ヘルパーと利用者との金銭トラブルを防ぎたい!利用者とヘルパーの立場で解説
最終更新日: 2022年05月13日
金銭のやりとりは、基本的にお互いの信頼関係のもとに行われることが必要です。その分、あらゆる場面でトラブルの原因になりえます。ヘルパーと利用者の間においても、それは同じことです。
そこで今回は、介護業界のトラブルに精通した専門弁護士が、利用者とヘルパーの立場で金銭トラブルを防ぐ対策と、弁護士が金銭トラブルを解決した事例について解説します。
ヘルパーと利用者との金銭トラブルで利用者が被害を受けないための対策を解説
介護の現場では、残念ながら利用者が被害者の金銭トラブルが発生することもあります。金銭トラブルの例は、以下のとおりです。
身に覚えのないサービスの請求書が利用者に届いた
ここでは、利用者がヘルパーからの金銭トラブルの被害を受けないための対策について、2つ解説します。
- 利用者や家族ができる対策
- 疑わしいときの相談先
それでは、1つずつ解説します。
利用者や家族ができる対策
1つ目は、利用者や家族ができる対策です。
例えば、利用者がヘルパーに買い物を頼んだときには、買い物後にレシートとお釣りを照らし合わせましょう。
また、利用者が認知症であるときは、家族がお金を管理しましょう。ヘルパーにとっては、利用者の通帳管理や年金管理は業務対象外です。
疑わしいときの相談先
2つ目は、疑わしいときの相談先です。
疑わしいことがあったときには、まずは介護事業者に連絡しましょう。当事者同士では解決できず、警察や弁護士を介して解決を図ることになるかもしれません。
しかし、まずは当事者同士の話し合いで現状把握を行い、平和的解決に努めることを心がけましょう。
ヘルパーと利用者との金銭トラブルでヘルパーが被害を受けないための対策を解説
介護の現場では、大前提としてヘルパーと利用者の間での金銭の貸し借りは禁止です。ただ、ヘルパーが被害者の金銭トラブルが発生することもあります。
ここでは、ヘルパーが利用者からの金銭トラブルの被害を受けないための対策について、2つ解説します。
- 情に流されずしっかり話を聞く
- 対応・判断に困ったら上司に相談
それでは、1つずつ解説します。
情に流されずしっかり話を聞く
1つ目は、情に流されずしっかり話を聞くことです。
利用者がヘルパーに「お金を貸してほしい」と言っているということは、利用者に何か重大な問題が発生しているのかもしれません。
しかし、決して情に流されてはいけません。情に流されずしっかりと話を聞き、内容によっては早急にその他のサポートを行いましょう。
対応・判断に困ったら上司に相談
2つ目は、対応・判断に困ったら上司に相談することです。
ヘルパーは、現場で対処できないと判断した案件は、自分の上司に相談することが基本になります。利用者との金銭トラブルもその1つです。
介護の業務は、一人で行うものではなくチームとして行うもの。あらぬトラブルを発生させる前に、信頼できる上司に相談しましょう。
ヘルパーと利用者との金銭トラブルを防ぐために活用したい制度
利用者は、金銭管理をヘルパーに頼むことはできません。ここでは、ヘルパーと利用者との金銭トラブルを防ぐために活用したい制度を2つ解説します。
- 日常生活自立支援事業
- 成年後見制度
それでは、1つずつ解説します。
日常生活自立支援事業
金銭トラブルを防ぐ制度の1つ目は、日常生活自立支援事業です。
日常生活自立支援事業とは、認知症の高齢者や知的障がい者、精神障がい者など、判断能力が低下している方が、自立した生活を送れるように、福祉サービスの利用援助を行うものです。
都道府県や指定都市社会福祉協議会が事業を展開しています。
当事業に基づく援助内容は、以下に示すものが基準になります。
苦情解決制度の利用補助
日常生活の消費活動および行政手続に関する援助
また、上記に伴う援助内容は、以下に示すものが基準になります。
定期的な訪問による生活環境の変化を察知
利用料については、実施主体が定める金額の一部を利用者が負担します。そのため、利用者は訪問1回当たり平均1,200円前後支払うことになるのです。
最後に、手続きの流れを以下に解説します。
2.実施主体は生活状況や希望する援助内容を確認し、事業が必要であるか判断
3.必要であると判断されたら、具体的な支援を決める支援計画を策定
4.契約締結
成年後見制度
金銭トラブルを防ぐ制度の2つ目は、成年後見制度です。
成年後見制度とは、認知症などで判断力が低下したときに、他人を後見人として立てる制度です。これまでは「禁治産・準禁治産者宣告制度」があり、判断能力が十分でない方を「禁治産者」として金銭管理の制限していました。
しかし、禁治産者になると本人の戸籍に記載されるため、偏見や差別をもたらした事例がありました。
そこでできたのが成年後見人制度です。これは平成12年に誕生し、ノーマライゼーション、本人の残存能力の活用、自己決定の尊重を理念としてます。
なお、成年後見人には任意後見と法定後見があります。前者は、本人が元気なうちに後見人を指名して、公正証書で任意後見契約を結ぶものです。後者は、すでに本人に判断能力がなくなり、家庭裁判所によって選任された後見人が本人を支援するものです。
また、法定後見には後見・保佐・補助の3パターンがあり、後見人に与えられる権限および職務が異なります。
ヘルパーと利用者との金銭トラブルを弁護士が解決した事例
ここでは、ヘルパーと利用者との金銭トラブルを弁護士が解決した事例を紹介します。
訪問介護事業所に勤める職員が、訪問先の家のタンスから、現金10万円と貴金属を盗みました。
後日利用者は、現金と貴金属が無くなっていることに気付き、訪問介護事業所に事実関係を確認しました。
訪問介護事業所は、内部調査を行い職員の犯行を明らかにしたのです。そして間に入った弁護士によって、被害者である利用者と誠実に交渉を進めた結果、無事に示談が成立しました。
まとめ
今回は、利用者とヘルパーの立場で金銭トラブルを防ぐ対策と、弁護士が金銭トラブルを解決した事例について解説しました。
利用者やその家族は、金銭のやり取りに関してはヘルパーを信用しすぎてはいけません。金銭のやり取りは必要最低限だけに留めて、金銭管理を徹底しましょう。
反対に、ヘルパーも利用者に対して情に流されてはいけません。自分だけで解決できそうになければ、上司に相談しましょう。
それでもヘルパーと利用者の間で金銭トラブルが発生したときには、介護業界のトラブルに精通した専門弁護士を多数有する当法律事務所にご相談ください。弁護士に相談することで、早く確実にトラブルを解決できることでしょう。