実家依存症を理由に離婚はできる?夫婦仲への影響から慰謝料まで弁護士が解説
最終更新日: 2023年02月24日
- 実家依存症を理由に離婚はできるのか
- 夫や妻が実家依存症かどうかを確かめたい
- 実家依存症で離婚したら慰謝料は請求できるのか
実家依存症が、夫婦関係を破綻に導いたというケースは珍しくありません。結婚して自分たちだけの家庭を築いていくつもりでいたのに、パートナーが実家に入り浸っている、実家を最優先にすることなどがあると、離婚を考えてしまうこともあるでしょう。
そこで本記事では、男女問題や離婚問題に詳しい弁護士が、実家依存症で離婚を考えたときの知識や手順、慰謝料について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 実家依存症を理由にした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 夫や妻が実家依存症かどうかを確かめたい場合は、本記事の「チェック方法は」の一覧に5個以上該当するかを確認
- 実家依存症で慰謝料がもらえるかどうかは、実家依存症によりパートナーが行った行動で、自分が苦痛・負担を負ったといえるかどうかがポイント
実家依存症とは?離婚を考えたときのチェック方法
度を越した実家依存症は、夫婦関係に影響を及ぼす恐れもある問題です。そもそも実家依存症とはどのような状況を指すのでしょうか。ここでは、実家依存症とは何かと、判断するためのチェック項目を紹介します。
実家依存症とは
実家依存症とは、結婚している夫や妻が精神的や経済的に自立できず、実家に頼りきりになっている状態を指します。事あるごとに自分の両親に相談する、実家に頻繁に出入りするなどのケースが多く見られます。
家庭より実家の意見を優先し、本来築くべき家庭が疎かになっていることも少なくありません。夫婦のどちらかが実家依存症になると、夫婦関係にもさまざまな弊害が起こります。
チェック方法は
実家依存症は、自覚が難しいという特徴があります。パートナーが実際に実家依存症であるかどうかを見極めるために、以下の項目に行動が当てはまるかどうかチェックを行ってみましょう。
- 週に2回以上、実家と電話やLINEなどで連絡をとる
- 月に1回以上、親を自宅に招いている
- 家事や育児を親に手伝ってもらうことが多い
- 夫(妻)が出張のときは実家に泊まる
- 実家の親から経済的な援助がある
- 悩みごとは、夫(妻)や友人よりも母親や父親にする
- 「〇〇とお母さんが言っている」が口癖だ
- 夫(妻)よりも親の意見のほうが正しいと思うことが多い
- すぐ実家に行ける距離に住みたい、遠くに住むことは考えられない
- 実家では父親の影が薄く、多くの場合、母親が決定権を握っている
当てはまる項目が多いほど、実家依存度が高い傾向にあります。パートナーの行動が5個以上当てはまる場合は、実家依存症になっている可能性があるでしょう。
実家依存症の末路は離婚?夫婦に与える影響とは
実家と仲がよいことは、決して悪いことではありません。しかし、実家依存症は程度によって離婚問題にまで発展してしまうことがあります。一体、実家依存症は夫婦にどのような影響を与えるのでしょうか。
夫婦関係に亀裂が入る
実家依存症になっている場合、実家の両親に頼ってしまうばかりに本来自分たちで行うべき家事や育児、パートナーの相手がおろそかになりがちです。
また、実家から経済的支援を継続的に受けていた場合、自分たちだけでは家計が成り立たない、家計が管理できないといったケースも少なくありません。
何か問題が起こるごとに母親や父親に相談し、パートナーの意見を聞き入れなくなることで、夫婦仲がこじれてしまうこともあります。
パートナーからみると、自分よりも両親を尊重しているように見え、「一緒に家庭を築いていく気がないのでは」という不信感につながってしまうこともあるでしょう。
義両親と仲が悪くなる
自分の実家にばかり行き来している実家依存症の人は、義両親との関係が悪くなることもあります。距離が遠いなど物理的な違いがないにもかかわらず、実家にはよく顔を出すのに義実家には行かないなどの差を感じると、相手方の両親も面白く思わないでしょう。
特に子どもがいる場合、義実家との関係の悪化に拍車をかけてしまうことがあります。「孫を取られた」と義母や義父が感じてしまうケースも考えられます。
親が死去したときに生活に支障が出る
実家依存症の人は、両親に頼ることで自分の経済面や精神面を安定させていることが多く見られます。両親が健在であれば今の状態を維持できますが、高齢になるといつ何が起こるか分かりません。
母親や父親が病気で入院したり、万が一死去したりした場合、頼るところがなくなり生活が一変してしまいます。たとえば精神的に頼りきっていた場合、トラブルが起こったときの相談先が思いつかず、パニックに陥る恐れもあります。
手助けしてもらっていた育児や家事も、すべて自分自身で行わなければなりません。頼りにしていたころとは違い、生活リズムが崩れて大きな負担を感じることがあるでしょう。
離婚する前に!実家依存症を克服させる方法
実家依存症を放置しておくと、夫婦仲に亀裂が入ってしまうことも少なくありません。離婚を考える前に、パートナーを実家依存症から抜け出させる方法を試してみてはいかがでしょうか。ここでは、パートナーの実家依存症を克服させる方法を紹介します。
自覚を促す
周囲からは実家依存症にしか見えなかったとしても、本人はそのつもりがないということは往々にしてあります。まずは、パートナーが実家依存症だと自覚することが大切です。
実家依存症のチェック結果をみせる、夫婦で真剣に話し合ってみるなどの方法で、実家依存症の自覚を促してみてはいかがでしょうか。依存していることに本人が気づけば、脱却するための行動を起こすことができます。
実家の遠くに引っ越す
実家依存症の人は実家の近くに住んでいるケースが多いため、実家と物理的に距離を離す方法も考えてみましょう。頻繁には出入りできない場所に引っ越すことで、簡単には家事や育児で頼ることができなくなります。
引越しをパートナーが嫌がる可能性も考えられますが、「近くに住んでいると、つい甘えすぎてしまう」など、あなたが不快に思っている気持ちを言葉にして伝えてみるとよいでしょう。
居場所を増やす
実家依存症の人は、暇で行く場所もないため実家に出入りしてしまうというケースも少なくありません。今の生活スタイルの中で、パートナーの居場所を増やす方法はないか考えてみましょう。
たとえば、アルバイトやパートをする、趣味を持つ、サークルに入る、お稽古事をはじめるといったことです。両親以外の人付き合いを増やしていくと、実家依存から抜け出せる可能性が高まります。
交友関係が広がれば、身の回りに起こった出来事を両親だけではなく友人や同僚に相談するようになるなど、変化が訪れることもあるでしょう。
親に理解してもらう
しょっちゅう実家に出入りしていたのに急に顔を見せなくなると、親としては「何か起こったのかしら」と不安に思うこともあるでしょう。実家依存症を克服するためには、母親・父親に理解してもらうことも大切です。
「夫(妻)が実家に行くなと言っている」などと伝え方を間違えると、両親に誤解を与えてしまいかねません。余計な軋轢を生まないためにも、きちんと説明しておくことをおすすめします。
「自立を目指したいので実家に行く頻度を減らす」「自分たちの力で、問題を解決できるようになりたい」「今の自分たちを見守ってほしい」などと、気持ちを伝えるとよいでしょう。
実家依存症を理由に離婚はできる?
いくら改善策を講じても、実家依存の程度が深刻で、離婚を決意することもあるでしょう。ここでは実家依存症を理由に離婚できるのかを解説します。
まず、夫婦間で離婚に対する合意が取れていれば、協議のうえで離婚が可能です。しかし実家依存症の場合は自覚が難しいことも多く、離婚に合意しないことも少なくありません。
パートナーが離婚を認めていない場合は、民法770条1項に定める5つの法定離婚事由が必要です。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
実家依存が原因で離婚する場合は、2の「悪意の遺棄」あるいは5の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかがポイントです。夫婦は、同居して協力扶助を行う義務があると、民法第752条で定められています。
たとえば、実家依存症の妻が実家に入り浸り別居状態になった、または実家から自宅に戻らないうえに家事を全くせず、本人に改善する意志がないなどの場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」や「悪意の遺棄」に該当するとみなされる可能性があります。
実家依存症が原因で離婚したら慰謝料はもらえる?
パートナーの実家依存症が原因で離婚した場合、慰謝料をもらうことは可能なのでしょうか。また、仮に慰謝料を請求できた場合、相場はいくらなのか気になる人もいるでしょう。ここでは、実家依存が原因で離婚する場合の慰謝料とその相場について解説します。
慰謝料がもらえるケース
実家依存症で慰謝料がもらえるかどうかは、実家依存症によりパートナーが行った行動で、自分が苦痛・負担を負ったといえるかどうかがポイントです。
慰謝料とは、精神的な苦痛を被ったときに加害者に請求する金銭のことをいいます。離婚するときに慰謝料が請求できるのは、不貞行為や家庭内暴力、悪意の遺棄などがあった場合に限られます。
そのため、妊娠・出産など正当な理由があって実家に泊まっているだけとみなされるケースでは、慰謝料の請求だけでなく離婚自体も認められにくいでしょう。
反対に、実家依存症になっているパートナーが、一方的に正当な理由なく同居や協力の義務を拒否し続けている場合であれば、慰謝料が請求できる可能性があります。
また夫婦間の家族に対する考え方の違いを理由に離婚する場合は「性格の不一致」にあたるため、慰謝料の請求は難しいといえます。
慰謝料の相場
実家依存症により、悪意の遺棄に該当するような明確な家庭放棄がみられたことによる離婚で慰謝料を請求する場合、相場は約50万~300万円程度と大きく幅があります。
相場はあるものの妥当な慰謝料の金額については、離婚原因となった不法行為の悪質性や婚姻期間の長さ、子どもの有無や人数などの要素も影響するため、一概にいくらとはいえません。
パートナーの実家依存症が、自分にどの程度の精神的・肉体的負担を負ったかによって金額が変わることを念頭に置いておきましょう。
まとめ
今回は、男女問題や離婚問題に詳しい弁護士が、実家依存症で離婚を考えたときの知識や手順、慰謝料について詳しく解説しました。
実家依存症は、人によって程度やケースが異なるため、自分では離婚事由になりえるのか判別がつかないこともあるでしょう。夫婦間で問題が解決できないと思ったときは、離婚問題の経験が豊富な法律の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。