アスベストで家族を亡くしたら…遺族が受け取れる給付金や遺族年金はいくら?
最終更新日: 2025年08月15日
アスベスト(石綿)による病気で大切な家族を亡くされた方へ。
「何か補償を受けられる制度があると聞いたけれど、どれが使えるのか分からない」「年金や給付金はいくらもらえるの?」と不安を感じていませんか?
実際、遺族が受け取れる補償制度には労災保険、石綿健康被害救済制度、建設アスベスト給付金など複数の制度があります。ただし、制度ごとに対象者・支給金額・併給の可否が異なり、手続きも煩雑です。
条件を満たせば数百万円〜1,000万円以上の補償を受け取れる可能性もありますが、申請期限(時効)もあるため、早めの行動が必要です。
この記事では、各制度の内容や受給額の目安、申請方法、実際の事例、弁護士に依頼するメリットなどをわかりやすく解説します。
アスベストで亡くなった方の遺族が利用できる主な制度とは?
アスベストによる病気(中皮腫、肺がんなど)が原因で家族が亡くなった場合、条件を満たすことで以下の制度を使って補償金や年金を受け取ることができる可能性があります。
ただし、制度ごとに「誰が対象か」「いくらもらえるか」「申請期限はいつまでか」などの違いがありますので、順番に詳しくご紹介します。
労災保険(労働者向けの遺族補償)
対象になる人
会社員や労災に特別加入していた一人親方で、仕事中にアスベストに触れ(=業務上の被ばく)、その被ばくが原因で亡くなったと認められた場合です。
受け取れる内容
- 遺族補償年金
- 遺族特別年金
- 遺族特別支給金
- 葬祭料
遺族特別支給金は一律300万円ですが、遺族補償年金と遺族特別年金は遺族の人数と亡くなった方の給与に基づく給与基礎日額によって金額が異なります。
なお、上記年金・支給金の受給資格のある遺族がいない場合には、その他の遺族が遺族補償一時金及び遺族特別一時金を受給できます。
誰が請求できるか
故人と生計をともにしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(遺族補償年金等の受給資格者)
申請期限(時効)
亡くなった日の翌日から5年以内に申請が必要です。
時効期間を経過している場合、石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金の申請が可能です。特別遺族年金として年240万円(この受給資格者がいない場合には特別遺族一時金として1200万円)が支給されます。
石綿健康被害救済制度(労災の対象外の人向け)
対象になる人
自営業の方や、工場の近隣住民、主婦など、労災保険の対象外だった方がアスベストに被ばくし、それが原因で亡くなった場合です。
受け取れる内容
- 特別遺族弔慰金:280万円
- 特別葬祭料:19万9000円
誰が請求できるか
故人と生計をともにしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)
申請期限(時効)
亡くなった日の翌日から25年以内に申請が必要です。
建設アスベスト給付金制度
対象になる人
下記の期間に対応する業務に従事していた方が、アスベスト関連疾患で亡くなった場合に申請できます。
- 1972年10月1日から1975年9月30日まで:石綿の吹付け作業に係る建設業務
- 1975年10月1日から2004年9月30日まで:一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務
受け取れる内容
給付金額は550万円〜1300万円(病状によって変わります)
誰が請求できるか
配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
申請期限
石綿関連疾病により死亡した日から20年以内
※労災と救済制度はどちらか一方のみの利用になりますが、建設アスベスト給付金は併用可能です。
請求するにはどんな条件が必要?主な要件を確認
どの制度でも、以下のような要件を満たすことが前提となります。
- 故人が中皮腫、肺がんなどのアスベスト関連疾患で亡くなっていること(診断書や医療記録が必要)
- アスベストに被ばくしていた作業歴や生活歴があること(職歴、元同僚の証言、写真など)
- 請求する人が受給資格のある遺族であること
証明の内容によっては、申請が難しく感じるかもしれませんが、専門家の力を借りることで可能になるケースも多くあります。
よくある状況と対応例
建設作業員の父を中皮腫で亡くした息子さんの場合
父は長年建設現場で働き、70代で中皮腫を発症。半年後に亡くなりました。
「補償制度があると聞いたが、何をどうすればいいか分からない」と不安に感じていた息子さんが、弁護士に相談。
手続きを進めた結果、
- 建設アスベスト給付金:1300万円
- 救済制度:299万9000円
合計 1599万9000円を受給することができました。
書類の準備もすべて弁護士が対応し、1年ほどで手続きが完了しました。
空調工事をしていた夫を肺がんで亡くした妻の場合
夫の勤務先はすでに廃業しており、証明が難しいと感じていたが、弁護士が元同僚の証言やその他の資料を収集した結果、申請が可能に。
手続きを進めた結果、支給された補償は以下の通りでした。
- 特別遺族給付金の特別遺族年金:年240万円
- 建設アスベスト給付金:1300万円
申請の流れと必要な書類
申請の流れは以下の通りです。
- どの制度が使えるかを確認
- 必要書類をそろえる
- 申請書類を作成し、所定の機関に提出
- 審査・認定(通常半年~1年)
- 給付金・年金の受給へ
主に求められる書類は以下の通りです。
- 死亡診断書
- 故人の職歴やアスベスト被ばく状況を証明する資料
- 戸籍謄本・住民票などの家族関係証明
- 遺族の本人確認書類、通帳の写しなど
弁護士に相談することで安心して進められます
アスベスト補償の制度は数が多く、それぞれに細かい条件や期限があります。
「制度の選び方が分からない」「必要書類がそろえられない」「認定されるか不安」など、悩みは尽きません。
こうした場合、アスベスト問題に詳しい弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
- 適用可能な制度の選定
- 被害を証明する資料の収集
- 書類作成・提出の代行
- 必要な証明の収集(元同僚からの証言など)
多くの法律事務所では初回相談無料・成功報酬制を採用しており、費用面の心配も少なく済みます。
よくある質問(FAQ)
Q. 夫が亡くなったのですが、私(配偶者)だけが請求できますか?
まず配偶者が最優先で請求できます。配偶者がいない場合は、子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹と順番が決まっています。遺族が複数いらっしゃる場合は、そのうちの一名を代表者として申請し、受給した給付金等を分配することとなります。
Q. 亡くなってから何年も経ってしまいました。もう申請できませんか?
亡くなった日から5年以内などの時効期限がありますから、申請しないと補償が受けられなくなる可能性があります。制度によって期限は異なりますから、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
Q. 書類を集めるのが大変で、不備があったら不支給になると聞きました。本当ですか?
はい、残念ながら証明が不十分だと、申請が通らないことがあります。特にアスベストとの因果関係を証明する資料はとても重要です。弁護士に依頼すれば、証明の補強や不足資料のアドバイス、代理取得なども可能ですので、ひとりで悩まずご相談ください。
Q. 主婦だった母が亡くなりました。仕事をしていない人でも補償は受けられますか?
はい、可能です。労災保険の対象にはなりませんが、石綿健康被害救済制度という制度があり、主婦や近隣住民の方など、職業に関係なくアスベストに被ばくして病気になった方も対象になります。
Q. 亡くなった本人が申請していなかったのですが、遺族からでも申請できますか?
はい、できます。本人が生前に申請していなかった場合でも、遺族が代わりに申請できます。その場合でも、条件さえ満たせば救済給付や労災補償を受け取れる可能性がありますので、亡くなった時点で申請できないとあきらめないでください。
まとめ:申請できる制度を確認し、早めに行動を
アスベスト関連疾患でご家族を亡くされた場合、複数の補償制度が存在します。条件がそろえば数百万円〜1,000万円超の支給を受けることも可能です。
ただし、申請には期限(時効)がありますし、時間が経つほど証拠資料の収集が難しくなり認定の難易度が上がる傾向もあります。
「自分の家族は対象になるのか分からない」と感じたときは、まずはアスベスト問題に詳しい弁護士に相談することが安心への第一歩です。
大切な方の苦しみが補償というかたちで報われ、残されたご家族の生活が少しでも安定するよう、制度を正しく活用しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。