【不倫慰謝料】内容証明のポイント!相手に住所を知られない方法は?専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年12月09日
- 内容証明はどうやって送るの?
- 不倫の慰謝料請求には何を書けばいいの?
- 内容証明を受け取ったら無視してもいいの?
不倫の慰謝料請求は内容証明を送るところからスタートすることが多いです。
ただ、普通に生活をしていて内容証明を送ることはそうそうありませんので、何をどうすればいいのかわからないのは当然でしょう。また内容証明を初めて受け取ったときは、動揺して対処に困るのはもっともなことです。
今回は、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が、不倫の慰謝料請求における内容証明のポイントや対処法について解説します。
不倫で内容証明のメリット・送り方とは?
内容証明という言葉は聞いたことがある方もおられるでしょうが、どのようなシステムで、どのような意味があるのかは知らない方も多いでしょう。まずは、内容の基礎について簡単にご説明します。
内容証明とは?
内容証明郵便とは、誰が、誰に対して、いつ、どのような内容の文書を送ったのかについて、証明してくれる郵便局が証明してくれるサービスです。
発送や受領を証明できるサービスは他にも特定記録や簡易書留、レターパックなどがありますが、いずれも送った文章の内容までは証明できません。
まさに「内容」を証明してくれるのが内容証明郵便の特徴です。送った書面の謄本は5年間、郵便局に保存されます。
慰謝料請求を内容証明で行うメリット
内容証明の基本的なメリットは、このように書面の発送と受領の証明と文章内容の証明にあります。
また、他のメリットとしては、不倫の慰謝料請求は、不倫の事実と不倫相手を知ってから3年、不倫のときから20年で時効が完成しますが、内容証明を送ることで、時効の完成を猶予することができます。
ですから、時効が近く訴訟を提起する時間的余裕がない場合には、まずは内容証明を送って時効の完成を阻止します。
このような制度的なメリットはありますが、多くのケースではこれらのメリットを享受するというよりも、内容証明の事実上の効果を期待して内容証明を利用しています。
その事実上の効果とは、内容証明を受け取ることなど一般にはそうそうありませんので、不倫相手に、正式な法的請求を受けた、「事件」となったという自覚をもたせてプレッシャーを与え、交渉を有利に進める効果です。
内容証明の送り方
内容証明の送り方は2種類あります。郵便局の窓口で発送するものと、インターネットで自宅から発送できる電子内容証明です。
電子内容証明であればパソコンで作成したものを24時間365日、自宅のパソコンを操作して発送することができます。
窓口でする場合、複数枚にわたるときはページとページの間に契印が必要であったり、文字の訂正方法が指定されていたりと手続きが多少煩雑です。
いずれの場合も1ページあたりの字数制限や使用できる文字に制限がありますので、詳しくは下記郵便局のWebサイトを確認しながら作成しましょう。
不倫で慰謝料請求の内容証明を書くときのポイント
内容証明がどのようなサービスであるのかお分かりいただけたかと思いますので、ここでは、内容証明の具体的な作り方についてご説明します。
まずは不倫の証拠を収集
内容証明を送ったところ、相手から事実無根と反論される可能性があります。不倫の証拠がなければそこで手詰まりとなってしまいます。
そうならないために、内容証明を送る前の準備として不倫の証拠を収集しましょう。配偶者の携帯電話から性交渉の動画や写真が見つかったり、性交渉をしたことがわかるメッセージのやり取りが見つかることもよくあります。
それらが見つからない場合も、いつ、どこで相手と性交渉をしたのか、相手は既婚者と知っていたのか等を配偶者に自白させ、それを記載した書面も証拠となります。
これらによって証拠を得られないときは、探偵に依頼をしてホテルや不倫相手宅への出入りの証拠をつかみましょう。
内容証明に書くべき項目
内容証明で送る文書には具体的に何を書けば良いのでしょうか。順番に見て行きましょう。
不倫の事実
まずは、不倫の事実を指摘します。いつからいつまで不倫をしていたのか、証拠から明確にわかるときは、「令和元年10月から令和3年2月まで性交渉を含む不貞行為に及びました。」と記載します。
他方、正確な時期がわからないときは、誤った時期を記載すれば証拠が不十分であることが相手にわかってしまいますので、時期については書かないことが賢明です。
その他にも妊娠や不倫への積極性など不倫の悪質さを基礎づける事実がある場合には、それらについても書くことを検討します。
夫婦関係への影響
次に、不倫の結果、夫婦関係にどのような影響があったのかについて書きましょう。別居や離婚をした場合にはそのことを書きますし、離婚に向けた話し合いをしているのであれば、離婚協議中であることを書きます。
その他にもどれほどの悪影響が夫婦や家族に生じているのか具体的に書けるときは書きましょう。
精神的苦痛
夫婦関係への影響の結果、どれほどの精神的苦痛を受けているのかについて書きます。思いをそのまま書いても良いですし、不眠症やうつ症状のために心療内科に通っている事実があればそれも書きましょう。
請求内容
以上を踏まえ、慰謝料として幾らを請求するので、それをいつまでに支払うようにということを記載します。振込先口座も忘れずに書いておきましょう。
締めの文句
締めの文句は重要です。期限までに振込がなかった場合や書面を無視した場合にはどうなるのかについて書きます。なお、もちろんですが、相手に危害を加えるとか、会社や自宅に乗り込むというような脅迫的な言葉は書いてはいけません。
不倫相手と配偶者の接触は禁止できる?
締めの言葉の中で今後は配偶者に連絡をしたり接触をするなと書くことがあります。その意図は不倫を辞めさせること、配偶者には慰謝料請求をしていることを知られたくないこと、慰謝料の支払いについて配偶者を頼らせないことなどがあります。
内容証明でこのような接触禁止を書きましても一方的に求めているだけであって未だ不倫相手と接触禁止について合意が成立したわけではありません。そのため、不倫相手が配偶者と接触したとしてもペナルティは発生しません。
とはいえ、このような接触禁止を書きますと結構な割合の方が接触をしてはならないのだと考えてそれに従っていますのでその効果は期待できます。
ところで、今後も夫婦関係を続けていく場合には配偶者への連絡、接触は禁止したいと通常考えますが、離婚するときはその点に関心がないのが通常です。
そのため、夫婦関係は破綻した、離婚を考えていると書いているのに、このような文句を書きますと矛盾することになり、離婚するというのは本当ではないと思われてしまいますので書くべきかどうか慎重に検討しましょう。
慰謝料を高く払わせるポイント
初めて内容証明を送る方は、文章の作成や送り方に苦戦しますので、戦略的に内容を考えるまでの余裕はないことが多いようです。そのため、インターネット上にあるテンプレートのような内容になりがちです。
しかし、内容証明を送る目的は不倫相手にできる限り早期に、できる限り高い慰謝料を支払わせることです。そのためには、文面に工夫を加える必要がありますので、いくつかのポイントをご説明します。
不倫を否定させないこと
まずは、不倫を否定させないことです。証拠はないのではないかと考えると不倫相手は不倫を否定してくる可能性があります。
そのため、「LINEのやり取り、探偵などの各種調査などの証拠から不倫の事実は明らかです。」、「夫も全て自白しています。」などと書くことで不倫を否定する余地はないと思わせることがポイントです。
また、内容証明の末尾に不倫関係を否定した場合には和解交渉は打ち切り、訴訟に移行することも書いておくと効果的です。
反論を誘発しないこと
つい色々なことを書きたくなってしまう気持ちはわかりますが、反論の余地がありそうな事実については内容証明の段階では敢えて書かないことが賢明です。
内容証明では事実関係については争う余地がないと不倫相手に思わせて、慰謝料の支払いに集中させることがポイントです。
金額交渉をさせないこと
慰謝料を請求しますと不倫相手本人もその依頼した弁護士も、できる限り低い金額で和解をするために、とりあえず低めの金額から提案をして、徐々に高い金額を提示していくことを考えます。
そのような交渉をさせますと、不倫相手が考えている、支払っても良い上限金額がわからず、それよりも低い金額で和解することになりかねません。
最初から不倫相手に最大限の金額を提示させるためには、金額の駆け引きに付き合うつもりはないこと、和解を希望するのであれば〇日以内に最終提案をするよう求めます。そして、その提案内容に了承できないときを和解交渉は打ち切り、訴訟を提起することを書きます。
これによって、提案は1度限りであることを不倫相手に覚悟させ、最初から不倫相手の考えている上限金額を引き出すことが可能となります。
不倫の内容証明はどこに送る?
内容証明を送るときにはもちろん送付先を記載する必要があります。自宅に送るのが通常ですが、それ以外にも送り先はあるのでしょうか。
自宅又は勤務先
内容証明の送り先は、自宅が原則です。不倫というプライバシーに関わる事柄が書かれた書面ですから、みだりに他人の目に触れる可能性のある職場に送ると法的責任を問われかねません。
もっとも、例えば、社内不倫で不倫相手の連絡先がわからず、氏名しかわからないという場合には職場に送る他ありません。この場合は内容証明を職場に送ることが認められます。
いずれもわからないときは?
自宅も職場もわからない場合があります。そうしますと内容証明を送ることができませんので、いずれかを調べる必要があります。
不倫相手の携帯電話番号や車のナンバーがわかるときは、弁護士に依頼をすれば携帯電話会社や運輸局に照会をして、不倫相手の登録住所を調査することができます。
実家に送ってもいいの?
不倫相手の自宅や職場以外に、実家に送ることも考えられます。
自宅や職場はわからないけれども実家の住所はわかるという場合や、自宅に送ったのに返事がないから実家に送る場合、自宅や職場はわかるけれども両親に不倫の事実を教えるためという場合もあります。
確かに実家に送れば両親から不倫相手に内容証明が届いた連絡が行く可能性が高いため、実家以外に送り先がわからない場合や自宅に送っても返事がない場合には、実家に送る必要性は認められます。
また、プライバシーに関わる内容ですが、職場とは異なり家族に知られてしまうだけであれば法的責任を問われる可能性も乏しいといえます。
単に両親に不倫の事実を教えるためという場合も法的責任を問われる可能性は低いですが、弁護士がそのようなことをしますと職務倫理に反しますので、弁護士はそのような目的で実家に送ることはできません。
相手の配偶者に知らせたい!?
ダブル不倫の場合、不倫相手の配偶者に不倫の事実を知らせてやりたいと考える方もおられるでしょう。
その手段として内容証明を不倫相手の自宅に送ることによって、不倫相手の配偶者の目に触れることを期待することがよくあります。
内容証明は不倫相手本人でなくとも受領することができますので、タイミングによっては不倫相手の配偶者が受領してくれるかもしれません。
また、不在票には差出人として弁護士名や法律事務所名の記載がありますので、それを見た配偶者から追及され不倫の事実が明らかになるかもしれません。
このように内容証明を自宅に送ることによって不倫相手の配偶者に不倫の事実を知らせられることがあります。
もっとも、事前に不倫相手が弁護士に依頼をして、弁護士から内容証明は弁護士事務所に送るよう連絡があった場合には、自宅に送ることは許されず、弁護士事務所に送らざるを得なくなります。
不倫の内容証明を受け取ったときの対処法
ここまでは内容証明を送る場合についてご説明しましたが、ここでは内容証明を受領した側の対処法についてご説明します。
無視するとどうなる?
内容証明が届いたときに、どうすればいいのか困って結果的に無視することになってしまった、あるいは無視をしておけば諦めるかもしれないと思い意図的に無視をしたという方もしばしばおられます。
内容証明を無視した場合、しばらくして、もう一度、同じ場所に内容証明が送られてくることもあれば、次は職場や実家に送られてくることもあります。
このように再度内容証明が送られてくることもあれば、直ぐに訴訟を起こされ、次は、裁判所から訴状が届くということも多くあります。
いずにしても無視をしてそれで終わることは稀で、無用に訴訟に発展する可能性もありますから、無視はせずに対応することが賢明です。
まだ振り込んではダメ!
内容証明に〇日以内に振り込めと書いてあったからその通りに振り込んでしまったという方がしばしばおられます。
しかし、振り込めばそれで示談成立というわけではありません。示談書を交わしたわけではありませんので、追加で慰謝料を請求しようと思えば請求できてしまうのです。
したがって、〇日以内に振り込めと書いてある場合もまずは、相手に連絡をして示談書の取り交わしをします。慰謝料の支払いはその後です。
減額交渉しましょう!
不倫の慰謝料の請求金額は300万円など高額な場合がほとんどです。多くの方は、そのような大金を支払うことができません。
また、請求をする側としても相場よりも高めに請求金額を設定していることがほとんどで、最終的な落としどころとしての金額はさらに低い金額を考えていることが多いです。
そのため、減額の幅についてはケースによって異なりますが、全く減額に応じてもらえないというケースは稀です。慰謝料を請求されたときは、そのまま支払うのではなく、減額交渉をしましょう。
不倫の内容証明は自分でやる?弁護士に頼む?
最後に、内容証明を自分で送る場合と弁護士が送る場合の違いについてご説明します。
住所を教えなくて済む
内容証明を自分で出す場合には、自分の住所を記載する必要があります。他方、弁護士に依頼した場合には内容証明に記載される差出人と住所は弁護士事務所のものになります。
よって、不倫相手に住所を知られたくないという場合は、弁護士に依頼します。
「法的手続」のリアルさが違う
内容証明の末尾には、大抵、慰謝料の支払いが無い場合には法的手続をとりますと書きます。
しかし、弁護士からではなく本人から送られてきた内容証明にそのように書かれていた場合、不倫相手はどのように捉えるでしょうか。
もちろん、裁判を起こしてくるのだと考える人もいます。一方、本当に法的手続をとるつもりがあるなら弁護士に依頼しているはずで、本人から送られてきたということは単なる脅しだろうと考える人もいます。
また、内容証明を受け取った人から相談を受けた弁護士は、本人から内容証明が送られてきた理由について以下のように助言します。
- 証拠がないから依頼を受けてくれる弁護士がいなかった
- 証拠が不十分だから弁護士に依頼をしても慰謝料が取れずに損をすることを避けたい
- 裁判をするつもりはなく、弁護士には依頼せずに穏便に終わらせたい
このように本人からの内容証明の場合、直ぐに法的手続が取られるとは思ってもらえず、プレッシャーにならず、内容証明を無視されたり、大幅な減額交渉をされることが多いのです。
他方、弁護士から内容証明が来たときは、上記3つの理由と反対で、証拠に自信があること、慰謝料の支払いがなければ直ぐに裁判になることを相手に示すことができます。
作成だけ依頼しても効果は半減
本人からの内容証明と弁護士からの内容証明では、不倫相手の受け止め方がこのように異なります。
内容証明の作成だけを弁護士に依頼したいというご相談はしばしばあります。単に内容証明を作るのが面倒だから代行してもらいたい、テンプレートの内容ではなくオリジナルな内容を作りたいというニーズには応えられるでしょう。
しかし、内容証明の内容も重要ですが、前記のとおり、誰が送るのかという点も同程度に重要です。そのため、内容証明の作成代行だけでは弁護士が代理人として送る場合に比して、効果は半減してしまいます。
したがって、内容証明の効果を最大限に高めるためには、内容証明の作成から発送、その後の交渉まで全て弁護士に依頼することが必要です。
まとめ
以上、不倫の慰謝料請求における内容証明のポイントや対処法について解説しました。
不倫相手に慰謝料請求するために内容証明を送りたい、内容証明を受け取ったけれど対処法がわからない・不安を感じているなど、いずれの場合も最善の解決をするためには、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。