宗教法人に弁護士は必要?東京の専門弁護士が解説

2022年07月30日

宗教法人に弁護士は必要?東京の専門弁護士が解説

  • 宗教法人が弁護士に相談することなどあるの?
  • 宗教法人が法律問題に巻き込まれることがあるの?
  • 宗教法人の問題をどの弁護士に相談すればいいの?

宗教法人のことで弁護士に相談をしたことがある方は多くはないでしょうから、上記のような疑問を持たれるかもしれません。

しかし、宗教法人も企業と同様、多数の関係者と関わりながら経営されています。そのため、そのような関わりの中で法的トラブルに巻き込まれることはしばしばあります。

特に檀信徒との関係性はかつてとは相当変わってきました。そのため、従来は考えられなかったようなトラブルが現実に生じるようになっています。

そこで今回は、宗教法人が弁護士に相談すべきケースや弁護士に相談していれば防ぐことができた事例などについて専門弁護士が解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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宗教法人から弁護士に東京でよくあるご相談

宗教法人が弁護士に相談する機会はあまりないのではないかと思われるかもしれませんが、実際には宗教法人からのご相談はよくあります。ここでは宗教法人からのご相談の一例を紹介いたします。

  • 東京の宗教法人統計
  • 被包括関係の廃止について
  • 責任役員について
  • 檀信徒について
  • お墓について
  • 収益事業について
  • 職員について

東京の宗教法人統計

政府による令和3年度の宗教統計調査によれば、宗教法人は全国で18万147法人存在します。そのうち東京都には5986法人が存在し、その数は全国8位です。教会は1554法人で全国3位、寺院は2821法人で全国7位、神社は1448法人で全国22位です。

このように東京の寺院の数は多く、檀信徒との関係など弁護士へのご相談は多い傾向にあります。

被包括関係の廃止について

包括・被包括関係を廃止して本山の意向に関係なく、後任住職を選びたい、今後はもっと自由に寺院を経営していきたい。近時、いわゆる単立化のご相談は増加傾向にあります。

責任役員の選任や各種決議に瑕疵が生じないよう単立化の手続きを進める必要があります。また、包括宗教法人によって単立化の妨害工作が行われることもありますので、綿密な準備が必要です。

責任役員について

寺院の運営方針に反対する責任役員を解任したい、代表役員を解任する決議がされてしまったので代表役員の地位を取り戻したい。このようなご相談はしばしばあります。

有効な解任事由・手続きの確認、戦略立案や地位確認の訴訟などの法的手続が必要となります。

檀信徒について

檀信徒がSNSに住職を誹謗中傷する投稿をしている、お布施を払わない檀家がいる、会計帳簿の開示を求められた。このような檀信徒との揉め事は年々増加傾向にあります。

宗教法人の独断で対処するとかえって檀信徒から訴えられ高額な賠償を求められる事態もありえますので、法的知見を踏まえた対応が必要です。

お墓について

代替わりした檀家が突然、墓じまいをしたいと言ってきた、長年参拝のないお墓を処分したい、墓地管理費を支払ってくれない。このようなお墓に関するご相談もよくあります。

お墓に関する法的問題については判例でも確定していない論点が多数あります。十分な事実関係と法的リサーチの上で判断をくださなければ、後々に檀家との間で訴訟問題に発展するおそれがあります。

収益事業について

マンションを建てて賃貸経営をしたい、余っている境内地を駐車場にしたいがその手続きがわからない。行政から規則変更の認証を得られるか不安だ。宗教法人の収益事業に関するご相談はよくあります。

宗教法人の収益事業は無制限に認められるものではありませんし、税務や備置書類の変更もあります。意図せず違法状態になってしまうことがありますので、法律をしっかりと確認して適正に処理する必要があります。

職員について

番僧をクビにしたら不当解雇だと弁護士から内容証明が来た、職員からパワハラでうつ病になったと訴えられている。宗教法人の職員との労務トラブルも近年増えています。

会社とは異なり雇用契約を作成している宗教法人は稀ですし、実態は雇用契約でもそのように意識していないことが多いでしょう。しかし、雇用契約と認定して多額の賠償を命じた裁判例もありますので、宗教法人においても職員に対しては慎重な対応が求められます。

宗教法人が裁判に巻き込まれた事例を弁護士が紹介

次に裁判になった事例をご紹介します。いずれも予め弁護士に相談をしていれば回避できたと思われるものです。

  • 僧侶から不当解雇だと訴えられた事例
  • 無縁改葬をしたところ遺族から訴えられた事例
  • 納骨堂の経営が不許可とされた事例

僧侶から不当解雇だと訴えられた事例

寺院の職員として雇用していた娘婿が娘と離婚することになったことから退職に追い込んだところ、職員であることの地位確認と未払いとなっている給与や賞与の支払いを求めて訴えられた事例です(東京地裁R3.4.27)。

寺院は合意退職を主張しましたが裁判所はそれを認めず、未払となっている数百万円の給与等の支払いを命じました。

雇用契約であることは明らかな事例でしたからその点は争点とはなりませんでした。家族関係であることもあってか、かなり強引に退職に追い込んだようです。

弁護士に相談をして、適切な対処をしていれば退職合意をとりつけ、このような裁判沙汰にはなっていなかったかもしれません。

無縁改葬をしたところ遺族から訴えられた事例

墓参の形跡があったにもかかわらず調査を尽くさずに無縁墓と判断して改葬した行為は不法行為に該当するとして、慰謝料200万円に原状回復費用、弁護士費用を加えて374万円6500円の支払いを命じられました(高松高裁H26.2.27)。

無縁改葬をする場合には本当に無縁墓なのか十分な調査を尽くし、その証拠化をしておくとともに、万が一、遺族が現れたときに引き渡せるよう直ちに合祀はせず一定期間は分離して保管しておくことが重要です。

納骨堂の経営が不許可とされた事例

インターネットで全国から宗派を問わず、寺院と何ら関係のない遺骨も収蔵可能数を超えて無制限に募集し、郵送で焼骨を受け取る方法や殊更に安価さをアピールする商業主義的な印象など納骨堂の経営実態が国民の宗教感情に反するとして不許可処分としたことは行政の裁量の範囲内と判断されました(高松高裁H26.3.20)。

宗旨宗派不問の納骨堂は多数存在しますが、その運営方法によってはこのように不許可処分とされる可能性があります。

納骨堂の建設には多額の費用を要しますし、既に受入れをした方には多大な迷惑をかけることになりますので、計画段階から行政の許可が得られるかどうかについて慎重な検討が必要です。

宗教法人に強い弁護士の選び方

ここまで宗教法人に関わる法律問題について具体的に見てきました。それでは、宗教法人の法律問題についてどのような弁護士に相談すれば良いのでしょうか。

宗教法人を専門として標榜している

まず、宗教法人を専門としていることを標榜している弁護士に相談しましょう。宗教法人を専門としている弁護士は非常に少ないですが、インターネットで検索をしますといくつかの法律事務所を見つけることができます。

法律や裁判例について熟知している

宗教法人を専門として標榜している弁護士であれば、大抵のことはわかっていることでしょう。ただし、専門性の深さについては差異があるため、実際に法律相談をしてみて、法律や裁判例について熟知しているかどうか判断しましょう。

多数の実績がある

3点目として、宗教法人の問題について多くの助言や紛争案件を担当した実績があるかどうかです。良い結果を得るためには知識として知っているだけでは不十分で、実際の案件を通じて培われた勘や経験知の蓄積が重要となります。

まとめ

以上、宗教法人が弁護士に相談すべきケースや実際の事例、弁護士の選び方について解説しました。

実際にトラブルになった場合には直ぐに弁護士にご相談ください。また、そのようなトラブルを回避するためには日ごろから気軽に相談ができる顧問弁護士を用意しておくことも効果的です。

宗教法人に強い、詳しい弁護士をお探しの場合は、当事務所にご相談ください。

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