アスベストの救済給付の対象になるには?専門家が解説
2024年04月29日
アスベストの疾病で救済給付を受けたい
どのような救済給付を受けられるか知りたい
救済給付を受けるための方法を知りたい
アスベストによる疾病を発症した場合、労災保険制度、石綿健康被害救済制度、建設アスベスト給付金制度などの補償制度が用意されています。
そのうち石綿健康被害救済制度は労災保険では救済できない方に対して補償をする制度です。
労災保険給付の方が救済制度の給付よりも手厚い補償となっていますので、労災保険給付を請求できる方はそちらを請求するようにしてください。また、既に救済給付を受給している方でも労災保険給付をの要件を満たすケースがありますので、念のため、専門の弁護士にご相談ください。
本コラムでは各種補償制度のうち石綿健康被害救済制度の救済給付について説明をします。
アスベストの救済給付の対象は?
まずは救済給付の対象となるための要件について説明します。
救済給付はどのような制度?
石綿健康被害救済制度は労災保険に加入していなかったり、時効期間の経過によって労災保険給付を受けられないアスベストの被害者を救済する目的でつくられた制度です。
石綿健康被害救済制度には特別遺族給付金と救済給付があります。前者は労災保険の遺族補償給付が時効にかかった場合に請求する制度で、請求先は労働基準監督署(厚生労働省)です。他方、後者の救済給付の請求先は独立行政法人環境再生保全機構(環境省)です。
労災保険とは異なり、石綿ばく露作業に従事していたことは要件とされていないため、その点を立証できない方や間接的にアスベストにばく露した方も救済給付の対象となります。
このように石綿健康被害救済制度は労災保険の補完的な制度ですから、労災保険給付を請求できる方は救済給付の制度は利用しません。
対象となる疾病は?
救済給付の対象となる疾病は下記のとおりです。石綿肺やびまん性胸膜肥厚の場合は著しい呼吸機能障害を伴うことが要件となっており、その判定方法は下記リンク先のパンフレットをご覧ください。
中皮腫
肺がん
著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
アスベストの救済給付の対象に支給される給付
救済給付の対象として認定された場合には、下記の各給付の支給を受けることができます。以下一つずつ説明します。
医療費
療養手当
葬祭料
未支給の医療費と療養手当
救済給付調整金
特別遺族弔慰金
特別葬祭料
医療費
まず医療費の支給を受けることができます。
療養を開始した日以降に認定された疾病の医療を受けたときの自己負担額について支給を受けることができます。
なお、石綿健康被害医療手帳の交付を受けて医療機関の窓口で当該医療手帳を提示すると、窓口での自己負担分の支払いをせずに済みます。
なお、療養を開始した日とは、認定された疾病について初めて医療を受けた日、認定された疾病が著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺又は著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の場合は著しい呼吸機能障害が認められた日をいいます。
またこれらの日が認定申請日より3年以上前の場合には3年前の日を療養を開始した日とします。
医療費の支払いを行った日の翌日から2年以内
療養を開始した日から申請日の前日までの医療費については申請日から2年以内
療養手当
療養を開始した日の翌月から救済給付を支給する事由が消滅した日の属する月まで、月額103,870円の療養手当の支給を受けることができます。
2月、4月、6月、8月、10月、12月の各月に2か月分が支給されます。
葬祭料
救済給付を受けていた方が死亡した場合、葬祭を行う方は葬祭料として199,000円の支給を受けることができます。
死亡した日から2年以内
未支給の医療費と療養手当
療養を開始した日から救済給付を受けていた方の死亡日までに未支給であった医療費又は医療手当がある場合、遺族はその未支給分の支給を受けることができます。
死亡時に生計を同じくしていた、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(前から順に優先)
医療費の支払いを行った日の翌日から2年以内
療養を開始した日から申請日の前日までの医療費については申請日から2年以内
救済給付調整金
支給された医療費と療養手当、未支給の医療費と療養手当の合計金額が2,800,000円に満たない場合、遺族はその差額金額の支給を受けることができます。
死亡時に生計を同じくしていた、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(前から順に優先)
死亡日の翌日から2年以内
特別遺族弔慰金と特別葬祭料
被害者が救済給付の申請をせずに死亡した場合、その遺族は特別遺族弔慰金2,800,000円と特別葬祭料199,000円の支給を受けることができます。
死亡時に生計を同じくしていた、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(前から順に優先)
<中皮腫又は肺がんで死亡>
①平成18年(2006年)3月27日より前に死亡した場合
令和14年(2032年)3月27日まで
②平成18年(2006年)3月27日以降に死亡した場合
死亡日から25年以内
平成18年3月27日から平成20年11月30日までに死亡した場合は令和15年12月1日まで
<著しい呼吸機能障害を伴う、石綿肺又はびまん性胸膜肥厚で死亡>
①平成22年(2010年)7月1日より前に死亡した場合
令和18年(2036年)7月1日まで
②平成22年(2010年)7月1日以降に死亡した場合
死亡日から25年以内
まとめ
以上、石綿健康被害救済制度の救済給付について説明をしました。
アスベストの補償制度は要件を充足することの証明に難航するケースがありますし、本来は請求できるのに請求できないと誤解してしまっているケースもります。
できる限り速やかに適正な補償を受けるために、アスベストの補償に詳しい弁護士に無料でご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。