離婚調停の申立をしたい方へ。手続きの流れ・費用・期間を解説
最終更新日: 2025年11月22日

配偶者との話し合いがうまくいかず、離婚問題が解決に進まない状況にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、感情的な対立や、一方的な拒否によって話し合いが困難になっている場合、家庭裁判所で行われる「離婚調停」が有効な解決手段となることがあります。
この記事では、離婚調停とはどのような手続きなのか、具体的にどのように進んでいくのか、またどのくらいの費用や期間がかかるのかといった全体像をわかりやすく解説します。この情報が、離婚問題の解決に向けて新たな一歩を踏み出すきっかけとなり、読者の抱える不安を少しでも和らげられることを願っています。
離婚調停とは?協議離婚や裁判離婚との違いを理解しよう
離婚調停とは、夫婦間の話し合いで離婚の合意に至らない場合や、そもそも話し合いが困難な場合に、家庭裁判所の調停委員を介して離婚の成立を目指す手続きです。このセクションでは、離婚調停がどのようなものなのかを具体的に説明し、当事者間の合意による「協議離婚」や、裁判所の判決による「裁判離婚」とどのような点で異なるのかを比較しながら、離婚調停の位置づけについて深く掘り下げていきます。
離婚調停の概要と目的
離婚調停とは、家庭裁判所において、男女各1名の調停委員が夫婦の間に入り、離婚や離婚条件について話し合いを進める手続きのことで、正式には「夫婦関係調整調停」といいます。調停委員は、夫婦双方から意見を聞き取り、それぞれにとって納得のいく解決策を探る手助けをします。これにより、感情的になりがちな離婚問題を、冷静かつ円満に解決へと導くことを目的としています。
離婚調停の主な目的は、単に離婚の合意を形成することだけではありません。子どもに関する親権者の指定、養育費の金額と支払い方法、子どもとの面会交流のルール、夫婦の共有財産をどのように分けるかといった財産分与、さらには慰謝料や年金分割など、離婚に伴うさまざまな条件についても、当事者双方が納得できる合意点を見出すことにあります。
調停委員は、中立的な立場から客観的な視点で助言や提案を行い、夫婦の意見の調整を図ります。ただし、調停はあくまで話し合いの場であり、裁判官が強制的に判決を下すわけではありません。最終的に合意に至らなければ、調停は不成立となることもあります。
協議離婚・裁判離婚との違い
日本の主な離婚方法には、「協議離婚」「離婚調停」「裁判離婚」の3種類があります。それぞれの違いを理解することで、ご自身の状況に合った選択ができるようになります。まず、最も一般的な「協議離婚」は、夫婦間の話し合いだけで離婚に合意し、役所に離婚届を提出することで成立する手続きです。費用もほとんどかからず、最も迅速に解決できる方法といえます。
一方、「裁判離婚」は、調停で合意に至らなかった場合に、家庭裁判所に訴訟を提起し、裁判官が法的な証拠に基づいて離婚の可否や条件を判断する手続きです。裁判官による判決は法的拘束力を持ちますが、時間も費用もかかり、当事者間の精神的負担も大きくなります。そして、原則として裁判離婚に進むためには、離婚調停を経なければならない「調停前置主義」というルールがあります。
離婚調停は、これら協議離婚と裁判離婚の中間に位置する手続きです。手続きの場所は家庭裁判所で、調停委員という第三者が関与し、冷静な話し合いを促します。費用は自分で申し立てる場合、数千円から1万円程度の実費で済み、期間は平均で半年から1年程度が目安です。合意内容は「調停調書」という形で残され、これは裁判の判決と同じく法的拘束力を持つため、約束が守られなかった場合には強制執行の手続きをとることも可能です。協議離婚のように一方的な合意書では強制力が弱いというデメリットも、調停を利用することで解消されます。
離婚調停で話し合われる内容
離婚調停では、離婚そのものに加えて、それに付随する多岐にわたる問題について話し合いが行われます。まず最も根本的な議題となるのは、「夫婦の一方または双方が離婚に合意するかどうか」です。この点で合意できなければ、それ以外の条件について話し合うことはできません。しかし、多くのケースでは、離婚の意思は固まっているものの、具体的な条件面で意見が対立しているため調停を申し立てることになります。
離婚に付随する条件として、特に重要なのは子どもの問題です。具体的には、「親権者をどちらにするか」「子どもの養育費の金額と支払い方法(いつからいつまで、毎月いくら支払うのか)」「子どもと離れて暮らす親との面会交流の頻度やルール(月に何回会うのか、宿泊の有無など)」といった点が話し合われます。子どもの健全な成長のために何が最善かを調停委員が双方に助言しながら、合意形成を促します。
また、お金に関する問題も重要な議題です。結婚期間中に夫婦で築き上げた財産をどのように分けるかという「財産分与」の割合や対象範囲、不貞行為(不倫)やDV(家庭内暴力)があった場合の「慰謝料」の金額、そして離婚後の生活に関わる「年金分割」の割合などが話し合われます。これらの話し合いの場で合意に至った内容は、最終的に法的な効力を持つ「調停調書」に記載され、将来のトラブル防止にもつながります。
離婚調停を申し立てるべきケースとは?
このセクションでは、どのような状況で離婚調停の利用が推奨されるのかを解説します。当事者同士の話し合いが行き詰まった様々なケースを具体的にご紹介することで、読者がご自身の状況と照らし合わせて理解できるよう努めます。
当事者間での話し合いが難しい・進まない場合
夫婦間で直接のコミュニケーションが困難な状況では、家庭裁判所で行われる離婚調停が非常に有効な解決策となります。例えば、感情的になってしまい冷静に話し合いができないケースや、相手が威圧的でご自身の意見を伝えられないといった状況が考えられます。また、配偶者からのDV(家庭内暴力)やモラハラ(精神的嫌がらせ)があり、直接顔を合わせることが怖い、あるいは危険であるといった場合も少なくありません。
このような状況下でも、離婚調停であれば、調停委員という中立的な第三者が間に入ってくれます。これにより、ご自身が直接相手と顔を合わせることなく、冷静かつ安全に話し合いを進めることが可能です。調停委員が双方の意見を個別に聞き取り、伝えてくれるため、感情的な対立を避けつつ、建設的な協議の場を設けることができます。
離婚の条件(親権・養育費など)で合意できない場合
夫婦間で離婚すること自体には同意しているものの、具体的な条件面でどうしても折り合いがつかないというケースも多く見られます。特に、お子さんの親権をどちらが持つかで意見が対立している、養育費の金額や支払い方法について合意に至らない、夫婦の財産分与で納得できない点がある、といった金銭や子どもに関わる問題は、当事者同士での解決が困難になりがちです。
離婚調停では、調停委員がこのような具体的な争点に対して、法的な相場や過去の解決事例を踏まえたアドバイスを提供してくれます。例えば、養育費の算定には裁判所のウェブサイトで公開されている「養育費算定表」が用いられることが一般的です。調停委員がこれらの客観的な基準を示すことで、当事者だけでは見つけられなかった妥協点や、より現実的な解決策が見つかる可能性が高まります。
相手が離婚自体を拒否している場合
ご自身が離婚を強く望んでいるにもかかわらず、相手方が断固として離婚を拒否しているという状況も少なくありません。このような場合、ご自身から離婚調停を申し立てることで、第三者である調停委員を通じて、ご自身の離婚したいという強い意思を相手方に伝えることができます。調停委員は、夫婦関係の破綻状況などを踏まえ、中立的な立場から相手方を説得してくれることもあります。
たとえ調停で相手が離婚に同意せず不成立に終わったとしても、調停を申し立てる意義は十分にあります。なぜなら、日本の法律では、離婚裁判に進むためには、原則として離婚調停を先に経る必要があるという「調停前置主義」が定められているからです。つまり、将来的に裁判での解決を目指す場合であっても、離婚調停を申し立てておくことは、次のステップに進むための必要不可欠な手続きとなります。
【5ステップ】離婚調停の申立てから成立までの流れ
離婚調停を申し立ててから、実際に調停が終了するまでにはいくつかの段階があります。このセクションでは、離婚調停の手続きを、申し立ての準備から調停の終了まで、具体的な5つのステップに分けて解説します。各ステップでどのようなことをするのか、何に注意すべきかを知ることで、読者がご自身の状況に合わせた具体的な行動をイメージしやすくなります。一つひとつのステップを順に見ていきましょう。
Step1:申立ての準備(必要書類・費用)
離婚調停を申し立てる最初のステップは、必要な書類を集め、裁判所に納める費用を準備することです。これらは、調停手続きをスムーズに進める上で欠かせない事前準備となります。
離婚調停申立書と添付書類
離婚調停を申し立てるには、いくつかの書類が必要です。まず、「夫婦関係調整調停申立書」は、家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。この申立書は申立人用と相手方用の計2部用意し、離婚を求める理由や希望する離婚条件などを具体的に記載します。事実を客観的に、そして希望条件を明確に書くことが重要です。
次に、「夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)」も必須の書類です。これは本籍地の市区町村役場で取得できます。年金分割を希望する場合は、「年金分割のための情報通知書」も必要となり、これは年金事務所で発行してもらえます。その他、養育費や財産分与を主張する際には、収入に関する資料(源泉徴収票や給与明細のコピーなど)や財産に関する資料(預貯金通帳のコピー、不動産の登記事項証明書など)なども添付書類として提出を求められることがあります。これらは自身の主張を裏付ける重要な証拠となりますので、抜け漏れなく準備しましょう。
申立てにかかる費用(収入印紙・郵便切手)
離婚調停の申立てには、収入印紙と郵便切手という2つの実費がかかります。申立手数料として必要な収入印紙は1,200円分です。これは申立書に貼り付けて提出します。
また、裁判所が当事者へ書類を送付するために使用する郵便切手も必要です。これは数千円分となることが一般的ですが、具体的な金額や切手の組み合わせは、管轄する家庭裁判所によって異なります。申し立てを行う前に、必ず該当の裁判所のウェブサイトで確認するか、電話で問い合わせて正確な情報を把握するようにしましょう。これらの費用は弁護士に依頼した場合の費用とは別にかかるものです。
Step2:家庭裁判所への申立て
離婚調停の申立て準備が整ったら、次はいよいよ家庭裁判所へ書類を提出するステップです。ここでは、どこに、そしてどのように申立てを行うのか、具体的な方法について解説します。
どこの裁判所に申し立てる?(管轄裁判所)
離婚調停を申し立てる際、まず重要なのが「どこの家庭裁判所に申し立てるか」という点です。原則として、相手方(配偶者)の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります。例えば、あなたが東京に住んでいても、配偶者が大阪に住んでいれば、申立て先は大阪家庭裁判所になります。
もし相手方の住所が不明な場合は、夫婦が最後に一緒に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所が申立て先となることがあります。また、夫婦双方の合意があれば、例えば申立人の住所地を管轄する家庭裁判所など、別の家庭裁判所に申し立てることも可能です。これを「合意管轄」といい、この場合は合意書を提出する必要があります。管轄裁判所は、裁判所のウェブサイトで調べたり、最寄りの家庭裁判所に問い合わせたりすることで確認できます。
申立書の提出方法(窓口・郵送)
準備した申立書類と費用を家庭裁判所に提出する方法には、「窓口持参」と「郵送」の2つがあります。ご自身の状況や都合に合わせて選択してください。
「窓口持参」の場合、裁判所の受付時間内に直接出向いて提出します。書類に不備があった場合でも、その場で職員から指摘を受け、修正できるため安心です。特に初めて申立てを行う方にとっては、疑問点を直接質問できるメリットも大きいでしょう。一方、「郵送」で提出する場合は、書類一式を管轄の家庭裁判所に送付します。この際、郵便事故を防ぐためにも、書留郵便など記録が残る方法を利用することをおすすめします。また、日中に連絡が取れる電話番号を申立書に記載しておくことも忘れないでください。裁判所からの連絡がスムーズに進むため、手続きが円滑になります。
Step3:第1回調停期日
離婚調停の申立てが家庭裁判所で受理されると、いよいよ第1回目の調停期日が設定されます。この段階では、裁判所からの通知によって期日や場所が指定され、当日の流れも具体的に案内されますので、事前に心の準備をしておくことが大切です。
ここでは、裁判所からの呼出状が届いてから、実際に調停室でどのようなことが行われるのか、その具体的なイメージを掴んでいただけるように詳しく解説します。
裁判所からの呼出状が届く
離婚調停の申立てを行ってから約1週間から2週間ほど経過すると、家庭裁判所から第1回調停期日の日時と場所が記載された「呼出状(よびだしじょう)」が、申立人であるあなたと相手方の双方に郵送で届きます。
通常、第1回目の調停期日は、申立てから約1ヶ月後から1ヶ月半後の日程が指定されることが多く、この呼出状に記載された日時と場所に合わせて、指定された家庭裁判所へ出頭する必要があります。呼出状が届いたら、必ずその内容を確認し、期日に遅れないように準備を進めてください。
調停当日の流れと聞かれること
第1回調停期日当日には、家庭裁判所へ出向くことになります。まず、申立人と相手方はそれぞれ別の待合室で待機し、顔を合わせることがないように配慮されています。これは、当事者同士が直接対面することによる感情的な衝突を避けるための重要な措置です。指定された時間になると、調停委員から交互に調停室に呼ばれ、それぞれ30分程度の聞き取りが行われます。
調停室に入ると、まず調停委員から、今後の手続きの流れや調停の目的についての説明があります。その後、申立人であるあなたからは、なぜ離婚をしたいのかという理由や、親権、養育費、財産分与など、具体的にどのような条件を希望するのかといった点が詳細に聞かれます。一方、相手方には、あなたの申立てに対する意見や、自身の考えなどが尋ねられます。このやり取りを何度か繰り返しながら、当事者双方の主張や希望を調停委員が把握し、調整を図っていきます。
1回の調停にかかる時間は、全体でおおよそ2時間程度が目安となります。その間に、調停委員が双方の意見を公平に聞き取り、解決の糸口を探していくことになります。感情的にならず、冷静に自分の意見を伝えることが大切です。
Step4:2回目以降の調停期日
第1回の調停期日で話し合いが終わらなかった場合、2回目以降の調停期日が設けられます。これらの期日は、約1ヶ月に1回のペースで開かれるのが一般的です。調停は通常、2回から6回程度行われることが多いですが、案件の複雑さや当事者間の合意状況によっては、さらに回数を重ねることもあります。
2回目以降の調停では、第1回で確認された申立人の希望や相手方の意見を踏まえ、具体的な争点に焦点を当てて話し合いが進められます。例えば、親権、養育費の金額、面会交流の頻度、財産分与の対象や割合といった事項について、より深く議論されます。調停委員は、双方から提示された意見や証拠を基に、法的な観点や過去の事例なども考慮しながら、解決策や妥協案を探っていきます。合意形成に向けて、当事者間の意見の隔たりを埋めるための調整役を担うのが調停委員の重要な役割です。感情的な対立が深まりがちな離婚問題において、中立的な第三者が間に入ることで、冷静な話し合いの継続を目指します。
Step5:調停の終了(成立・不成立・取下げ)
離婚調停は、一度の話し合いで終わることは稀で、複数回にわたって期日が設けられるのが一般的です。その最終的な結末には、主に「成立」「不成立」「取下げ」の3つのパターンがあります。ここでは、それぞれの結末がどのような状況を意味し、その後にどのような手続きにつながるのかを詳しくご説明します。
調停が成立すれば夫婦間の合意によって離婚が成立し、不成立となれば次のステップとして離婚裁判を検討することになります。また、申立人が途中で申し立てを取りやめることも可能です。それぞれのパターンを理解することで、ご自身の状況に応じた今後の見通しを立てやすくなるでしょう。
調停が成立した場合の手続き
夫婦双方の話し合いによって、離婚やその条件について合意に至った場合、調停は「成立」となります。調停が成立すると、その合意内容が詳細に記載された「調停調書」という書類が家庭裁判所によって作成されます。この調停調書は、裁判の判決と同じく法的な拘束力を持つ非常に重要な書類です。たとえば、調停調書に記載された養育費や財産分与の支払いが滞った場合、強制執行の手続きをとることが可能になります。
調停成立後、申立人は調停成立日から10日以内に、お住まいの市区町村役場に「離婚届」と、調停調書の謄本(とうほん)を添付して提出することで、法的に離婚が成立します。この手続きを怠ると、せっかく調停が成立しても法律上の離婚は認められませんので、忘れずに提出するようにしてください。また、届出の際には、印鑑や本人確認書類なども必要になる場合がありますので、事前に役場に確認しておくとスムーズです。
調停が不成立になった場合は離婚裁判へ
夫婦の意見が大きく対立し、調停委員がいくら調整しても合意の見込みがないと判断された場合、あるいは相手方が調停への出頭を拒み続けた場合などには、調停は「不成立」として終了します。調停が不成立となった後も離婚を強く望む場合は、次の法的手段として「離婚訴訟(離婚裁判)」を家庭裁判所に提起することになります。
離婚調停が話し合いによる解決を目指す場であるのに対し、離婚裁判は、裁判官が法的な観点から提出された証拠に基づいて離婚の可否や離婚条件(親権、養育費、財産分与など)について判決を下す場です。つまり、当事者の合意がなくても、裁判官の判断によって離婚が成立する可能性があるということです。裁判では専門的な法律知識が求められるため、弁護士に依頼することが一般的になります。
離婚調停にかかる費用と期間の目安
離婚調停を進めるにあたって、多くの方が気になるのは「どのくらいの費用がかかるのか」「どれくらいの期間で解決するのか」という点ではないでしょうか。このセクションでは、ご自身で手続きを進める場合と弁護士に依頼する場合とで費用がどのように異なるのか、そして調停が始まってから終わるまでのおおよその期間について、具体的な目安を詳しく解説していきます。
費用の内訳:自分で申し立てる場合
弁護士に依頼せず、ご自身で離婚調停を申し立てる場合にかかる費用は、比較的少なく抑えることができます。主な費用としては、申立て時に裁判所に納める「収入印紙代」が1,200円、そして裁判所が当事者間の連絡に使う「郵便切手代」が数千円程度です。郵便切手代は、管轄する家庭裁判所によって金額や内訳が異なるため、事前にウェブサイトなどで確認しておくと安心です。
これらの実費に加え、戸籍謄本などの必要書類を取得するための費用(数百円程度)や、裁判所へ出向く際の交通費などがかかります。弁護士費用が発生しないため、これらを合わせても総額で1万円程度に収まることがほとんどです。費用を抑えたい方にとっては、ご自身で申し立てることは有効な選択肢と言えるでしょう。
弁護士に依頼する場合の費用相場
離婚調停を弁護士に依頼する場合、費用はご自身で手続きを進める場合と比べて高額になります。弁護士費用は主に、初回の相談時に発生する「相談料」、依頼時に支払う「着手金」、調停が成立した場合に支払う「報酬金」、そして戸籍謄本取得費用や交通費などの「実費」で構成されます。
相談料の相場は30分あたり5,000円から1万円程度が一般的です。着手金は20万円から40万円程度、報酬金も同額程度が目安となります。さらに、財産分与や慰謝料などで経済的利益を得られた場合は、その利益の10%から20%程度が報酬に加算されるケースもあります。法律事務所や調停内容の複雑さによって費用は大きく異なるため、複数の事務所から見積もりを取り、内訳をよく確認することが大切です。
費用はかかりますが、弁護士に依頼することで、書類作成の負担軽減、法的なアドバイス、調停への同席による精神的なサポート、そして希望条件をより有利に進めるための交渉など、多くのメリットを享受できるため、費用の効果を考慮して検討することをおすすめします。
調停が終了するまでの期間と回数
離婚調停が始まってから終了するまでの期間は、ケースによって様々ですが、一般的には「半年から1年程度」が目安とされています。調停期日は月に1回程度のペースで開かれることが多く、平均すると2回から6回程度の期日を経て解決に至るケースが多いです。
しかし、親権や養育費、財産分与など、争点が多く複雑な案件の場合や、当事者間の意見対立が激しい場合は、1年以上にわたって調停が続くことも珍しくありません。お子さんのいるご家庭では、面会交流の取り決めなどでさらに時間を要することもあります。調停の期間は当事者双方の協力度合いや、話し合う内容の多さ、調停委員の進め方などによって大きく変動するため、あくまで目安として捉えておきましょう。
長期化する可能性も視野に入れつつ、着実に手続きを進めることが重要です。特に、精神的な負担が大きい場合は、弁護士に相談し、適切なサポートを受けながら進めることも検討してください。
離婚調停を有利に進めるための5つのポイント
離婚調停は、ただ手続きを進めるだけでなく、ご自身の希望する結果に近づけるための戦略と心構えが非常に重要です。ここでは、より良い条件で合意を形成するために意識すべき5つの重要なコツをご紹介します。
主張を裏付ける証拠を準備する
離婚調停は話し合いの場ではありますが、ご自身の主張が正当であることを調停委員に客観的に理解してもらうためには、証拠の準備が極めて重要になります。感情的な訴えだけでは、調停委員も判断に困ってしまうため、具体的な証拠を示すことで話に説得力が増します。
例えば、相手の不貞行為を主張する場合は、写真、メールやSNSのやり取り、ホテルや探偵の調査報告書などが有効な証拠となります。もしDVやモラハラを訴えるのであれば、医師の診断書、怪我の写真、日記や録音データなどが役立ちます。また、財産分与を求める場合には、預金通帳のコピー、不動産の登記簿謄本、保険証券など、財産の存在と評価額がわかる資料を準備しましょう。これらの証拠があることで、調停委員はご自身の主張を客観的に評価しやすくなり、ひいては心証も良くなる効果が期待されます。
希望する条件を明確にし、書面にまとめる
調停に臨む前に、ご自身が何を求めていて、どのような条件で離婚したいのかを具体的に整理しておくことは非常に重要です。漠然とした希望ではなく、「子どもの親権は私が持ちたい」「養育費は月〇万円が妥当だと考える」「自宅は財産分与として私が取得したい」といった具体的な条件をリストアップし、書面にまとめてみましょう。
この準備をすることで、調停の場で感情的にならず、冷静かつ一貫性のある主張ができるようになります。また、調停委員にもご自身の意思や希望が明確に伝わりやすくなり、話し合いがスムーズに進む助けとなります。ご自身の希望が明確であれば、どこまでなら譲歩できるか、どこは絶対に譲れないのかという交渉のラインも引きやすくなるでしょう。
調停委員を味方につける話し方・態度
調停委員はあくまで中立な立場であり、どちらか一方の味方をするわけではありません。しかし、調停委員も人間ですから、各当事者に対する印象が話し合いの進行や心証に影響を与える可能性は否定できません。
調停委員に「この人の主張は理に適っている」「協力的な態度で話し合いに応じている」と思ってもらうためには、話し方や態度に配慮することが大切です。具体的には、常に丁寧な言葉遣いを心がけ、感情的に相手を罵倒したり、一方的に非難したりすることは避けましょう。調停委員からの質問には、感情を交えずに誠実に事実を伝え、協力的な姿勢で臨むことが重要です。また、相手の意見についても、まずは一度受け止める姿勢を見せることで、ご自身が建設的に話し合いを進めようとしていることが伝わりやすくなります。こうした配慮は、結果的にご自身に有利な方向へと調停を導く助けとなるでしょう。
感情的にならず冷静に対応する
離婚というテーマは、人生における大きな転機であり、感情的になりやすいのは自然なことです。しかし、調停の場では、いかに冷静さを保つかが非常に重要になります。怒りや悲しみを調停の場でぶつけてしまうと、ご自身の主張の論理性が調停委員に伝わりにくくなり、「感情的な人」というマイナスの印象を与えかねません。
ご自身の言いたいことや希望する条件は、事前にメモにまとめておくなどして整理し、調停の場で冷静に伝えるように心がけましょう。感情が高ぶりそうになったら、深呼吸をするなどして落ち着きを取り戻す工夫も有効です。あくまで事実と、それに基づいたご自身の希望を論理的に伝えることに集中することで、調停委員も状況を正確に把握し、建設的な解決策を模索してくれるはずです。
譲歩できる点とできない点を整理しておく
離婚調停は、当事者双方が歩み寄ることで合意形成を目指す場です。そのため、「すべて自分の思い通りにする」という一方的な姿勢では、調停がまとまらず不成立に終わってしまう可能性が高くなります。調停に臨む前に、ご自身の希望条件の中で「絶対に譲れない点」と、「ある程度なら譲歩してもよい点」を明確に区別しておくことが重要です。
例えば、親権については「絶対に譲れない」と決めても、養育費の金額や面会交流の頻度については「相手の提案次第で譲歩できる」といった線引きをしておくのです。これにより、交渉の場で柔軟な対応が可能となり、ご自身が最も守りたい核心の部分を守るために、他の部分で譲歩するという戦略的な判断ができるようになります。この整理があるかないかで、調停の着地点が大きく変わってくることも珍しくありません。
離婚調停に関するよくある質問(Q&A)
離婚調停のプロセスでは、さまざまな疑問や不安が生じるものです。このセクションでは、離婚調停を検討されている方がよく抱かれる具体的な質問に対し、Q&A形式で分かりやすくお答えしていきます。
相手が調停に来ない(欠席する)場合はどうなりますか?
相手方が調停期日に正当な理由なく欠席した場合でも、一度の欠席で直ちに調停が不成立となるわけではありません。裁判所は、相手方に対し改めて出頭を促す通知を送ることが一般的です。しかし、相手方が繰り返し欠席し、話し合いに応じる意思がないと判断された場合には、調停は「不成立」として終了することになります。
調停が不成立となっても、申立人の方が離婚を望む場合は、次のステップとして家庭裁判所に離婚訴訟(裁判)を提起することが可能です。裁判手続きにおいては、相手方の非協力的な態度は、場合によっては不利な事情として考慮される可能性もあります。また、正当な理由なく調停期日を欠席し続けた場合、5万円以下の過料に処される可能性もゼロではありません。
調停中に別居しても不利になりませんか?
調停中の別居が、必ずしも不利に働くとは限りません。原則として、すでに夫婦関係が破綻している状況での別居は、離婚意思を明確に示す行為として捉えられ、その後の手続きに不利な影響を及ぼすことは少ないと考えられます。むしろ、同居によるストレスから解放され、冷静に調停に臨めるというメリットもあります。
ただし、注意すべき点もいくつかあります。相手方の同意を得ずに一方的に家を出て、かつ生活費も渡さないといった状況が続くと、「悪意の遺棄」とみなされるリスクが生じる可能性があります。また、お子様がいらっしゃる場合、親権争いの際に「監護の継続性の原則」(現状でお子様を監護している親を優先するという考え方)が考慮されるため、一方的に子どもを連れて別居したり、相手方に子どもを残して別居したりすることは、後の親権争いで不利になる可能性も考えられます。特に子連れでの別居を検討される場合は、慎重な判断と準備が必要です。
相手に住所を知られたくないのですが、どうすればいいですか?
DVやストーカー被害など、特定の事情により相手方に現在の住所を知られたくないと考える場合は、家庭裁判所にその旨を申し出ることができます。申立ての際に「非開示の希望の申出書」を提出することで、申立書やその他の書類で相手方に渡る書面上の住所を非公開にしてもらえる制度があります。
この制度を利用することで、相手方に住所が伝わることなく調停手続きを進めることが可能になります。申立てを行う際には、必ず管轄の家庭裁判所の窓口で非開示の希望があることを伝え、具体的な手続きについて相談するようにしてください。
調停で話した内容に納得できない場合はどうすればいいですか?
調停は、あくまで当事者双方の合意に基づいて成立する手続きです。提示された案や相手方の主張に納得できない場合、無理に同意する必要は一切ありません。「納得できません」「一度持ち帰って検討させてください」などと、ご自身の意思を明確に調停委員に伝えることが重要です。
当事者双方が合意に至らなければ、調停は不成立として終了します。その後、引き続き離婚を求める場合は、離婚裁判へと移行することになります。調停の場で無理に合意して後悔することのないよう、ご自身の希望や将来を見据え、納得できない点についてははっきりと主張するようにしてください。
本人ではなく弁護士だけでも出席できますか?
弁護士に離婚調停を依頼している場合、調停期日への出席は原則としてご本人と弁護士の双方が求められますが、特別な事情がある場合には弁護士のみが代理人として出席することも可能です。例えば、遠方に住んでいる、仕事の都合でどうしても期日に合わせられない、あるいは相手方と顔を合わせるのが精神的に非常に辛いといった状況が該当します。
ただし、調停が最終的に成立し、調停調書を作成する場面では、ご本人の意思確認が必要となるため、裁判所への出頭を求められることがほとんどです。そのため、基本的にはご本人も出席する前提でスケジュールを調整し、必要に応じて弁護士に代理出席を依頼すると良いでしょう。
離婚調停の申立てに不安があれば弁護士への相談も検討しよう
離婚調停を一人で進めることに不安を感じる方や、手続きの複雑さに戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。このセクションでは、そのような場合に法律の専門家である弁護士に相談したり、依頼したりすることの有効性についてご説明します。弁護士に依頼することのメリットとデメリット、そして実際に弁護士を探す際の具体的なポイントを解説しますので、ご自身の状況に合わせて専門家のサポートを検討する際の参考にしてください。
弁護士に依頼するメリット・デメリット
離婚調停を弁護士に依頼することには、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。まず、最大のメリットは、複雑な書類作成や裁判所とのやり取りといった手続きをすべて任せられる点です。精神的な負担が大きい離婚問題において、これらの実務から解放されることは、大きな安心につながります。
また、弁護士は法律の専門家として、ご自身の状況において法的にどのような主張が可能か、どのような解決策が最も有利かなどを的確にアドバイスしてくれます。調停期日には弁護士が同席し、ご自身の代わりに主張を代弁してくれるため、相手方と直接顔を合わせることなく、冷静かつ効果的に話し合いを進めることができます。相手方との交渉も弁護士に任せられるため、精神的なストレスが大幅に軽減されるでしょう。一方、デメリットとしては費用がかかる点が挙げられます。弁護士費用は決して安いものではなく、着手金や報酬金などがかかります。しかし、特に争点が複雑なケースや、相手方がすでに弁護士を立てている場合、あるいはご自身の精神的な負担が非常に大きい場合には、費用をかけてでも弁護士に依頼する価値は十分にあると言えるでしょう。
弁護士の探し方と相談のポイント
いざ弁護士に相談しようと思っても、どのように探せば良いか迷う方も少なくないでしょう。弁護士を探す方法としては、まず地域の弁護士会が実施している法律相談窓口を利用する方法があります。また、経済的な理由で弁護士費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)に相談するという選択肢もありますが、こちらは収入などの利用要件があります。身近に信頼できる友人や知人がいれば、紹介してもらうのも良いでしょう。最近では、インターネットで離婚問題に強い弁護士を検索し、各弁護士事務所のウェブサイトで実績や専門分野を確認する方法も一般的です。
弁護士に相談する際には、いくつかのポイントがあります。まず、これまでの経緯やご自身の希望、質問したいことを時系列で整理し、メモにまとめておくことをおすすめします。関連する資料(戸籍謄本、収入に関する資料、夫婦の財産に関する資料など)があれば、持参することでより具体的なアドバイスを受けられます。また、費用の見積もりについては事前に明確に説明を求め、納得できるまで確認することが重要です。最後に、弁護士との相性も大切です。話しやすさや信頼感は、今後の手続きを円滑に進める上で非常に重要な要素となりますので、複数の弁護士に相談して、ご自身に合った弁護士を見つけるようにしましょう。
まとめ
ここまで、離婚調停の申立てから終了までの具体的な流れ、費用、期間、そして調停を有利に進めるためのポイントについて詳しく見てきました。離婚調停は、感情的になりがちな離婚問題を、家庭裁判所という公的な場で、調停委員という中立的な第三者を介して冷静に話し合い、解決を目指すための有効な手段です。ご夫婦での話し合いが進まない場合や、直接顔を合わせることに抵抗がある場合でも、調停を通じてお互いの意見を伝え、納得のいく合意形成を模索することができます。
調停を成功させるためには、事前の準備が何よりも重要です。希望する離婚条件を明確にし、それを裏付ける証拠を集め、冷静かつ誠実な態度で話し合いに臨むことが、ご自身の希望に近づくためのカギとなります。もし、手続きへの不安や、一人で対応することの精神的負担が大きいと感じる場合は、弁護士などの専門家に相談することも積極的に検討してみてください。新たな生活に向けた第一歩として、この情報があなたの背中をそっと押す助けになれば幸いです。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




