名誉毀損の民事・刑事の違いとは?判断基準からリスク・費用を解説
最終更新日: 2024年12月16日
- 自分の名誉が毀損された。加害者に責任を追及したい。
- 名誉毀損を確認できたときは、相手に金銭賠償を要求する他、刑事告訴も可能だろうか?
- 私は相手の名誉を毀損した。どのような罪に問われるかとても不安だ。
インターネット上や紙面で名誉が毀損された場合、あなたは相手に対し損害賠償請求や刑事告訴が可能です。
ただし、裁判所から名誉毀損と認められるには、一定の基準を満たす必要があります。
そこで今回は、名誉毀損の問題に携わってきた専門弁護士が、名誉毀損の民事と刑事の違い、名誉毀損の民事・刑事の裁判で必要な費用等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 公然と事実を適示し、あなたの社会的評価を低下させる行為でなければ名誉毀損とはいえない
- 名誉毀損を行った者が有罪となれば、重いペナルティを受ける可能性がある
- 名誉毀損をした側もされた側も、専門弁護士に相談し対処方法を話し合おう
名誉毀損の民事と刑事の違いを解説
あなたが名誉を毀損された場合、民事裁判・刑事裁判で相手に責任追及が可能です。
ただし、民事と刑事では責任追及の仕方が異なります。
民事
民事裁判では主に金銭賠償であなたの権利救済を図ります。
あなたが名誉を毀損され、民事裁判で相手に責任を追及する場合は、不法行為を理由に「損害賠償請求訴訟」を起こせます(民法第709条、710条)。
損害賠償請求の通知を行い、相手が請求に応じない場合、相手の住所地を管轄する裁判所に提起が可能です。なお、いきなり訴訟提起をすることもできます。
裁判所があなた(原告)の主張を認めた場合、相手(被告)に対し損害賠償を命じる判決を言い渡します。
刑事
刑事告訴により、相手の名誉毀損行為の犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示を行います。
名誉毀損は親告罪であるため、あなたが警察署に告訴状を提出しなければ、捜査機関は捜査を開始しません。
捜査機関によって、相手が逮捕・起訴されると刑事裁判が開かれます。
刑事裁判で有罪となった場合、3年以下の懲役若しくは禁錮(2025年6月1日以降は拘禁刑に統一)または50万円以下の罰金に処されます(刑法第230条第1項)。
刑事裁判で有罪となった相手は刑罰を受けますが、あなたへの金銭賠償は命じられません。
そのため、あなたは刑事裁判中でも相手に民事裁判を起こし、損害賠償の請求をすべきでしょう。
名誉毀損の民事と刑事の主な判断基準の違い
あなたが名誉を毀損された場合、民事では損害賠償請求、刑事では名誉毀損による刑事告訴が可能です。
民事と刑事では、名誉毀損に該当するかどうかの判断基準が異なるので注意しましょう。
公然性
不特定多数の人が見聞きできる状況で、あなたの名誉が毀損されたかどうかを判断します。
たとえば、駅前等多数の人が行き交う場で、あなたの名誉を毀損するビラが配られたというケースです。また、ネット上で多数のユーザーが閲覧できる状況を利用し、あなたの名誉を毀損するケースも該当します。
刑事の場合、公然性が認められなければ名誉毀損にはあたりません。
一方、民事の場合、公然性は要件となっていませんが、社会的評価の低下が要件となっているため、公然と行われていなければ名誉毀損にあたらない可能性が高いでしょう。
事実の摘示
相手から示された事実が、証拠により真偽の確認が可能な場合は「事実の摘示」に該当します。
事実の摘示は本当か嘘かを問わず、具体的な事実内容を示したか否かで判断されます。具体例をあげましょう。
・「〇〇は中学生の頃、同級生をマット詰めにして殺害した殺人犯だ」
・「〇〇会社はパワハラを黙認しているブラック企業だ。年間何人もの従業員がパワハラを理由に退職している」
刑事の場合、事実を摘示して社会的評価を低下させた(またはその危険性を生じさせた)場合、名誉毀損にあたります。
一方、民事では事実を摘示する他、正当な意見・批判の域を逸脱した人身攻撃のような発言であれば、名誉毀損による不法行為が成立します。
人の名誉を毀損
あなたの社会的評価の低下の有無が判断基準です。
刑事の場合、相手があなたを誹謗中傷しても、社会的な評価に何ら影響がない場合、名誉毀損は成立しません。
民事の場合も、社会的な評価に影響がないと名誉毀損にはあたりません。ただし、あなたの名誉感情が侵害された場合、不法行為が認められ損害賠償を請求できるケースもあります。
名誉毀損の民事と刑事の法的リスク
あなたが特定の個人や団体の名誉を毀損した場合、民事・刑事の両面で責任を追及される可能性があります。
民事では多額の金銭賠償を、刑事では重いペナルティを受けるおそれもあるでしょう。
民事
あなたが裁判所に損害賠償請求訴訟を提起され敗訴した場合、裁判所から損害賠償が言い渡されます。
賠償金額は10〜100万円が目安です。
実際にどのくらいの金額の支払いを命じられるかは、被害者が個人か法人か、名誉毀損の悪質性や被害者の属性(一般人か有名人か)、重大な結果を招いたか否か等によって異なります。
刑事
あなたが名誉毀損の疑いで逮捕・起訴された後、刑事裁判で有罪判決を言い渡された場合、受ける刑罰は次の3つのいずれかです(刑法第230条第1項)。
- 3年以下の懲役:刑事施設に収容され、強制労働を命じられます
- 3年以下の禁錮:刑事施設に収容されますが、強制労働は命じられません
- 50万円以下の罰金:強制的に一定の金額を納めるよう命じられます
なお、2025年6月1日以降、懲役・禁錮は「拘禁」に統一されることが、法改正により決定済みです。
拘禁刑が適用される場合、刑務作業を行わせるかどうかは受刑者ごとに決められます。受刑者の特性に応じた更生プログラムも実施されるでしょう。
懲役・禁錮(拘禁)や罰金刑を受けた場合、あなたには前科が付いてしまいます(執行猶予付き判決の場合も同様)。一度前科が付けば、基本、消えることはありません。
前科があると一定の職業に就けない、勤務先を解雇されてしまう、就職活動で不利になる等の様々なデメリットが生じる恐れがあります。
名誉毀損の民事・刑事を弁護士に相談するメリット
名誉毀損で損害賠償を請求されたり、刑事告訴されたりすると、何らかの対応をとらなければ、あなたの立場はどんどん不利になっていきます。
できるだけ早く弁護士と相談し、対応の仕方を相談すれば様々なメリットが得られます。
負担軽減
弁護士と相談後、「この弁護士ならサポートを任せられる」と感じたときは、私選弁護人を依頼してもよいでしょう。
あなたが民事裁判で裁判所から呼び出しを受けた・刑事告訴を受け捜査機関に逮捕された場合、弁護士はあなたのサポート役として大きな役割を担います。
民事訴訟手続・刑事手続は、次のように進められます。
- 民事訴訟手続:初回の裁判期日に答弁書を提出、2回目以降は主張書面(準備書面)を提出
- 刑事手続:逮捕後の取り調べや、検察への送致、勾留、検察官からの起訴処分、刑事裁判へと進む
民事訴訟手続に関する対応は原則として尋問期日を除き、すべて弁護士に委任できます。
また、刑事手続の場合は、たとえあなたが逮捕されても弁護士とすぐに面会できます。弁護士は取調べへの応じ方のアドバイスや、捜査機関に即時釈放を求める働きかけが可能です。
弁護士をサポート役にすれば、あなたの負担を大きく軽減できます。
慰謝料減額
弁護士に慰謝料(損害賠償)の減額交渉を任せられます。
あなたに名誉毀損されたと主張する相手と、示談交渉で解決できる場合もあるでしょう。
示談が成立すれば、相手から損害賠償請求訴訟を提起されず、刑事告訴を免れること(または取下げ)もありうるでしょう。
しかし、相手が高額な示談金額を求めてくるケースも想定されます。
弁護士に適正金額を提示し、相手との減額調整を委任することも可能です。弁護士の理性的かつ説得力のある主張で、相手は減額に納得する場合もあるでしょう。
弁護士は、損害賠償請求訴訟においても被告であるあなたの立場に立って主張し、損害賠償の減額に尽力します。
名誉毀損の民事・刑事で必要な費用
名誉毀損を受けた側、名誉毀損を行った側、いずれも問題の解決を図る場合、様々な費用がかかります。
必要な費用である弁護士費用、裁判費用、慰謝料(損害賠償)について説明します。
弁護士費用
民事・刑事でいずれも弁護士を立てる場合、弁護士費用がかかります。法律事務所ごとに費用は異なります。
弁護士費用は、主に「着手金」「成功報酬」の2種類です。
- 着手金:弁護士との委任契約のときに必ず支払う費用。【民事】約22~44万円、【刑事】約33~55万円
- 成功報酬:勝訴や無罪判決を獲得した場合、弁護士に支払う費用。【民事】約11~66万円、【刑事】約33~55万円
また、日当(接見日当も裁判日当等)を要求される可能性もあります(無料の事務所もある)。
裁判費用
刑事裁判の場合は、名誉毀損をされた側、名誉毀損を行った側いずれも費用は不要です(被告人が保釈される場合、保釈金を支払う必要はある)。
一方、民事裁判の場合は最終的に敗訴側が、訴訟費用を負担しなければなりません。
主に次のような費用がかかります。
- 裁判所手数料:収入印紙で納付する。約1万円(訴訟の目的価額が100万円の場合)
- 予納郵便代:約6,000円
- 証人の日当・旅費:日当「8,000円上限×日数分」と旅費を実費精算で支払い。
- 謄写費用:調書をコピーする場合に必要。約1~2万円
裁判費用はケースにもよりますが、総額3万円〜6万円が目安となるでしょう。
慰謝料
名誉毀損を行った側が負担しなければならない費用です。
示談交渉で目安となる慰謝料の金額は次の通りです。
- 名誉毀損を受けた側が個人:約10~50万円
- 名誉毀損を受けた側が法人:約50~100万円
上記の枠内で金額が必ず決まるわけではありません。交渉の場では、双方の合意した金額で慰謝料を決定可能です。
損害賠償請求訴訟では、名誉毀損を重く見て、裁判所が100万円以上の賠償金額を認めたケースも数多くあります。
名誉毀損の民事と刑事なら春田法律事務所にお任せを
今回は名誉毀損の問題解決に尽力してきた専門弁護士が、名誉毀損を問う場合、民事と刑事で異なる点等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、名誉毀損の問題解決に実績豊富な法律事務所です。まずは弁護士と相談し、今後の対応を検討しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。