立ち退きの念書とは何か?主な内容・効力・弁護士に相談するメリットを徹底解説!

最終更新日: 2023年11月03日

立ち退きの念書とは何か?主な内容・効力・弁護士に相談するメリットを徹底解説!

  • 賃借人も立ち退き条件に納得したので念書を作成したいが、どのような内容を記載するべきか
  • 賃貸人に立ち退き条件を承諾してもらったが、合意した証拠を残したい
  • 立ち退きの念書を作成する場合、誰に相談したらよいのだろう

賃貸人・賃借人が交渉の結果、双方が立ち退き条件に合意しても、まだ安心はできません。

合意した立ち退き条件を誠実に履行してもらうため、賃貸人または賃借人は「念書」の作成を検討しましょう。

そこで本記事では、数多くの立ち退き交渉を担当してきた専門弁護士が、立ち退きの念書の記載方法、立ち退きの念書について弁護士へ相談するメリット等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料で相談することが可能です。

  • 賃貸人または賃借人が念書を作成する場合、一定の条件を満たせば法的効力が認められる
  • 念書には契約解除へ合意した旨、立ち退きの猶予期間・期限、立ち退き料等を明記する
  • 立ち退きの念書を弁護士に相談した方が、より完成度の高い書面が作成できる

立退料に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

立ち退きの念書とは

立ち退きの念書は賃貸人・賃借人が立ち退き条件に合意した場合、当事者の一方からその相手方へ提出する書類です。

賃貸人が合意内容を賃借人に約束するほか、賃借人が賃貸人へ合意内容に従い立ち退きを約束するため提出する場合もあります。

立ち退きのときに念書を作成すれば、主に次のような効果が期待できます。

念書の効果

内容

合意内容を証拠化できる

口約束だけでなく書面に残すと、後日トラブルが起き裁判等へ発展したとき、念書の作成者は言い逃れできなくなる。

合意した義務の履行を促せる

約束した内容を改めて念書で再認識させ、自分も念書通り義務を果たすので、相手方も誠実に義務を履行するよう促す効果が期待できる。

念書は裁判へ発展した場合に証拠ともなり得るため、念書を受け取った方は、誠実に立ち退きの条件を履行してくれると安心するはずです。

立ち退きの念書に記載する主な内容

立ち退きの念書は主に次のような内容を記載しておきましょう。

項目

内容

表題

「念書」や「誓約書」等

念書作成日

「令和〇年〇月〇日」と記載

前文

「私〇〇〇〇は、以下の内容を遵守・履行することを約束いたします。」等と記載

本文

  • 立ち退きの合意内容
  • 立ち退きの期限
  • 残存物の処分
  • 立ち退き料、引越し代金、敷金返還等について
  • (賃貸人が念書を提出する場合)立ち退き料等を振り込む金融機関名、口座種別、口座番号、口座名義人 等

念書作成者の表示

念書作成者側の住所、氏名を記載し押印

念書の日付や作成者の署名、捺印が漏れていると、いつ作成されたものか、本人が本当に作成したものかを疑われ、裁判で争う事態となったとき証拠として認められないおそれもあります。

提出する相手方を安心させるためにも、慎重な念書の作成が求められます。

契約解除の合意

賃貸人・賃借人が立ち退きに関する条件へ納得し、賃貸借契約の解除に合意した旨を明記します。

賃貸借契約の解除を記載するのは、たとえば後日、賃借人から「賃貸借はまだ存続しているから、立ち退きはしない。」と、態度を翻される可能性があるためです。

賃貸人が提出する場合は、「記載内容は証拠となるので態度を翻さないように。」という心理的なプレッシャーを賃借人に与えられます。

逆に賃借人が賃貸人へ念書を提出するときは、「念書に記載した通り立ち退きは行うので、安心してください。」という意思を表明できます。

立ち退きまでの猶予期間・期限

賃貸物件の明け渡し期限は「令和〇年〇月〇日」と日時を具体的に記載しましょう。

立ち退き条件には、賃借人が「この位の猶予期間があれば無理なく立ち退きできる。」と主張し、合意した内容も含まれているはずです。

そのため、念書を受け取った側は立ち退き条件で合意した期限と正確に合っているのか、しっかりと確認してください。

明け渡しの猶予期限が合意内容と異なっていると、たとえば賃貸人の場合は建物の取り壊しのスケジュール、賃借人の場合は引っ越しスケジュールへ影響が出てきてしまいます。

破棄・処分

賃借人が立ち退きした後に残った「残存物」の処分をどうするかも明記しましょう。

立ち退きをする場合でも、賃借人は自分の所有分をしっかりと処分する必要があります。しかし、賃借人がうっかり忘れる等して、賃貸物件に残存物として残ってしまうケースもあります。

このような事態も想定し、賃貸人が処分するのか賃借人から取りに来てもらうか等を決めておきます。

もしも、本来賃借人が処分する必要のあった残存物を、賃貸人が代わって行うと決めたならば、「残存物の廃棄・処分した費用は賃借人に対して請求する。」という規定も忘れずに盛り込んでおきましょう。

立ち退き料

立ち退き交渉で合意した立ち退き料・引っ越し代金等を明記します。

立ち退き金額は、特に当事者間でトラブルが発生する可能性の高い内容なので、正確な金額の記載が必要です。

なお、立ち退き金等の支払時期は明け渡しと同時に履行すると明記しても構いません。ただし、支払日を事前に決めておいた方が、賃貸人・賃借人双方とも準備を進めやすいはずです。

支払方法に関しては、立ち退き料等を振り込む「金融機関名」「口座種別」「口座番号」「口座名義人」を明記します。

敷金返還

敷金の返還について記載します。敷金は賃貸物件を借りるときに賃貸人へ預ける保証金なので、賃借人が部屋を汚損し、原状回復費用として差し引かれない限り、基本的に全額返還されます。

ただし、立ち退き理由が賃貸物件の取り壊しだった場合、賃借人の原状回復の必要性は薄いので全額返還されるはずです。

後日、敷金に関してトラブルが起きないよう、敷金の返還内容についても明記しておきます。

立ち退きの念書の効力はあるのか

念書には、相手方に合意内容を再確認させる他、トラブルが起きた場合の証拠となる効果もあります。

念書は賃貸人・賃借人いずれか一方の意思表示を書類にしたものであり、作成した側だけ署名・捺印がなされます。

当事者の合意という意味では、互いに署名・捺印し契約を取り交わした合意書(契約書)より弱く、確実な法的効力があるとはいえない点に注意しましょう。

ただし、念書を作成すれば立ち退き料や立ち退き期限等、取り決めた内容を明らかにできます。

そのため、今後当事者間でトラブルが発生して裁判を行った場合、立ち退き交渉の事実を記載した証拠にもなるのです。

立ち退きの念書を弁護士に相談するメリット

立ち退きの念書を作成する場合も、弁護士に相談しアドバイスやサポートを受ければ完成度の高い書類が作成できるはずです。

弁護士に相談・交渉手続きを依頼するメリットは次の通りです。

  • 代理交渉
  • 合意書の作成
  • 手続きの代行

それぞれのメリットについて解説しましょう。

代理交渉

賃貸人または賃借人が早い段階から弁護士に相談し交渉を依頼していた場合は、依頼者の代理人として交渉を進めてくれます。

条件がまとまり合意に達したら、内容を相手方に再確認させ、合意の証拠を残すという意味から、弁護士から念書の作成を勧められるかもしれません。

交渉の初期段階から弁護士が代理人として参加しているなら、代理交渉をした過程で合意した内容を基に、詳細で正確な念書を作成し相手方へ送付できるはずです。

一方、当事者同士が立ち退きに合意後、念書について相談があれば、記載ポイントや注意点を指摘してくれることでしょう。

合意書の作成

弁護士は念書が裁判の証拠になり得ても、法的効果は合意書(契約書)よりも薄いという事実を理解しています。

そこで、立ち退きの手続きをより安全かつ確実に進めるため、当事者双方が署名・捺印する合意書(契約書)の作成を提案するはずです。

合意書(契約書)は双方で署名・捺印し、基本的に2部作成して賃貸人・賃借人それぞれが1部ずつ保管します。

そのため、念書のように賃貸人・賃借人いずれか一方の意思表示ではなく、双方が立ち退き内容に納得・合意し、義務の履行を約束した事実が証明されます。

手続きの代行

弁護士へ立ち退きに関する相談を行い、サポート役を依頼すれば、相手方との立ち退き交渉はもちろん、念書や合意書(契約書)の作成等も、代わって対応してくれます。

交渉内容や念書・合意書の記載内容は、しっかりと依頼者が確認し、弁護士と話し合う必要もありますが、立ち退きに関する手続きの大部分を弁護士へ委任できます。

煩雑な手続きや書類の準備から解放される他、手続きの過程でトラブルが起きた場合の対応も任せられるので安心です。

立ち退きの念書なら専門弁護士に相談しよう!

今回は多くの立ち退き交渉に携わってきた専門弁護士が、念書に記載する内容や法的効力の有無、弁護士に相談するメリット等を詳しく解説しました。

念書は裁判となった場合、証拠として扱われる可能性があるので、弁護士の助言の下で慎重に作成した方がよいでしょう。

立ち退き交渉を円滑に行いたいなら、弁護士のサポートを得て、相手方との交渉成立を目指してみてはいかがでしょうか。

立退料に強い弁護士はこちら

立退料のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。