後は、不倫の慰謝料を請求された場合に、それを支払わずに逃げてしまう対応です。
無職でかつ財産もない場合には、仮に慰謝料の支払いを命じる判決が出たとしても差し押さえる給料も財産もありません。そのため、この場合、慰謝料の請求を一切無視して、裁判所からの呼び出しにも応じないという対応をする方もおられます。
このような対応を推奨するわけではありませんが、実際にこのようなことはしばしばあります。稀ではありますが、できる限り減額した金額で和解・示談をし、その上で和解金を一切支払わないという場合すらあるのです。
不倫の慰謝料を払えない場合の解決事例
最後に、不倫の慰謝料を払えない場合の実際の解決事例についていくつか見てみましょう。
減額のうえ長期分割で和解した事例
不貞行為によって離婚したという理由で、Aさんは、慰謝料300万円の請求を受けました。Aさんには、預貯金が数万円ほどしかなく、収入は月に20万円もなく、高額な慰謝料を支払う経済力はありませんでした。
しかし、減額交渉と支払いの分割交渉をした結果、慰謝料30万円を毎月5000円ずつ60回に分けて支払う内容で和解が成立しました。請求側としても、裁判をしたところで結果は変わらないと諦めて当方の提案に従った形です。
1年後の支払いにて和解した事例
Bさんは不倫相手の妻から慰謝料200万円を請求されました。Bさんは無職の主婦で、夫に内緒で工面できるお金は全くありませんでした。
Bさんの夫から自身の夫に慰謝料請求がなされることを避けたいと思った不倫相手の妻は、Bさんが少しずつお金をためてまとめて支払うことに同意し、1年半後に20万円を支払う内容で和解が成立しました。
ダブル不倫の場合にはこのように不倫相手の配偶者に不倫がばれることは避けたいと考えているケースは多く、その点が交渉材料となります。
まとめ
以上、不倫の慰謝料を払えない場合の対処法などについて解説しました。
高額な慰謝料を払えないという場合も、交渉次第で減額や分割払いによって和解ができる可能性は十分にあります。不倫の慰謝料を払えない場合の交渉は、不倫問題やその訴訟を専門とする弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。