墓地の帳簿は見せないといけない?
最終更新日: 2022年03月15日
はじめに
寺院に限りませんが、近時は、コンプライアンスが強く求められ、また利用者の権利意識も高まっています。そのため、檀信徒、墓地利用者から寺院に対して会計帳簿等の閲覧を求められることがあります。
このような要望があった場合、寺院はこれに応じて帳簿を閲覧させる義務があるのでしょうか。
墓地の帳簿に関する法律の規定
墓地埋葬法では、墓地管理者は、「図面、帳簿又は書類等」を備えなければならないと規定されています(第15条1項)。
そして、「墓地管理者は、墓地使用者、焼骨収蔵委託者、火葬を求めた者その他死者に関係ある者」の請求があったときには、これらの書類の閲覧を拒否してはならないと規定されています(同法第15条2項)。
「図面、帳簿又は書類等」については、墓地埋葬法規則(第7条)で、以下の書類と規定されています。
(1)以下の1~3を記載した帳簿
- 墓地使用者の住所、氏名
- 死亡者の本籍、住所、氏名、性別、死亡年月日、埋蔵年月日
- 改葬許可を受けた者の住所、氏名、死亡者との続柄、墓地使用者との関係、改葬場所、改葬年月日
(2)墓地経営者が作成した墓地に関わる財産目録、貸借対照表、損益計算書、事業報告書その他の財務に関する書類
上記(1)の帳簿については開示を拒否する理由はないでしょう。もっとも、上記①~③はプライバシー性の高い情報ですから、関係する墓地区画の帳簿に限定して開示されるべきです。
他方、上記(2)のような財務関係資料についても、以上の法律の規定を踏まえますと、墓地使用者等の請求があれば閲覧をさせなければならないように思えますが、どうなのでしょうか。
閲覧させる義務がある場合とない場合
墓地には公営墓地や公益法人が経営する墓地がありますが、寺院墓地は寺院が経営する墓地であり、宗教法人の財産関係書類の作成については宗教法人法第25条が規定しています。
そのため、寺院墓地については、墓地埋葬法及び同法規則によって財務関係書類の作成を義務付けられるものではないと行政は解釈しています。また、墓地に関する財務関係書類を作成していない限りは、閲覧請求に応じる義務はないと解釈しています(いずれもH11.9.27衛企第30号)。
なお、行政は、利用者保護の観点から作成することが望ましく、また外部からのチェック機能が働くと同時に自らも経営状況の的確な把握が可能となり、経営の安定化を期待できると述べています(H12.12.6生衛発第1764号「墓地経営・管理の指針等について」)。
したがって、前記のような墓地埋葬法及び同規則の規定こそありますが、寺院が、墓地使用者等から墓地に関する財務関係書類の開示を求められたとしても、それを作成していない場合には、開示する義務はありません。
他方、財務関係書類を作成している場合には、開示する義務があります。
寺院が経営している墓地でも、宗旨宗派不問の事業型墓地の場合には、当該墓地の会計は特別会計として区分会計をして、当該墓地の貸借対照表、損益計算書が作成されているはずです。よって事業型墓地の場合には、財務関係書類の開示義務はあるということになるでしょう。
寺院の帳簿作成、閲覧については下記の記事もご覧ください。