アスベスト被害で受けられる死亡補償を専門家が解説!
2024年04月27日
アスベストで死亡した親族の死亡補償を請求したい
どの死亡補償を請求できるのか
死亡補償の内容はどのようなものか
数十年前の仕事でアスベストにさらされたことを原因とする肺がんや中皮腫によって亡くなる被害者は増加しています。生前にはアスベストが原因とは気が付かず、死後に遺族がアスベストの被害について死亡補償を請求するケースもあります。
今回は、アスベストの補償に詳しい弁護士が、死亡補償について説明します。
アスベスト被害の死亡補償の種類
アスベスト被害にあった方の遺族が請求することのできる死亡補償には下記のものがあります。
②石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金
③石綿健康被害救済制度の救済給付
④建設アスベスト給付金
死亡補償としてはまずは①を検討します。時効によって①の遺族補償給付を請求することができない場合は②の特別遺族給付金を請求します。
労災保険の対象疾病に該当しない場合や、石綿ばく露作業と対象疾病との関連性を証明できないときは③の救済給付の請求をします。
④の建設アスベスト給付金は要件を満たせば①~③と合わせて支給を受けることが可能です。
以下それぞれの制度について説明をします。
アスベストの死亡補償としての労災保険給付
前記のとおり、労災保険給付を請求できる場合は必ず請求します。死亡補償の内容も後で説明します救済給付よりも手厚いものとなっています。
労災認定の要件
労災認定のためには、石綿にばく露する作業に起因して下記のいずれかの疾病にかかったことが必要です。疾患についての認定方法は下記リンクの「石綿による疾病の労災認定」をご確認ください。
アスベスト関連疾患の潜伏期間は非常に長いですから、かつて石綿にさらされる作業に従事していたことの証明ができるかどうかがポイントとなります。
・中皮腫
・肺がん
・良性石綿胸水
・びまん性胸膜肥厚
労災保険給付の内容
労災保険給付による死亡補償は遺族補償給付と葬祭料です。以下それぞれについて簡単に説明しますが、より詳しい説明は下記コラムをご覧ください。
遺族補償年金・遺族補償一時金、葬祭料
死亡した被害者の遺族は、遺族補償給付(遺族補償年金と遺族補償一時金)と葬祭料の補償を受けることができます。
遺族補償年金の受給権者は、被害者の死亡当時にその収入によつて生計を維持していた、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹です。妻以外は年齢や一定の障害があることが要件となります。
遺族補償一時金は、被害者の死亡時に遺族補償年金の受給権者がいない場合や受給権者がすべて失権した場合にその他の遺族に支給されます。
葬祭料は、葬祭を行う者が支給を受けることができます。
アスベストの死亡補償としての特別遺族給付金
労災保険の遺族補償給付は被害者の死亡日の翌日から5年の経過によって時効となり請求ができなくなります。
このように時効によって請求することのできない遺族を救済するために設けられたのが、石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金です。
特別遺族給付金には特別遺族年金と、特別遺族年金の受給者がいない場合に支給される特別遺族一時金があります。以下、順番に説明をします。
請求期限と支給要件
特別遺族給付金の請求期限は令和14年(2032年)3月27日で、請求から給付までに3か月以上はかかっています。
特別遺族給付金の支給要件は前記労災保険給付の場合と同じです。ただし、特別遺族給付金については令和8年(2026年)3月26日までに死亡したことも要件となります。
特別遺族年金
特別遺族年金の受給資格者は、被害者の死亡時にその収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹です。父母より子、子より配偶者が優先します。
加えて、年齢などの要件がありますので詳しくは法律又は下記コラムをご確認ください。
支給金額は、受給権者及びその者と生計を同じくする遺族で受給要件を満たす遺族の人数に応じて下記のとおりです。
1人 240万円
2人 270万円
3人 300万円
4人以上 330万円
特別遺族一時金
特別遺族一時金は、特別遺族年金の受給権者がいない場合に支給されます。
受給者は下記ア~ウの順番で決まります。
イ 被害者の死亡時にその収入によって生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
ウ その他の子、夫母、孫、祖父母、兄弟姉妹
支給金額は下記のとおりです。
受給者が配偶者以外の場合 それまでに支給された特別遺族年金の額を1200万円から控除した額
アスベストの死亡補償としての救済給付
労災保険給付や特別遺族給付金と異なり、石綿健康被害救済制度の救済給付は労災保険の加入や被害者が石綿ばく露作業に従事していたことは要件ではありませんし、対象疾病は労災保険とは若干異なります。
そのため、労災保険からは死亡補償を受けられない遺族も救済給付を受けられる可能性があります。
救済給付の認定を受けてから死亡した場合は下記①、救済給付の認定を受けずに死亡した場合は下記②の支給を受けることができます。
②特別遺族弔慰金、特別葬祭料
支給要件
救済給付の対象疾病は下記のとおりです。
中皮腫
肺がん
著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
未支給の医療費と療養手当、救済給付調整金、葬祭料
療養を開始した日から死亡日までの間に未支給となっている医療費又は医療手当があるときは、未支給となっている医療費又は医療手当の支給を受けることができます。
未支給の医療費は、医療費の支払いを行った日の翌日から2年以内、療養を開始した日から申請日の前日までの医療費については申請日から2年以内に請求する必要があります。
また、支給された医療費と療養手当、遺族に支給された未支給の医療費と療養手当の合計金額が2,800,000円に満たない場合には、救済給付調整金としてその差額の支給を受けることができます。
救済給付調整金は死亡日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
未支給の医療費・医療手当、救済給付調整金、いずれも請求できる遺族は、救済制度の認定後に亡くなった方の遺族で、死亡時に生計を同じくしていた、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です(前から順に優先)。
葬祭を行う方は、葬祭料として199,000円を請求できます。
葬祭料は死亡日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
特別遺族弔慰金、特別葬祭料
救済制度の認定を受けずに死亡した場合は、遺族は特別遺族弔慰金と特別葬祭料を請求できます。特別遺族弔慰金は2,800,000円、特別葬祭料は199,000円です。
請求できる遺族は、死亡時に生計を同じくしていた、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です(前から順に優先)。
請求期限は疾病や死亡時期によって下記の通り異なります。
・平成18年(2006年)3月27日より前に死亡の場合:令和14年(2032年)3月27日まで
・平成18年(2006年)3月27日以降に死亡の場合:死亡日から25年以内
・平成18年3月27日から平成20年11月30日までに死亡した場合:令和15年12月1日まで
〇著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺又は著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚で死亡
・平成22年(2010年)7月1日より前に死亡の場合:令和18年(2036年)7月1日まで
・平成22年(2010年)7月1日以降に死亡の場合:死亡日から25年以内
アスベストの死亡補償としての建設アスベスト給付金
最後に、建設アスベスト給付金制度による死亡補償を説明します。ここでは簡単に説明をしますので、より詳しく知りたい方は下記のコラムをご覧ください。
請求要件
建設アスベスト給付金の請求要件は下記①から④です。
②従事した期間が下記の期間であること
・石綿の吹付け作業に係る建設業務:
昭和47年(1972年)10月1日から昭和50年(1975年)9月30日
・一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務:
昭和50年(1975年)10月1日から平成16年(2004年)9月30日
③①によって下記石綿関連疾病にかかったこと
・中皮腫
・肺がん
・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
・石綿肺(じん肺管理区分が管理2から4又はまたはこれに相当するもの)
・良性石綿胸水
④労働者、中小事業主、一人親方、家族従事者であったこと
請求期限と請求権者
建設アスベスト給付金の請求期限は、石綿関連疾病により死亡した日から20年以内です。初日算入で、請求期限末日が休日の場合は翌開庁日が期限末日となります。
また、請求権者は被害者の配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です(前に記載の者から優先)。
給付金額
建設アスベスト給付金の給付金額は死亡原因となった疾病によって1200万円又は1300万円となります。
生前に既に給付金を支給されていた場合には、死亡したときの給付金額との差額を追加請求することができます。
まとめ
以上、アスベストの被害に対する死亡補償について説明しました。
いずれの死亡補償も請求期限がありますので速やかに請求は行う必要があります。請求書類を揃える負担は重いですし、特に過去の就業についての証明は慎重に検討することが重要です。
アスベストの被害に対する死亡補償の請求をお考えの場合は、アスベストの補償に詳しい弁護士に無料でご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。