恐喝事件に強い弁護士が解説する基本概要・逮捕・不起訴の獲得!
最終更新日: 2023年07月12日
- 恐喝事件の基本概要とは何か?
- 恐喝罪で逮捕された後の流れはどのようなものか?
- 恐喝事件を起こした場合に不起訴を獲得するためにはどうすればよいか?
恐喝事件を起こした場合、逮捕されてしまうのか、逮捕されたとして、その後はどうなるのかはやはり気になることでしょう。そして起訴されてしまうのが通常なのかは、被疑者やその家族にとって最大の関心事のはずです。
そこで今回は、刑事事件に強い専門の弁護士が、恐喝事件の基本概要・恐喝罪で逮捕された後の流れ・不起訴の獲得などについて解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 恐喝罪は財物喝取の意思および被害者を畏怖させる行為により成立する
- 恐喝罪は示談による不起訴率が高い
- 恐喝事件では執行猶予がつく可能性が高い
弁護士が解説する恐喝事件でよくある5つの疑問
恐喝事件でよくある5つの疑問について解説します。
- 何をすると「恐喝」になるのか?
- 適用される法律は?
- 時効はあるのか?
- 逮捕率はどのくらいなのか?
- 起訴率はどのくらいなのか?
1つずつ解説します。
何をすると「恐喝」になるのか?
1つ目は、何をすると「恐喝」になるのかについてです。
刑法249条は、人を恐喝して財物を交付させ(1項)、財産上不法の利益を得又は他人にこれを得させる(2項)ことによって、恐喝罪が成立するとしています。
では、「人を恐喝して」とはどのようなことをいうのでしょうか。
この点に関して、判例は、「相手方に対して、その反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫又は暴行を加えること」と解しています。
恐喝の例としては「殺されたくなければお金を出せ」と言って脅した上で、金品を奪った場合などが当てはまります。
恐喝罪の成否については、財物を奪う意思と被害者を畏怖させる行為があったかが争点となるケースが多くあります。被疑者や被害者の供述の信用性だけでなく、恐喝行為を裏づける証拠の有無が恐喝罪の成否を左右します。
恐喝行為を裏づける証拠が不十分な場合は、被疑者であれば不起訴処分、被告人であれば無罪となる可能性もあります。
適用される法律は?
2つ目は、適用される法律についてです。
恐喝罪は、刑法249条に規定されていますので、適用される法律は刑法です。恐喝罪に該当すれば、脅迫罪と異なり罰金刑はなく、10年以下の懲役に処せられます。
そして、刑法249条にいう恐喝とは、財物又は財産上不法の利益を供与させる手段として、相手方を脅迫又は暴行することをいいます。この場合の脅迫とは、相手方を畏怖させるような害悪を告知することです。告知される害悪の種類には制限がありません。
また、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)のように、相手方又はその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対するものに限られません。
脅迫の手段・方法には特に制限はなく、明示的でも暗示的でも、また言語や文書によるほか、挙動や態度によっても、さらに第三者を介して行っても該当します。
恐喝により財物を交付させ、財産上不法な利益を得又は他人にこれを得させた場合には、民事的な問題にも発展し、損害賠償責任を負うことにもなります。
時効はあるのか?
3つ目は、時効はあるのかについてです。
刑事事件における時効には、刑の時効と公訴時効とがあります。ここにいう「時効」とは、公訴時効ということになります。
公訴時効とは、犯罪が行われた後、法律の定める期間が経過すれば、公訴権が消滅することをいいます。検察官は、公訴時効が完成している事件については、被疑者を起訴することができなくなります。
したがって、刑事訴訟法337条4号は、「時効が完成したとき」には、判決で免訴の言い渡しをしなければならないと定めています。時効が完成したとは、時効期間が満了したことで、その場合は事件について検察官が公訴を提起しても、裁判所は免訴判決によって「門前払い」をすることになるのです。
では、恐喝罪の公訴時効は、どうなっているのでしょうか。
恐喝罪は、法定刑が10年以下の懲役ですので、長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪に該当し、公訴時効期間は7年になります(刑事訴訟法250条2項4号)。
公訴時効の起算点は、犯罪行為が終わったときから進行します(刑事訴訟法253条1項)。
逮捕率はどのくらいなのか?
4つ目は、逮捕率はどのくらいなのかについてです。
令和4年版犯罪白書にある「検察庁既済事件の身柄状況(罪名別)」の2-2-3-2表(令和3年の統計)によると、恐喝罪の場合、被疑者総数1,756人のうち逮捕された者は1,323人(75.3%)、逮捕されなかった者は433人(24.0%)となっています。
したがって、恐喝罪の逮捕率は75.3%です。なお、逮捕された者の内訳は、警察等で逮捕後釈放された者が17人、警察等で逮捕・身柄付送致された者が1,304人、検察庁で逮捕された者が2人となっています。
起訴率はどのくらいなのか?
5つ目は、起訴率はどのくらいなのかについてです。
令和4年版の検察統計年報にある「罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員ー自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く―」の統計表(令和3年の統計)によると、検察庁が恐喝罪で送致を受けて、起訴又は不起訴となった者の総数1,433人のうち、起訴は417人(29.1%)、不起訴は1,016人(70.9%)となっています。
したがって、恐喝罪の起訴率は29.1%です。ちなみに、不起訴とした者のうち、起訴猶予で不起訴とした者の割合は48.2%、それ以外の理由で不起訴とした者の割合は51.8%です。
弁護士による解説で理解する恐喝罪・強要罪・脅迫罪
恐喝罪・強要罪・脅迫罪について、適用される法律・成立要件・刑罰を解説します。
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恐喝罪で万が一逮捕された場合の流れを弁護士が解説
恐喝罪で万が一逮捕された場合の流れについて5つ解説します。
- 逮捕
- 検察官への送検
- 勾留
- 起訴・不起訴処分
- 裁判
1つずつ解説します。
逮捕
1つ目は、逮捕についてです。
逮捕には、現行犯逮捕・後日逮捕(通常逮捕)・緊急逮捕の3つの種類があります。
現行犯逮捕とは、誰もが、逮捕状なくして現行犯人を逮捕することをいいます(刑事訴訟法213条)。
後日逮捕(通常逮捕)とは、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに、検察官、検察事務官又は警察官員が裁判官のあらかじめ発する逮捕状により被疑者を逮捕することをいいます(刑事訴訟法199条1項)。恐喝罪の場合には、後日逮捕(通常逮捕)によるのが一般です。
たとえば、恐喝を受けた者の被害申告に基づき捜査を開始し、被害者の供述やその供述を裏づける証拠が得られ、容疑が固まったところで、裁判官から逮捕状の発付を得て、被疑者を後日逮捕する場合です。
緊急逮捕とは、検察官、検察事務官又は警察官が、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに」、その理由を告げて被疑者を逮捕することをいいます(刑事訴訟法210条1項)。
検察官への送検
2つ目は、検察官への送検についてです。
まず、警察官は、逮捕した被疑者に対して犯罪事実の要旨及び弁護人を選任できることを直ちに告げた上で、弁解の機会を与えます。
そして留置の必要があると判断した場合には、被疑者が身体を拘束されてから48時間以内に、書類及び証拠物とともに、被疑者を検察庁に連行し、検察官に送致する手続きをとります。この手続きを「送検」といいます。
次に、検察官は、警察官から送致された被疑者を受け取ると、弁解の機会を与え、留置が必要だと判断したときには、被疑者を受け取ってから24時間以内、かつ最初に被疑者が拘束されてから72時間以内に、被疑者の勾留を裁判官に請求します。
勾留
3つ目は、勾留についてです。
裁判官は、検察官の勾留請求を受けて、被疑者に対し勾留質問を行い、その当否を審査します。
被疑者に罪を犯した疑いがあり、住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれかがある場合、捜査した上で身柄の拘束が必要であると判断したときに、拘束を10日間認める勾留決定を行います。
検察官は、やむを得ない事情がある場合は10日を上限とし、裁判官に勾留期間の延長を請求します。裁判官は、請求に理由があれば10日を上限とし、勾留期間を延長できます。
起訴・不起訴処分
4つ目は、起訴・不起訴処分についてです。
検察官は、原則として10日間の勾留期間内、あるいは勾留期間が延長されたときにはその勾留期間内で、起訴または不起訴を判断しなければなりません。
検察官は、受理した恐喝事件の被疑事実について的確な証拠に基づき有罪判決が得られる見込みが高い場合には、原則として起訴することになります。
一方で、検察官は、起訴しない場合には、嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予などの理由で不起訴の処分をします。
裁判
5つ目は、裁判についてです。
裁判は、検察官が裁判所に対し、被告人の処罰を求めて訴えを起こす「起訴」によって開始されます。
裁判の手続きは、冒頭手続き・証拠調べ手続き・弁論手続き・判決宣告手続きという流れで進められます。
冒頭手続きでは、裁判官が被告人に氏名などを質問し、被告人が検察官により起訴された者に間違いがないかどうかを確かめ、引き続き検察官が起訴状を朗読します。その後、裁判官が被告人に対し黙秘権などの権利を告げた上、被告人と弁護人から起訴状に対する言い分を聞きます。
証拠調べ手続きでは、まず、検察官が証拠によって証明しようとする事実を述べる冒頭陳述を行って証拠の取り調べを請求し、これに対する被告人側の意見を聴いた上で、裁判所は、証拠の採否を決定し、採用した証拠を取り調べます。検察官の立証の後に、被告人側の立証が行われ、最後に被告人質問が行われます。
弁論手続きでは、まず検察官が論告・求刑を行い、次いで弁護人が弁論を行い、最後に被告人が最終陳述を行います。
判決宣告では、裁判官が被告人に対し判決を言い渡します。
恐喝事件を起こした場合に弁護士ができること
恐喝事件を起こした場合に弁護士ができることについて3つ解説します。
- 示談成立による不起訴の獲得
- 執行猶予の獲得
- 精神的な支えになる
1つずつ解説します。
示談成立による不起訴の獲得
1つ目は、示談成立による不起訴の獲得についてです。
上述したように、恐喝罪の不起訴率は70.9%ですが、不起訴のうち48.2%が起訴猶予です。
このように不起訴率が高い要因として考えられるのは、被害者との示談です。初犯であれば話し合いによる解決が最も望ましいことになります。
恐喝罪は、相手を恐喝して畏怖させて、財物や財産上の利益を取得したり、取得を試みる行為なので、被害者の畏怖心を緩和する努力が必要です。そのためには、被疑者の反省と慰謝が、被害者に受け入れられなければなりません。
被害者は、畏怖しているのはもちろん、精神的な打撃を負うこともあるわけですから、被疑者やその家族が、直接に、示談の交渉をするのは、被害者の気持ちを損ないかねませんし、また、話をこじらせてしまうおそれもあります。
こういったときこそ、冷静に被害者と話ができる弁護士に依頼するべきでしょう。弁護士は、被害者の感情も考慮しながら、被疑者の謝罪と反省の意を伝えつつ、金額も含めた交渉ができます。
その結果、示談の成立に至れば、不起訴処分になる可能性が高くなります。
執行猶予の獲得
2つ目は、執行猶予の獲得についてです。
恐喝罪の罰則は、懲役刑のみですので、事案の態様・内容や前科の関係では、実刑を覚悟しなければならないこともあるでしょう。
しかし、令和4年版犯罪白書にある「通常第一審における終局処理人員(罪名別、裁判内容別)」の2-3-3-1表(令和3年の統計)によると、恐喝罪で起訴され有罪となった者の総数は308人で、うち実刑となった者が104人(33.8%)、すべて執行猶予となった者が204人(66.2%)となっています。
このように恐喝事件では、執行猶予がつく可能性が高い傾向にありますので、弁護士と十分に相談して被害弁償や慰謝の措置に努め、反省の気持ちを裁判官に理解してもらう必要があります。
精神的な支えになる
3つ目は、精神的な支えになることについてです。
被疑者の家族の方は、逮捕中は被疑者と面会ができないため、不安な気持ちになることでしょう。不安になった場合に、24時間いつでも相談を受け付けてくれる弁護士がいると、これほど心強いことはありません。
また、弁護士直通の携帯電話にいつでも連絡でき、細かなサポートをしてくれる弁護士、そして万が一逮捕された場合に、依頼があればすぐに接見に来てくれる弁護士であれば、被疑者本人やその家族にとって精神的な支えになります。
まとめ
今回は、刑事事件に強い専門の弁護士が、恐喝事件の基本概要・恐喝罪で逮捕された後の流れ・不起訴の獲得などについて解説しました。
恐喝事件を起こしても、弁護士のサポートがあれば、初犯の場合には不起訴の可能性があります。また、起訴されたとしても、無罪又は執行猶予の獲得に向け尽力します。
恐喝事件で逮捕された被疑者やその家族の方は、被疑者が不起訴処分で済む可能性もあり、また起訴されたとしても無罪あるいは有罪でも執行猶予の可能性がありますので、ぜひ一度専門の弁護士に法律相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。