痴漢で解雇されるケースとは?処分の流れと避ける方法・対処法を解説
2025年02月23日
- 痴漢をして逮捕されてしまった。会社から解雇されるのだろうか?
- 痴漢で解雇されるケースを教えてほしい。悪質性が低くても解雇されるのだろうか?
- 痴漢による解雇を防ぐための対策があれば是非知りたい。
痴漢をして逮捕され有罪となった場合、懲役刑(拘禁刑)また罰金刑を受ける可能性があります。
それだけではなく、痴漢事件が会社の知るところとなれば、懲戒解雇になるかもしれません。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、痴漢で解雇になるケース、痴漢による解雇の流れ等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 痴漢行為で会社の名誉・信頼を毀損した、悪質性が高い等の理由で解雇される場合もある
- 痴漢が冤罪である場合や悪質性が低い場合は解雇される可能性は低い
- 痴漢による解雇を防ぐため、まず弁護士に相談し対応の仕方を相談しよう
痴漢で解雇されるケース
痴漢行為で有罪となった場合は、私生活上の犯罪行為であっても、会社への影響を重く見て解雇される場合があります。
痴漢の悪質性が高ければ、解雇される可能性は高いでしょう。
会社の名誉・信頼を毀損した
自社の従業員(被疑者)の痴漢行為が、会社の社会的評価に重大な影響を与えると判断されると、懲戒解雇になる場合があります。
痴漢で逮捕された段階では、従業員が起訴されるかどうかはわかりません。そのため、逮捕後に即解雇となる可能性は低いでしょう。
しかし、起訴され、刑事裁判で有罪になった場合は懲戒解雇になる可能性が高いでしょう。
どのような場合に解雇されるかは、会社の就業規則に規定されている場合が多いので、確認しておいた方がよいです。
被害者の精神的な苦痛が大きい
会社側が被害者の精神的苦痛を重く見て、従業員(被疑者)の懲戒解雇を決めるケースです。
たとえば、従業員(被疑者)の痴漢行為が原因で、被害者がうつ状態となり、医療施設での診療やカウンセリングを受けることになった場合が該当するでしょう。
被害者が深刻な精神疾患を患うと、会社としては従業員(被疑者)へ何らかの処分を行う必要に迫られ、懲戒解雇となる場合もあるのです。
悪質性が高い
会社側が従業員(被疑者)の痴漢行為の悪質性を考慮し、懲戒解雇を行うケースです。
次のような事実が確認された場合、悪質性が高いと判断される可能性があります。
- 痴漢被害者が複数名おり、常習性が疑われる
- 被害者を暴行や脅迫して痴漢行為に及んでいる
- 恐怖で抵抗できない女子児童を選んで痴漢している
- 被害者の衣服の中に手を入れ、下着の上からまたは肌に直接触れている
いわゆる刑法上の「不同意わいせつ罪」を犯したケースです(刑法第176条)。不同意わいせつ罪で拘禁刑(6月〜10年以下)を受けた場合、懲戒解雇となる可能性が高いでしょう。
出典:刑法|e-GOV法令検索
痴漢で解雇されないケース
相手に誤解されて痴漢の被疑者となってしまった場合、痴漢の疑いが晴れれば解雇されないでしょう。
また、痴漢はしたが悪質性が低いといった場合も、解雇されない可能性があります。
冤罪の場合
痴漢の被疑者として逮捕されたものの、痴漢の疑いが晴れたケースです。
会社側は、通常、従業員が起訴され有罪判決が出るまでは解雇を待つでしょう。
しかし、冤罪だったにもかかわらず会社が解雇を言い渡していた場合は、(元)従業員は労働審判や訴訟で救済を申し立てる方法があります。
悪質性が低い
痴漢で罰金刑を言い渡された場合などです。
痴漢行為が罰金にとどまるのは、各都道府県の「迷惑防止条例」違反で処罰されるケースがほとんどでしょう。
会社側も罰金にとどまった場合、「会社の社会的評価に重大な影響を与えるほどの罪ではない」と考え、懲戒解雇を行わない可能性があります。
ただし、会社に迷惑をかけた責任が問われ、何らかの懲戒処分を受けるかもしれません。
また、罰金刑だからといって、懲戒解雇はないと安心するのは早計です。
過去にも痴漢事件を起こし有罪となった前科がある場合、不祥事を繰り返し起こしたという理由で、懲戒解雇される可能性が高くなるでしょう。
痴漢による解雇の流れ
痴漢で逮捕されたからといって、会社が状況をよく把握せずに懲戒解雇を決めるケースはほとんどないでしょう。
会社は情報収集を行い、懲戒手続を経たうえで、処分を行うという手順が一般的です。
痴漢の発覚
会社は従業員が痴漢で逮捕された事実を、マスメディアの実名報道や、警察からの連絡、痴漢をした本人からの申告等で知ります。
従業員が不祥事を起こした事実の発覚後、従業員が起訴されるか不起訴となるかを見守るだけではなく、速やかに社内で事実調査を開始するでしょう。
事実調査
社内では次のような事実調査が進められるでしょう。
- 痴漢行為の経緯や悪質性の程度
- 従業員の反省の姿勢
- 痴漢行為をした従業員の年齢や勤務年数、役職等
- 逮捕される前の従業員の勤務態度・成績・将来の期待度
- 業務に与えた影響:従業員が身柄を拘束され業務に支障が出たか等
- マスメディアの報道内容や程度:実名報道され、TVやインターネットで顔や姿態が映っているか等
- 痴漢被害者との示談が成立したか
- 刑事処分はどうなるのか
TVの報道や新聞記事、インターネット、痴漢した本人や家族・弁護士からの事情聴取が調査の参考となるでしょう。
処分の決定
調査で確認された事実に基づき、懲戒処分をするか否か、懲戒処分を行う場合は処分の種類・程度を決定します。
もちろん、懲戒処分の内容は就業規則等に従わなければなりません。
痴漢に関する懲戒として次のような処分を受ける可能性があります。
- 戒告:最も軽い懲戒処分で、口頭で強い注意をする的
- 譴責(けんせき):始末書の提出を求めて厳重注意する
- 減給:従業員の賃金から一定額を差し引く
- 出勤停止:一定期間従業員の就労を禁止する
- 降格(降職):従業員の役職や職位、職能資格等を下げる
- 諭旨解雇(ゆしかいこ):一定期間内に退職届の提出を勧告し、勧告に従えば退職扱いとする解雇
- 懲戒解雇:制裁罰として行う解雇で、退職金は不支給となる場合が多い
懲戒手続き
会社は痴漢をした従業員にいきなり処分を言い渡すのではなく、通常、次のような手続きを進めます。
2.就業規則等で規定されている場合:、「懲戒委員会」を開催する(議事録の作成・保管が必要)
3.労働協約で懲戒処分を行うときは労働組合との協議が必要と決めていた場合:労働組合と協議し同意を得たうえで、処分を行う
懲戒処分の実施
痴漢をした従業員へ、会社側が決定した処分を文書等で通告します。
処分に不満がある従業員は、地方裁判所に「労働審判」や「訴訟」を申し立て、処分の有効性を争うことも可能です。
申立てを行うときは、事前に弁護士と相談し、手続きの流れや主張・立証のときの注意点等を把握しておいた方がよいです。
痴漢による解雇を防ぐための対策
痴漢行為を行った場合に、解雇処分を避けるためには、まずは被害者との示談が必要です。
できるだけ早く弁護士と相談し、法的なアドバイスやサポートを受けましょう。
弁護士への相談
痴漢で逮捕された後に弁護士と連絡が取れる場合は、すぐに逮捕された旨を伝えましょう。
弁護士が警察署等に駆けつけ、会社への対応等のアドバイスやサポートをします。
- 逮捕後、どのように刑事手続が進められるか説明
- 痴漢で逮捕された事実を会社に知られた場合の対応
- 逮捕後の弁護活動の説明
- 警察や検察を説得し、早期釈放を試みる
- 被害者と示談交渉を進める
弁護士が私選弁護人として弁護活動を行う場合は、会社側への説明も任せられます。
逮捕されて弁護士に自分で連絡が取れない場合は、警察官に家族と連絡を取りたいと申し出て、家族に弁護士を選任してもらいましょう。
示談交渉
痴漢被害者との示談が成功すれば、検察官は不起訴処分を決定する場合があります。
不起訴処分になれば、すぐ釈放され刑罰を受けずに済みます。また、会社も解雇処分を行わないでしょう。
弁護士を交渉役に立てて、被害者と示談交渉を進めましょう。弁護士からの申し出であれば、被害者が交渉に応じる可能性があります。
示談交渉では弁護士と被害者との間で、主に次のような内容を取り決めます。
- 加害者は被害者に謝罪する、被害者へ二度と近づかない
- 示談金の内容を取り決める:双方が納得できる示談金額の調整、支払方法・期限等
- 被害者が被害届や告訴状を提出していた場合→取下げ
- 被害者は検察官に嘆願書の提出し、寛大な処分を求める
- 以後、双方とも今回の問題を蒸し返さない
双方が示談内容に納得すれば示談書を2通作成し、加害者・被害者がそれぞれ1通ずつ大切に保管します。
痴漢で解雇されたときの対処法
痴漢による解雇が納得できない場合は、解雇無効の請求が可能です。
方法は「交渉(内容証明で通知)」「労働審判」「訴訟」の3つがあります。
交渉(内容証明で通知)
解雇撤回要求を「内容証明」で通知して、交渉する方法です。
内容証明で通知すれば、「解雇撤回要求を確かに通知した」という証明となり、会社側に対して心理的なプレッシャーを与える効果があります。
なお、弁護士を代理人に立てていれば、弁護士名で内容証明を郵送できます。
弁護士が送付すると、会社側は「弁護士まで出てきた。訴訟になるかもしれない」と考え、和解交渉に応じる場合もあるでしょう。
労働審判
会社への復職を考えておらず、会社側との金銭解決を目指す場合、地方裁判所に「労働審判」を申し立てましょう。
労働審判は(元)労働者と会社側の労働関係のトラブル(解雇等の有効性)を、実情に即し迅速かつ適正に解決する非公開の手続きです。
労働審判で問題を解決したい場合は、弁護士は依頼者側の立場に立った説得力のある主張・立証を行うでしょう。
また、地方裁判所に提出する申立書等の書類の作成・収集等も、弁護士に委任が可能です。
訴訟
労働審判で解決できなかったときは、訴訟手続に移行します。
訴訟のときも弁護士は依頼者の代理人として、解雇の無効を主張・立証し、裁判期日に本人の代わりに出廷する等、様々な対応の委任が可能です。
最終的には裁判所から、解雇無効を認めるか否かの判決が言い渡されます。ただし、判決前に裁判官から和解を勧められる場合がほとんどです。
弁護士と相談し内容に納得できる場合は、和解に同意してもよいでしょう。
痴漢による解雇対策なら春田法律事務所まで
今回は数多くの刑事事件を担当してきた専門弁護士が、痴漢事件での解雇を防ぐためのポイント等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、刑事事件の示談交渉や裁判に力を入れている法律事務所です。痴漢を理由とした解雇に不安なときは、まず弁護士とよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。