懲戒処分は弁護士に相談すべき?実施の流れ・理由や依頼のメリットを詳しく紹介

最終更新日: 2024年02月27日

懲戒処分は弁護士に相談すべき?実施の流れ・理由や依頼のメリットを詳しく紹介

  • 従業員が問題を起こし、懲戒処分を検討している。念のため法律の専門家へ相談したい。
  • 懲戒処分を行うときの流れについて教えて欲しい。
  • 後々のトラブルを避けるため、懲戒処分前に弁護士と手続きの進め方を協議したい。

会社は従業員が問題を起こしたとき、会社の秩序の維持や信用を保つために、その従業員に対して懲戒処分を行うケースがあります。

しかし、懲戒処分の方法や手続きを誤ると、従業員から訴訟を提起され敗訴してしまう等、社内に大きな影響を与える事態となる可能性があります。

そこで今回は、多くの労務問題に携わってきた専門弁護士が、懲戒処分の流れや懲戒処分前に弁護士へ相談するメリット等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 懲戒処分は事実の確認の他、当該従業員の弁明も聴き、慎重に進める必要がある
  • 懲戒処分を行う前に、人事労務管理に精通した弁護士の意見を聴いた方がよい
  • 依頼を受けた弁護士は、懲戒事由のリスクチェックや的確なアドバイスを行う

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

懲戒処分の概要を弁護士が解説

懲戒処分とは、会社が問題を起こした従業員に対して下す制裁罰です。

使用者が従業員に行う一方的な不利益処分であり、会社の秩序の維持や信用を保つために必要となるケースもあります。

懲戒処分の種類は主に次の7つです。

  • 戒告:口頭や書面で厳重注意を行う処分。軽い処分に該当する。
  • 譴責:「けんせき」と呼び、始末書を提出させて問題行動は二度と行わないと誓約させる処分。
  • 減給:始末書を提出後に賃金から一定金額が減額される処分。ただし、法律で1回の減額分が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の1/10を超えてはならないと規定されている(労働基準法第91条)。
  • 出勤停止:始末書を提出後、一定期間従業員の就労を禁止する処分。出勤停止期間中、給与は支払われないのが一般的。
  • 降格、降職:職務資格制度上の資格や、役職を引き下げる処分。
  • 諭旨解雇:「ゆしかいこ」と呼び、会社が従業員に退職届や辞表を出すよう勧告し、一定期間に提出しないと懲戒解雇する処分。
  • 懲戒解雇:従業員を失職させる処分。懲戒処分の中でも最も重い。

懲戒処分は対象となる従業員に重大な影響を与えるものもあります。

そのため、法律や就業規則に従って適切な取り扱いがなされないと、裁判に発展した場合、処分が無効になるおそれもあります。

企業が懲戒処分を行うときの流れを弁護士が紹介

従業員に対する懲戒処分を検討しているならば、慎重な手続きを踏んだうえで適正な処分がなされなければいけません。

こちらでは、懲戒処分を下す手順について説明します。

事実の確認

懲戒処分を判断するときは、まず事実関係の調査をします。

問題を起こした従業員本人の事情聴取の他、他の従業員や上司・関係者からも聴取し事実確認を行います。

この事実確認が不十分なまま処分を下してしまうと、裁判で懲戒処分が無効となる他、多額の損害賠償を求められるおそれもあるので注意しましょう。

事情聴取のときは、「いつ」「誰が」「何をしたのか」をしっかりと記録します。

理由を告知

処分の理由を従業員本人に告知します。

懲戒処分の理由(例:部下にセクハラ行為をした等)、処分の程度や内容(例:1か月の出勤停止等)について本人へ説明します。

「就業規則の中であなたの行為は第〇〇条に当たる。」等と具体的に示します。

弁明

従業員本人の処分を決定する前に、弁明の機会を与える必要があります。

また、弁明の機会を与える規定が就業規則にあってもなくても、処分を下す従業員とのトラブル防止、公平性の確保のため、弁明の機会を付与しましょう。

弁明の機会は面談の他、書面で付与しても構いません。面談を実施するならば、面談場所や人数および時刻、面談内容を正確に記録します。

懲戒処分種類の検討

客観的かつ公正な処分を下すためには、「懲戒委員会」の設置が望ましいでしょう。

懲戒委員会は懲戒処分の決定のとき、事実確認や調査、ヒアリングの内容を考慮し、適正に懲戒権を行使するための機関です。

委員会では処分の妥当性や情状酌量の有無、他の従業員への影響等を議論し、必要ならば弁護士等の専門家のアドバイスも受けて決定を下します。

委員会を開催した場合は、議事録を作成し証拠書類として保管しましょう。

通知

最終的に決定した処分内容を従業員本人へ通知します。

口頭ではなく「懲戒処分決定通知書」等といった形で書面を交付します。通知書には懲戒事由、処分の程度・内容を明記します。

一方、通知後に従業員本人が不満を持っているなら、懲戒処分の無効を争い、慰謝料請求や復職等を求め、従業員側から訴訟を提起することも可能です。

懲戒処分の理由になりやすい状況を弁護士が解説

懲戒処分の規定は就業規則に明記されていますが、一般的に次のような行為が該当します。

無断欠勤

上司等に許可なく無断欠勤する行為はもちろん、出勤したりしなかったりする出勤不良や、勤務成績不良、遅刻過多、職場離脱等の「職務懈怠」が該当します。

この場合には、当該従業員が職務懈怠に至った理由、上司等がどう対応したかも考慮し、懲戒処分の有効性を判断します。

ただし、従業員の無断欠勤の原因が、たとえば「うつ病」を発症し出勤できない状態だった等、やむを得ない事情があったならば、本人は代理人等を通じて弁明しなければなりません。

職場での態様

職場でセクハラ・パワハラをした、業務妨害行為、横領や背任等をしたという「服務規律違反」があります。従業員が守るべきルールや義務に違反した場合、懲戒処分を受ける可能性が高いです。

また、上司から時間外労働命令、休日労働命令、出張命令等を受けたにもかかわらず、命令を拒否した場合、「業務命令違反」に該当します。

ただし、上司の業務命令がパワハラのような内容であったり、従業員が命令へ服しなかったことにやむをえない理由があったりしたら、懲戒処分には当たりません。

過失

従業員が意図的ではないにしても、不注意で起こした損害に関して、懲戒処分を受ける可能性があります。

就業規則へ過失に関する懲戒処分をどう定めるかは、処分が重すぎないか等、慎重に考慮される必要があります。

従業員が過失により何らかの対応を間違えても、会社に損害がなかった場合、懲戒処分は行えません。

たとえば営業車で外回り中、運転ミスで歩行者を轢き、重大な傷害を負わせたという場合も直ちに有効に懲戒処分が行えるわけではなく、事故原因や被害内容、会社に与える影響など様々な事情を考慮して妥当な重さの懲戒処分であることが必要です。

犯罪行為

服務規律違反に該当する横領や背任等の不正行為も犯罪行為です。

たとえば、役員や従業員が会社の資金を横領した場合には、最も重い処分である懲戒解雇はもちろん「業務上横領罪(刑法第253条)」に問われる可能性があります。

一方、背任は自己や第三者の利益を図る犯罪行為で、任務に背く行為であり、こちらも懲戒解雇はもちろん「背任罪(刑法第247条)」で刑事告訴される可能性があります。

また、私生活上の犯罪行為も懲戒処分の対象です。

たとえば、従業員が電車内での痴漢行為で逮捕後、従業員の氏名の他に会社名も、マスメディアから報道されてしまったようなケースが該当します。

懲戒処分を弁護士に相談するメリット

懲戒処分を受けた従業員が納得しない場合、訴訟を提起され、長期間にわたり処分が無効か否かを争う事態となる可能性もあります。

懲戒処分が適正であるなら、被告である会社の主張が通ります。

適正な処分を行うためには、事前に法律の専門家である弁護士へ相談し、アドバイスを受けておきましょう。

こちらでは弁護士へ相談するメリットを説明します。

懲戒事由のリスクチェック

懲戒処分の前に十分な調査、そして証拠収集が求められます。

処分を受けた従業員が、懲戒処分が不当であるとして訴訟を起こせば、懲戒対象となった事実の存在を、会社側が立証しなければいけません。

できれば処分を下す前に、人事労務管理に精通した弁護士へ相談しましょう。

相談を受けた弁護士は、懲戒処分を行うときの調査は十分なのか、処分するに足る証拠は確保しているか等をチェックします。

弁護士が問題点を見つけたら、迅速に会社側へ改善策を提案します。

法的に正しいプロセスでの実行

懲戒処分のためのヒアリングや調査を行う過程で弁護士が立ち合えば、プロセスは適正だったかどうかを弁護士が確認できます。

次のようなプロセスで弁護士を参加させれば、仮に裁判となっても、公平な手続きで行われた旨の主張が可能です。

  • 懲戒事由の調査のため、弁護士もヒアリングへ参加
  • 従業員への弁明の機会の付与、懲戒処分の言い渡しへの立ち合い
  • 懲戒委員会の協議への立ち合い

懲戒処分でお悩みなら当事務所の弁護士にご相談を

今回は多くの労務問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、懲戒処分前に弁護士へ相談するメリット等を詳しく解説しました。

懲戒処分は従業員の人生に大きな影響を与えるペナルティともなります。弁護士のアドバイスをもとに、適正かつ公平な調査が求められます。

弁護士の助力を受けながら、慎重に懲戒処分のプロセスを進めてみてはいかがでしょうか。

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