家庭内別居から離婚への注意点や進め方を弁護士が徹底解説
最終更新日: 2023年07月04日
- 家庭内別居から離婚に進展するにはどのようなステップがあるのか?
- 離婚前に家庭内別居をしておくメリットを知りたい
- 家庭内別居から離婚するための注意点を知りたい
家庭内別居とひとくちにいっても、何をしたらよいか分からないという方は多いのではないでしょうか。家庭内別居には法的な定義はありませんが、おおむね夫婦としての共同生活を否定するものと考えてよいでしょう。
2021年に全国の30歳以上の男女に対して行われた調査によると、44%が家庭内別居を経験しています。
出典:家庭内別居の割合って!?「きっかけ」「期間」「男性・女性の心理」「離婚率」について徹底調査|ノマドマーケティング株式会社
本記事では、家庭内別居から離婚に至る注意点や進め方を弁護士監修のもと丁寧に解説していきます。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 家庭内別居から離婚するまでのステップは、「家庭内別居の開始」→「離婚の意志があることを伝える」→「弁護士に相談する」
- 家庭内別居を離婚前にしておくメリットは、「世間体を気にしなくてよい」「冷静に思考する時間が取とれる」「離婚後のシミュレーションができる」の3つがある
- 家庭内別居から離婚を考えているなら、「家庭内別居は離婚事由にはならない」「悪意の遺棄に当たらないようにする」「異性との交際は認められない」「子どもに対して丁寧に対応する」「離婚の同意が取れない場合は別居も視野に入れる」の5つに注意
離婚にいたる家庭内別居とは
別居と異なり、同じ家の中で行われる家庭内別居は、通常の共同生活との違いが分かりにくいといえます。家庭内別居を始めたつもりでも、同じ屋根の下でいつの間にか共同生活に戻っていたという事態は珍しくありません。
ここでは、離婚に至る家庭内別居の具体的な行動例として、以下の3つを紹介します。
- 家事をわける
- 生活費をわける
- コミュニケーションを取らない
それでは1つずつ、見ていきましょう。
家事をわける
家庭内別居の行動1つ目は、家事をわけることです。
炊事・洗濯などの家事の一切をわけることで、同じ住居内においても別居の状況を作り出すことができます。いつもの習慣で相手の分まで家事をしてしまうこともあるでしょう。勿論それは悪いことではありません。しかし、あなたの離婚の意志が固いのであれば、家事を分けることで別居のスタンスを崩さないことが重要かもしれません。
ただし、あなたに子どもがいた場合、育児に関しては子ども本人の意志もあるため、慎重に考える必要があります。
生活費をわける
家庭内別居の行動2つ目は、生活費をわけることです。
別居している以上は生活費を分けることもあるでしょう。これまで相手が負担してくれていた費用も自分で賄うことになるため、実際に離婚に至った場合に必要になる生活費が見えてくるはずです。
もしあなたに収入がない場合、別居よりも先に自分の生活費を確保するための取り組みを優先したほうがよいかもしれません。
コミュニケーションを取らない
家庭内別居の行動3つ目は、コミュニケーションを取らないことです。
同じ空間にいるにもかかわらずコミュニケーションを取らないことに、想定以上のストレスを感じる方は沢山います。やりとりはLINEのみ、会話は子どもに関することのみなどそのスタイルは様々です。
これまでの同居生活や離婚を考え始めた経緯などふまえ、家庭内別居におけるあなたなりのコミュニケーションスタイルを検討しておくことは重要でしょう。
家庭内別居を離婚前にしておくメリット
離婚前にあえて家庭内別居をしておくメリットとは何なのでしょうか。ここでは3つの観点でそのメリットを紹介していきます。
- 世間体を気にしなくてよい
- 冷静に思考する時間が取とれる
- 離婚後のシミュレーションができる
それでは1つずつ、見ていきましょう。
世間体を気にしなくてよい
メリットの1つ目は、世間体を気にしなくてよいということです。
住まいを別にして完全に別居してしまうと、どうしても近所や家族にその実態が伝わってしまいがちです。家庭内別居であれば、職場・親戚・子どもの学校など、様々な関係先に、その様子が伝わりにくくなります。
離婚に至った場合にも日常生活は続いていきます。離婚にあわせて全ての人間関係をリセットすることは稀でしょう。世間体を気にして別居に踏み切れなくても、家庭内別居であればできるという方も少なくありません。
冷静に思考する時間がとれる
メリットの2つ目は、冷静に思考する時間がとれるということです。
家庭内別居をすることで、夫婦間のストレスが緩和され、お互いに落ち着いて夫婦生活を考えるきっかけになります。もし離婚を考えているのであれば、相手の何が嫌だったのか、離婚する為にはどうすればよいのかを整理することができるでしょう。
離婚後のシミュレーションができる
メリットの3つ目は、離婚後のシミュレーションができるということです。
同居生活が長かった場合、離婚後の生活をリアルに想像することは難しいでしょう。家庭内別居で、家計や家事・コミュニケーションのあり方などをシミュレーションすることで、これまで気づいていなかったものが見えてくるかもしれません。
一度、離婚してしまえば元の状態に戻るハードルはかなり高くなってしまいます。後悔しない道を歩むために、家庭内別居で離婚後のシミュレーションができることは大きなメリットだと言えます。
家庭内別居から離婚するための5つの注意点
家庭内別居して、離婚に至るために理解しておくべきことはいくつかあります。ここでは、5つの注意点を紹介します。
- 家庭内別居は離婚事由にはならない
- 悪意の遺棄に当たらないようにする
- 異性との交際は認められない
- 子どもに対して丁寧に対応する
- 離婚の同意が取れない場合は別居も視野に入れる
それでは1つずつ、見ていきましょう。
家庭内別居は離婚事由にはならない
1つ目の注意点は、家庭内別居は離婚事由にならないということです。
夫婦が話し合ったうえで合意し離婚が成立する場合には、離婚の理由を問われることはありません。しかし、話し合いでなく裁判を利用して離婚をする場合には、民法に定められている離婚事由に照らして、夫婦の関係が破綻していることを証明する必要があります。
家庭内別居だけを理由に離婚が認められる可能性はかなり低いため、離婚事由にあたる他の事実を立証する準備が必要だということに注意しましょう。
悪意の遺棄に当たらないようにする
2つ目の注意点は、悪意の遺棄に当たらないようにすることです。
民法752条では、
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない
と定めています。これは、同居義務や扶助義務とも呼ばれます。お互いの同意なく家庭内別居を強行した場合には、これらの義務を放棄した悪意の遺棄だと捉えられ、離婚の責任を問われて離婚裁判などで不利になる可能性があります。
家庭内別居はできるだけ配偶者の合意をとったうえで行うようにし、悪意の遺棄に当たらないように注意しましょう。
異性との交際は認められない
3つ目の注意点は、異性との交際は認められないということです。
家庭内別居中に配偶者以外と交際したり、肉体関係をもったりすることは非常にリスクが高いと言えます。
家庭内別居中に明らかに夫婦関係が破綻しているとみなされる場合はその限りではありません。しかし、家庭内別居の実態や夫婦関係の実情は、第三者には把握しにくいため、夫婦関係の破綻を主張した場合でも認められないおそれがあります。
家庭内別居中だからといって、配偶者以外の異性との交際は認められないということに注意しましょう。
子どもに対して丁寧に対応する
4つ目の注意点は、子どもに対して丁寧に対応するということです。
子どもがいる場合、両親が同じ空間にいるにもかかわらず家事をわけ、コミュニケーションも取らない状態に混乱する可能性があります。家庭内別居は別居と比較して子どもへの負担が少ないという方もいるでしょう。
しかしながら、両親の板挟みになってしまい苦しむ可能性は否定できません。子どもには丁寧に対応し、できるだけ生活に影響を与えないように注意しましょう。
離婚の同意が取れない場合は別居も視野に入れる
5つ目の注意点は、離婚の同意が取れない場合は別居も視野に入れるということです。
離婚の同意が取れない場合は、別居にステップを進めることを考えてもよいかもしれません。別居することで一層距離をとり、お互いに冷静に話し合いを進められる可能性があります。また、余計に費用や労力がかかる別居を選択することで、あなたの離婚の意志が固いことを相手に伝えることにもなるでしょう。
しかし、お互いに合意が取れていない状態から家を出ていくと、トラブルになる可能性も否定できません。弁護士などの専門家の力を借りることも検討しましょう。
家庭内別居から離婚するまでのステップ
離婚の意志が固いものの、どのようにして進めていけばよいか分からないという方もいるでしょう。ここでは、以下の3つのステップを紹介します。
- 家庭内別居の開始
- 離婚の意志があることを伝える
- 弁護士に相談する
それでは1つずつ、見ていきましょう。
家庭内別居の開始
離婚するまでのステップ1つ目は、家庭内別居の開始です。
家庭内別居は話し合いによってスタートすることもあれば、自然発生的にスタートすることもあるでしょう。自然発生の場合は、自分がいま家庭内別居の状態にいるのかをしっかりと確認しておきましょう。
いずれの場合も、配偶者に距離を取りたいことを伝えて合意を取ることをお勧めします。家庭内別居期間中であるというお互いの認識をそろえておくことは、今後離婚までのステップを踏むうえで重要です。
離婚の意志があることを伝える
離婚するまでのステップ2つ目は、離婚の意志を伝えることです。
家庭内別居をする中で、自らに関係修復の意志がないかを確認しておきましょう。離婚の意志が固い場合は、配偶者にその気持ちを伝えるタイミングを探り、できるだけ冷静になれるシチュエーションでスタンスを明示しましょう。
離婚の意志を伝えたとき、配偶者が混乱したり、激高したりする可能性もあるため慎重に行わなければなりません。
弁護士に事前相談する
離婚するまでのステップ3つ目は、弁護士に事前相談することです。
夫婦の話し合いで離婚に至る場合もあれば、裁判まで発展する場合もあります。財産や親権など、さまざまな条件が複雑に絡み合うなかで双方の合意を目指すことは非常に難しく、専門家の助けが必要不可欠です。
先にあなたに離婚の意志がある場合には、早めに弁護士に相談してサポートを受けることで、準備段階から離婚に至るまでスムーズにことが運べるでしょう。
まとめ
本記事では、離婚に至る家庭内別居の行動やメリット、注意点などを紹介しました。長い人生を有意義に過ごすために、離婚を考える場合もあるかもしれません。一気に離婚に踏み切れないときには、家庭内別居を選択することもあるでしょう。
そのときには、家庭内別居や離婚に関してよく理解し、後悔しないように取り組みを進めていく必要があります。離婚を考え始めたらまずは、専門の弁護士に相談することをおすすめします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。