賃貸物件の取り壊しによる退去について賃貸人と賃借人が知っておくべき法律知識

2022年01月27日

  • 賃貸物件の取り壊しの話がでているが、すぐに退去する必要があるのか
  • 賃貸物件の取り壊しによる退去にはどのような事由が必要なのか
  • 賃貸物件の取り壊しの決定から退去までをスムーズに進めるポイントを知りたい

賃貸物件の取り壊しの計画が決まった場合、賃貸人と実際に住んでいる賃借人の間で、退去の交渉を行なうことがあります。たとえば建物の取り壊しによる退去の場合、基本的な知識を持っておく必要があります。

賃貸人は契約更新や退去に必須の「正当事由」などを理解しなければ、交渉がスムーズに進みません。

他方、賃借人も賃貸人から退去を求められたときに法律の知識がないと、損をしてしまうかもしれません。さらに、安心できる住居を失うリスクも懸念されます。

今回は、賃貸人と賃借人が知っておくべき賃貸物件の取り壊しに関する法律の知識として、契約の基本、退去を要求するために必要な正当事由、立ち退き料を解説し、立ち退きまでの流れがスムーズに進むポイントを紹介します。

この記事を監修したのは

篠田 匡志
弁護士篠田 匡志
第一東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 卒業
金沢市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

立退に関わるトラブルでお困りの方へ

・無料相談受付中
・全国対応(東京・大阪・名古屋・福岡・金沢)

24時間・土日祝日も受付0120-655-995

取り壊しの場合であってもすぐに退去させることはできない?

建物の老朽化や欠陥などで建て替えを検討する場合であっても、賃貸人は、直ちにそれだけの理由をもって、賃借人に対し、即時の契約解除を行なうことができるわけではありません。といのも、借地借家法によって賃借人が強く保護されているからであり、賃貸人は賃借人との契約条件のみならず、借地借家法の規定を確認し、退去の手続きを進める必要があります。

ここでは、以下の2つの点から取り壊しのときの退去について解説します。

  • 賃貸物件は契約更新が基本
  • 賃貸人が賃借人に退去を申し出るのに必要な事由4つを解説

1つずつ見ていきましょう。

賃貸物件は契約更新が基本

賃貸物件の契約は更新が基本です。賃貸人は賃借人と契約を結ぶときに、契約更新の方法を決めています。契約更新の方法には、「合意による更新」や「法定更新」があります。

以下で、「合意による更新」と「法定更新」の詳細を見ていきましょう。

合意による更新

合意による更新は、不動産賃貸実務の現場において、用いられることが最も多い方法です。賃貸人と賃借人は事前に合意することで、契約を更新します。

たとえば、賃貸借契約の更新期間は2年ごとが多いですが、このような場合に、契約が満了する前に、賃貸人と賃借人が合意し、更新契約書を作成します。賃貸人と賃借人は、賃貸借契約期間内に合意を行なうことでトラブルを防ぐことできます。

法定更新

法定更新は、契約期間内に更新の合意が行なわれない場合であっても借地借家法によって、賃貸借契約の効力を存続させる制度のことです。たとえば、2年間の契約期間が越えたにもかかわらず、前述した「合意による更新」が成立しなかった場合でも、従前と同一の条件で賃貸借契約の効力が残ります。

ただし、法定更新による場合には「期間の定めのない契約」になるため、注意が必要です。賃貸人は常時、契約終了の申込みができ、契約終了を申込んだ日から6か月が経つと契約終了が可能です。もちろん、この場合においても「正当事由」が求められますので、賃借人は正当事由がない限り、退去を強制されません。

賃貸人が賃借人に退去を申し出るのに必要な事由4つを解説

賃貸人が賃借人に退去を申し出るのに必要な事由として4つの事由があります。

  • 賃貸人が居住する場合
  • 住民に債務不履行がある
  • 建物の老朽化
  • 立ち退き料を支払う

それでは、1つずつ見ていきましょう。

大家が居住する場合

1つ目は、大家が居住する場合です。

大家である賃貸人が賃貸物件に住む必要がある場合、正当事由が認められることがあります。立ち退きを要求するときには、賃貸人は賃借人の経済力や使用状況を考慮する必要があるからです。

賃貸人が家族と住むために立ち退きを要求した裁判例では、「賃借人が住居として使用していない」や「賃貸人が十分な立ち退き料を用意した」との条件が揃っていたため、正当事由があると認められました。この裁判例では、立ち退き料として750万が用意されました。

あくまでケースバイケースですが、賃貸人は賃借人と話し合いながら合意を重ね、トラブルを防ぐことが大切です。

住民に債務不履行がある

2つ目は、住民に債務不履行がある場合です。

本来、賃貸人は賃借人の住民に債務不履行がある場合、これを理由に契約を解除して、強制退去を求めることが可能です。
過去の判例をみますと、住民の債務不履行解除が認められる条件として、「賃料の滞納が3か月以上」や「賃貸人と賃借人の信頼関係が崩れている」がありました。

また、信頼関係が崩れているケースには「近隣住民とのトラブルが頻発している」や「ペット禁止の物件で犬や猫などを飼育」などがあります。

これに至らない程度の債務不履行では、賃貸借契約を解除することまでできないものの、賃貸人の正当事由を強める事情として用いることは可能で、退去を求めやすくすることができます。

建物の老朽化

3つ目は、建物の老朽化です。

賃貸人は賃借人に対し、建物の老朽化を理由に立ち退きを求められます。ただし、立ち退きの理由を伝え、証明できるものが必要です。

たとえば、賃借人に被害を生じる危険性があることを証明する「耐震診断」を受けます。診断の結果、耐震基準に満たしていないことがわかれば正当事由になりえます。また、現実に建物の危険性を裏付ける事故があれば、住民に対して、説得的に建物の老朽化を伝えることができます。

気を付けなければならないのは、抽象的な老朽化だけを指摘しても、住民を動かすことは難しいという点です。具体的に、建物の危険性を訴求できるだけの事情を伝えることが、立ち退き交渉を進める上で重要になってきます。

立ち退き料を支払う

4つ目は、立ち退き料を支払うことです。

スムーズに退去してもらうよう、賃貸人が賃借人に立ち退き料を支払うのです。立ち退き料として考慮されるものには引っ越し代・敷金・礼金・仲介手数料などが挙げられます。立ち退き料の内容や額は、賃貸人の支払能力も含め、さまざまな状況から総合的に決まってくるものです。

気を付けたいのが、賃借人が建物を店舗として使っている場合です。立ち退き料に営業補償が含まれることもあるため、立ち退き料が高額になってしまうケースもあります。

賃貸物件の取り壊しと退去にまつわる立ち退き料の問題

賃貸物件の取り壊しと退去にまつわる立ち退き料の問題について、以下の3つの点から解説します。

  • 立ち退き料とは
  • 立ち退き料の相場は
  • 取り壊しが立ち退き料に与える影響

1つずつ見ていきましょう。

立ち退き料とは

立ち退き料は、賃貸人が賃借人に支払う補償金となる金銭です。裁判所は明渡しの裁判で調整要素として、補償金を求めるケースがあります。補償金は、裁判を解決に導くために必要な要素です。

立ち退き料に含まれるものには引っ越し代や営業補償など、さまざまな項目があり賃貸人と賃借人の正当事由を比較して金額が決まります。賃貸人の正当事由が全て認められ、立ち退き料が支払われないケースもまれにありますが、多くの場合は立ち退き料が発生しています。

立ち退き料の算定式の1つの例は以下の通りです。

(新規の賃料から現在の賃料を引いた金額)×1年~3年+引っ越し代+新規契約金

この算定式は多くの判例で使われていますが、「居住用」と「営業用」で項目や金額が異なります。また、算定が難しい場合として、生活保障や営業補償が挙げられます。立ち退き料は、賃貸人と賃借人の状況で大きく変わってしまうのです。

詳しくは、以下のコラムで解説しています。

立ち退き料の相場は

立ち退き料の相場は、賃貸人と賃借人の状況で異なります。算定の要素として「引っ越し代」、「営業補償」、「慰謝料」など挙げられますが、全てが認められるわけではありません。各状況によっては認められない算定項目もあるため、相場を一律に出すのは困難と言えます。

以下のコラムにて詳しく解説していますので、参考にしてください。

取り壊しが立ち退き料に与える影響

賃貸人が建物の老朽化で退去を求めた場合、立ち退き料が減額される可能性があります。建物の老朽化は賃借人にも危険が及ぶこともあるため、正当事由に認められるでしょう。ただし、老朽化が証明できるものとしてたとえば耐震診断などが必要です。

その一方、再開発による取り壊しは立ち退き料が高額化しやすい傾向にあります。賃貸人は、賃借人に迷惑料や上乗せ分を支払う可能性があるため、再開発による取り壊しは老朽化に比べ、立ち退き料が高くなると言えます。

賃貸物件の取り壊し決定から退去までをスムーズに行なうポイント

賃貸物件の取り壊し決定から退去までをスムーズに行なうポイントは以下の3つです。

  • 住民への告知を早い段階から行なう
  • 住民への説明をわかりやすく丁寧に行なう
  • 弁護士に介入を依頼する

それでは、1つずつ見ていきましょう。

住民への告知を早い段階から行なう

1つ目は、住民への告知を早い段階から行なうことです。

賃貸人は賃借人に対し、早い段階から告知することが大切です。告知のタイミングは、普通賃貸契約が満了する6か月までに行なう必要があります。交渉がスムーズに進まないケースもあるため、時間がかかることを想定するとよいでしょう。時間や気持ちにゆとりを持って対応することがおすすめです。

仮に賃貸人は賃借人の交渉がまとまらない場合、普通賃貸契約から定期賃貸借契約に切り替える方法があります。定期賃貸借契約は双方が同意し、再契約を行ないますが、更新がないため、賃借人としても再契約に難色を示すことが多いです。双方が納得して合意をするためには、早い段階から話し合い、賃料の減額といったインセンティブを与えるのが効果的です。

住民への説明をわかりやすく丁寧に行なう

2つ目は、住民への説明をわかりやすく丁寧に行なうことです。

賃貸人は賃借人に対し、説明を丁寧に行なう必要があります。住民への説明は専門用語を使わず、わかりやすい言葉を選ぶことがおすすめです。たとえば、法律を説明する場合、具体的な条項を挙げながら、わかりやすい言葉や事例を挙げて説明します。また、建物の取り壊し退去を求めるときには、「正当事由」が重要です。賃貸人は「正当事由」をベースにした丁寧な説明を行ないましょう。

弁護士に介入を依頼する

3つ目は、弁護士に介入を依頼することです。

弁護士が介入することで、交渉がスムーズに進みやすくなります。たとえば賃貸人・賃借人が交渉した場合、感情的になりやすく話が進まない可能性があります。また、お互いが法律の知識がないと納得できるまでに時間がかかるでしょう。

弁護士は法律の知識や経験から双方が納得できる提案を行なってくれます。交渉をスムーズにする方法として、弁護士の介入は有効な手段です。特に、賃貸物件の取り壊しにかかる退去について経験値の高い弁護士がおすすめします。多くの判例を目にし、また流れを理解しているためスムーズに解決へと導いてもらえることが期待できます。

まとめ

今回は、賃貸人と賃借人が知っておくべき賃貸物件の取り壊しに関する法律の知識として、契約の基本、退去を要求するために必要な正当事由、立ち退き料を解説し、立ち退きまでの流れがスムーズに進むポイントを解説しました。

賃貸人が建物の取り壊しを行なうときには「正当事由」が必要です。このことを前提に、賃貸人は賃借人から同意を得たり、立ち退き料を決めたりと、さまざまな対応を求められます。

また、交渉にあたる賃貸人としては、丁寧かつわかりやすい説明が求められます。賃借人としても、賃貸人において受け入れがたい条件を提示し続けていては交渉が進まなくなります。

交渉が上手くいかない場合は立ち退き問題を専門とする弁護士に依頼して、双方が納得できる提案をしてもらうことが早期の解決につながります。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

立退料の取り扱いについてはこちら

立退に関わるトラブルでお困りの方へ

・無料相談受付中
・全国対応(東京・大阪・名古屋・福岡・金沢)

24時間・土日祝日も受付0120-655-995

この記事を監修したのは

篠田 匡志
弁護士篠田 匡志
第一東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 卒業
金沢市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

立退料の記事一覧へ戻る