婚前契約は結婚前(入籍前)でなければならないのか?
最終更新日: 2023年06月13日
結婚(入籍)が直近に迫っているので、婚前契約(プリナップ)を結婚後(入籍後)に作成できないか?
既に結婚生活を送っているけれども、今からでも婚前契約を作成することはできないか?
このようなご相談をしばしば受けることがあります。ここでは婚前契約の作成時期についてご説明します。
婚前契約は結婚前(入籍前)しか作成できない
民法755条は、「夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。」と規定しています。また、民法758条1項は、「夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。」と規定しています。
つまり、夫婦財産に関する契約は、婚姻前にのみすることができるということです。
登記する際にも、各当事者が婚姻の届出をしていないことを証する書類として戸籍謄本の提出を求められます。
もちろん、婚前契約の内容には、家事、育児など日常生活に関する内容も含まれることは多く、夫婦財産に関する内容だけではありませんが、ほとんどの婚前契約には夫婦財産に関する内容が含まれています。
よって、上記民法の規定を踏まえれば、婚前契約は結婚前(入籍前)にしか作成できないということになります。
なお、結婚前に口頭で契約していた婚前契約について、結婚後にそれを書面化した場合は上記民法に違反するのかどうかは議論の余地があります。
結婚後(入籍後)に作成する「婚前契約」
結婚後(入籍後)に作成するものですから、「婚前契約」ではなく、婚姻後契約というべきものです。
このような婚姻後契約を作成するパターンとしては、以下の3つが考えられます。
パターン1:婚前契約を作成したが、その内容を変更したい
パターン2:婚前契約を作成していなかったので、結婚後(入籍後)に作成したい
パターン3:離婚を見据えて離婚条件について契約書を作成しておきたい
婚前契約を作成したが、その内容を変更したい
結婚生活を始めてみたところ、婚前契約の内容が夫婦関係の実態に合っていないので、その一部を変更したいという場合です。
夫婦生活は長く続きますから、婚姻前に想定した夫婦生活とは異なって来るのがむしろ自然です。ですから、婚前契約において約束した内容を結婚後に変更したいというニーズは多いのではないかと思います。
婚前契約を作成していなかったので、結婚後(入籍後)に作成したい
結婚(入籍)に婚前契約の作成が間に合わなかった、結婚後に婚前契約というものがあると知ったので作成したいという場合です。
婚前契約の認知度は未だ高くないため、結婚(入籍)直前に婚前契約の存在を知った、結婚前に婚前契約について知っていれば作成したかったという方は結構おられます。
離婚を見据えて離婚条件について契約書を作成しておきたい
離婚する際に夫婦間で離婚条件を決めるものは離婚協議書ですが、子供のために直ぐには離婚はせず婚姻生活を当分の間続けるけれども、その間の婚姻生活に関する取り決め、離婚時の条件について契約書を作成しておきたいという場合です。
今後の生活費の負担方法、相手が不倫・浮気をしても慰謝料を請求しない合意、財産分与や養育費の内容などについて書面で取り決めをします。
また、それまでは共有財産だったものをそれ以降は、夫婦それぞれの特有財産とする合意をするケースもあります。
結婚後(入籍後)に婚前契約を作成する余地はないのか?
民法754条は、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と規定しています。
このように夫婦間でした契約はいつでも取り消すことができるという規定があるため、民法755条は夫婦財産に関する契約は婚姻前にのみすることができると規定しているのです。
もっとも、民法754条はその立法趣旨に合理性がなく削除すべきという議論は戦前から出ていました。
また、最高裁判所も同規定の適用を制限する解釈をとっており、同規定の取消権が認められることは実際にはほとんどありません。
このように夫婦間契約の取消権を認めた民法754条の適用は解釈によって排除される可能性が高いことから、婚姻後(入籍後)であっても婚前契約を作成する余地はあるといえます。
ただし、婚前契約の登記は、やはり入籍前にしかすることができませんし、このように解釈で民法754条や755条の適用を排除しなければならないという不確実性もあります。
そのため、結婚前(入籍前)に婚前契約を作成できるのであれば、必ず、結婚前(入籍前)に完成させるようにしましょう。
当事務所であれば、最短で1週間以内に登記申請まで行うことができます。
婚姻後契約の作成手続き
婚姻後契約についても、婚前契約と同様、自分たちで作成したからといって法的効力が認められないとは限りません。
もっとも、夫婦各自が自由な意思で、その内容を十分に理解して契約したことを担保するために弁護士に作成を依頼するべきです。
このような契約書を作成している行政書士や司法書士もいますが、表現面、内容面で不十分な契約書が多く見られます。重要な内容の契約書ですから、万全なものを作成するために専門家の弁護士に依頼しましょう。
なお、公正証書にしなければ法的効力が認められないというものではありません。むしろ、別居や離婚に際して作成されるものではない婚姻後契約について、公正証書の作成はできません。
婚前契約の作成時期についてより詳しく知りたい方は以下のコラムもご覧ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。