不倫の慰謝料請求における時効について専門弁護士が徹底解説!

最終更新日: 2023年07月25日

配偶者の浮気が発覚してから何年も経った後に不倫相手に慰謝料請求をするというケースがあります。

例えば、浮気が発覚したものの、夫婦関係を修復していくことに決まったので不倫相手への慰謝料請求は控えていたものの、数年後に未だ浮気が継続していることが発覚したので、不倫相手への慰謝料請求を決意したというケースがあります。

また、不倫発覚当時は不倫相手に慰謝料請求をすることまでは考えていなかったけれども、不倫発覚以降、夫婦関係が悪化し、数年後に離婚することになったので、その責任をとってもらうために不倫相手に慰謝料請求を決意したというケースもあります。

このように不倫発覚から何年も経過した後に不倫慰謝料を請求する場合、時効にかかっており、不倫慰謝料の支払いを受けられない場合があります。

そこで、今回は、不倫慰謝料請求の時効についてご説明いたします。

不倫慰謝料に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

不倫の慰謝料請求における時効とは?制度の背景

時効とは、民法上は消滅時効といいますが、一定期間、権利の行使をしないと、もはや権利行使が認められなくなるものです。

なぜ、せっかく法律で認められた権利を行使できなくする制度が設けられているのでしょうか? 

その理由はいくつかあり、

  1. 長期間の経過によって立証や反証が困難になることや、
  2. 権利の上に眠る者は保護に値しないこと
  3. 長期間の経過によって被害感情が沈静化すること

などがあります。

確かに、不法行為をしておきながら、時効を主張して慰謝料の支払義務を免れるというのはいかがなものかと思われる方もいらっしゃると思いますが、不倫の慰謝料請求権についても時効があります。

もちろん、時効になったとしても、慰謝料請求された人が、深く反省しており自主的に慰謝料を支払うことは自由です。つまり、慰謝料請求された人が、時効を主張した場合にのみ、慰謝料を支払う義務から解放されることになります。

不倫慰謝料の時効の起算点

民法で定められている時効

民法第724条前段は、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と規定しています。

つまり、不法行為の損害と加害者を知った時から3年で時効となります。

「被害者が損害を知った時」というのは、被害者が損害の発生を現実に認識したときといいます。

原則は、不法行為を知ったときですが、後にもご説明しますが、離婚したときは、離婚した時が損害を知った時となります。

また、「加害者を知った時」とは、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状態のもと、それが可能な程度にこれを知ったときをいいます。

慰謝料請求をするためには、請求相手の氏名と住所を知っている必要がありますので、氏名と住所を知った時が、加害者を知った時となります。

ですから、例えば、探偵に依頼をして調査報告書を受け取ったところ、ご自身と面識のある人が不倫相手で、その人とラブホテルに出入りして浮気をしている調査結果が得られた場合には、その調査報告書を受け取った日の翌日から時効は起算されることになります。

不倫行為の時効の起算点は、離婚に至ったかどうかによって違ってきますので、以下ご説明します。

離婚に至っていない場合の時効の起算点

不倫行為は、交通事故のような1回の不法行為ではなく、継続して繰り返し行われる不法行為ですから、それぞれの不倫行為ごとに時効は進んでいくことになります。

もっとも、先ほどご説明したとおり、時効が起算されるのは、不倫行為と不倫相手の氏名住所を知った時からです。

例えば、

  1. 2015年5月1日に1回目の不倫行為があり、
  2. 同月5日に①の不倫行為と不倫相手の氏名住所を知り、その後、
  3. 同月10日に2回目の不倫行為があり
  4. 同月15日に③の不倫行為を知った場合

を考えます。

この場合、1の不倫行為については、不倫行為と不倫相手の氏名住所を知った日である5月5日の翌日から時効が起算されます。

他方、4の不倫行為については、5月15日の翌日から時効が起算されることになります。

離婚に至った場合の時効の起算点

不倫行為が原因で離婚に至った場合には、それまでに発生した精神的苦痛(損害)は離婚の成立による精神的苦痛に凝縮されると考えることができます。

すると、精神的苦痛(損害)は離婚が成立して初めて発生することになりますので、不倫行為が原因で離婚に至った場合の慰謝料請求権は、離婚成立日の翌日から時効が起算されることになります。

なお、離婚成立後に不倫行為を知ったという場合には、そもそも不倫行為が原因で離婚に至ったのではないとして、離婚と不倫行為との因果関係が否定される可能性がありますので注意が必要です。

時効になったら不倫慰謝料は払わなくて良いのか

反復して継続してきた不倫行為のうち、最後の不倫行為について時効期間が経過しているのであれば、不倫行為の全てについて時効にかかっており、慰謝料を支払う義務から解放されます。

他方、時効にかかっている不倫行為もあるけれども、未だ時効期間を経過していない不倫行為もある場合、時効にかかっている不倫行為については慰謝料の支払義務がありませんが、そうでない不倫行為については慰謝料の支払い義務があります。

このような場合、時効にかかった不倫行為の分だけ単純に支払うべき慰謝料の金額は減るのでしょうか。

例えば、5年間、継続的に不倫行為が続いてきたことが証拠上明らかな場合で、当初3年の不倫行為については時効にかかっているという場合、3年分は時効にかかっているからといって、慰謝料の金額がそれだけ低くなるかというと、さほど影響はないでしょう。

まとめ

以上、配偶者が浮気した場合の慰謝料請求と時効との関係をご説明しました。

浮気が発覚してから長期間経過後に慰謝料請求がなされる経緯には様々ありますが、そのように時間が経ってから請求する場合や、請求を受けた場合には時効が問題にならないか、まずは弁護士に相談して確認をしましょう。

不倫慰謝料に強い弁護士はこちら

不倫のコラムをもっと読む