アパート取り壊し時の立ち退き料の相場はどれくらい?交渉術・注意点を徹底解説

最終更新日: 2025年03月31日

アパート取り壊し時の立退料の相場はどれくらい?交渉術・注意点を徹底解説

  • 建物の老朽化で所有するアパートの取り壊しを検討している。賃借人に支払う立ち退き料の相場が知りたい。
  • アパートの取り壊しのとき、どのようなケースでも立ち退き料は必要なのだろうか?
  • 賃貸人から立ち退きを要求された、立ち退き料の交渉はできるだろうか?

事情があって所有するアパートの賃借人を立ち退かせたい場合があるでしょう。

賃借人を立ち退かせるときは、基本的に立ち退き料の支払いが必要です。一方、立ち退きを要求された賃借人は、原則として立ち退き料を請求できます。

そこで今回は、立ち退き問題の交渉に豊富な実績のある弁護士が、アパートを取り壊すときの立ち退き料の相場、注意点等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。

  • アパートの立ち退き料の目安は100〜200万円程度
  • 賃貸人も賃借人も、感情的にならず、冷静に立ち退き料の交渉をした方がよい
  • 立ち退き料に関する悩みは、立ち退き問題に詳しい弁護士と相談しよう

立退料に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

アパート取り壊し時の立ち退き料の相場とは

立ち退き料の金額や計算方法については、法律の規定はありません。そのため、賃貸人と賃借人の合意があれば、自由に取り決めることが可能です。

ただし、一般的な立ち退き料の相場があり、補償対象となる賃借人の金銭的負担はある程度決まっています。

一般的な相場

賃借人をアパートから立ち退かせる場合、立ち退き料は「引越し先の住居の6か月分の賃料+引越し代」で算定されるケースが多いでしょう。

毎月の賃料等によって異なりますが、立ち退き料は通常100〜200万円程度となる場合がほとんどです。

裁判所では「立ち退き料=(新規賃料-現行賃料)×1〜3年+引越し費用+新規契約金」とやや複雑な方法で算定される例が多くなっています。

具体例をあげ、立ち退き料について計算してみましょう。

  • 引越し先の家賃(新規賃料):月12万円
  • 現在の家賃(現行賃料):月10万円
  • 差額の補填期間:3年間
  • 引越し費用:50万円
  • <li新規契約費用(礼金・仲介手数料):36万円

(新規賃料12万円-現行賃料10万円)×3年+引越費用50万円+新規契約金36万円=合計158万円

補償対象

引越し先となるアパートの賃料の補償対象は、基本的に引越し先の住居の賃料(6か月分)と引越し代となるケースが多いでしょう。

また、裁判で立ち退き料を決めるときは、引越し先となるアパートの賃料と現在のアパートの賃料の差額分、引越費用、礼金・仲介手数料が補償の対象となります。

なお、交渉次第では立ち退き料に迷惑料等を加えることもできます。

アパート取り壊し時の立ち退きの流れ

賃貸人がアパートを普通借家契約で賃借人と契約していた場合、賃貸借契約更新を拒否するときは、慎重にタイミングを見計らいましょう。

賃貸人は期間満了日の1年〜6か月前までに、賃借人に対して更新しない旨の通知を行わなければなりません(借地借家法第26条)。

期間内に通知をしないと、以前の賃貸借契約と同一の条件で契約更新したとみなされてしまいます。

出典:借地借家法 | e-Gov法令検索

通知

賃貸人は、前もってメールや郵送(書面)・電話等で賃借人に立ち退きの希望を伝えましょう。

メールや書面の通知には、基本的に次のような内容を明記しましょう。

  • 賃貸人の氏名や住所、電話番号・メールアドレス等
  • 立ち退きを要求した(正当な)理由
  • 賃借人との交渉希望日
  • 希望する立ち退き日
  • 立ち退きの条件の簡単な提示:立ち退き料の支払い、引越し先の賃貸物件の紹介や斡旋等

一方、賃借人は「立ち退き希望」と明記されていても、慌てずに内容を確認しましょう。交渉希望日に予定が入っていれば、賃貸人と日程を調整できます。

交渉

賃貸人は、賃借人から話し合いに応じる旨の回答を得たときは、交渉日に改めて立ち退きの理由を説明し、理解を求めた方がよいです。

賃借人側も立ち退きに関する率直な意見や希望を伝え、納得できる立ち退きの条件が得られるように調整していきましょう。賃貸人が立ち退き料を提示し、賃借人側が同意すれば交渉成立です。

ただし、賃貸人は立ち退き料の交渉だけでなく、現在の生活拠点を失う賃借人に対し、引越し先となる賃貸物件の斡旋を行うなどの配慮も必要です。

退去

賃借人は交渉で取り決めた期日までに、アパートから退去しなければなりません。

現在のアパート周辺でお世話になった方、友人・知人がいれば、あらかじめ引越す旨を伝えておきましょう。

引越し業者は、賃貸人から紹介された業者に依頼しても構いません。賃貸人とトラブルにならないよう、約束した期日を守って退去しましょう。

立ち退き料の支払い・受け取り

賃貸人から立ち退き料が支払われるのは、基本的に賃借人の退去時です。

賃借人は自分の指定した銀行口座に振り込まれているか、忘れずに確認しましょう。

なお、早めに立ち退き料の支払いを希望するときは、交渉時に賃貸人へ相談しておいた方がよいです。賃貸人が納得して、退去前に立ち退き料の支払いに応じる可能性があります。

アパート取り壊し時に立ち退き料が不要なケース

賃借人が「立ち退き料はいらない」と自ら申し出た場合や賃借人に悪質な賃貸借契約違反が認められる場合などは、立ち退き料の支払いは不要です。

悪質な賃貸借契約違反とは、主に次のような違反行為です。

  • 3か月以上も家賃を滞納している
  • 無断でアパートを増改築し、原状回復が不可能
  • アパート内で騒音や異臭を発生させ、他の入居者や周辺住民などに多大な迷惑をかけた
  • アパート内で違法薬物を製造する等、犯罪目的に利用した

一方で、アパートの家賃滞納期間が3か月未満である場合は、裁判所は悪質な賃貸借契約違反ではないと判断して、賃貸人に立ち退き料の支払いを命じる場合もあるでしょう。

立ち退き交渉のポイント

賃貸人が立ち退き料を支払うからといって、正当な理由もなくアパートを取り壊し、賃借人に立ち退きを要求できるわけではありません。

立ち退きの交渉・手続きを進めるためには、正当事由(理由)と慎重な準備が必要です。

正当事由

賃貸人側に「正当事由(理由)」がないのに、勝手にアパート取り壊しを決め、賃借人に対し立ち退きを要求する行為は認められません。

たとえば、次のような場合は正当事由に該当するでしょう。

  • アパートが老朽化し、取り壊さないと倒壊の恐れがある
  • アパートの所在地が再開発地域となり、取り壊しが必要となった 等

一方、入居者がいる場合、アパートが老朽化したとしても、外壁を補強すれば耐久性・耐震性に問題がないなら取り壊しを控えた方がよいです。

猶予期間

賃貸人は普通賃貸借契約期間満了の1年〜6か月前までに、立ち退きを通知しなければなりません。

つまり、最低でも6か月間の猶予が必要です。賃貸人が指定した立ち退きまでの期間が6か月よりも短いときは、借地借家法違反になります。

賃借人側は、猶予期間を考慮しいながら交渉を行いましょう。

書面化

賃貸人と賃借人による立ち退き交渉が合意に達したら、交渉内容を書面化します。合意書を2通作成し、賃貸人と賃借人それぞれが1通ずつ大切に保管しましょう。

合意書には次の内容を明記します。

  • 双方が普通賃貸借契約の解除に合意した旨
  • 立ち退き料の金額と支払い日、支払い方法
  • 新たな賃貸物件の紹介や斡旋等を行う旨
  • 迷惑料等を支払うときはその旨
  • 借りている物件の退去日
  • 残存物をどのように取り扱うか
  • 賃貸人が返還する敷金の金額 等

なお、賃借人が立ち退いた後でアパートを取り壊すので、使用損害料や原状回復義務は発生しないでしょう。

賃貸人と賃借人双方が交渉で取り決めた内容に従い、立ち退き手続きを進めていきます。

専門家への相談

賃貸人と賃借人それぞれが立ち退き交渉に不安を感じているときは、立ち退き問題の交渉に詳しい弁護士と相談してみましょう。

弁護士は立ち退きに関する相談者の不安や疑問を聴いたうえで、次のようなアドバイスをします。

  • 賃貸人へのアドバイス:アパート取り壊しが正当事由にあたるか、賃借人の自主的な退去を促すコツ、立ち退き料の相場、交渉が決裂したときの措置(裁判、強制執行等)
  • 賃借人へのアドバイス:立ち退きを拒否できるか、提示された立ち退き料は適正か、賃借人に有利な立ち退き条件で話し合うコツ、訴訟に進んだ場合の対応措置

弁護士にサポートを依頼すれば、依頼者に代わって交渉役となり、相手方と理性的な話し合いを進めていきます。

立ち退きの注意点

立ち退き交渉を行うときは、賃貸人と賃借人それぞれがお互いの立場を理解し、歩み寄る姿勢が必要です。

交渉に向かう姿勢はもちろん、契約時に支払った敷金がどうなるかも確認しておかなければなりません。

交渉は必須

賃貸人と賃借人との交渉は誠実に行う必要があります。お互いがそれぞれ次の点を念頭において交渉しましょう。

(1)賃貸人の場合

  • 「自分がアパートを貸しているのだから偉い。」と横柄な対応をしてはいけない
  • 自分の決めた立ち退き料やその他の条件を一方的に押し付けるのではなく、賃借人の希望もしっかりと聴く
  • 賃借人から譲歩できない要求があれば、明確に拒否する

(2)賃借人の場合

  • 賃貸人から提示された立ち退き料やその他の条件を鵜呑みにしない
  • 賃貸人から紹介された新たな賃貸物件の間取りや広さ、周辺環境はもちろん、引越しても通学・通勤等に支障が出ないか確認する
  • 立ち退きで不明な点、納得できない点があれば賃貸人に質問する

賃貸人と賃借人が直接対面して話し合いを行うと感情的になりそうなときは、弁護士を立てて対応した方が、交渉はスムーズに進められるでしょう。

敷金の確認

賃借人が立ち退き交渉を行うときは、賃貸人に敷金が返還されるかもしっかりと確認しておきましょう。敷金は賃借人が入居するときに、賃貸人が「預かっておく」担保金です。

敷金は賃貸借契約を解約するとき、原則として賃借人に返還されます。

賃借人に原状回復の必要がある場合は、敷金から必要な修繕費用が差し引かれる場合もあるでしょう。退去後にアパートを取り壊すときは、原状回復は基本的に不要です。

中には、敷金の性質を理解していない賃借人に対して返還しないケースや、「立ち退き料の中に敷金は含んでいる」と嘘をつくケースもあるかもしれません。

敷金の返還は法律で定められており、また立ち退き料・敷金はそれぞれ別物ですので、注視しましょう。

アパート取り壊しの立ち退き料相場は春田法律事務所へご相談を

今回は立ち退き問題の解決に尽力してきた弁護士が、アパート取り壊し時の立ち退き料など立ち退き交渉のポイント等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は、立ち退き交渉・和解に力を入れている法律事務所です。立ち退き料等に関する悩みがあるときは、気軽に弁護士と相談し、対応の仕方を話し合いましょう。

立退料に強い弁護士はこちら

立退料のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。