離婚後の養育費はどう決める?相場・計算方法・注意点をわかりやすく解説

最終更新日: 2025年06月26日

離婚後の養育費はどう決める?相場・計算方法・注意点をわかりやすく解説

離婚後、お子さまの生活費をどうするかは、避けて通れない大切な問題です。

とくに、子どもと別居する親が支払う「養育費」は、お子さまの健やかな成長を支えるために欠かせないお金です。

養育費は、当事者間の話し合いや家庭裁判所の調停を通じて金額・期間などを取り決め、公正証書などで書面化しておくことがトラブルを防ぐカギになります。

万が一支払いが滞ったとしても、法的な手続きや行政の支援制度を利用すれば、回収できる可能性も十分にあります。

この記事では、養育費の相場や決め方、支払期間、取り決めの方法、未払い時の対応、そして実際の相談事例やFAQまで、初めての方にもわかりやすく解説しています。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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養育費とは?誰が払う?何のためのお金?

養育費とは、離婚後にお子さまを育てていく上で必要となる生活費や教育費などを、子どもと一緒に暮らさない側の親が負担するお金です。

親権がないとしても、親としての責任はなくなりません。離れて暮らす親も、お子さまの成長や生活を支える義務があります。

養育費の対象となる費用には、衣食住の基本的な生活費のほか、教育費や医療費なども含まれます。

養育費の相場はどのくらい?

養育費の金額には法律で定められた固定額はなく、各家庭の状況に応じて決められます。

その際の参考としてよく使われるのが「養育費算定表」です。これは、家庭裁判所が公開しているガイドラインで、両親の年収子どもの年齢人数などをもとに、おおよその目安金額を確認できます。

たとえば、父親の年収が500万円、母親の年収が100万円で、10歳未満の子どもが1人いる場合、4〜6万円程度が目安となります(※父母双方ともに給与収入の場合の金額です。自営の場合はこれと異なります)。

ただし、「養育費算定表」で算出される養育費は、私立学校の教育費や、特別な医療費などは考慮されていないため、個別事情を加味して金額を調整することもあります。

養育費の金額はどうやって決める?

養育費の金額は、まずは当事者同士の協議によって決定するのが基本です。
「養育費算定表」を参考にしながら、現実的にどのくらいの費用が必要かを話し合って決めていきます。

話し合いが難航した場合や、金額に大きな隔たりがある場合には、家庭裁判所での「調停」を活用します。それでも合意に至らない場合は、裁判所が最終的に金額を決定する「審判」へと進むことになります。

養育費はいつまで払う?支払い期間の目安

養育費の支払い期間は一般的に、「子どもが成人するまで」とされています。

現在、成人年齢は18歳に引き下げられましたが、実際には大学等に進学するケースも多いため、実務上では「高校卒業後の進学」を考慮して、大学卒業年齢である「22歳の3月まで」を支払い期限とする合意も多く見られます。

支払期間の長さにより、養育費の総額は大きく変わるため、取り決めの際には、「18歳まで」「大学卒業まで」など、明確に支払い期間を定めておくことが望ましいでしょう。

取り決めはどうやって行う?(協議・調停・審判)

養育費の取り決め方法には、主に次の3つがあります。

協議(話し合い)

当事者同士で合意できた場合は、公正証書として書面化することで、将来的に支払いが滞った際の強制執行が可能になります。

家庭裁判所での調停

話し合いが難しい、または感情的な対立がある場合には、家庭裁判所の調停手続きを利用することで、第三者が間に入り冷静な合意形成をサポートしてくれます。

審判

調停でも合意できなかった場合は、家庭裁判所が双方の事情をふまえて最終的な判断を行います。

養育費が支払われないときの対処法

養育費の未払いは少なくないトラブルのひとつです。ですが、正しく対応すれば回収できる可能性は十分あります

支払い義務が明記された公正証書や調停調書があれば、裁判所に申し立てることで給与の差押えなど、強制執行が可能です。

また、家庭裁判所の「履行勧告」制度や、各自治体が行っている「養育費確保支援制度」を利用する方法もあります。

養育費のトラブルを防ぐために大切なこと

養育費を巡るトラブルを未然に防ぐためには、取り決め内容をできる限り明確にし、書面化しておくことが重要です。

  • 支払金額
  • 支払日
  • 支払い期間(始期と終期)
  • 支払い方法
  • 支払いが滞った場合の対応策

これらを「公正証書」にしておくことで、支払いが滞った際にもスムーズに対応できます。弁護士や公証役場のサポートを受けながら準備するのもおすすめです。

事例紹介

合意内容を公正証書に→未払い発生→給与差押えで回収

離婚時に毎月5万円の養育費を公正証書に明記していたAさん。

半年後に元配偶者からの支払いが止まりましたが、公正証書をもとに弁護士を通じて給与の差押えを行い、未払い分を全額回収できました。

大学進学まで支払うことで合意

高校生のお子さんを育てていたBさん。

元配偶者は養育費は20歳までしか支払わないと主張していましたが、父母双方が大学に進学していたこと、子も大学進学を望んでおり、夫婦間でも子を大学に行かせることに同意していたことを踏まえ元配偶者と協議のうえ、大学卒業までの支払い(22歳の3月まで)で合意。

内容を公正証書にしておいたため、その後の支払いは滞りなく継続されています。

収入が減少したので減額調停により支払い可能な金額まで減額

離婚時に毎月10万円の養育費を支払うことに合意したCさん。

離婚から数年経ってから収入が大幅に下がってしまったため、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立て。

減額後の収入を前提に養育費を再計算し、無理なく支払うことができる金額まで養育費を減額することができました。

よくある質問(FAQ)

Q:養育費の金額はあとから変更できますか?

はい。収入や家庭状況が大きく変わった場合には、家庭裁判所に対して、養育費の減額・増額を求める調停を申し立てることが可能です。

Q:養育費と面会交流は関係がありますか?

養育費の支払いと面会交流の実施は別の問題です。

養育費の支払は子どもを経済的に支えるもので、面会交流は別居親との交流を通じて子どもを精神的に支えるものです。一方が履行されていないからといって、他方の権利を制限することはできません。

もっとも、養育費を支払う当事者からすれば、長年面会交流ができていない我が子に対しては、関心が薄れてしまい、養育費の支払いが滞ってしまう可能性があります。

子の学費や医療費についても同様で、子との関係が良好で適度に交流が保たれていれば、その都度協議によって援助を受けられる可能性も高まります。その意味では、養育費と面会交流は、実質的には相互に関係しているといえるでしょう。

Q:成人まで支払えばいいのでしょうか?

原則は20歳までですが、大学進学などが見込まれる場合は22歳までの支払いで合意するケースもあります。

Q:未払い分の請求は可能ですか?

はい。公正証書や調停調書がある場合、未払い分の一括請求や強制執行による回収が可能です。

Q:収入が下がった場合、減額を求められますか?

可能です。継続的な支払いが困難になった場合には、家庭裁判所で減額調停を申し立てることができます。

まとめ

養育費は、離婚後もお子さまが安心して成長できる環境を維持するために欠かせない大切な支援です。
金額や期間、支払い方法をきちんと取り決め、書面で明確にしておくことで、トラブルを防ぐことができます。

万が一、支払いが滞った場合も適切に対処すれば回収は可能です。
不安や疑問がある場合は、早めに弁護士などの専門家に相談し、安心できる体制を整えましょう。

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